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2005年2月

2005年2月28日 (月)

公会計革命―「国ナビ」が変える日本の財政戦略

■ 書籍情報

公会計革命―「国ナビ」が変える日本の財政戦略   【公会計革命―「国ナビ」が変える日本の財政戦略】

  桜内 文城 (著)
  価格: ¥777 (税込)
  講談社(2004/10/19)

 まず副題の「国(くに)ナビ」です。平良とみさんが登場するわけではありません。「国家財政ナビゲーション・システム」の略称のことです。本書は、この「国ナビ」の紹介と、国ナビによって政治や行政の意思決定がどう変わるかという内容と方向性を示すことを目的として書かれています。
 従来の会計の果たして来た役割が「バックミラーを見ながら運転するようなもの」であることとの対比として、国家財政を運営するための「カーナビ」である「国ナビ」で未来をシミュレーションしながら意思決定していくことを紹介しています。
 第3章中の「20XX年の内閣総理大臣の仕事」は面白いです。現時点では同じようなことをするために職員が徹夜して資料作りをしていることを考えると、意思決定の質とスピードが上がるのでは、という期待を持たせてくれます。

 本書は同じ著者による『公会計―国家の意思決定とガバナンス』の入門書、導入部的な意味合いで書かれていて、本書を読んで、「国ナビ」に関心をもたれた方、また、「ちょっと眉唾だな」と思われた方が、こちらの方に読み進むことが意図されています(とは言え実は私もまだ読んでません。)。

 「日経BPガバメントテクノロジー」のサイトに著者のインタビューが出てますのでまずはこちらを読んでみてもいいかもしれません。

「国・自治体の責任を明確にする公会計システム「国ナビ」「自治ナビ」」

■ 個人的な視点から

 よく映画やマンガなどで、敵のラスボスはコンピュータだった、というものがありますが、「国家財政をシミュレーションする」と聞くと、コンピュータが最適な予算編成をやってくれる、というイメージを抱く方もいるのではないでしょうか。
 「行政評価」が日本でブームになったときにも同じように期待する、または反感を持つ(挙げ足を取る)人が多くいて、「行政評価をすれば最適な政策を行うことができる」、「そんなに大したものがあるなら職員なんか要らないじゃないか」という極端な反応があったように思われます。
 この「国ナビ」にしても「行政評価」にしてもあくまでツールの一つです。いくらカーナビが進化しているとは言え、現時点ではカーナビが勝手に運転してくれるわけではないのと同じように、「国ナビ」を使って意思決定をするのはあくまで政治家自身です。ただし、これまでの「道路地図」があまりに使いにくく、ジャーゴンが盛りだくさんの複雑怪奇なものだったために、地図を読む専門家(霊能者?)に頼らざるを得ず、実権を握られていたのです。
 「国ナビ」にしても「行政評価」にしても、役人のためのツールではなく、主権者である国民が国家や自治体をガバナンスするための道具の一つである、という目で見ていくと真価が分かるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・新聞やニュースで「2005年度予算編成」の記事を見てもいまいちピンと来ない人
 ・「予算は使い切るもの」と(少なくとも行動レベルでは)固く信じている公務員


■ 関連しそうな本

 桜内 文城 『公会計―国家の意思決定とガバナンス』
 南 学 (編著) 『行政経営革命―「自治体ABC」によるコスト把握』
 土居 丈朗(編著)『地方分権改革の経済学―「三位一体」の改革から「四位一体」の改革へ』


■ 百夜百マンガ

大正野郎【大正野郎】

 こういう「変な人」を主人公にして、周囲とのズレ具合を楽しむ漫画っていうのは、単に変だというだけではなく、いかに愛すべきキャラクターかということが重要になってきます。そうでないと、どんどんつらくなっていきますし。
 そういう意味でこの『大正野郎』の平徹主人公、平徹は非常に愛すべき人物です。「遺憾!」とか大真面目に叫んで馴染みの床屋で髪を切り直すところなんかは最高です。

2005年2月27日 (日)

会社人間はどこへいく―逆風下の日本的経営のなかで

■ 書籍情報

会社人間はどこへいく―逆風下の日本的経営のなかで   【会社人間はどこへいく―逆風下の日本的経営のなかで】

  田尾 雅夫 (著)
  価格: ¥693 (税込)
  中央公論社(1998/07)

 本書は、「バーンアウト」(燃え尽き症候群)や組織心理学などを専門とする著者が、主に心理学的な関心から「会社人間」について分析しています。
 「会社人間はもう要らない」、「自分らしく生きよう!」のような無責任・お調子者的な旗振りをするのではなく、「人がなぜ会社人間になるのか?」という当事者の心理を追っていくようなアプローチ方法をとっています。
 著者は、会社人間を存在自体から否定するのではなく、会社人間は必ず必要だが、ムリ・ムラ・ムダなく、上手く会社人間と会社を接合させるシステムとはどのようなものか、ということを本書の主旨としています。
 そして、滅私奉公的な高い自我関与も日本的経営が成功してきた一つの要因であり、「なんでも自助、それができないやつは無能だ」とまでの極論は過激に過ぎるのではないかという問いかけをしています。

 著者によれば、会社に過剰に同調する「会社人間」は、会社の「中間部分」から生まれてきます。幹部や幹部候補生にとっては、組織との距離はなく、「自分即会社」になっているので、特に会社人間である必要はありません。逆に周辺や底辺にいれば、会社とはどうでもよい存在であります。難しいのは、その中間にいる人で、彼らは、その不安定な立場ゆえに、同調傾向を強化することで不安な気持ちを緩和しようとして、必要以上に会社にのめりこんでしまうということです。

 本書は、ともすれば戯画的に捉えられやすい「会社人間」を、主に心理学的な視点から冷静に分析しているという点で、巷間に溢れる扇情的な「脱・会社人間」本とは一線を画しています。


■ 個人的な視点から

 「会社人間」と聞くと会社と個人との過剰な相互依存状態「モーレツ社員」「企業戦士」などがイメージされ、最近ことさらに悪いイメージが付きまといます。「会社人間」→「モーレツ社員」→「窓際社員」→「濡れ落ち葉」のようにパターン化されてしまうのか、どうにも物悲しい雰囲気です。
 では、なぜ人は会社に過剰にコミットしてしまうのでしょうか。過剰にコミットすることのどこに問題があるのでしょうか。そのような点については、これまできちんとした議論がされてきませんでした。確かに、目の前にリストラされて再就職もおぼつかない中高年や、退職してから見る見る老け込んで行く人を突きつけられれば、「会社人間は悲惨だ」「ああはなりたくない」と思うかもしれません。
 しかし、物事を本質的に見ようとすること、「なぜ?」「どうして?」を自問することなく、社会のムードに身を任せてしまうことの方が、「会社人間」問題のより根が深い部分なのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・「自分は会社人間なんじゃないか」と不安に思ってしまった人。
 ・「会社人間にだけはなりたくない」と思っている学生や新入社員。


■ 関連しそうな本

 田尾 雅夫 『組織の心理学』
 ステファン・P. ロビンス (著), 髙木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日
 金井 壽宏 『組織を動かす最強のマネジメント心理学―組織と働く個人の「心的エナジー」を生かす法』


■ 百夜百マンガ

ストリッパー【ストリッパー】

 青春苦悩系マンガです。『さくらの唄』なんかみたいに中途半端なハッピーエンドは付けてません(電気グルーヴのオールナイトニッポンで酷評してました。→『さくら』のラスト)。
 こういうマンガを10代のときに読むのと、20代、30代のときに読むのではまるで違ったものになるとおもいますが、相変わらず読むとはまってしまうのは、「10年前の僕らは胸を痛めて いとしのエリーなんて聴いてた」と同じようなことなんでしょうか。

 ちなみにタイトルは、「これこれ、踊り子に手をだしてはいかん 」の方ではないのでご注意!(何を?)

2005年2月26日 (土)

インセンティブ設計の経済学―契約理論の応用分析

■ 書籍情報

インセンティブ設計の経済学―契約理論の応用分析   【インセンティブ設計の経済学―契約理論の応用分析】

  伊藤 秀史 (著), 小佐野 広 (著)
  価格: ¥3,990 (税込)
  勁草書房(2003/12)

 本書は契約理論研究会(CTW: Contract Theory Workshop)のコンファレンスに提出された論文を元に、各分野への契約理論による応用分析を収録した論文集です。
 全部の章を一律に読む必要はありません。自分の関心のある分野を中心に読み、参考文献をたどって行ったり、契約理論について遡って読み進んでいってもいいと思います。


■ 個人的な視点から

 個人的な関心や仕事との関係で言うと、
・第4章 「組織における権限配分とモニタリング」(菊谷 達弥、林田 修)
・第5章 「人事の経済学:昇進とインセンティブ効果とピーターの法則」(清滝 ふみ、熊谷 礼子)
・第10章 「契約理論と政治経済学」(小林 航)
・第12章 「公的部門におけるソフトな予算制約問題(Soft Budget)」(赤井 伸郎)
あたりの論文が、特に読んでおきたいところなのかな、と思います。

 各章に関心をもたれた方は、関連する文献と言うと、
・第4章→伊藤秀史、林田修「企業の境界:分社化と権限委譲」(『日本の企業システム』第5章)や『組織の経済学』
・第5章→熊谷礼子「成果主義賃金はうまく機能するか?」(『経済セミナー』2004年12月号)や『人事と組織の経済学』『人事経済学』
・第10章→『経済政策の政治経済学』『Incentives and Political Economy』
・第12章→『地方交付税の経済学』『地方分権改革の経済学』『公共部門の業績評価』
あたりの文献を読まれると、関心に近いのではないかと思います。

 また、契約理論で会計を捉えなおす、という点
・第3章 「測定コストと会計研究」
も面白いです。
 この関連だと、『会計とコントロールの理論』に読み進むといいと思います。

 今日はほとんど文献の紹介になってしまいましたが、何かのきっかけで関心を持った分野の文献を探して行くというのは結構骨の折れる作業です。個人的には宝探しのようで非常に楽しい作業なのですが、論文などに記載していある「参考文献」は基本的にはより過去のものにしか遡れません。より新しい文献に読み進めて行こうと思ったら、自分が読んだ文献名や著者名をとにかくgoogleに放り込んで、その文献が参考文献として記載されている、より新しい論文を探すしかありません。ここで、サーベイ論文(既存研究を整理した論文)に当たればラッキーですが、見つからなければ、その研究者のwebサイトを探して、最近の論文を調べ、そこに記載されている参考文献に当たって行く、という地道な作業をすることになります。

 そういう作業を楽にするために、関連したミュージシャンや映画をリンクをたどって探すことができるwww.liveplasma.comの文献版のようなサイトがあると非常に助かると思っています。Amazonの「この本を買った人はこんな本も買っています」なんかはこれに近い機能を持っていますが、もっとグラフィカルに見ることができて、参考文献関係がはっきり分かるものがないものかと思います。
 この「行政経営百夜百冊」もだいぶ偏ったセレクションですが、少しでもそうした理想に近づくことができれば、と思っています。


■ どんな人にオススメ?
 ・「インセンティブ」ってよく聞くけど何?という人。
 ・インセンティブに整合的な制度設計をしたい人


■ 関連しそうな本

・序章
 伊藤 秀史 『契約の経済理論』
 小佐野 広 『コーポレートガバナンスの経済学―金融契約理論からみた企業論』 2005年02月23日
 清水 克俊, 堀内 昭義 『インセンティブの経済学』
 今井 晴雄, 岡田 章 『ゲーム理論の新展開』

・第3章
 シャム サンダー (著), 山地 秀俊, 松本 祥尚, 鈴木 一水, 梶原 晃 (翻訳) 『会計とコントロールの理論―契約理論に基づく会計学入門』

・第4章
 伊藤秀史(編) 『日本の企業システム』
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳)『組織の経済学』 2005年01月24日

・第5章
 『経済セミナー』2004年12月号
 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳) 『人事と組織の経済学』
 樋口 美雄 『人事経済学』

・第10章
 アビナッシュ・K. ディキシット(著), 北村 行伸 (翻訳) 『経済政策の政治経済学―取引費用政治学アプローチ』 2005年02月06日
 Jean-Jacques Laffont 『Incentives and Political Economy』

・第12章
 赤井 伸郎, 山下 耕治, 佐藤 主光 『地方交付税の経済学―理論・実証に基づく改革』 2005年01月27日
 土居 丈朗(編著)『地方分権改革の経済学―「三位一体」の改革から「四位一体」の改革へ』
 井堀 利宏 『公共部門の業績評価―官と民の役割分担を考える』


■ 百夜百マンガ

光る風【光る風】

 『がきデカ』『喜劇新思想大系』と同じ作者とは思えないほどシリアスな作品です。読んだあと暗い気持ちになります。
 ところで、焼け野原になった東京を首だけを抱えた主人公が放浪するシーンは『デビルマン』とかぶるんですが、何か共通のネタ元とかがあるのでしょうか。

2005年2月25日 (金)

学校評価―情報共有のデザインとツール

■ 書籍情報

学校評価―情報共有のデザインとツール   【学校評価―情報共有のデザインとツール】

 本書の基本的スタンスは、「学校を「与えられたもの」と考えるのではなく、「いい」学校をみなでどう作っていゆくかを「コミュニティの問題」として捉える」というところにあります。編著者が、教育改革国民会議の委員をしていたときに聞いた「公立学校は、「お客が来ることが決まっているまずいラーメン屋」のようなもの」というのは、「与えられたもの」としての学校の「まずさ」を表していると思われます。そして、学校をコミュニティの問題として捉えた内外の事例や自らの活動を交えながら、「コミュニティと教育」の問題について論じています。

 本書では、文部科学省から提示された「学校教育への批判」を次の3グループに分けています。

 ・問題点1:硬直的、画一的、柔軟性に乏しい
 ・問題点2:閉鎖的、地域や保護者との連携が不十分
 ・問題点3:自ら改革に取り組む意欲が不足している

そして、これらに対する教育改革を次の3つのキーワードにまとめています。

 ・キーワード1:多様な選択肢
 ・キーワード2:信頼される学校・アカウンタビリティ
 ・キーワード3:開かれた学校

 これらを踏まえて、学校評価が必要になった理由を、政府(国・地方)の独占状態に教育を任せておいてのでは上手くいかないのではないかと皆が気づきだしたので、「顧客」に十分な情報が与えられることが必要となったためとしています。そして、3つのキーワードの背景にある教育改革の潮流の原点を「顧客起点」と「成果起点」の発想にあるとしています。

 本書は、学校評価システムのデザインにあたり、新しい社会運営についての以下のモデルが有効だとしています。

○3つのソリューション・モデル
 ・権限に基づく問題解決―――ヒエラルキ・ソリューション
・市場を通じた企業活動による問題解決―――マーケット・ソリューション
 ・コミュニティによる問題解決―――コミュニティ・ソリューション

 教育問題に対するソリューション・モデルとして、本書が最も重点を置いているのが3つ目のコミュニティ・ソリューションのモデルです。

 本書には、「コモンズ型学校評価システム」という言葉が登場しますが、「コモンズ」とはどのような意味でしょうか(田中康夫知事が関与しているのでしょうか・・・?)。本書ではコモンズを以下のように位置づけています。
 「コモンズ」:メンバーの間に自発的に協力したという体験や様々なルール(=社会規範)が自発するプロセスを共有することによって「コミュニティのメモリー」が蓄積され、ソーシャル・キャピタルが形成される。そのようにして蓄積された「情報の共有地」
 そして、コミュニティ・ソリューションを機能させる力として、ソーシャル・キャピタルが重要であるとしつつ、この議論は、「鶏と卵」の議論になりやすいことも指摘しています。それは、「いいコミュニティ(ソーシャル・キャピタルの蓄積)があるからいい学校ができるのか、いい学校を作ることを目的にしたネットワーク活動があればソーシャルキャピタルも高まるのか」ということです。

 最終章となる第4章の評価システムの部分では、「コモンズ型評価」の二つの実践事例を取り上げていますが、これらは、まちづくり全般にも応用可能な汎用性を持っています。「あまり教育には関心がない」という方もぜひご一読ください。特にSQS(Shared Questionarie System)のパワーは実際に体験してみるとビックリしますよ(私も先日行政経営フォーラムの例会で「実演」してもらいました。)。


■ 個人的な視点から

 なぜ「学校」なんでしょうか? なぜ「教育」なのでしょうか?
 もちろん著者らがこの問題にかかわったきっかけや動機は様々だと思いますが、行政経営の観点から考えたときに、このテーマは非常に示唆に富んでいます。
 著者らが「コミュニティ・ソリューション」の適用対象として教育を選んだ、という逆読みを敢えてすると、以下のような点が指摘できます。

フリーライダーが生じにくい:
「教育」は、一方的にサービスの受け手になっているだけではその効果が減少するので、行政サービスの中でもフリーライダーが生じにくいこと(フリーライドしようと思えばある程度はできるんですが。)。

誰もが当事者意識を持ちやすい:
「福祉」は将来誰もが世話になるサービスであるとは言え、若い世代には実感が湧かない他人事と思われやすいのに対し、「教育」は人生の初期において誰もがサービスを受けており、自分のこととしてイメージしやすいこと。
ソーシャル・キャピタルと結びつきやすい:
小学校区、中学校区というエリアが元来コミュニティのエリアと重複することが多く(小学校を運営できる人口に集落が集まったのが明治の合併でできた「村」、新制中学校を運営できる人口に村が集まったのが昭和の合併でできた「町」という元もとの自治体の成り立ち上)、学区の単位でソーシャル・キャピタルが蓄積していること。

 これらの理由から、「コミュニティ・ソリューション」が最も適用しやすいのが学校の問題であると言えるのではないかと思います。

 以上、うがった見方をしてしまいましたが、著者らが目指しているのは、この学校評価をきっかけにしてコミュニティ・ソリューションを地域の問題解決に拡大して行くことにあるという点は、普段の話からも間違いないと思います(金子教授以外は千葉商大の同じ研究会でお世話になったので・・・)。


■ どんな人にオススメ?
 ・「学校教育を何とかしなきゃ」と思っているお父さん、お母さん
 ・「教育なんて専門じゃないから関係ないよ」と思っている公務員


■ 関連しそうな本

 金子 郁容 『ボランタリー経済の誕生―自発する経済とコミュニティ』
 小塩 隆士 『教育を経済学で考える』 2005年02月13日
 フィリップ コトラー, エデュアルド L. ロベルト (著), 井関利明(監訳)『ソーシャル・マーケティング』 2005年02月14日
 ダグラスC. ノース (著), 竹下 公視 (翻訳) 『制度・制度変化・経済成果』
 ロバート・D. パットナム (著), 河田 潤一 (翻訳) 『哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造』 2005年03月03日
 ローレンス・レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳) 『コモンズ』


■ 百夜百マンガ

コータローまかりとおる! 【コータローまかりとおる!】

 せっかく教育の話なので学園モノです。でも部活(というか格闘)と生徒会の話ばかりで授業のシーンなんてあるのか?
 少年マガジンの「こち亀」と言われた『まかりとおる』ですが、連載開始は1982年!
 googleで調べてたら「オヤジマンガ図鑑」というblogを見つけました。なんともネタがかぶりそうです。

2005年2月24日 (木)

働くということ

■ 書籍情報

働くということ   【働くということ】

  日本経済新聞社 (編集)
  価格: ¥1,575 (税込)
  日本経済新聞社(2004/09/18)

 日経の一面に長期連載されたものを再構成した本です。
 元が新聞記事であるだけに、著者の主張を前面に押し出すというよりも、ひたすら事実を並べる、という姿勢に徹しています。もちろん、書く側の思い入れは通常の新聞記事よりも相当強く、そういった意味では「事実をありのまま伝える」というものではないかもしれませんが・・・。
 特に力が入っているのは、新卒~第二新卒の辺りの「入口」世代と中高年~退職後の「出口」世代です。「入口」の話では、ニートやポスドクなど、入口にすら立てない人が多く取り上げられています。
 ・仕事に就きたくないし勉強も嫌い=「ニート」
 ・仕事に就きたくないけど勉強は得意=「ポスドク」
という感じなんでしょうか。
 一方で、「出口」の話では、退職後に居酒屋を開いた裁判官や、給料はなくてもいいから働きたいという92歳のエンジニアの話などが取り上げられています。
 「働く」ということを立体的に描き出すために、その「縁(エッジ)」の部分に光を当てているということなのでしょうか。
 元々が、新聞一面の一つのコーナーだったものを集めているので、通勤電車の中で読むには都合がよいと思います。


■ 個人的な視点から

 印象に残ったのは「痛勤電車研修」のエピソードです。島根県のソフト会社の新入社員が、2ヶ月間の技術研修中、「通勤」などの都市生活も併せて体験するというものです。田舎育ちののんびりした社員に全国区の競争速度を知ってほしい、というのが社長の考えだということです。

 これは公務員、特に地方公務員にはぜひ体験させたいですね。地方の県や市町村の職員が東京に行く機会としては、東京事務所勤務や省庁への派遣、自治大学校研修、民間企業派遣研修などがありますが、「全国の民間企業の競争速度を知る」という意味ではあまり機能していません。そもそも規模が小さすぎます。また、遠方から派遣される場合は、住居も一等地に丸抱えで借り上げてあり、乗り換えもなく通勤できてしまったり、高額な手当てが追加支給されていたりしていて、まるで「外交官」のような待遇で送り出されてくることもあります。これでは「大名屋敷」と変わりません。

 とは言え、研修名目で何十人も働き盛りを東京に送り出していたのでは、本体の方が回らなくなってしまいますので、別の方法を考えなければなりません。一つ思いついた方法としては、「営業」要員として東京に1~2ヶ月単位で滞在させる、という方法はできないものかと思います。当然、住居は「痛勤」研修の意味を含めて片道1時間くらいかかる場所にします。
 農産物の販促や企業誘致など、東京からはるか離れた地元からパンフレットを送りつけるだけでは「顧客」の顔が見えません。また、東京事務所の担当者が一人何役かをこなすだけでは顧客の声は地元にはなかなか伝わりません。地元で生産者や現地のことをよく知っている担当者が、東京滞在中にできるだけ現在の顧客と未来の顧客の声を聴いて回り、東京の生活、文化のスピードを体験して来ることができれば、地元での「本業」にも大きなプラスになります。わずかばかりの「庁内エリート」に大名暮らしをさせるために金を使うくらいならば、こちらの方がよっぽど有効なのではないでしょうか。


■ どんな人にオススメ?
 ・社会に出ることを目前に控えた学生
 ・社会に出てから「こんなはずじゃなかった」と考えてしまった人
 ・もうすぐ「会社」から「社会」に出て行こうとする人


■ 関連しそうな本

 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』
 金井 壽宏 『働くひとのためのキャリア・デザイン』 2005年01月30日
 田尾 雅夫 『会社人間はどこへいく―逆風下の日本的経営のなかで』 2005年02月27日


■ 百夜百マンガ

Dr.コトー診療所【Dr.コトー診療所】

 個人的な話ですが、一昨日から「ウイルス性結膜炎」というものにかかりまして、昨日は39℃の熱を出してウイルスと戦っておりました。ということで、本日の配信が遅れましたことをお詫びいたします。日々在庫無しの自転車操業です。

 ということで、医療マンガを選んだんですが、『ホスピタル』『ドクター秩父山』のような人の道を外れたものや、『ブラック・ジャック』『スーパードクターK』のような超人モノでもない、普通の淡々とした医療マンガです。

 ところで、『もっけ』(熊倉隆敏)と山田貴敏の絵はよく似ているように感じているのですが、やっぱり、弟子だったりするのでしょうか。これにかぎらず、漫画家の師匠=弟子関係を家計図みたいにしたら面白いと思うのですが、そういうのってどこかにないでしょうか?

2005年2月23日 (水)

コーポレートガバナンスの経済学―金融契約理論からみた企業論

■ 書籍情報

コーポレートガバナンスの経済学   【コーポレートガバナンスの経済学―金融契約理論からみた企業論】

  小佐野 広 (著)
  価格: ¥2,100 (税込)
  日本経済新聞社(2001/07)

 本書の各章は、コーポレートガバナンスについて、
・制度および現状の説明
・ガバナンス手段の理論的評価
・ガバナンス手段の実証的評価
・章末のまとめ
という形で構成されています。

 まず、「第1章 コーポレート・ガバナンス論の新潮流」では、本書のアプローチについて説明しており、限定合理性(bounded rationality)、機会主義(opportunism)、情報の非対称性(asymmetric information)、制度的補完性(institutional complementarity)、歴史的経路依存性(historical path dependence)、契約の不完備性(incompleteness)などの概念が鍵となることが説明されています。
 続く第2章から第5章が本書の中核部分で、
・第2章 経営者への管理チェック機構と報酬契約・選抜制度――内部コントロール・メカニズム
・第3章 株式所有構造はコーポレート・ガバナンスへどう影響するか
・第4章 負債を通じた規律づけ
・第5章 ベンチャー・キャピタルの役割
という構成になっています。
 最後の「第6章 新しい金融システムのあり方とコーポレート・ガバナンス」では、今後のコーポレートガバナンスのあり方についての考察・問題提起を行っています。

 本書は、理論と実務の橋渡し的役割を担うことを意図されたものですので、各章の「理論的評価」の部分を読み飛ばして、制度と実証の部分を読むだけでも、現状のコーポレートガバナンスの概略がつかめるようになっています。


■ 個人的な視点から

 「行政経営と言いながら企業の話ばかりじゃないか」とお叱りを受けそうなので、今回はまず言い訳から入ります。
 「行政経営」と言っても行政向けに一から開発された経営手法や理論はありません。基本的には、民間企業分野での試行錯誤や膨大な研究の一部を流用して、行政向けにカスタマイズしているものがほとんどです。ですので、個々の経営ツール自体は、数年~数十年前に民間企業向けに使われていたツールを行政向けに「リサイクル(リパッケージ)」して販売しているものが少なくありません。
 これらの個々のツールを導入すること自体が悪いことだとは思いません。民間企業では「時代遅れ」と言われるものでも、行政にとっては画期的な効果をもたらす場合もあります。しかし、「なぜこの『薬』は効くのか」という医学的な裏づけ無しに、ありがたがっているだけでは確実な効果が期待できないだけでなく、危険ですらあります。
 そこで重要になるのは、個々の「薬」そのものの解説ではなく、「なぜ病気になるのか」、「なぜ薬効があるのか」を解説する本書のような理論と実務の橋渡しをする解説書です。本書をきっかけに、「企業統治(コーポレート・ガバナンス)」と「政府統治(ガバメント・ガバナンス)」への理解が深まるものと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・コーポレートガバナンスについて関心を持った人
 ・行政のガバナンスを企業との比較で考えたい公務員


■ 関連しそうな本

 伊藤 秀史 『日本企業 変革期の選択』
 伊藤 秀史, 小佐野 広 『インセンティブ設計の経済学―契約理論の応用分析』 2005年02月26日
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳) 『組織の経済学』 2005年01月24日
 三輪 芳朗, 柳川 範之, 神田 秀樹 (編集) 『会社法の経済学』
 Oliver Hart
『Firms, Contracts, and Financial Structures』
 柳川 範之 『契約と組織の経済学』 2005年02月22日


■ 百夜百マンガ

サルでも描けるまんが教室【サルでも描けるまんが教室】

 「コージ苑」や「かってにシロクマ」で知られる相原コージとマンガ評論で知られる竹熊健太郎の2人による漫画家版「野望の王国」です。元ネタを知らないと分からないギャグがちりばめられています。
 ギャグマンガの体裁をとっていますが、作品中で展開される理論的分析?は実も蓋もないほど的確です。

2005年2月22日 (火)

契約と組織の経済学

■ 書籍情報

契約と組織の経済学   【契約と組織の経済学】

  柳川 範之 (著)
  価格: ¥2,625 (税込)
  東洋経済新報社(2000/03)

 不完備契約理論をできるだけ数式を用いずに解説し、「企業の境界」問題や「ソフトな予算制約問題」、金融契約やマクロ経済への応用まで紹介した契約理論の入門書です。元が『経済セミナー』の連載だったので経済学を学んだことのない人でも順を追って読んでいけば理解することができると思います。
 本書の特長は、不完備契約理論そのものを紹介するよりも、不完備契約理論を様々な問題、特にこれまで経済学が扱うことができなかった問題に応用できることを紹介することに力が入れられている点です。「企業の境界」問題はこれまでは主に経営学で、公的企業の問題は行政学で語られることの多いテーマでしたが、これらの問題に経済学的アプローチ(鋭利な刃物)で分析のメスを入れることができる可能性を大きく紹介している点が、本書の強みです。


■ 個人的な視点から

 この本には大変お世話になりました。
 巻末の「文献案内」が充実(と言うよりも当時はガイドになるような文献が少なかった)しているので個人的には大変助かりました。特に「不完備契約理論に関する基本文献」は端から「JSTOR」でダウンロードしまくりました。
 「第3章 企業の境界と所有権の配分」、「4章 権限配分への応用」はHartの『Firms, Contracts, and Financial Structures』と併せて、Grossman-Hart-Mooreのモデルを理解する上で大変参考になりました。
 「第6章 法律の役割」は『会社法の経済学』に読み進みました。
 「第8章 民営化の問題」はHart-Shleifer-Vishnyの“The Proper Scope of Government: Theory
and an Application to Prisons”を理解するうえで大変有用でした。

 これ一冊で深く理解できる、というような本ではありませんが、当時の最新研究のエッセンスを紹介した「輪読会」のようなガイドブックです。不完備契約理論に関心を持った人や取り上げられているテーマに関心を持った人はぜひ一読されることをお奨めします。


■ どんな人にオススメ?
 ・「不完備契約理論って何?」と関心を持った人
 ・「なぜ民営化すると経営効率が上がるのか?」ということに疑問を持った公務員


■ 関連しそうな本

 三輪 芳朗, 柳川 範之, 神田 秀樹 (編集) 『会社法の経済学』
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳)『組織の経済学』 2005年01月24日 
 伊藤 秀史, 小佐野 広 『インセンティブ設計の経済学―契約理論の応用分析』 2005年02月26日
 ジョン マクミラン (著), 伊藤 秀史, 林田 修 (翻訳) 『経営戦略のゲーム理論―交渉・契約・入札の戦略分析』 2005年03月24日
 Oliver Hart 『Firms, Contracts, and Financial Structures』
 Andrei Shleifer, Robert W. Vishny 『The Grabbing Hand: Government Pathologies and Their Cures』
 Jean-Jacques Laffont, David Martimort 『The Theory of Incentives: The Principal-Agent Model』
 Abhinay Muthoo 『Bargaining Theory with Applications』


■ 百夜百マンガ

ドクター秩父山【ドクター秩父山】

 劇画タッチのまじめな絵、1ページを横に4分割した不思議なコマ割り、でも内容はギャグ。しかも田中圭一の場合の「ギャグ」は『そんな奴ァいねえ』の佐藤一郎くんによる定義

「ギャグ」というのは「さるぐつわ」に相当する言葉で相手を黙らせるのが目的だ。本来の意味は。ブラックユーモアやギャグというのは笑えないものだ。

に近いような気がします。

 マッドな医療系ギャグは、そのモラルの壊れ加減ゆえに、爆笑できたり全く笑えなかったりの当たり外れが大きいものです。

 同じ作者による『昆虫物語―ピースケの冒険』が少年サンデーに連載されていたことは、今考えたら恐ろしい・・・。

・ギャグの語源
・ギャグの語源・由来
『昆虫物語―ピースケの冒険』
『そんな奴ァいねえ』

2005年2月21日 (月)

地方議員の研究―日本的政治風土の主役たち

■ 書籍情報

地方議員の研究―日本的政治風土の主役たち   【地方議員の研究―日本的政治風土の主役たち】

  村松 岐夫, 伊藤 光利 (著)
  価格: ¥1,575 (税込)
  日本経済新聞社(1986/07)

 国会中継や新聞、最近は「TVタックル」などのバラエティ番組やニュースショーに出演している国会議員に比べて地方議員の活動はよく知られていません。地方議員の名前を見聞きするのは、4年に一度の選挙カーか、選挙前に町中にベタベタ張られる不思議なポスター、後は汚職で捕まったときの社会面くらいです。日本の政治風土の「草の根」であるはずの地方議員の活動は住民にはあまり強く認識されていないのです。
 本書は、次の3つの理由から地方議員を日本政治の土台(インフラストラクチャー)として着目しています。
 1.政策の多くは最終的に市町村レベルで執行されることが多く、市町村議会は政策の質を決める大きな力があること。
 2.地方議員は政治の世界の諸活動の草の根であること。
 3.「エリート」であると同時に、別の職業を持つ普通人としての要素も併せ持っていること。

 日本の政治風土の主役でありながら、「政治の素人」としてネガティブなイメージを持って扱われがちだった地方議員のポジティブな面に光を当てています。


■ 個人的な視点から

 本書のベースとなった調査が行われたのは、1978~79年、今から四半世紀前の研究です。その後、55年体制が崩壊し、地方分権法が成立するなど、地方政治をめぐる状況は大きく変化しました。
 しかし、我々が抱いている「地方議員像」は本書で示されているものとあまり変わっていないように思われます。それはなぜでしょう?
 A.実態として地方議員はその役割、性質を大きく変えているのに、我々がそれに気づいていない。
 B.地方議員の役割、性質は四半世紀前から変化していない。
さて、どちらでしょうか?

 おそらくAB両方の面があると考えられます。町内会などの地域コミュニティの代表としての地方議員の位置づけは、特に都市部を中心に大きく後退しています。都市部では町内会長と各種団体の推薦だけでは議席は獲得できません。代わりに、NPOや市民活動などの「テーマでつながったコミュニティ」を代表する議員や、特定の政策(環境、子育てなど)に対する住民の関心を代表する議員が議席を獲得しています。
 一方、地方議員の本質的な役割、つまり、市町村の政策の質を決定し、政治の世界の草の根であり、半分普通の住民の顔を持ったエリートであるという地方議員の本質的な部分は変化していないのです。ただし、政治の世界が大きく変化し、コミュニティや住民の関心のあり方が大きく変わったからこそ、その接点である地方議員は大きく変化しているのです。


■ どんな人にオススメ?
 ・地方議員になりたい人
 ・「議員って何やってるかよく分からない」と存在に疑問を抱いている地方公務員


■ 関連しそうな本

 ロバート・D. パットナム (著), 河田 潤一 (翻訳) 『哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造』 2005年03月03日
 猪口 孝, 岩井 奉信 『「族議員」の研究―自民党政権を牛耳る主役たち』
 小林 良彰 『公共選択』
 都市問題2004年6月号特集 『分権と地方議会の改革』


■ 百夜百マンガ

変【変】

 純愛ものです。
 鈴木君と佐藤君の話も好きなんですが、デビュー作の「越智総一郎」くんが出てくる話が好きです。大学生のとき、バイト帰りの電車の中で一生懸命読んだ覚えがあります。
 「赤い糸」を見る能力というとメテ・ルー天使長と同じ能力ですね。

2005年2月20日 (日)

戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する

■ 書籍情報

戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する   【戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する】

梶井 厚志 (著)
価格: ¥798 (税込)
中央公論新社(2002/09)

 本書は、ゲーム理論という分析ツールを使って日常の戦略的環境を解説していますが、数式が出るわけでもなく、経済学や数学の知識がなくても読めるようになっています。
 取り上げられている事例は、閉店間際のスーパーから、男女の駆け引き、レストランのメニュー、週刊誌の見出し、ジャンケン、ブラックジャック、高額な婚約指輪、アカデミックパック、QWERTY、返品保証、エントリーシート、二重価格まで、身の周りの様々な事例が「戦略的思考」の視点から分析されています。
 「ゲーム理論なんて『囚人のジレンマ』の話でしょ? なんの役に立つの?」と思う人はぜひ一読してみてください。


■ 個人的な視点から

 本書の冒頭の「閉店30分前のスーパーの食品売り場」が如何に駆け引きに満ちた状況であるかは、毎日この時間に買い物をしていた人には実感できると思います。いわゆる「ダッチ・オークション」的状況にあり、生花卸売市場のように、だんだんと値下げされていきます。
 閉店1時間くらい前に「30円引き」や「10%引き」のシールが貼られ、人気商品はここで在庫がなくなり始めます。(ここで買う人は、実利としての値下げがほしいのではなく、「お買い得品を買った」という自分への納得が欲しいのではないかと思います。)
 閉店30分前になると、「3割引」、「半額」といった値段になります。「食べられるものなら何でもいい」という人でなければ、この時点で買うのが一番お得です。事実、この時点が争奪戦のピークになります。予め欲しいお惣菜に目星を付けておいて、店員がシールを貼った先から無くなっていきます。中には、シールを貼る前から籠に入れておいて、「こっちにもシール貼って」と言い出す豪の者もいれば、店員が去った後、(品切れリスクを回避するための)自分の籠の中の商品を戻して値引きされた商品と入れ替える人もいます。
 閉店15分前になると、最後の「捨て値」が赤マジックで書き込まれますが、この時間まで残っている商品にはあまり魅力のないものが多く、べチャットした天ぷらなどしかありません。「安ければいい」という人しか買わないことになります。

 同様に、ブックオフもダッチ・オークションの変形と見ることができ、「一律半額」(汚れたものを除き)→(一定期間経過)→「100円」という値下げをすることで、商品の価値を客側に判断させ、「目利き」のコストを下げ、アルバイト店員によるオペレーションを可能にしています。
 私も近所のブックオフで、「半額では高いけど100円なら買う」という本をチェックして回っています。

 このように、私たちはいたるところで「戦略的」な状況に直面しています。多くの人は直感的に「戦略的思考」を身につけていて、「あの人は切れる」と言われる人達の多くはゲーム理論を基に行動しているわけではありません。だから、本書を読んだからといって、急に人生が有利に展開するということはないでしょう。
 しかし、本書を読むことで、自分の身の周りの戦略的環境を整理して考えることができるようになります。単に読み物として見ても、どこか人を食った軽快な文章はお奨めです。


■ どんな人にオススメ?
 ・ゲーム理論って難しそう?と思っている人
 ・ゲーム理論って話としては面白いけど役に立たない、と思っている人


■ 関連しそうな本

 伊藤 元重 『ビジネス・エコノミクス』 2005年02月18日
 アビナッシュ ディキシット (著), バリー ネイルバフ (著), 菅野 隆 (翻訳), 嶋津 祐一 (翻訳) 『戦略的思考とは何か―エール大学式「ゲーム理論」の発想法』 2005年01月31日
 松井 彰彦, 清水 武治 『ゲーム理論―どんなケースでも「最高の選択」ができる“勝つための戦略”』
 梶井 厚志, 松井 彰彦 『ミクロ経済学 戦略的アプローチ』


■ 百夜百マンガ

エリア88【エリア88】

「ここは中東。作戦地区名エリア88。最前線中の最前線。地獄の激戦区。生きて滑走路を踏める運は全てアッラーの神任せ。おれたちゃ神様と手を切って、地獄の悪魔と手をとった、命知らずの外人部隊。」
 最初のうちは、『ザ・コクピット』のような一話完結のエピソードを連ねるスタイルだったのが、ストーリーがつながるようになってからどんどんテンションが上がって行く展開でした。

 さて……ここで問題です。「まのちゃん」とは……だれでしゃう?(『究極超人あ~る』4巻p.86より)

2005年2月19日 (土)

企業変革力

■ 書籍情報

企業変革力   【企業変革力】

  ジョン・P. コッター (著), 梅津 祐良 (翻訳)
  価格: ¥2,100 (税込)
  日経BP社(2002/04)

 邦題は『企業変革力』ですが、原題は『Leading Change』、つまり、「リーダーが強い意志とスキルと身につけることを支援する」(「日本語新版への序」より)ことを目的としています。
 本書はまず、企業の変革努力に発生しやすい8つの過ちとして、
 1. 従業員の現状満足を簡単に容認する
 2. 十分なパワーを備えた変革推進のための連帯チームを築くことを怠る
 3. ビジョンの重要性を過小評価する
 4. 従業員にビジョンを十分に伝達しない
 5. 新しいビジョンに立ちはだかる障害の発生を許してしまう
 6. 短期的成果をあげることを怠る
 7. 早急に勝利を宣言する
 8. 変革を企業文化に定着させることを怠る
を説明しています。これらは、過去に変革に失敗した組織、変革に行き詰っている組織にとっては耳の痛いものばかりです。

 そして、上記の8つの過ちの裏返しになりますが、変革推進プロセスに含まれる8つの段階として、次の8つを挙げています。
 1. 危機意識を高める
 2. 変革推進のための連帯チームを築く
 3. ビジョンと戦略を生みだす
 4. 変革のためのビジョンを周知徹底する
 5. 従業員の自発を促す
 6. 短期的成果を実現する
 7. 成果を活かして、さらなる変革を推進する
 8. 新しい方法を企業文化に定着させる
 この8つの段階は、本書の続編的な位置づけにある『ジョン・コッターの企業変革ノート』にも引き継がれていますので、併せて読むことをお奨めします。


■ 個人的な視点から

 本書はリーダーシップについて語られている本ではありますが、ここで言う「リーダーシップ」は必ずしも経営者や管理職に限った話ではありません。本書の続編にあたる『ジョン・コッターの企業変革ノート』ではインターンの学生が変革の鍵を握る事例が紹介されています。そして、リーダーシップ能力にとって重要な「生涯学習を促す習慣的行動」として、
 ・リスクを負う
 ・謙虚な自己認識
 ・他人から意見を求める
 ・注意深く傾聴する
 ・柔軟である
 ・新しいアイディアをオープンに受けとめる
という6つの習慣を紹介しています。

 さて、どうして「8」なんですかね。よく人間の認知との関係で「7」が使われることは多いんですが・・・。
 ということはまあいいとして、この8つの段階を縦に並べるよりもみやすいかと思って「マインドマップ」にしてみました。
「大規模な変革を推進するための8段階のプロセス」
大規模な変革を推進するための8段階のプロセス


■ どんな人にオススメ?
 ・組織の変革に行き詰まりを感じている人
 ・「リーダーシップ」なんて自分には関係ない、と思っている人


■ 関連しそうな本

 ジョン・P・コッター, ダン・S・コーエン (著), 高遠 裕子 (翻訳) 『ジョン・コッターの企業変革ノート』
 若松 茂美, 織山 和久, 上山 信一 『変革のマネジメント―明るい「リストラ」を考える』
 カルロス・ゴーン, フィリップ・リエス 『カルロス・ゴーン経営を語る』 2005年03月05日
 中尾 英司 『あきらめの壁をぶち破った人々―日本発チェンジマネジメントの実際』
 安土 敏 『小説スーパーマーケット』 2005年03月08日


■ 百夜百マンガ

天才柳沢教授の生活【天才柳沢教授の生活】

 柳沢教授は夜9時になるとパタンと寝てしまう、というのを笑っていた自分ではありますが、最近の自分はまさにその状態・・・。9時か9時半には床に就き、飲み会は2次会になると寝てしまいます。


■おまけ:今日の晩飯
「嘉義鶏飯」

「にくじゃがやめろ」のレシピで作ってみました。
ネギと汁だけご飯にかけても美味い。
3年前に嘉義(台湾の西)で食べて以来のファンです。

2005年2月18日 (金)

ビジネス・エコノミクス

■ 書籍情報

ビジネス・エコノミクス   【ビジネス・エコノミクス】

  伊藤 元重 (著)
  価格: ¥1,890 (税込)
  日本経済新聞社(2004/02/21)

 ビジネスの実例、特に日本企業の事例を中心に経済学的に解説をしています。
 取り上げられている事例は、吉野家に始まり、伊勢丹、大正製薬、佐藤製薬、松下、資生堂、トヨタ、キリン、ダイエー、ローソン、セブンイレブン、ソニーなど、日本の企業のケースがふんだんに用いられています。
 構成としては、
  ・価格戦略(2章)
  ・流通の機能(3章)
  ・市場と組織(4章)
  ・エイジェンシー理論(5章)
  ・ゲーム理論(6章)
  ・ポジショニング戦略(7章)
  ・IT化(8章)
  ・グローバル化(9章)
という構成になっています。
 類書の『戦略の経済学』の構成が
  ・パート1: Firm Boundaries
  ・パート2: Market and Competitive Analysis
  ・パート3: Strategic Position and Dynamics
  ・パート4: Internal Organization
となっているのと比較すると、かなり意識していることが分かると思います。大雑把に言って、2・3章→パート2、4・5・(6)章→パート4、7章→パート3、辺りに対応しています。
(ちなみに、Amazonのレビューでは、『戦略の経済学』(原題:『Economics of Strategy』、入手した2001年当時、18370円もしました(T_T)。)の邦訳の評判は散々でした。訳書の方は持っていないのでコメントできる立場にありませんが・・・。)

 本書には要所要所の小見出しの下に、「経済理論」「企業ケース」「CASE」「STEP UP」「POINT!」などのアイコンが付いており、読み飛ばしの判断を容易にするための工夫、つまり、躓いてもそこで挫折せずに最後まで読み進められる工夫がなされている点が素晴らしいと感じました。


■ 個人的な視点から

 感覚としては「日経新聞の記事を経済学で解説する」という感じですね。まさしく「ワールド・ビジネス・サテライト」のコメンテータそのものなんですが。
 構成・客層として近いのは『戦略の経済学』でしょうか。そのサブセット版的な印象を受けました。それは決して悪口ではなく、こういう切り口の本や講義が日本でも増えてくれればいいと思います。本書は、元々社会人向けのセミナーの講義録をベースにしているということなので、この内容で十分だと思います。特に予備知識を持たない社会人が、この本やセミナーで関心を持ったら、次は『経営戦略の経済学』や『戦略的思考とは何か』に読み進むか、気合を入れて『戦略の経済学』か『組織の経済学』に読み進む、という感じではないかと思います。
 本書の前書きにも「アメリカには、ビジネスの問題を経済学的な視点から分析した素晴らしい本がたくさんあり、そのうちの何冊かは邦訳も出ている。」と書かれていますので、著者の意図もその辺りにあるのではないかと思います。
 『戦略の経済学』が6,720円で709ページ(!)、『組織の経済学』が5,775円で702ページもありますので、いきなり読み始めるのは勇気が要ります。持ち運ぶのに体力も要ります。通勤電車で立ち読みできる大きさではありません(朝の通勤電車の中で「タウンページ」を熱心に読んでいるサラリーマンの姿を想像してみてください!)。
 その意味で、経済学に関心を持ったサラリーマンが手にとってみる導入のための本としてはちょうど良いのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・経済学やMBAに少し関心を持ち始めたサラリーマン
 ・民間企業のことも知りたい、と思い始めた公務員


■ 関連しそうな本

 David A. Besanko, Mark T. Shanley, David Dranove 『Economics of Strategy』
 デイビッド ベサンコ, マーク シャンリー, デイビッド ドラノブ(著), 奥村 昭博, 大林 厚臣 (翻訳) 『戦略の経済学』
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳)『組織の経済学』 2005年01月24日
 アビナッシュ ディキシット (著), バリー ネイルバフ (著), 菅野 隆 (翻訳), 嶋津 祐一 (翻訳) 『戦略的思考とは何か―エール大学式「ゲーム理論」の発想法』 2005年01月31日
 浅羽 茂 『経営戦略の経済学』

■ 百夜百マンガ

TO-Y【TO-Y】

 なかなか連載をきちんと終わらせられない上條淳士ですが、当時少年サンデーを読んでいた中では、「ZINGY」や「GO WEST」とかの「よくわからないカッコいい漫画家」が珍しくきちんと最後まで書いた作品でした。もしかすると今でもそうなのかもしれませんが・・・。

2005年2月17日 (木)

組織行動のマネジメント―入門から実践へ

■ 書籍情報

組織行動のマネジメント―入門から実践へ   【組織行動のマネジメント―入門から実践へ】

  ステファン・P. ロビンス (著), 髙木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳)
  価格: ¥2,940 (税込)
  ダイヤモンド社(1997/11)

 本書は欧米のビジネススクールの多くで必修科目となっている「組織行動学 (OB: Organizational Behavior)」の教科書です。本書の定義によれば「組織行動学」とは、「組織内で人々が示す行動や態度についての体系的な学問」ということです。
 取り扱っているのは、動機づけや個人の意思決定、コミュニケーション、リーダーシップ、業績評価と報酬システム、組織文化などです。
 教科書としても非常に洗練されています(翻訳書は第5版、原書は第7版を重ねています。)が、社会人が手元に置いて辞書的に使う本としても非常に使い勝手が良いものになっています。読み物としてとっつきやすいのは『組織行動の考え方』(金井、高橋)ですので、「金井・高橋→ロビンス」の順で読んで行くと読みやすいと思います。


■ 個人的な視点から

 「組織行動」という言葉からは、「組織はどういう行動をとるのか」とか「どうやって『「組織人』的に行動すべきか」という非常に日本人的(!?)なイメージ、まず組織ありきのイメージを持ってしまうのですが、実際には、心理学、社会学、社会心理学、人類学、政治科学などの成果を複合的に用いた個人の行動ベースの考え方だという印象を持ちました。
 「組織行動学への行動科学の貢献」という表によると、貢献の内容は次のようになっています。

2005年2月16日 (水)

社会起業家―「よい社会」をつくる人たち

■ 書籍情報

社会起業家―「よい社会」をつくる人たち   【社会起業家―「よい社会」をつくる人たち】

  町田 洋次 (著)
  価格: ¥693 (税込)
  PHP研究所(2000/11)

 イギリスのシンクタンク「DEMOS」の2冊の報告書(『Civic entrepreneurship』、『The rise of the social entrepreneur』)から著者がインスピレーションを受けて執筆したという、「社会起業家」という生き方を紹介する本です。
 本書では、「社会起業家」を「医療、福祉、教育、環境、文化などの社会サービスを事業として行う人たち」と説明しています。
 イギリス(病院、都市再開発、役所内の企業家)、アメリカ(自治体の再生)、日本(老人向け緊急通報サービス、ネット高校、チャータースクール)などの事例を紹介しながら、新しい「よい社会」をつくる社会起業家の役割について論じています。


■ 個人的な視点から

 世間には起業を煽る情報が洪水のように溢れています。本もたくさん出版されていますし、メルマガやHPやスパムメールも山のようにあります。でも、実際に起業するのは大変です。貧乏です。休みがありません。胃が痛いです。自分ひとりならまだしも家族を抱えているとなお辛いです。だから、起業を煽るなら、「儲かる」「独立」「社長」といった志の低い言葉ではなく、「よい社会をつくるために起業しよう」という言葉で煽って欲しいものです。
 「奇麗事を言うな」という批判もありますが、本来、起業するのは「商売の相手が喜んでくれるから自分にもその分け前がもらえる」という商売の原則、起業する必然性があるからです。つまり、起業の目的が直接社会的なものであるかどうかを問わず、起業には多かれ少なかれ「社会貢献」的な性格を持っているのです。そのため、長く商売をしている人、実際に起業した人は、「社会起業家」という概念は知らなくても、実感として「世の中のお役に立つ」ことの大切さを感じているようです。

 そこで本書ですが、この本の役割は、「社会起業家」という新しい概念を生み出すことではなく、「翻訳者」や「通訳者」的な部分にあるように感じます。つまり、雑誌の特集やパンフレット的な位置づけです。しかし、本書を通じて、「自分のやろうとしてたことは『社会起業家』って言うんだ」ということに気づき、行動に移す人が増えるのであれば素晴らしいと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・「こういうのがあれば世の中がもっとよくなるのに」という起業のタネを持っている人
 ・「役所の中でイノベーティブな活動はできない」という勝手な諦めを持っている公務員


■ 関連しそうな本

 谷本 寛治, 田尾 雅夫 (編著) 『NPOと事業』 2005年01月28日
 D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳) 『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』 2005年03月15日
 斎藤 槙 『社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流』
 上山 信一 『「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ』 2005年03月28日

 HotWired Japan 「社会起業家という生き方」


■ 百夜百マンガ

こちら葛飾区亀有公園前派出所【こちら葛飾区亀有公園前派出所】

 言わずと知れた超長寿連載。初期の頃の両さんは見た目も行動もガラが悪くて、不良警官ぶりが笑いどころだったんですが、これだけ長く続くと両さんの存在自体は当たり前になってしまって、楽しみ方が変わって来ているように感じます。それはそれで面白いんですが。
 約30年連載されているので、4年に一度登場する「日暮」も真っ青なくらいに両さんも歳をとりません。初期の頃は終戦直後の思い出話が出てきたりしましたから。

2005年2月15日 (火)

戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック

■ 書籍情報

戦略サファリ   【戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック】

  ヘンリー ミンツバーグ, ジョセフ ランペル, ブルース アルストランド (著),
  斎藤 嘉則, 奥沢 朋美, 木村 充, 山口 あけも(翻訳)
  価格: ¥3,990 (税込)
  東洋経済新報社(1999/10)

 「戦略」というと日本ではポーターが有名ですが、あくまでポーターは戦略マネジメントの一角を占めているに過ぎません。本書の冒頭でミンツバーグが「盲目の男たちと象」という寓話を引用しているように、「戦略マネジメント」は語る人によって、壁とも縄とも語られるものなのです。
 本書は、戦略マネジメントを10のスクール(学派)に分類し、それぞれの基本モデルや前提条件を明らかにすることで、「戦略マネジメント」という獣たちが潜む「サファリ」をツアーするためのガイドブックの役割を果たしてくれます。
 特に重要なのは、第1章「サファリ・ツアーのねらいと構成」です。ここが本文で、残りの各スクールの解説は資料編といっても過言ではないほど、ミンツバーグの戦略観が凝縮されています。


■ 個人的な視点から

 現代は「戦略の時代」です!
 という言葉に踊らされたのか、様々な人たちが口々に「戦略だ!戦略!」と呪文のように唱えていたりするのですが、「じゃあ戦略って何?」と訊かれて即答できるでしょうか? 人によっては、今まで「計画計画」といっていたスローガンを「戦略戦略」に変えただけの人も少なくないように思われます。

 「ビジョン」という言葉もそうなんですが、皆が同じような言葉を使っていても実は意味はバラバラ、ということがよくあります。「明確なビジョンの実現に向けた戦略を立てる」と言われると反論しづらいのは、内容がほとんど入っていないからです。その場では皆が納得したような顔で帰るのですが、結局何も決まっていない、ということになります。

 この状況はどこかで聞いたことがありませんか?
 そうです、旅の仕立て屋に王様がだまされるシーンにそっくりです(現代の仕立て屋は「戦略」という獣を使いこなす猛獣使い?)。「バカには見えません」と言われると恥ずかしくて知ったかぶりをしてしまいますが、そんなときに役に立つのがこのツアーガイドブックです。
 王様を裸でパレードさせないためにも(または自分が裸で出歩かないためにも)、ぜひガイドブックを一読されることをお奨めします。


■ どんな人にオススメ?
 ・「戦略」って言うけど(or使っているけど)何のことだかよく分からない人
 ・ポーターは読んだけどいまいちしっくりこないと感じている人


■ 関連しそうな本

 ヘンリー ミンツバーグ (著), 奥村 哲史, 須貝 栄 (翻訳)『マネジャーの仕事』
 印南 一路 『すぐれた組織の意思決定―組織をいかす戦略と政策』 2005年04月03日
 リチャード・L. ダフト (著), 高木 晴夫 (翻訳)『組織の経営学―戦略と意思決定を支える』 2005年04月03日


■ 百夜百マンガ

うる星やつら【うる星やつら】

 後々にアニオタがたくさん湧いてからは、「ラムちゃん」のイメージばかりで語られることも多く、食わず嫌いの人もいるのではないかと思いますが、元々はラブコメというよりもSF(オタ)テイストの強い作品でした。
(『ラブやん』でもラムチェンが出てくる「やかましい連中」のネタにされてるし)

 『遠くにありて』の作者と同級生ということです。がんばれ新潟。

2005年2月14日 (月)

ソーシャル・マーケティング―行動変革のための戦略

■ 書籍情報

ソーシャル・マーケティング   【ソーシャル・マーケティング―行動変革のための戦略】

  フィリップ コトラー, エデュアルド L. ロベルト (著), 井関利明(監訳)
  価格: ¥5,097 (税込)
  ダイヤモンド社 (1995/02)

 「ソーシャル・マーケティング」とは、人々の行動を変える社会的キャンペーンの手法として、マーケティングの原理と技術を活用するものです。
 本書は、薬物乱用防止や避妊、禁煙など、様々な事例の紹介を交えながら、それまで「市場の中のもの」と思われてきたマーケティングを社会変革に適用するための理論とノウハウをまとめています。


■ 個人的な視点から

 熱心に社会的な活動をしている人たち(一部の公務員含む)には、自分たちの正義感や使命感を重視するあまり、活動自体が自己目的化してしまってしまうケースも少なくないように思われます。 NPOを例に出すと怒る人もいるので、叩かれ慣れている公務員を例にすると、「なまじ役人に一生懸命仕事されると、かえって「有難迷惑」でやりにくくて仕方がない」というケースは思い当たるのではないでしょうか。
 これは言ってみれば「プロダクト・アウト」的な発想そのものなのです。これでは一方的に押し付けるだけで、関係者を巻き込んで問題を解決する「市場(いちば)」を作ることはできません。
 台所事情に関しては厳しい世間の風にさらされている社会的活動家も、自分たちの活動自体に対しては世間の評価にさらされているわけではありません。マーケティングの眼で社会と自分たちの活動をきちんと見ることが、社会変革の成功につながるのではないかと考えます。

 (なんだか昨日の教育と経済学の話に近づいてしまいました。教育関係者と社会活動関係者には似ているところが多いのかもしれません。)


■ どんな人にオススメ?
 ・社会変革の熱意は持っているけどツールは丸腰の人。
 ・自分の仕事を「暖簾に腕押し、糠に釘」と感じている公務員


■ 関連しそうな本

 マルコム グラッドウェル (著), 高橋 啓 (翻訳) 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 2005年02月12日
 田中 弥生 『「NPO」幻想と現実―それは本当に人々を幸福にしているのだろうか?』
 ジョン・P. コッター (著), 梅津 祐良 (翻訳) 『企業変革力』
 青森県『政策マーケティングブック』


■ 百夜百マンガ

パイナップルARMY【パイナップルARMY】

 TAWARAの影響で『YAWARA』まで嫌いになってしまう人も少なくありませんが、『パイナップルARMY』→『MASTER KEATON』→『Monster』と続くビッグコミック系の作品は読み応えがあります。
 パイナップルとキートンは基本的に一話完結なので古本で途中から読んでも違和感なく読めます。

『MASTER KEATON』
『Monster』

2005年2月13日 (日)

教育を経済学で考える

■ 書籍情報

教育を経済学で考える   【教育を経済学で考える】

  小塩 隆士 (著)
  価格: ¥1,890 (税込)
  日本評論社(2003/02)

 「教育」と「経済学」というと、日本では食い合わせの悪いものの典型のように捉えられがち(食べる前から顔を真っ赤にして怒る人が多数)ですが、「教育経済学」は研究分野としては既に確立しているものなのだそうです。
 本書は、経済学の視点から「教育」を分析していますが、よく誤解されるような「市場システム万能主義」を礼賛しているわけではありません。「人的資本論」や「シグナリング理論」などのいくつかの理論を並列的に紹介しながら、これまでの経済学では「手段(投資)」として捉えられることの多かった「教育」を「消費」としても捉えることで、より実感に近い形での分析を行っています。
 特に、「教育需要の主体・目的マトリックス」は分かりやすいものになっています。これは、縦軸に「教育需要の主体」として「本人(子供)」と「親」を、横軸に「教育需要の目的」として「投資」か「消費」かという2軸を取ったものです。図にすると次のようになります。

◎教育需要の主体・目的マトリックス

教育需要の主体・目的マトリックス

 この4象限については、それぞれ、
(1)本人による投資としての教育・・・ビジネススクールや社会人向け資格学校
(2)本人による消費としての教育・・・趣味の習い事、市民大学講座
(3)親による投資としての教育・・・日本の教育のかなりの部分
(4)親による消費としての教育・・・いわゆる「お受験」や親の自己実現手段
のような解説が可能になります。

 こうした、教育の主体と目的による分類をベースに、本書では「教育需要の不確実性(夢または勘違いが支える教育需要)」や「教育成果」、「教育による格差の親子間継承」のような様々な教育問題を経済学の視点から分析しています。


■ 個人的な視点から

 個人的に「眼から鱗」だったのは、「教育需要の主体・目的マトリックス」ですね。それまで何となく頭の中では渾然一体となって存在していたものを、表にすることで非常に分かりやすく整理してもらいました。

 「教育を経済学で考える」ことへのきっかけになったのは、『経済セミナー』2003年10月号の特集「教育の経済学」などでした。また、同じ雑誌の2005年1月号に掲載されていた「格差拡大と雇用問題のゆくえ」(橘木俊詔)もこの問題を考える上で重要です。

 「教育」の問題は、行政の最重要課題であるにもかかわらず、これまで議論を避けてきた部分があるように感じます(議論を避けるための不毛な論争は散々やってきましたが)。子供の学力が上がったか下がったかという過去との相対的な比較だけではなく、「教育の目的とは難なのか」というところから問い直すことが重要と考えます。


■ どんな人にオススメ?
 ・これから子供に教育を受けさせようとしている人
 ・広い意味での「教育関係者」(not教育評論家)


■ 関連しそうな本

 小塩 隆士 『教育の経済分析』
 ゲーリー・S. ベッカー, ギティ・N. ベッカー (著), 鞍谷 雅敏, 岡田 滋行 (翻訳)『ベッカー教授の経済学ではこう考える―教育・結婚から税金・通貨問題まで』
 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』
 樋口 美雄 『人事経済学』
『経済セミナー』2003年10月号
『経済セミナー』2005年0月号


■ 百夜百マンガ

ホスピタル【ホスピタル】

 「マッドな天才外科医」というのは、いろいろな作品の中で重要な役割を演じているもので、『ブラックジャック』や『問題外科』など様々な分野で活躍されていますが、本作品に登場するハーバート西先輩もなかなかのものです。
 明るく楽しく読める(?)のも、簡略化された線のおかげなのですが、同じ路線だと榎本俊二なんかがあります。

手塚治虫『ブラックジャック』
筒井康孝『宇宙衞生博覽会』(「問題外科」収録)
『ラヴクラフト全集〈5〉』(「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」収録) ←まだ読んでません。
榎本俊二『enotic』

2005年2月12日 (土)

ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか

■ 書籍情報

ティッピング・ポイント   【ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか】

  マルコム グラッドウェル (著), Malcolm Gladwell (原著), 高橋 啓 (翻訳)
  価格: ¥1,785 (税込)
  飛鳥新社(2000/02)

 ニューヨーク市の犯罪率の低下や「ハッシュパピー」(昔ながらな地味な靴)の爆発的流行を、「感染」という観点から分析しています。
 物事が流行するときは、なだらかに広がるのではなく、あるポイントを境に一気に「傾く(tip)」する、あるポイントから爆発的に感染が広がる、それが「ティッピング・ポイント」であると著者は指摘しています。そして、その背景にある3つの法則、すなわち、
 ・原則1 少数者の法則
 ・原則2 粘りの要素
 ・原則3 背景の力
について豊富な事例(時にはこじつけ的にも感じますが)を挙げて解説しています。

○原則1 少数者の法則
 よく、「80対20の法則」ということが言われます(パレートですね)が、「感染」の場合は20よりももっと少数の者が重要な役割を果たします。本書ではアメリカ独立革命の前夜に活躍したポール・リヴィアの「深夜の騎行」や心理学者スタンリー・ミルグラムの「関係の六段階分離」などを例に挙げ、「コネクター(媒介者)」、「メイヴン(通人)」、「セールスマン」という、物事の「感染」において重要な役割を果たしている「少数者」を紹介しています。

○原則2 粘りの要素
 社会的伝染において、メッセージをより感染性の強いものにするためには「記憶に粘りつく」ことが重要になります。本書では、『セサミ・ストリート』や破傷風予防接種のパンフレットなどを例に挙げ、「情報を記憶に残すための、単純かつ決定的な工夫」としての「粘りの要素」をいかにしてメッセージにこめるかを解説しています。

○原則3 背景の力
 社会的感染は、「背景(コンテクスト)」、すなわち「それが起こるときと場所の条件と状態」に敏感に反応します。本書では、ニューヨーク市の犯罪率低下などの事例を挙げ、背景が感染に及ぼす影響を解説しています。有名な「割れ窓(ブロークン・ウインドウ)理論」についても紹介されています。


■ 個人的な視点から

 組織や社会を変えたいと思っている人には必ず読んでもらいたい、という本です。
 これまでの歴史を振り返ると、社会を変革してきた人物は本書で言う「ティッピング・ポイント」をほんの少し押した人物、と言えるのかもしれません。
 日本には坂本龍馬のファンがたくさんいますが、彼のしてきたことを本書の3つの原則に当てはめて考えてみると面白いかもしれませんね。「コネクター、通人、セールスマン」の役割を果たしたのは彼自身か周りの人なのか、彼のメッセージにはどんな「粘り」があったか、どのような「背景」の下で彼のメッセージは伝わったのか、などです。エッセイ1本分くらいのネタにはなりそうですね。


■ どんな人にオススメ?
 ・組織や社会を変革したいと思っているけど壁にぶち当たっている人
 ・社会的キャンペーン(環境・衛生教育や投票率向上)に携わっている人


■ 関連しそうな本

 川上 善郎 『おしゃべりで世界が変わる』  2005年03月06日
 フィリップ コトラー, エデュアルド L. ロベルト (著), 井関利明(監訳)『ソーシャル・マーケティング』 2005年02月14日
 中尾 英司 『あきらめの壁をぶち破った人々―日本発チェンジマネジメントの実際』


■ 百夜百マンガ

愛のさかあがり【愛のさかあがり】

 個人的には、この作品はマンガ版「タモリ倶楽部」だと思っています。
 初期の頃はバラバラなネタを単発的にやっていたエッセーだったんですが、だんだんと定番ネタが定着してきて、「愛の金縛り」や「イタイ話」、「オジギビト」など様々な(作品内)ブームが生まれました。「路上観察学会」の流れの一つでもあります。

2005年2月11日 (金)

Eポリティックス

■ 書籍情報

Eポリティックス   【Eポリティックス】

  横江 公美 (著)
  価格: ¥725 (税込)
  文芸春秋(2001/09)

 著者自身がアメリカの政治の現場に身を置き、2000年の大統領選挙を現地で取材してきた、生のアメリカの政治と選挙の姿が描かれています。

 そして、本書の第5章「Eポリティックスの可能性」は、著者の関心の強い「民主主義と教育」の部分を掘り下げて取材し、3年後に『判断力はどうすれば身につくのか―アメリカの有権者教育レポート』という単著として実を結びました。

 「E」というサイバーな言葉をタイトルに付けていますが、使用するツールはサイバーでもそれを使っているのは生身の人間、生身の政治です。本書は、著者自身がアメリカの生の政治の世界に飛び込んで行き、変化の早いこの分野の世界の中で、直に当事者に会って話を聞き、実際に事業まで日本に引っ張ってきたという点で、評論家的でない貴重な情報が集約されています。


■ 個人的な視点から

 「eビジネス」「eエコノミー」など、頭に「e」がつく言葉が一時期急速に流行りましたが、そういう言葉に出会ったときに私が最初に考えるのは、「既存の業態では何に近いのか」を電子情報ベースではなく現物ベースで考えるということです。そして、「e」とリアルの両者を比較して、どこで時間が短縮されるか、どこでコストが下がるか、どこがイノベーティブか、どこが欠落しているか、ということを考えるようにしています。
 インターネットは確かに情報革命ですが、私たちは過去に何度も情報革命を体験しています。つまり、グーテンベルグ(出版)によって何が変わったか、ベル(電話)によって何が変わったか、という過去の体験と比較することで、「e」の得意な部分、不利な部分を際立たせようということです。

 本書は、頭に「e」が付いたとしても、政治はやはり生々しい人間による世界なんだということを再認識させてくれます。例えばインターネットを使った選挙運動の先駆者として紹介されている98年ミネソタ州知事選の勝者ジェシ・ベンチュラ候補がネットを使ってやったことは、献金とボランティアの募集、そして地方遊説の最新情報のアップデートです。つまり、生身の人間の活動をつなぐ媒介としてネットを利用しているのです。ネットを使うことによって、パンフレットの印刷代やテレビコマーシャル代を節約し、リアルタイムで地方遊説のスケジュールや様子を知ることができるようになっても、結局は生身の人間の思いや行動、そして現生が政治を動かしているのです。


■ どんな人にオススメ?
 ・日本の選挙を変えたいと思っている政治家のタマゴさん
 ・日本の政治に満足していない有権者さん


■ 関連しそうな本

 横江 公美『判断力はどうすれば身につくのか―アメリカの有権者教育レポート』
 岩崎 正洋 (編)『サイバーポリティクス―IT社会の政治学』
 Roza Tsagarousianou, Damian Tambini, Cathy Bryan 『Cyberdemocracy: Technology, Cities and Civic Networks』
 Barry N. Hague, Brian Loader, Barry Hague 『Digital Democracy: Discourse and Decision Making in the Information Age』
 Tim Jordan 『Cyberpower: The Culture and Politics of Cyberspace and the Internet』
 エリック ブラインジョルフソン, ブライアン カヒン (編), 室田 泰弘, 平崎 誠司 (翻訳) 『ディジタル・エコノミーを制する知恵』 2005年03月10日
 Carl Shapiro, Hal R. Varian 『Information Rules: A Strategic Guide to the Network Economy』


■ 百夜百マンガ

ツレちゃんのゆううつ【ツレちゃんのゆううつ】

 「こんなかわいいお母さんがいたらいいのになぁ」と羨ましく思いながら、ツレちゃんとかあちゃんとの二人暮しの日常を微笑ましく読めます。
 血と汗と涙の量が普通のマンガの1.5倍(笑)くらいあった当時の「ヤングジャンプ」に連載されている中では異色でしたが、このページだけインクの量が減り、眼も心も休まるような位置づけでした。

2005年2月10日 (木)

日本の官僚人事システム

■ 書籍情報

日本の官僚人事システム   【日本の官僚人事システム】

  稲継 裕昭 (著)
  価格: ¥3,360 (税込)
  東洋経済新報社(1996/02)

 日本企業の経済分析の成果をベースに、日本の公務員(国・地方)の人事制度を理論と実証の両面から分析しています。
 いわゆる「日本的人事システム」と呼ばれている日本の大企業の人事システム、すなわち、
 ・おそい昇進・・・ランク・オーダー・トーナメント
 ・年功賃金制・・・積み上げ型報奨システム
 ・終身雇用制と呼ばれる長期雇用
などのシステムのインセンティブ面から見た経済合理性が、公務員の場合にも当てはまるのではないか、という仮説をもとに、国家公務員、および地方公務員の人事・給与システムを分析しています。


■ 個人的な視点から

 本書以前の公務員制度の研究は、公務員の人事・給与制度の制度の解説と、規範的な観点、つまり「~するべき論」からの分析がほとんどだったという印象を持っています。しかし、「べき論」からのアプローチでは、現実の公務員制度がどのような働きをしているのかを分析することができません。言わば「丸腰」で現実に挑んでいたようなものだったからこそ、「机上の空論に過ぎない。現状は違うんだよ。」という言い訳を許していたのです。
 日本企業を分析するアプローチを借用してくることで、「べき論」ではなく、現実の人事・給与システムの働き方を、情報とインセンティブの観点から分析する、すなわち「である論」的なアプローチで分析している、という点で、本書は後の公務員制度改革の議論に大きな貢献をしていると思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・公務員の問題の根源は人事・給与制度にあると思っている人
 ・自分たちにとって「昇進」や「異動」がどんな意味を持っているのかを知りたい公務員


■ 関連しそうな本

 伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編)『人的資源 リーディングス 日本の企業システム』
 小池 和男『仕事の経済学』
 青木 昌彦 (著), 永易 浩一 (翻訳)『日本経済の制度分析―情報・インセンティブ・交渉ゲーム』 2005年04月01日
 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳)『人事と組織の経済学』


■ 百夜百マンガ

夏子の酒【夏子の酒】

 尾瀬あきらというと『初恋スキャンダル』とかのラブコメの人、という先入観(というか偏見)があって、モーニング連載時には読み飛ばしてたんですが、後から読み始めて全巻揃えました。
 すっかり日本酒にハマって、新潟に旅行に行っては蔵元を見学したり(糸魚川の『加賀の井』が美味しくて親切でした。)、地酒の品揃えのよい店(平井酒店)に通ったりしました。

加賀の井酒造株式会社 http://www.kaganoi.co.jp/
平井酒店 http://www.awa.or.jp/home/sakehirai/

2005年2月 9日 (水)

コア・コンピタンス経営―大競争時代を勝ち抜く戦略

■ 書籍情報

コア・コンピタンス経営   【コア・コンピタンス経営―大競争時代を勝ち抜く戦略】

  ゲイリー ハメル, C.K. プラハラード (著), 一條 和生 (翻訳)
  価格: ¥2,039 (税込)
  日本経済新聞社(1995/03)
  (文庫)

 本書は、コア・コンピタンスを「顧客に対して、他者にはまねのできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力」と定義しています。
 企業が存続し、勝ち抜いて行くために、自社のコア・コンピタンスを見極め、資源を集中して行くことを基本に説きながら、未来に向けた展開戦略も併せて解説していて、原書の出版は10年以上前ですが、その考え方自体は色あせていません。


■ 個人的な視点から

 行政のコア・コンピタンスは何だろうか、また、その中でも特定の省庁のコア・コンピタンスは何だろうか、特定の自治体のコア・コンピタンスは何だろうか、といったことを考えてみましょう。
 行政はこれまで、「○○の恐れがある」といっては守備範囲を次々に広げてきましたが、もしかしたら行政ではなく、企業の方が得意かもしれない、NPOの方が得意かもしれない、地域の方が得意かもしれない、と考えると、行政の役割は、公共的な問題は行政が解決する、というところにあるのではなく、公共的な問題を解決しようとする人を助けるところにあるのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?
 ・行政は最近、やれ協働だ、民の力だ、といって民間に何でも押し付けようとしているんじゃないか、と不信感を持っている人
 ・役所のやることは何でも叩かれるので自信を失っている公務員


■ 関連しそうな本

 バリー・J. ネイルバフ, アダム・M. ブランデンバーガー (著), 嶋津 祐一, 東田 啓作 (翻訳)『コーペティション経営―ゲーム論がビジネスを変える』
 ヘンリー ミンツバーグ, ジョセフ ランペル, ブルース アルストランド (著), 斎藤 嘉則, 奥沢 朋美, 木村 充, 山口 あけも『戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック』 2005年02月15日
 印南 一路『すぐれた組織の意思決定―組織をいかす戦略と政策』 2005年03月14日


■ 百夜百マンガ

有閑倶楽部【有閑倶楽部】

 大学の同級生にものすごいマンガ読み(notアニメ)がいまして、そいつの家で読み始めてハマってしまい、古本屋で買い漁りました。
 そのマンガ読みの彼は、風呂なしトイレ共同の木造アパートの2階に大量の本を溜め込んでまして、部屋の中に雑誌の「柱」が林立してました。当時は月刊アフタヌーンが1000ページあった頃なので「アフタヌーン柱」が特に高かった記憶があります。
 「倒れない「柱」にするためには、背表紙の向きを交互に積み上げるんだ」ということを教えてもらいました。アフタヌーン柱(再現映像)
 そう言えば先日床が抜けた人もいましたね。
「本の溜めすぎでアパートの床が抜けた!? 」

ロゴ「ウゴツール」で書いてみました。

2005年2月 8日 (火)

楽しみの社会学

■ 書籍情報

楽しみの社会学   【楽しみの社会学】

  M. チクセントミハイ (著), 今村 浩明 (翻訳)
  価格: ¥3,360 (税込)
  新思索社 改題新装版 (2001/01)

 「楽しみ」とはどのような体験なのか、ということを、ロッククライミングやチェス、ダンスや外科手術などに没頭する人へのインタビューを通じて分析しています。
 本書では、これらの活動に共通する体験として「フロー経験」を「全人的に行為に没入しているときに人が感ずる包括的感覚」と定義し、その特徴として
 ・行為と意識の融合
 ・限定された刺激領域への注意集中
 ・自我の喪失、自我忘却、自我意識の喪失、個の超越、世界との融合
 ・自分の行為や環境を支配している感覚
 ・主義一貫した矛盾のない行為と、個人の行為に対する明瞭で明確なフィードバック
 ・自己目的的な性質
の6点を挙げています。


■ 個人的な視点から

 日々の仕事は何のためにしているのでしょうか。給料のため、社会のため、帰りに飲みに行く金を稼ぐため・・・。いろいろな目的を挙げることができますが、仕事自体が楽しい、ということはないでしょうか。
 もちろん、フロー経験をするほど仕事に没入することはないでしょうが、本書で取り上げられている外科手術ほどではないにしろ、軽いフロー経験はたまに感じることがあるのかもしれません。

 本書で面白かったのは、フロー活動は、みせかけの動機付け要素が加わると、「競争や賭け、危険」等の外在的現実の進入を受けやすいという点です。これは、デシの「内発的動機付け」の話、例としては、ピアノを上手く弾けるようになった子供に、「上手く弾けたからお菓子をあげる」と言うと、ピアノを弾くこと自体の楽しみが奪われてしまう、という話と共通するところがあるように感じました。


■ どんな人にオススメ?
 ・「楽しいってどんなことだろう」と考えた人
 ・退屈な仕事に飽き飽きして失望してしまった人


■ 関連しそうな本

 田尾 雅夫『組織の心理学』
 金井 壽宏『組織を動かす最強のマネジメント心理学―組織と働く個人の「心的エナジー」を生かす法』


■ 百夜百マンガ

王様はロバ【王様はロバ―はったり帝国の逆襲】

 昨日が「王様のレストラン」だったので「王様」つながりで今日は王ロバに。「アウターゾーン」ともジャンプつながり。
 よく「へたうま」という表現がありますが、そぎ落とした線で必要な情報を伝えることは、写真のように精密に書き込んで伝えることよりも難しいことなんじゃないかと思います。
 その意味で、なにわ小吉はすばらしいな、と思うわけです。やっぱり下手なんですけどね。

2005年2月 7日 (月)

「王様のレストラン」の経営学入門―人が成長する組織のつくりかた

■ 書籍情報

「王様のレストラン」の経営学入門   【「王様のレストラン」の経営学入門―人が成長する組織のつくりかた】

  川村 尚也 (著)
  価格: ¥1,325 (税込)
  扶桑社(1996/09)

 三谷幸喜脚本のフジテレビのドラマ「王様のレストラン」を題材にして、「人とチームの成長」に焦点を当てた伝説のテキストです。なぜ「伝説」か・・・。内容的には経営学の教科書なんですが、本自体はテレビ番組の関連商品、企画ものとして出版されているからです。位置付けとしては電波少年の『ドロンズ日記』や『なすびの電波少年的懸賞生活』と変わらないわけです。
 ドラマの内容としては、傾きかけたレストラン「ベル・エキップ」に伝説のギャルソン・千石が現れて復活させて行くというストーリーで、「がんばれベアーズ」の大人版といったところなんです。
 本書の秀逸な点は、このドラマをターン・アラウンドのストーリーとして捉え、登場人物一人ひとりの成長への葛藤と勇気、「クリエイティブ・チーム」としての成長を描いている点です。


■ 個人的な視点から

 今回の原稿を書くのに『「王様のレストラン」の経営学入門』をぐぐって調べていたら、昔の2ちゃんねるの経営学板にあった「お勧めの経営学本、マーケティング本教えて」http://www001.upp.so-net.ne.jp/e9905/book/という名スレッドが引っかかってきましたです。

> ブックオフでゲット!650円也。
> 3冊まとめ買いしてきた。

という、自分の書き込みに数年ぶりに再開してしまいました。

 当時の2ちゃんはネオムギ事件の1年くらい後で、人口急増に伴ってよくサーバーが飛んでましたが、人口密度の高い「ニュース速報」や「ロビー」の混乱をよそに、経営学板や経済学板は良い議論が多かった気がします。(他には、苺ちゃんねるの「経済学板」や今は亡き「研究する人生」もまともでした。)

 顔の見えない、参入・退出が自由なネットワーク上において、なぜ良い議論が生まれるスレッドが誕生するのか、収拾のつかないくらい荒れるスレッドもあれば反応が少なく過去スレに沈んでいってしまうスレッドがあるのはなぜか、などなど2ちゃんねるには興味深い研究材料が山ほど眠っています。
 噂の広がり方や、コミュニティの誕生・成長・老化やソーシャル・キャピタルの蓄積など、様々な社会的現象を何倍速ものスピードで観察することができる「社会実験の培地」として、今後きちんとした研究のせいかが蓄積して行くことを期待しています。

「2ちゃんねる研究 改訂版」


■ どんな人にオススメ?
 ・誰もが「成長したい」という思いを持っていることを信じたい人
 ・自分の職場を「クリエイティブ・チーム」に変えて行きたいと思っている人


■ 関連しそうな本

「王様のレストラン」の経営学入門


 『王様のレストラン DVD-BOX La Belle Equipe』

  チャールズ オライリー , ジェフリー フェファー (著), 広田 里子, 有賀 裕子 (翻訳), 長谷川 喜一郎『隠れた人材価値―高業績を続ける組織の秘密』 2005年02月03日
  金井 壽宏『組織を動かす最強のマネジメント心理学―組織と働く個人の「心的エナジー」を生かす法』
  川上 善郎『おしゃべりで世界が変わる』  2005年03月06日


■ 百夜百マンガ

アウターゾーン【アウターゾーン】

 タイトル的には「アウターリミッツ」と「トワイライトゾーン」なわけですが、古典的なホラー・ミステリーへの愛情がひしひしと感じられます。逆に言えば地味なので大ブレイクはしないわけですが。
 「アフター0」や「藤子不二雄少年SF短編集」が好きな人ならばこちらも面白いと思います。

2005年2月 6日 (日)

経済政策の政治経済学―取引費用政治学アプローチ

■ 書籍情報

経済政策の政治経済学   【経済政策の政治経済学―取引費用政治学アプローチ】

  アビナッシュ・K. ディキシット (著), 北村 行伸 (翻訳)
  価格: ¥2,625 (税込)
  日本経済新聞社(2000/12)

 企業の経済分析で用いられる「取引コスト」の概念を使って政治を分析しています。
 政治を経済分析するというと、「公共選択論」がよく知られていますが、本書のアプローチは公共選択論以降の分析ツールの発達、特に多対多のプリンシパル=エージェント問題などの契約理論の発達を取り入れている点で、よりモダンなアプローチ方法になっています。

 政治過程を、直接の政策決定者(エージェント=代理人)に影響を与えようとする様々な参加者(プリンシパル=依頼人)との間のゲーム(PSPやDSとは関係ない)と捉えることにより、「市場か政府か」という単純な二分論では捉えることのできない豊かな含意を読む人にもたらしてくれます。
 特に、「複数のプリンシパル・複数の任務のもとでのサード・ベスト」の議論は、公共経済学の規範的なアプローチとは異なり、より実務家に納得してもらいやすいのではないかと思います。例えば、「プリンシパル間で協調が達成できないことの帰結は、ちょうどエージェントの危険回避度がプリンシパルの数を掛け合わせた分だけ高くなるということである。(中略)簡単に言えば、インセンティブ契約の効果はプリンシパルの数に逆比例しているのである。」(P.210-211)という記述は、直感的にも理解しやすいのではないでしょうか。

 本書は元々ミュンヘン大学での講義をベースにしているので、本文中にはほとんど数式は出てきません。より深い理解のためには関連する論文や書籍を読むことをお薦めしますが、この分野への入り口としては最適な一冊だと思います。


■ 個人的な視点から

 本書で提示されたアプローチ方法、すなわち情報とインセンティブに基づくモデルによるアプローチ方法は、NPM(New Public Management)と総称されている新しい行政を分析し、理解していく上で、今後重要性が非常に高まってくるものだと考えています。
 この分野ではもはや古典となっているLaffont and Tiroleの『A Theory of Incentives in Procurement and Regulation』(1993)は、行政革命以降の政府のあり方を考える上で欠かせないものになっていますし、Shleifer and Vishnyの『The Grabbing Hand: Government Pathologies and Their Cures』はPPP(Public Private Partnership)を理解するための概念枠組みを提供してくれます。

 単に外国の「先進事例」を外面だけ真似するだけではイノベーションは生まれません。そして精神論だけでは竹槍を振り回しているのと変わりません。90年代の米国企業の復活の背景には、長期雇用とジョブローテーションによる情報共有や「ケイレツ」等、日本の企業システムを徹底的に分析してきた膨大な裏付けがあります。分析された日本側が「日本経済は素晴らしい!」と好景気に浮かれている間に、米国側は分析結果をイノベーションに発展させていったのです。

 日本の行政システムにイノベーションを起こすためには、内外の成功・失敗事例の外面だけでなく、より掘り下げた分析と実験を重ねていく必要があると考えます。


■ どんな人にオススメ?
 ・NPMをさらに掘り下げて理解したいと思っている人
 ・「経済学なんて絵空事で実践には役に立たない」と思っている人


■ 関連しそうな本

 Jean-Jacques Laffont『Incentives and Political Economy』
 Jean-Jacques Laffont, Jean Tirole『A Theory of Incentives in Procurement and Regulation』
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳)『組織の経済学』 2005年01月24日
 Jean-Jacques Laffont, David Martimort『The Theory of Incentives: The Principal-Agent Model』
 Oliver Hart『Firms, Contracts, and Financial Structures』
 Andrei Shleifer, Robert W. Vishny『The Grabbing Hand: Government Pathologies and Their Cures』
 岩本 康志, 斉藤 誠, 大竹 文雄, 二神 孝一『経済政策とマクロ経済学―改革への新しい提言』
 赤井 伸郎, 山下 耕治, 佐藤 主光『地方交付税の経済学―理論・実証に基づく改革』 2005年01月27日


■ 百夜百マンガ

国民クイズ【国民クイズ】

 私たちが当たり前と思っている世界は、必ずしも真実によって囲まれているわけではありません。むしろ虚構によって組み立てられていると思った方がいいのでしょう。
 映画「マトリクス」に”赤いカプセル”というものが登場しますが、「国民クイズ体制」に対するレジスタンスも赤いカプセルを飲むことに他ならないのかもしれません。

2005年2月 5日 (土)

組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために

■ 書籍情報

組織戦略の考え方   【組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために】

  沼上 幹(著)
  価格: ¥735 (税込)
  筑摩書房(2003/03)

 元が雑誌の連載だったこともあり、各章は読みやすいコンパクトな長さにまとまっています。
 第1部「組織の基本」では、組織設計の基本としての官僚制の重要性やボトルネックへの対応、欲求5段階説の誤用の指摘など、本のタイトル通りのオーソドックスな内容をサクッと読める簡潔な文章でまとめています。
 第2部「組織の疲労」では、「組織の中のフリーライダー」や「厄介者の権力」「キツネの権力」「スキャンダルの生まれ方」など、誰でも思い当たるような組織の中で発生する現象を、わかりやすい言葉で明快に解説していています。読み物として読むにはここが一番面白いです。ここから読み始めても全く問題ありません。
 第3部「組織の腐り方」では、「ルールの複雑怪奇化」、「宦官VS武闘派(「舞踏派」ではないので念のため。青島巡査部長は登場しない。)の抗争のゆくえ」、「成熟事業部(かつての花形)の暇」など、歴史の長い組織ならば必ず身に覚えのある腐り方の実例が解説されています。
 これだけのトピックが新書に収まっているのですからありがたい。人に薦めやすい良書です。


■ 個人的な視点から

 「神は細部に宿る」ではないですが、「うちの組織は腐っている」と感じるときには実はその人自身も少なからず腐敗に貢献している、という場合が多いのではないでしょうか。確かに表面に出ている部分は直接自分のせいではないかもしれません。だから臭いに気づくわけです。自分のおならじゃないわけですから。しかし、その水面下の部分、「組織の風土」や「慣習・規範」の構築や維持には自分が大きく関わっているのは確かです。
 同様に、「うちの上司はバカで」と感じたならば、そのように上司をバカに育てた要因の多くとして自分を疑った方がいいかもしれません。上司は生まれつき上司だったわけではありません。上司を上司として育てているのは他ならぬ部下自身なのです。(『究極超人あ~る』第4巻p.91の「えりかちゃん」のエピソードを参照のこと)
 自分の上司や組織を批判的な目で見ることは大切なことです。しかし、それ以上に大切なことは、自分はどうなんだ、という目を持つことです。「心に棚を作れ!」(by伊吹三郎)という格言は、自分自身を見つめることができて、初めて生きてくるのです。


■ どんな人にオススメ?
 ・「うちの上司はバカ」と思っていてもなぜバカなのか説明できない人
 ・「うちの組織は腐っている」と感じていても自分がその原因の一人だとは気づいていない人


■ 関連しそうな本

 戸部良一, 寺本義也, 鎌田伸一, 杉之尾孝生, 村井友秀, 野中郁次郎『失敗の本質』 (文庫) 2005年03月09日
 ハーバート・A. サイモン (著), 稲葉 元吉 , 吉原 英樹 (翻訳)『システムの科学』
 高橋 伸夫『日本企業の意思決定原理』
 金井 壽宏『変革型ミドルの探求―戦略・革新指向の管理者行動』 2005年03月12日


■ 百夜百マンガ

藤子不二雄少年SF短編集【藤子不二雄少年SF短編集】

 『ドラえもん』の中にも、現実と虚構を行ったりきたりする話(第5巻「うつつまくら」)や、タイムパラドクスをいたずらしたような話(第3巻「あやうし!ライオン仮面」、第5巻「ドラえもんだらけ」)のようなSF色の強いエピソードがいくつかありますが、それを凝縮した感じです。

2005年2月 4日 (金)

行政機関のマネジメントシステム―成果志向の行政経営モデルを構築する

■ 書籍情報

行政機関のマネジメントシステム   【行政機関のマネジメントシステム―成果志向の行政経営モデルを構築する

  ジェームズ スイス (著), 柿崎 平 (翻訳)
  価格: ¥3,990 (税込)
  ピアソンエデュケーション(2001/12)

 『行政革命』や『行政評価の時代』がたくさんの事例を盛り込んで目覚めを呼びかける本だとすると、本書はより教科書的な構成になっています。
 行政経営に関心を持っていない人に「この本を読め」と薦めても、「なんだか冗長で厚くて聞いたことのない言葉がたくさん出てくる」と言って最後まで読まれることはないのではないかと思います。
 しかし、何かのきっかけで一度心に火のついた人、またはお尻に火のついた人にとっては、各章ごとに理論と事例がコンパクトにまとまっている本書は非常に読みやすいのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 「行政経営」というコーナーが書店にあったとすると、以下のような本が並んでいるのではないかと思います。

・行政経営の必要性を説いたもの
 →『行政革命』『「行政経営」の時代』『役所は変わる。もしあなたが望むなら』 2005年03月18日

・「行政評価」や「公会計」などの手法を切り口にしたもの
 →『行政評価の時代』『行政経営革命』

・NPMそのものの理論的な分析をしたもの
 →『ニュ-・パブリック・マネジメント』『パブリック・セクターの経済・経営学』

・三重県、福岡市、横浜市などの特定の自治体の改革を取り上げたもの
 →『三重が、燃えている』『横浜市改革エンジン フル稼動』

 こうやって見ると、一冊にまとまった行政経営の「教科書」というのは意外に少ないのではないでしょうか。ただし、本書は日本の自治体の首長や議員、幹部職員が読むテキストとしては、内容がアメリカ的過ぎてハードルが高いのではないかと思われます。
 そこで、本書のような構成で日本の自治体向けのテキストがあれば結構受け入れられるのではないでしょうか。誰か書きませんかね?(こういうことを言うと「お前が書け」とか言われそうですが・・・。)


■ どんな人にオススメ?
 ・体系的な行政経営の教科書を探している人
 ・自治体の首長、議員、幹部に最近なった人


■ 関連しそうな本

・行政経営の必要性を説いたもの
 デビッド オズボーン, テッド ゲーブラー『行政革命』 2005年01月22日
 上山 信一『「行政経営」の時代 評価から実践へ』
 村尾 信尚 『役所は変わる。もしあなたが望むなら』

・「行政評価」や「公会計」などの手法を切り口にしたもの
 上山 信一『行政評価の時代―経営と顧客の視点から』 2005年01月21日
 南 学 (編)『行政経営革命―「自治体ABC」によるコスト把握』

・NPMそのものの理論的な分析をしたもの
 大住莊四郎『ニュ-・パブリック・マネジメント  理念・ビジョン・戦略 』 2005年01月23日
 山内 弘隆, 上山 信一 (編)『パブリック・セクターの経済・経営学』 2005年03月01日

・三重県、福岡市、横浜市などの特定の自治体の改革を取り上げたもの
 中村 征之 『三重が、燃えている』
 南 学, 上山 信一『横浜市改革エンジン フル稼動 中田市政の戦略と発想』


■ 百夜百マンガ

【ガケップチ・カッフェー】

 街外れのつぶれそうなドライブイン、地理的にも経営的にもガケップチのお店にふらりと表れた謎の女。
 謎は謎のまま、なんとなく流れる非日常な日常がとても素敵な雰囲気を持った作品です。

 講談社のサイトで読めるみたいですね。有料ですが。
 Amazonのマーケットプレイスで買うのが一番安そうです。

こころのうた ガケップチは見当たりませんでした 無関係ですが、大学時代のサークル(千葉大C&W)出身のCOKEBERRYが「崖っぷち」というシングルを出してました。この曲が入ったアルバム『こころのうた』は鈴木惣一朗プロデュース。個人的には「ひからびた魚を埋めた」が好きです。

2005年2月 3日 (木)

隠れた人材価値―高業績を続ける組織の秘密

■ 書籍情報

隠れた人材価値   【隠れた人材価値―高業績を続ける組織の秘密】

   チャールズ オライリー , ジェフリー フェファー (著), 広田 里子,
   有賀 裕子 (翻訳), 長谷川 喜一郎
   価格: ¥2,310 (税込)
   翔泳社(2002/03)

 「外資系企業」というと、MBAホルダーの重用や成果主義や冷徹な解雇などの先入観がある人もいるかもしれませんが、アメリカの高業績企業には必ずしもその先入観に当てはまるわけではない、むしろ凡庸とも言える普通の人材を大切にしながら高い業績を上げている企業がある、ということを紹介しています。
 これらの企業が継続的に高い業績を挙げている理由は何か。数多くのケースを元にその秘密が語られています。


■ 個人的な視点から

 よく役人を罵る言葉に「お前のようなヤツは民間企業では通用しない。」という言葉があります。しかし、公務員に限らず他の職種・業界に転身してすぐに使い物になる人など一握りしかいません。優良企業であっても、そこで働いている人の多くは「普通の人」なのです。むしろ、(その人の優秀さを表しているわけではありませんが)大学時代の成績だけならば公務員の方が高いかもしれません。

 では、なぜ「普通の人」が集まった企業の中に、高業績を挙げる企業とそうでない企業があり、「普通の人(むしろ昔は「優秀」だった人)」が集まった役所のパフォーマンスが芳しくないのでしょうか。
 その理由は、全ての人が持っている能力をきちんと発揮できるかどうか、そして能力を高めることができるかどうかにかかっています。本書はそのための大きなヒントになると思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・こんな組織では自分を活かしきれない、と思っている人
 ・民間企業に就職した同級生と自分を比べて落ち込んでいる公務員


■ 関連しそうな本

 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳)『人事と組織の経済学』
 守島 基博『人材マネジメント入門 日経文庫』
 金井 寿宏, 高橋 潔『組織行動の考え方―ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト』


■ 百夜百マンガ

薫の秘話【薫の秘話】

 最初のうちはパラサイト中年「薫」のイタタタタな生活の話が中心だったのですが、後半は薫は狂言回しに徹するようになり、女子高生、アメリカ人、尾崎信者、ヤクザ、ディズニーランド、自殺志願まで次々とメッタ斬り。
 この展開は「ロリオタプーの三重苦」のカズフサ(『ラブやん』)と同じ展開のような気がするデス。

2005年2月 2日 (水)

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

■ 書籍情報

フリーエージェント社会の到来   【フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか】

   ダニエル ピンク (著), 池村 千秋 (翻訳), 玄田 有史
   価格: ¥2,310 (税込)
   ダイヤモンド社(2002/04)

 本書では、「フリーエージェント」を「決められたひとりの上司の下で働くのではなく、大きな組織のくびきを離れて、複数の顧客を相手に、自分にとって望ましい条件で独立して働く人たち」と定義しています。
 フリーエージェントには大きく3つのタイプがあり、


  • フリーランス:特定の組織に雇われずに様々なプロジェクトを渡り歩き自分のサービスを売る
  • 臨時社員:本人の意図ではない場合が多く、「テンプ・スレーブ!」などの雑誌もある
  • ミニ起業家:多くが従業員5人未満の極めて小さな企業

の3つに大別されます。
 「共通サイズの服」を着たオーガニゼーション・マンに代表される「テーラー主義」の社会から、「自分サイズの服」を着る「テーラーメイド主義」の社会、すなわちフリーエージェント社会を提唱しています。


■ 個人的な視点から

 組織の内部か外部を問わず、フリーエージェント的なキャリア観がこれから不可欠になってくると考えられます。
 すなわち、本書で「レゴ型のキャリア」と表現されている、「コネや技能、意欲、機会などのブロックを使って、自分なりのキャリアの積み木をつくり、やがてまた新しい積み木をつくり直していく」ようなキャリア観です。

 これは他の言葉を使えば「キャリアデザインのモジュール化」と言うこともできます。青木昌彦は、「モジュール化」を次のように定義しています。


半自律的なサブシステムであって、他の同様なサブシステムと一定のルールに基づいて互いに連結することにより、より複雑なシステムまたはプロセスを構成するものである。そして、一つの複雑なシステムまたはプロセスを一定の連結ルールに基づいて、独立に設計されうる半自律的なサブシステムに分解することを「モジュール化」、ある(連結)ルールの下で独立に設計されうるサブシステム(モジュール)を統合して、複雑なシステムまたはプロセスを構成することを「モジュラリティ」という。

 そして、モジュール化が脚光を浴びている可能性として以下の3つの可能性を挙げています。


  1. 複雑なシステムを分解してできる(あるいは複雑なシステムを構成する)モジュール自身が複雑なシステムである。
  2. モジュールの連結ルールが進化する。
  3. いったんモジュール間の連結ルール、ないしはボールドウィン=クラークのいう「目に見える(visible)」設計ルールが定まると、ここのモジュールの設計やその改善は、他のモジュールの設計やその改善から自立して行われうるようになる。

 この「モジュール化」という観点からキャリアデザインを考えると、フリーエージェントという働き方が、単にITの進化によって自宅でも仕事ができるようになった、というだけではなく、経済システムの複雑化という時代の要請に対応した働き方であるということが理解されるのではないかと思います。

 もちろん、単に資格証を集めるだけではプロとして仕事ができるわけではありませんが、これまでの、言わば「文脈的なキャリアデザイン」と「モジュール化されたキャリアデザイン」は、デジタル家電(各モジュール間の文脈的な「すり合わせ」が要求される)とPC(アンバンドリングされた各パーツ自体の性能が重視される)のように、その境界を変化させながら共存していくのではないかと考えられます。


■ どんな人にオススメ?
 ・自分の人生と仕事の両方を充実させたい人
 ・今の仕事から逃避したい人にはオススメしません


■ 関連しそうな本

 秋山 進, 山田 久『インディペンデント・コントラクター 社員でも起業でもない「第3の働き方」』
 青木 昌彦, 安藤 晴彦『モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質』
 尾高 煌之助, 都留 康 (編)『デジタル化時代の組織革新―企業・職場の変容を検証する』
 日本経済新聞社 (編)『働くということ』 2005年02月24日
 玄田 有史『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』


■ 百夜百マンガ

AKIRA【AKIRA】

 ヤンマガに連載(1982-1990)されていた当時は、途中からでは話の流れがぜんぜん分からず読み飛ばしていました。「主人公のAKIRAがなかなか出てこないじゃないか!」とか思うくらい途中からの参入障壁は高かったわけです。
 あとから単行本で読み始めたら止まらなくなってしまい、一気に読んでしまいました。(最近は同じようなパターンで「ジョジョ」にはまっています。)
 大友作品を初めて読んだのは『気分はもう戦争』だったこともあり、きちんと書き込まれたキャラクターよりも「どくだみ荘」的な独身だめ男キャラのチョイ役が好きだったりします。

2005年2月 1日 (火)

CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー

■ 書籍情報

CODE   【CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー】

   ローレンス レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳), 柏木 亮二 (翻訳)
   価格: ¥2,940 (税込)
   翔泳社(2001/03/27)

 本書によれば、他人の行動を「規制」するには4つの方法があります。「法、社会の規範、市場、アーキテクチャ」の4つです。
 例えば、シートベルトの着用規制を行う場合には、
・「法」:着用を義務付ける法律を作り、従わない場合は権力を背景に罰する。
・「社会規範」:公共教育キャンペーンによってシートベルトをしないことを恥ずべき行為にする。
・「市場」:保険会社に補助金を出してシートベルト着用者の保険料を下げる。
・「アーキテクチャ」:シートベルトをしないとエンジンがかからない構造にする。
という4つの方法を選択できるということです。
 本書は、インターネットという新しいフィールドを素材に取り上げていますが、そこで論じられていることはリアルな世界の「自由と規制」そのものの問題点なのです。


■ 個人的な視点から

 中学生の頃には、「自由」に憧れ「規制」に反発し「早く大人になりたい」と思うものですが、さて皆さん、大人になったら「自由」になれましたか?
 「自由になりたくないかい!」と尾崎豊をがなっていた10代を過ぎ分別もついて歳をとり、「規制」への嗅覚もすっかり麻痺してしまった30代ではあるのですが、それは「校則」のような上記の「法」に当たる規制だけではなく、「社会規範」や「市場」による規制にも馴染んできたということなのかもしれません。

 数年前には「インターネットは自由な世界だ!」と2ちゃんねるやYahoo!オークション(ドラえもんのタイムマシンが出品されていました)のアナーキーさに感激していたものですが、今ではそれらは公然と規制されています。
 「サイバー空間」は現実の世界と別物、という考えもありますが、現に今住んでいる世界の代表的な規制主体である「行政」のあり方を考える上で、「自由」と「規制」がせめぎあう「新世界」を観察することから得られる含意は大きいと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・インターネットは現実の社会とは全く別のものと思っている人
 ・現実の社会を変えるヒントを探している人


■ 関連しそうな本

 ローレンス・レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳)『コモンズ』
 ロナルド・H. コース (著), 宮沢 健一, 藤垣 芳文, 後藤 晃 (翻訳)『企業・市場・法』
 林田 清明『法と経済学―新しい知的テリトリー』
 ロバート・D. クーター, トーマス・S. ユーレン (著), 太田 勝造 (翻訳)『法と経済学』
 三輪 芳朗, 柳川 範之, 神田 秀樹 (編集)『会社法の経済学』


■ 百夜百マンガ

レッツゴー武芸帖 実家に帰って写真を撮ってきたら入れ替えます。【よしもとよしとも珠玉短編集】

 「社会人になる」っていうのは「自分」を押さえ込んでじっとしていることだと思っている人がいたら、「吼えろフェンダー」を読んでほしいです。別に「フェンダー」じゃなくても構わないわけですが。
 「社会起業家 成功への10カ条」によれば、「社会起業家」こそが「社会人」だということです。本当に自分のやりたいことで飯を食って行くことができて初めて「社会人」になることができる。そういう社会がすばらしいと思いますです。
 ちなみに私のメインは72年のテレキャスなので「フェンダー派」ということになります。

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