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2005年3月

2005年3月31日 (木)

リーダーシップ入門

■ 書籍情報

リーダーシップ入門   【リーダーシップ入門】

  金井 寿宏
  価格: ¥1,050 (税込)
  日本経済新聞社(2005/03)

 本書は、日経文庫の「経済学・経営学入門」カテゴリーで、タイトルにも「入門」とあるので、Amazonでは気楽にクリックしてしまいそうになります。逆に、「いまさら入門なんて・・・」といって敬遠する人もいるかもしれません。そして、実際に書店で現物を見ると(日経文庫にしては)「厚い!」と感じるに違いありません。何しろ330ページ、新書サイズにしては稀な厚さです。
 しかし、本書はリーダーシップを身につけたいという人にとっては、非常にコンパクトにまとまった一冊ということができます。本書の冒頭では、「リーダーシップ実践の扉を開き、自分もリーダーシップを取ることへの入門編」と説明されているとおり、リーダーシップに関する学説史をつらつらと並べていくというような経営学の教科書にありがちなスタイルではなく、要所要所に自分で考え、実践するエクササイズを挿み、実践したい人の背中を押すような構成になっています(とは言え、著者自身もエクササイズを読み飛ばしてとにかく最後まで読み通してしまうタイプ、と自認していますが。)。
 本書の後半部分には、リーダーシップに関する学説(公式理論)の解説もありますが、紙幅の多くは、実践家から学ぶリーダーシップ論に割かれています。 そして、実践家の理論をさらに2つに分け、リーダーシップについての素人なりの考えである「素朴理論(naive theory)」に対し、すぐれた内省的実践家自身が信じているより体系だった理論を「持論(theory-in-use)」と呼んで区別しています。本書の中核になっているのは、この持論、中でも特にすぐれた実践家のリーダーシップ持論の実例として、R・エンリコ(ペプシコ)、J・ウェルチ(GE)、小倉昌男(ヤマト運輸)の3人の持論を紹介するとともに、松下幸之助の「指導者の条件」のように102にも及ぶ一見互いに矛盾するような持論の統合についても述べています。


■ 個人的な視点から

 書店に行けば、「リーダーシップ」というタイトルの付いた本はいくらでもあります。Amazonで検索するとリーダーシップに関する本は1550件もヒットしました。しかし、多くは「リーダーシップのための○○(例えば、コーチングや話し方、など)」や「リーダーはかくあるべき」という個別具体論であり、リーダーシップを身につけることそのものに正面からがっぷり組んだ本は少ないのではないでしょうか。
 もちろん、本書を読めば、そのどちらかだけが価値があるというものではないということは理解していただけると思いますが、それにしてもこれだけ数が多いと、どこから手を着けたらいいものか分かりません。「リーダーシップを身に付けたい」と必要性を感じて書店に行ったものの、何から読んでいいのかが分からず、たまたま手に取った本や、たまたまそのときに流行っていた本を選んでしまう、ということになりかねません。もちろんそういう偶然に左右されるドリフトがあるから本選びは楽しいのですが。
 本書の帯には「こうすれば部下はついてくる!」と書かれていますが、必ずしも部下のいる管理職のための本ではありません。むしろ上司(経営者本人以外は必ず上司がいますので)から何を学びとり、将来、自分が部下に伝えて行くか、ということの方が重視されているように感じました。帯のアオリ文句に惑わされず、現在フォロワーシップを発揮する立場にある人にもぜひ読んでいただきたい本です。


■ どんな人にオススメ?
 ・(管理職であるかどうかにかかわらず)「リーダーシップを身に付けたい」と考えている人。


■ 関連しそうな本

 金井 壽宏 『変革型ミドルの探求―戦略・革新指向の管理者行動』 2005年03月12日
 金井 壽宏 『仕事で「一皮むける」』
 ジョン・P. コッター (著), 梅津 祐良 (翻訳) 『企業変革力』 2005年02月19日
 ヘンリー ミンツバーグ (著), 奥村 哲史, 須貝 栄 (翻訳) 『マネジャーの仕事』
 ステファン・P. ロビンス (著), 髙木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日


■ 百夜百マンガ

BE FREE【BE FREE】

 ササニシキとコシヒカリの戦いだったり、学校が巨大に変形したり、展開は脈絡が無いんですが、職員室の雰囲気とかは、「漫画家になる」と生徒たちに宣言して学校を辞めた作者ならではです。

2005年3月30日 (水)

虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ

■ 書籍情報

虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ   【虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ】

  高橋 伸夫
  価格: ¥1,680 (税込)
  日経BP社(2004/01)

 本書は、経営学者である著者が、内発的動機づけ理論などをベースに、日本国内でお手軽に、そして浅い考えで出回っている、いわゆる「成果主義」を痛烈に批判している本です。
 日本型の雇用慣行に対する批判として、競争が無い年功賃金は非効率だ、というものがありますが、果たしてどれほどの人が、成果を測定するコストや年功制の競争の厳しさ、モチベーションの仕組みなどについて、理解したうえで批判しているのでしょうか。
 本書の導入部は、著者による講演の再録ということもあり、若干大げさな部分もありますが、派手なことを言っておきながらも学者としては突っ込まれない逃げ道をきちんと作っている点はさすがに上手だと思いました。


■ 個人的な視点から

 本書は各界に様々な議論を巻き起こしましたが、どうも「理念や理想としての成果主義」と「現実の運用としての成果主義」との間で話が噛み合っていないような印象を受けます。
 理念としては、個々人が挙げた成果に応じて報酬が支払われることが公正で効率的らしいような気がしますが、現実には、個々人が挙げた成果を正確にモニタリングすることは言うほど簡単ではありません。そもそも個々人の成果を正確に報酬に反映する仕組みがあるのならば、わざわざ組織に所属している必要もありません。実際には、環境からのリスクへの対応など、組織に所属するメリットがあるからこそ、組織の中で働いているのです。
 個々人の努力と成果との間にロスの無い因果関係を説明することができないので、「成果主義」と言いながらも、現実には環境変動(景気など)や経営の失敗などのリスクを、個人に転嫁するタイプの「成果主義」が多いのではないでしょうか。実際には、個々人のやる気の源は「馬ニンジン」ほど単純ではなく、上手くいっていないケースが多いと聞いています(「問題ありが9割」の新聞の見出しにはマスコミによる情報操作の怖さを感じましたが。)。
 一方で、日本型の年功制の仕組み自体も、ネズミ講的なところがあり、経済の規模拡大を前提に設計されている、という問題点があると思います。
 今後求められるのは、日本型年功制のエクセレントな部分(多くの参加者のやる気を保ち続けるランク・オーダー・トーナメントなど)を活かしながらも、サステイナブルな仕組みを構築して行くことではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・「成果主義」ってなんか損しているような気がしているサラリーマン
 ・やってもやらなくても同じ、とあきらめてしまっている公務員


■ 関連しそうな本

 八代 尚宏 『日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済』 2005年03月23日
 小池 和男  『仕事の経済学』
 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳) 『人事と組織の経済学』
 青木 昌彦 (著), 永易 浩一 (訳) 『日本経済の制度分析―情報・インセンティブ・交渉ゲーム』 2005年04月01日
 ステファン・P. ロビンス (著), 髙木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日
 二村 敏子 (編集) 『現代ミクロ組織論―その発展と課題』 2005年03月26日
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳) 『組織の経済学』 2005年01月24日


■ 百夜百マンガ

GOD SAVE THEすげこまくん【GOD SAVE THEすげこまくん】

 作者は女性なんですが、無類の「メガネくん」好きなんです。各作品に出てくるのはことごとくメガネくん。松沢タヌキ先生は毎週、多種多様かつ夢のようなイジメの数々にあうわけですが、すげこまくん、すぐ赤くなって照れ屋さんなところが楽しそうです。
 一方、眞鍋かをり以来、メガネっ娘ブームはとどまるところを知らず、石をひっくり返した日陰の虫のごとく、メガネっ娘好きがワラワラと世に這い出し、一方の女性側も合コンの途中にメガネをかけると印象が変わってもてるらしい、という話もあるところです。

2005年3月29日 (火)

新訳 経営者の役割

■ 書籍情報

新訳 経営者の役割   【新訳 経営者の役割】

  C.I.バーナード (著), 山本 安次郎 (翻訳)
  価格: ¥2,100 (税込)
  ダイヤモンド社(1968/08)

 本書は、経営学や行政学の教科書でその名前だけは知っている組織論の古典です。しかし、古典だからといって、本書や『経営行動』から時系列的に読んでやろう、という人は少ないのではないかと思います。もちろん研究者ならばきちんと読むべき本なのだろうとは思いますが、何の予備知識も無く読み始めるには、あまりにも文体が重々しく、また、普段使い慣れない言葉が多く出てきますので、挫折してしまう恐れも多いのではないかと思います。
 むしろ、現在自分が関心のある組織に関するテーマや理論、例えばモチベーションやインセンティブ、リーダーシップ、意思決定、非営利組織など、を出発点として、そのルーツの一つを見出すつもりで読んでみれば、重たい古典を教科書の解説からではない自分なりの切り口で読み込むことができるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 いきなり古典に戻ってしまいましたが、事前に古典だと聞かされていなければ、「ちょっと古い本だけど現代の話だろう」くらいにしか読んでも思わないかもしれません。まさか1938年に書かれたものだとは、にわかには信じられないでしょう。1968年に新訳として出版された本なので文体が現代的(それでも37年前ですが)である影響ももちろんあるでしょうが、著者自身が経営者であり、自身の経験を元に、深く内省し思考に思考を重ねた結果であるからこそ、ブームに左右されない普遍性を持ちえているのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・組織行動論(ミクロ組織論)に関心を持っている人。
 ・自身の経営者としての経験を整理したいと思っている人。


■ 関連しそうな本

 ハーバート・A. サイモン (著), 松田 武彦, 二村 敏子, 高柳 暁 (翻訳) 『経営行動―経営組織における意思決定プロセスの研究』
 オリバー・E. ウィリアムソン (編集), 飯野 春樹 (翻訳) 『現代組織論とバーナード』
 ステファン・P. ロビンス (著), 髙木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日
 二村 敏子 (編集) 『現代ミクロ組織論―その発展と課題』 2005年03月26日
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳) 『組織の経済学』 2005年01月24日

■ 百夜百マンガ

幻想(まぼろし)の普通(フツー)少女【幻想(まぼろし)の普通(フツー)少女】

 じゃん!
 『南くんの恋人』でお茶の間にもお馴染みの春菊先生の純愛ものです。
 何事もフツーであろうとするサカタみたいな子は確かにそこらじゅうにいるかもしれない。これがフツーなのか?

2005年3月28日 (月)

「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ

■ 書籍情報

「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ    【「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ 】

  上山 信一
  価格: ¥2,625 (税込)
  日本評論社(2002/11)

 本書は、副題に『Public-Private Partnerships: Strategic Alliances for Social Entrepreneurship』とあるように、社会的起業のための戦略的連携を、米国の3つの事例を中心に挙げながら解説しています。ポイントは、
・組織ではなく政策を中心に据え、
      ↓
・問題の「当事者」とプロ意識を持った「専門家」との連携によって、
      ↓
・政策イノベーションを起こす。
というところにあります。
 実際に、取り上げられている米国の事例「新薬承認」「土壌汚染地裁開発」「水域保全」は、どれも問題の当事者(製薬企業、衰退都市、NPO)がイニシアティブをとり、コンサルタントや会計士などの専門家の協力を得て、政策イノベーション(マネジメント改革、マーケット創出、ガバナンス再構築)を実現しています。
 新しい「社会問題の解決方法」に関心のある問題の当事者に強くお奨めします(本書の趣旨とは異なると思いますが、PPPそのものに関心のある人にもとりあえずお奨めします。)。


■ 個人的な視点から

 本書で紹介されている社会的イノベーションを起こしているのは、自身の専門能力を持ち寄ったプロフェッショナルの集団です。イノベーションを起こすには丸っきりの丸腰ではなく、何らかの強みを持っていることが重要だということを示している例だと思います。
 逆に最悪なのが、公務員が、組織の中で感じているやりがいの無さを埋めるために、「何のとりえも無いけどボランティアをやらせてください」と言って頭数以上の仕事はできず、後ろ向きの発想や官僚的な雰囲気を持ち込んでしまうことではないでしょうか。あたかも、免疫の無い土地にインフルエンザウイルスを持ち込むような行動は、本書で示されているような「政策連携」とは全く逆の方向にあるように思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・「当事者起点の社会問題解決」に関心を持っている人。
 ・役所頼みでも役所拒絶でもない「第三の道」を模索している人。


■ 関連しそうな本

 D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳) 『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』 2005年03月15日
 町田 洋次 『社会起業家―「よい社会」をつくる人たち』 2005年02月16日
 斎藤 槙 『社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流』
 レスター・M. サラモン (著), 入山 映 (翻訳) 『米国の「非営利セクター」入門』 2005年01月25日
 谷本 寛治, 田尾 雅夫 (編著) 『NPOと事業』 2005年01月28日


■ 百夜百マンガ

鎌倉ものがたり【鎌倉ものがたり】

 『三丁目の夕日』での、ほのぼのイメージが先行する作者ですが、昔の短編はショートショート的なアイデア一発的な作品が多かったそうです。
 本作品の、ちょっと不思議な雰囲気は鎌倉という土地にマッチしているように感じます。

2005年3月27日 (日)

都庁―もうひとつの政府

■ 書籍情報

都庁―もうひとつの政府   【都庁―もうひとつの政府】

  佐々木 信夫
  価格: ¥735 (税込)
  岩波書店(1991/02)

 人口、GNP、財政規模の面から見れば、世界的に見ても十分に「国家」並みの規模を持つ東京都庁。「もうひとつの政府」とすら呼ばれるこの地方政府は、石原知事の露出の多さや新宿にそびえ立つ建物自体が知られているにもかかわらず、その内面はあまり知られていません。
 本書は、元都庁職員である著者が、都庁の政策形成・予算編成や人事、都知事・都議会、特別区との関係などについて、実体験を交えながら解説しているものです。本書が出版されたのが、14年前(1991年)ということもあり、都知事も鈴木、青島、石原と替わったので政策形成の方法も変わってきていると思いますが、地方自治体と呼ぶにはあまりにも巨大な東京都庁の内側を知るには大変優れたテキストであることには変わりありません。


■ 個人的な視点から

 首都圏や大阪を除けば、「県庁職員」といえば「第一地銀の行員」と並ぶその地域のエリートの就職先だそうです。噂で聞いた話でしかありませんが、九州地方の某県庁では、合コンの相手は地元テレビ局の女子アナだそうです。なんと羨ましい・・・(いえ、合コンのことではないデスよ。もちろん。)。
 そこで、東京都庁です。都庁でどんな人が働いていて、どんな仕事をしているか、というのは、あまり知られていません。そもそも都庁なんて展望台に上ってみたい、というくらいで、普通に社会生活を送る上でほとんど用事などはありません。区役所や市役所には住民票を取りに行くことがあったりするので、その仕事の内容、働いている職員の仕事ぶりは目にする機会があります。また、霞が関の官僚は、ニュースに出て政策にコメントしたり、接待でしゃぶしゃぶに連れて行ってもらっているらしい、という様子はうかがい知ることができます。しかし、都庁の職員がどんな仕事をしていて、都庁の仕組みはどうなっているか、ということは一般にはほとんど知られていないのではないでしょうか。(余談ですが、昔、某K区役所に用事があって、お昼休みに中をウロウロしてしまったときの光景はいまだに忘れることができません。机の上に足を投げ出してスポーツ新聞を読みながら雑談している様子は、なんだかとんでもないところに迷い込んでしまった、という恐怖感を抱かせるのに十分でいた。)
 本書は、秘密のベールに隠された(と言っても隠しているわけでもなく、興味のない人も多いわけですが)東京都庁の内情を垣間見ることができます。また、規模などは少し違いますが、予算編成や人事などは、どこの県庁の様子も似たようなものです。新書で簡単に読むことができるので、ぱらぱらと見るだけでも読んでみてはいかがですか。


■ どんな人にオススメ?
 ・将来、都の職員になりたいと思っている学生。
 ・ほかのところの内情を知りたい道府県職員。


■ 関連しそうな本

 佐々木 信夫 『東京都政―明日への検証』
 青山 やすし 『石原都政副知事ノート』


■ 百夜百マンガ

釣りバカ日誌【釣りバカ日誌】

 多くのサラリーマンに「俺も社長から「師匠」と呼ばれてみたい」という妄想を抱かせる本作品ですが、個人的には映画のハマちゃん役が西田敏行というのはあまりに無理があるのでは、と思います。
 年齢的にも『池中玄太80キロ』のころでちょうどいい感じですが(と言うと、既に25年オーバーしている)、イメージ的にも自分が頭の中で描いていた飄々としたハマちゃんを演じるには大物俳優のイメージが強すぎて・・・。

2005年3月26日 (土)

現代ミクロ組織論―その発展と課題

■ 書籍情報

現代ミクロ組織論―その発展と課題   【現代ミクロ組織論―その発展と課題】

  二村 敏子 (編集)
  価格: ¥2,520 (税込)
  有斐閣(2004/04)

 本書は、取り扱っている内容としては「組織行動(organizational behavior)論」のテキストに属するものですが、
(1)日本では「組織行動論」が「組織論」の一部として未分化の状態にあり、訳語的にも「組織の行動」と思われがちで、組織論の中のミクロ現象の分析であるとした了解や表現が受容されてきた。
(2)組織行動論は個人と集団あるいは個人と集団の行動を分析するが、複数レベルにわたる分析やコンテキストの重視という主張が行われており、単なる心理学的分析から社会学的分析になりえる。
という2つの理由から、「組織の中の個人と集団あるいは個人と集団の行動を主な分析対象」とする「ミクロ組織論」というタイトルが使われています。
 取り扱っているテーマは、組織均衡、モチベーション、組織コミットメント、ストレス、コミュニケーション、リーダーシップ、プロフェッショナル、キャリア開発など多岐にわたっています。


■ 個人的な視点から

 内容としては、心理学や社会学的なバックボーンを持つ執筆者が多いせいか、社会科学系ではない「人文系経営学」のテキスト、といった趣があります。『組織行動のマネジメント』や『組織行動の考え方』が、心理学や社会学の成果を社会科学寄りの文体で解説しているのに対し、本書は文体や引用文献などがかなり人文系に寄っている感じを受けます。そのため、社会科学系を中心に読んでいる人にとっては、最初は少しとっつきにくいところがあるかもしれませんが、文体に慣れてくれば、個人の内面を深く見つめた心理学や社会学の成果から吸収できるものがたくさんあると思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・モチベーションやストレスなど、より個人の内面の問題に関心を持ち始めた人。


■ 関連しそうな本

 ステファン・P. ロビンス (著), 髙木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日
 金井 寿宏, 高橋 潔 (著) 『組織行動の考え方―ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト』
 田尾 雅夫 『組織の心理学』
 金井 壽宏 『組織を動かす最強のマネジメント心理学―組織と働く個人の「心的エナジー」を生かす法』


■ 百夜百マンガ

ダンドリくん【ダンドリくん】

 仕事に一番大事なのは「段取り」。
 自分は段取りが下手だと思っているあなた。ぜひ本作品を読んでみてください。
 手段のためには目的を選ばないダンドリくんから学ぶものは多い(?)かもしれません。

2005年3月25日 (金)

わたしたちのまちの憲法―ニセコ町の挑戦

■ 書籍情報

わたしたちのまちの憲法―ニセコ町の挑戦   【わたしたちのまちの憲法―ニセコ町の挑戦】

  木佐 茂男, 逢坂 誠二 (編集)
  価格: ¥2,100 (税込)
  日本経済評論社(2003/03)

 本書は、全国の自治基本条例である「ニセコ町まちづくり基本条例」成立までのドキュメントとともに、自治体基本条例の論点をまとめたものです。
 本書によれば、「自治基本条例」とは、
 (1)住民による自治体行政・議会の役割そして住民自身の責務と権利の定義
 (2)住民と自治体との基本的な関係、すなわち住民から自治体への『信託のかたち』(統治機構)を自治・行政システムとして宣言するもの
と定義されています。
 自治体が単なる「お役所」として、法律で定められた最低限のサービスを提供するだけならば、わざわざ自治基本条例を定める必要は無いでしょう。現に、自治基本条例など必要ない、という人はたくさんいらっしゃいます。しかし、住民と自治体とが協働して次のステップのまちづくりをしていこうとするのであれば、毎回、個別に一から話し合うよりも、まちづくりの共通ルールを予め定めておいた方が、話し合いのためのコストを抑えることができ、より多くの時間を実質的なまちづくりのための話し合いに向けることができます(なんだかローエコ的な発想になってしまいました。)。
 横須賀市の調査によれば、市レベルでは、全国で12市が「制定済み」、29市が「策定作業中」だということです。
 「自治基本条例制定状況調査結果報告書(2004年2月調査)」

 自治基本条例に関心を持たれた方はぜひ手に取ってみてください。


■ 個人的な視点から

 昨年6月に「自治体職員有志の会」のオフ会でニセコ町に伺って逢坂町長のお話を聴いてきました。
 ミーハーな私は、本書にサインをもらってしまいました。(^_^;

裏表紙のサインです
 逢坂町長には4年ほど前に行政経営フォーラムの例会でお会いしたことがあったのですが、お話をして感じたのは、人と会話する力というか、コミュニケーション能力に長けた人だということです。「情報のないのはメニューの無いレストラン」とこれまでのお役所的な広報を改め、「もっと知りたいことしの仕事」という分かりやすい予算説明書を冊子にして町内各戸に配布するなど、以前から住民との情報共有と参加を進めてきたニセコ町だからこそ、自治基本条例がポーズではなく本当に必要になったのだと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・まちづくりを進める上での壁を乗り越えたい人。
 ・自治基本条例に関心を持っている自治体職員。


■ 関連しそうな本

 逢坂誠二 『町長室日記―逢坂誠二の眼』
 林田 清明 『法と経済学―新しい知的テリトリー』
 柳川 範之 『契約と組織の経済学』 2005年02月22日
 三輪 芳朗, 柳川 範之, 神田 秀樹 (編集) 『会社法の経済学』


■ 百夜百マンガ

花田少年史 【花田少年史 】

 もともと『出直しといで!』とかを書いてるときには、やたらに涙鼻水が多くて、うっとうしいマンガだと思ってあまり読まなかったのですが、たまたま深夜にアニメになった本作品を見てマンガも買っちゃいました。
 クールな「オバケ」とクールじゃない一路。昔のマンガみたいな絵なのに泣けちゃいます。

2005年3月24日 (木)

経営戦略のゲーム理論―交渉・契約・入札の戦略分析

■ 書籍情報

経営戦略のゲーム理論―交渉・契約・入札の戦略分析   【経営戦略のゲーム理論―交渉・契約・入札の戦略分析】

  ジョン マクミラン (著), 伊藤 秀史, 林田 修 (翻訳)
  価格: ¥3,780 (税込)
  有斐閣(1995/09)

 本書は、経営の具体的な事例を題材に、経済学者によって体系的に書かれたゲーム論の本です。一時ゲーム論がブームになり、「ゲーム論でビジネスを読み解く!」というタイプのビジネス書がいくつか出ましたが、本書はそれらに先駆けて出版され、そして内容は読みやすく、より実践的です。ビジネス書タイプのゲーム理論の本が、「囚人のジレンマ」や「新規参入ゲーム」などの典型的なゲーム論の話までしか紹介していないのに対し、本書では、ゲーム論そのものは簡単にとどめ、契約理論やオークション理論、シグナリングやスクリーニングなどの情報の経済学など、より実際のビジネスの状況に応用しやすく、かつ深い内容を、数式や専門用語抜きで分かりやすく解説しています。
 では、なぜ分かりやすさと高度な内容を両立できるのか、と言うと、本書は著者自身がカリフォルニア大学サンディエゴ校国際関係・環太平洋研究大学院の必修である「戦略分析」で教えている講義ノートを元にしてできているからです。実務者への入門コースとしては、ゲーム論そのものの解説よりも、身近な経営問題を題材にした本書のような内容が適していることは言うまでもありません。

 本を読むことには、「本自体の価格+本を読む時間」というコストがかかります。そのため、できるだけ良書を厳選して読んだ方が結果的にコストがかかりません。1500円くらいのゲーム論のビジネス書を1冊買うくらいならば、2冊分ちょっとの値段でも本書を読んだ方がお得だとお奨めできる1冊です。


■ 個人的な視点から

 「良書を厳選」と書いたんですが、家中にやたらゲーム論・契約理論関係の本があるので集めてみました。

クリックすると拡大します。
・・・本屋みたいですね。(^_^;

 数あるゲーム論の本の中でも、入門書としては本書か『戦略的思考とは何か』辺りから入るのがいいのではないかと思います。間違って『蒟蒻問答』から入ると入り口で引き返すことになりそうです。


■ どんな人にオススメ?

 ・教養ではなく、実務に役立つ知識としてのゲーム論に関心を持っている人。
 ・「契約理論」ってなんとなくハードルが高そうだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 アビナッシュ ディキシット (著), バリー ネイルバフ (著), 菅野 隆 (翻訳), 嶋津 祐一 (翻訳) 『戦略的思考とは何か―エール大学式「ゲーム理論」の発想法』 2005年01月31日
 梶井 厚志 『戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する』 2005年02月20日
 伊藤 秀史, 小佐野 広 『インセンティブ設計の経済学―契約理論の応用分析』 2005年02月26日
 中山 幹夫, 船木 由喜彦, 武藤 滋夫 (編集) 『ゲーム理論で解く』
 金子 守 『ゲーム理論と蒟蒻問答』
 梶井 厚志, 松井 彰彦 『ミクロ経済学 戦略的アプローチ』


■ 百夜百マンガ

両国花錦闘士(おしゃれりきし) 【両国花錦闘士(おしゃれりきし) 】

 そう言えば当時、相撲ブームってありましたね。升席で接待でお土産つきとか。当時、大学の同級生に水戸泉好きがいてよく見に行っていたようです。
 『ズンズンお相撲さん』っていう雑誌の名前もすごいですが、力士が土俵で輪になって両手を挙げるシーン(なんて言うんでしたっけ?)に「ハオ!」ってつけちゃうところもすごいです。

2005年3月23日 (水)

日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済

■ 書籍情報

日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済   【日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済】

  八代 尚宏 (著)
  価格: ¥1,890 (税込)
  日本経済新聞社(1997/01)

 本書は、日本的雇用慣行を、「雇用者の技能形成のカギを握る企業内訓練を効率的に行うための、きわめて経済合理的なシステムとして評価」すると同時に、今後の経済社会環境の変化に対応して、より流動的な雇用パターンの比率が高まる「雇用ポートフォリオ」の変化について論じています。
 「日本的雇用慣行」とは、長期的安定的雇用、年功昇進・賃金体系、企業内組合などの雇用・賃金形態とされていますが、著者は、企業内訓練を通じた人的資本形成を経営者と雇用者が共同で負担する合理的なメカニズムが、雇用者の高い勤労意欲と労使関係安定の基礎になり、この雇用慣行のカギとなっていることを指摘しています。
 同時に、この企業内訓練重視の雇用慣行が、先進国の中で最も大きな男女間賃金格差や長時間労働、頻繁な転勤などの社会的コストと公平性の問題を生み出しているという点にも言及しています。
 また、補論としての扱いではありますが、日本的雇用慣行の典型例の一つとして日本の公務員制度について触れています。特に「公務員一括採用」に対しては、専門的能力形成や人事評価を困難にし、官僚組織の巨大化・硬直化を招くとして反論しており、むしろ、公務員の中途採用を容易にする法改正によって、特定の専門的能力を持つ人材の官民交流を行うことによって、閉じられた内部労働市場での過剰な仕事競争(job competition)を抑制することができるとしています。


■ 個人的な視点から

 人事異動の季節になりました。3月も後半ともなると自治体職員の関心は4月の人事異動一色になり、気もそぞろの状態で、あちこちから漏れ聞こえる人事異動の噂話に一喜一憂します。そして、3月中に人事異動の内示が出ると、ある者は自棄酒を飲んで憂さを晴らし、ある者は人事担当課長の机を叩いて抗議し、妬みと怨嗟の声がそこかしこに渦巻くことになります。

 なぜ公務員はこれほどまでに人事異動にこだわるのでしょうか。その答えの一つが本書にあります。
 日本の公務員制度が、日本的雇用慣行の典型例の一つであるとすると、そのインセンティブ・メカニズムは本書で指摘されている
 (1)年齢が高くなるにつれ、同一年齢層間での賃金格差が拡大する。
 (2)課ベースでの集団的生産活動が中心となることで、個々人の昇進について、職場での「評判」が重要になる。
 (3)より良い仕事のポストをめぐる「仕事競争」(job competition)。
が、公務員の場合にも働いているということになります。
 このうち特に人事異動に関係するのは、(3)の「仕事競争」のインセンティブ・メカニズムです。ここで言う「良いポスト」とは、
「外部の人々にはわかりにくいが、企業内部の者には自明なものであり、企業の盛衰を担う花形の部署や急速に仕事量が伸びている重要な部課を指す場合が多い。」
とされています。
 そして、「良いポスト」と「悪いポスト」を比較すると次のようになります。

●良いポスト
 ・他では得られないような貴重な業務上の訓練が経験できる。
 ・上記訓練を通じて個人の能力向上が図れる。
●悪いポスト
 ・企業の衰退分野や、誰がやっても同じ成果の単調な仕事。
 ・何年勤めても技能の向上が期待できない。

 特に公務員の場合は、仕事競争が激しくなり、本書ではその原因として以下の2つの要因を挙げています。
 (1)最初に良いポストを与えられると、能力の向上とともに上司に認められる機会が増え、次も良いポストにつける好循環メカニズムが働く。逆に悪いポストに就くと悪循環メカニズムにとらわれやすい。
 (2)キャリア官僚の場合は、組織外への出向退職の選別プロセスが働く。

 以上の点を踏まえると、なぜ公務員がこれほどまで人事異動に執着するかが理解できるのではないかと思います。基本的に賃金や昇進では大きな差が付かない公務員の世界において、その評価の差が顕在化するのは人事異動の機会しかないからです。

 枕草子の「すさまじきもの」の時代から、日本の公務員は「除目」に一喜一憂を続けているわけですが、本書が指摘しているとおり、中途採用の増加などによって人材の流動性を高めることで、閉じた世界での過剰な仕事競争メカニズムを抑制することができるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

 ・日本の雇用慣行について整理されたものを読みたい人。
 ・なぜ公務員がこれほど人事異動にこだわるのかを知りたい人。


■ 関連しそうな本

 稲継 裕昭 『日本の官僚人事システム』 2005年02月10日
 伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集) 『人的資源 リーディングス 日本の企業システム』
 小池 和男  『仕事の経済学』
 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳) 『人事と組織の経済学』
 樋口 美雄  『雇用と失業の経済学』
 青木 昌彦 (著), 永易 浩一 (訳) 『日本経済の制度分析―情報・インセンティブ・交渉ゲーム』 2005年04月01日


■ 百夜百マンガ

以蔵のキモチ【以蔵のキモチ】

 「義妹にドキドキする高校生」というシチュエーションだけ見ると『みゆき』か妹萌え系かという感じですが、昔の少年マンガ的な雰囲気のしっかりとした作品です。
 連載途中で終わってしまったのが残念ですが、どうしても続きが読みたくなる作品の一つです。

2005年3月22日 (火)

不平等社会日本―さよなら総中流

■ 書籍情報

不平等社会日本―さよなら総中流   【不平等社会日本―さよなら総中流】

  佐藤 俊樹
  価格: ¥693 (税込)
  中央公論新社(2000/06)

 本書は、日本社会の階層化について、「社会階層と社会異動調査」(SSM調査)の結果を分析することによって、建前の平等と実質的な不平等とが存在する、日本社会の「二重底」を打ち抜いていこうとするものです。
 本書では特に、高学歴の上級ホワイトカラー(管理職や専門職、会社役員等)の父親から、次の世代に受け継がれる目に見えない遺産によって「知識エリート層」が再生産される点に力を入れています。この「遺産」は、必ずしも教育費だけを指すわけではありません。
 戦前は、高等教育を受けることが出来るのは一部の人間に限られましたが、戦後においては、高等教育を受ける機会はどんどん広くなり、特に昭和ヒトケタ世代では、他の階層から上級ホワイトカラー層への流入が大量に起こりました。しかし、いわゆる「団塊の世代」を境に、「知識エリート層」への参入障壁は戦前並に跳ね上がってしまっています。そこで筆者は、現代の日本の「知識エリート層」において、親から子に受け継がれる「遺産」は、単なる学歴としての高等教育ではなく、情報や知識のリテラシー、接し方にあるのではないかと推測しています。
 「一億総中流」社会の崩壊が実感されてきた現在、まずは数字によって社会を見てみることが重要だと思われます。


■ 個人的な視点から

 個人的に面白かったのは、「実績」「努力」「必要」「均等」の4つの資源配分原理について、理想と現実を尋ねた質問です。この質問への回答が、男女や社会的階層によって異なっている、というところが本書の導入部分になります。
 現在、巷間で流布している、「成果主義」という言葉に対する様々な受け止め方の違いや先入観を説明できるきっかけを本書は持っているかもしれないと感じました。この4つの言葉のうちからどれを選ぶか、というだけでも相当その人個人の考え方が出る上に、同じ「実績」という言葉も人によってその意味するところが相当違うからです。これまで、成果主義に対する分析は経済学や経営学の立場からのものがほとんどでしたが、心理的な抵抗感の原因を探るという意味で、心理学や社会学的なアプローチも重要になるように感じました。今後の課題にしたいですね。


■ どんな人にオススメ?
 ・「日本は平等な社会」という通説に納得できない人。
 ・自分の子どもに何を残せるか、ということに悩んでしまう人。


■ 関連しそうな本

 小塩 隆士 『教育を経済学で考える』 2005年02月13日
 伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集) 『人的資源 リーディングス 日本の企業システム』
 村上 泰亮 『新中間大衆の時代―戦後日本の解剖学』
 小池 和男  『仕事の経済学』
 樋口 美雄  『雇用と失業の経済学』


■ 百夜百マンガ

ワイズマン【ワイズマン】

 現実の世界がどんどん揺らいで行く感じになるのは、作者の画風にどんどんはまり込んで行ってしまうからなのでしょうか。
 都会の風景の中に非日常が流れ込んでくるさまの描写は、『犬神』と同様、作者の持ち味が最大限発揮されているところです。

2005年3月21日 (月)

巨象も踊る

■ 書籍情報

巨象も踊る   【巨象も踊る】

  ルイス・V・ガースナー (著), 山岡 洋一, 高遠 裕子 (翻訳)
  価格: ¥2,625 (税込)
  日本経済新聞社(2002/12/02)

 本書は、1993年からIBMの経営建て直しを行った元CEOによるIBM再生の記録です。
 瀕死の危機に直面していたIBMという「巨象」は、「小さいものは美しく、大きいものは醜い」という経営の通説に従い、小さな事業分野ごとに分割されようとしていました。その状況下でCEOに就任したのは技術の専門家ではないRJRナビスコの元CEO。彼は「クッキー・モンスターなんかにコンピュータのことは分かるはずがない」という社内の陰口に遭いながらも、IBMが顧客に提供できる価値を問い直し、当時はハードウェア事業の「おまけ」程度に低く見られていた情報処理サービスを事業の中心に据え直すことで、IBMの再生に成功しました。
 普通の会社でもない、普通の大企業ですらない、世界の注目を浴びたIBMの復活を、CEO就任から退任するまでの時間の流れを追って当事者の目から記録した本書を読んで、巨大組織の建て直しを追体験してみませんか。


■ 個人的な視点から

 ハードウェアを事業の中心に捉える目で当時のIBMを見れば、IBMという「巨象」は図体のでかいのろまな存在に見えたのでした。そこで、この巨象を分割して小さな企業と競争させる戦略がとられようとしていたのですが、サービス事業を中心に捉えなおすと、問題は体が大きいことにあるのではなかったのです。それは官僚的な手続き主義とともに、過剰な権限委譲によって意思決定に時間を含めた調整コストがかかり、組織が一体となって活動することが非常に困難だったことです。
 彼は、動きののろい巨象と揶揄されていたIBMへの批判に対し、「象が蟻より強いかどうかの問題ではない。その象がうまく踊れるかどうかの問題である。見事なステップを踏んで踊れるのであれば、蟻はダンス・フロアから逃げ出すしかない。」と反論し、ハードウェアや自分達の技術から出発する発想していたIBMを、顧客に対して情報処理というサービスを提供する企業に変革することで、見事なステップを踏むことに成功しました。
 巨大な組織、いや、小さな組織にいても、組織の官僚的な体質や意思決定の遅さにイライラしている人がいらっしゃいましたら、ぜひ本書を手にとって見てください。IBMのような巨象でさえもダンスを踊ることができるのです。


■ どんな人にオススメ?
 ・「うちの組織は大きすぎてだめだ」と失望している人。
 ・巨大組織の復活を経営者の目で見てみたい人。


■ 関連しそうな本

 カルロス・ゴーン, フィリップ・リエス 『カルロス・ゴーン経営を語る』 2005年03月05日
 ヘンリー ミンツバーグ, ジョセフ ランペル, ブルース アルストランド (著), 斎藤 嘉則, 奥沢 朋美, 木村 充, 山口 あけも(翻訳) 『戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック』 2005年02月15日

■ 百夜百マンガ

美味しんぼ【美味しんぼ】

 いつの間にか超長期連載になってしまった本作品ですが、長いといえば『こち亀』が思い出されます。
 両さんがだんだん小奇麗になってきたのと同様に、山岡さんも昔は無精ひげにヨレヨレのシャツで赤鉛筆を耳に挟んだ博打好きというキャラクターだったのに、今ではすっかり普通の人になってしまいました。

2005年3月20日 (日)

企業とは何か リーディングス 日本の企業システム

■ 書籍情報

企業とは何か    リーディングス 日本の企業システム   【企業とは何か リーディングス 日本の企業システム】

  伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集)
  価格: ¥2,940 (税込)
  有斐閣(1993/02)

 本書は、経営学と経済学の両方の分野から「システムとしての企業」を理解するために集めた4巻セットの論文集の第1集です。刊行開始が1993年ということで、今では若干古く感じる学説や事例もありますが、できるだけ偏りのない論文が集められていますので、現在においても十分通用する定番書となっています。
 第1集である本書は、「企業とは何か」というテーマに対して、ベーシックな企業の見方とともに、知識創造や不完全契約理論などまで幅広い論文が掲載されています。


■ 個人的な視点から

 本シリーズは、
  第1巻 企業とは何か
  第2巻 組織と戦略
  第3巻 人的資源
  第4巻 企業と市場
の4巻で構成されており、本書はその1巻目です。そのため、全般的にはイントロダクション的な要素が強く、シリーズの読み方としては、まず本書を読んでから好きなジャンルを読む、という読み方がオーソドックスだと思います。
 最近話題になっている「企業は誰のものか」については、本書の第2部として、4本の論文が収められています。第5章「企業の所有と支配」に関心を持った人は『コーポレートガバナンスの経済学』を、第7章「株式会社と従業員「主権」」に関心を持った人は『人本主義企業』に読み進むなど、自分がどんな方向に関心を持っているかを知るためのオムニバス・アルバム的な意味も持っています。
 4巻全部を通して読む必要はないと思いますが、本書だけはぜひ押さえておいた方がよいマストアイテムです。


■ どんな人にオススメ?
 ・企業についての基本的な知識を学びたい人。
 ・ライブドアとフジテレビのニュースを読んで「企業は誰のものか」に関心を持った人。


■ 関連しそうな本

 伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集) 『組織と戦略 リーディングス 日本の企業システム』
 伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集) 『人的資源 リーディングス 日本の企業システム』
 伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集) 『企業と市場 リーディングス 日本の企業システム』
 伊丹 敬之 『人本主義企業―変わる経営変わらぬ原理』
 小佐野 広 『コーポレートガバナンスの経済学―金融契約理論からみた企業論』 2005年02月23日
 青木 昌彦 (著), 永易 浩一 (翻訳) 『日本経済の制度分析―情報・インセンティブ・交渉ゲーム』 2005年04月01日
 伊藤秀史(編) 『日本の企業システム』
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳) 『組織の経済学』 2005年01月24日


■ 百夜百マンガ

マイナス【マイナス】

 「誰にも嫌われたくない」と思うこと自体は普通なんですが、その思いが強すぎて八方美人になって嫌われてしまう人はいるものです。
 それがさらに極端になると・・・というのがこの作品なんですが、「嫌われたくない」という強迫観念がエスカレートしていく部分の描写が醍醐味です。回収騒ぎになった人の肉食ってる回はそんなに面白くないですよ。

2005年3月19日 (土)

ネットワーク組織論

■ 書籍情報

ネットワーク組織論   【ネットワーク組織論】

  今井 賢一, 金子 郁容
  価格: ¥2,205 (税込)
  岩波書店(1988/01)

 本書は、企業組織、組織産業社会を「ネットワーク」という切り口から問い直し、組織とは何か、という問題に正面から取り組んでいます。
 本書の導入部は、18世紀イギリスの「コーヒーハウス」の描写から始まります。そこは多種多様な人が集まり情報が伝播される市民の情報革命の場でした。このコーヒーハウスこそが、産業革命後の新秩序の背景となった情報インフラだったのです。
 本書では、取引コスト論やカオス論などの概念を鍵に、企業組織と市場、そして個人のあり方を論じており、教科書的な構成をしていないので、斜め読みするには向いていませんが、18世紀のイギリスと現代の日本企業とを行き来しながら「ネットワークとは何か」という問題にじっくり取り組みたいという方にお奨めします。


■ 個人的な視点から

 現在、インターネットが社会の隅々に浸透し、「ネットワーク型組織」、「ネットワーク型企業」という言葉にも違和感がなくなりましたが、「ネットワーク」という言葉を、単なる技術的な問題だけでなく、組織の本質に立ち返って捉えなおす本書の役割は、出版された17年前よりも増しているのではないかと思われます。
 本書が出版された1988年には、インターネットがこれだけ社会のインフラになるとは予想されていなかった時代ですが、「ネットワーク組織とインターネットとコーヒーハウス」というテーマでもう一度『ネットワーク組織論パート2』が執筆されたらぜひ読んでみたいものです。1995年に出版された『インターネット ストラテジー』などはそれに近いのかもしれません。
 また、コーヒーハウスに関心を持たれた方は『知の編集工学』でもコーヒーハウスが取り上げられていますので、こちらを読んでみてもいいでしょう。


■ どんな人にオススメ?
 ・新しい組織論に関心のある人。
 ・インターネットで世の中がどう変わるのかに興味のある人。


■ 関連しそうな本

 小池 和男 『仕事の経済学』
 今井 賢一, 伊丹敬之, 小池和男 『内部組織の経済学』
 オリヴァー・E.ウィリアムソン 『市場と企業組織』
 ロナルド・H. コース (著), 宮沢 健一, 藤垣 芳文, 後藤 晃 (翻訳) 『企業・市場・法』
 松岡 正剛 『知の編集工学』
 松岡 正剛, 吉村 伸, 金子 郁容 『インターネットストラテジー―遊牧する経済圏』


■ 百夜百マンガ

クリックすると拡大 クリックすると拡大 【スカタン野郎】

 日本国内でもそれほどメジャーではない本作品ですが、なぜか台湾の地方都市、嘉義で入手しました。タイトルは『脱線美眉』。どういう基準で翻訳書が出るのかが謎です。ネタ元が分からないと、なんだか分からないギャグ満載(ドリフの大爆笑、科学特捜隊、木村太郎他)の本作品が、現地の読者にどのように受け止められたのか。ネタ元みんな知ってたらそれはそれで怖いです。

2005年3月18日 (金)

役所は変わる。もしあなたが望むなら

■ 書籍情報

役所は変わる。もしあなたが望むなら   【役所は変わる。もしあなたが望むなら】

  村尾 信尚
  価格: ¥1,500 (税込)
  淡交社(2001/06)

 本書は、現役財務官僚(当時)が書いたNPM(New Public Management)の解説書です。それも、できるだけ噛み砕いて、易しい言葉で語られています。実際に、執筆に当たってはインタビュアーを通じた口述筆記で書かれているそうです。
 しかし、易しい言葉で書かれているからといっても、内容が生ぬるいと言うことはありません。その主張しているところは、行政の役割は何か、民の力は何か、というゼロベースに立ったもので、現在の日本ではむしろラディカルな部類に入るのではないかと思います。そして、この原理原則に立った主張こそが著者の持ち味と言うべきところでもあります。
 著者は、本書出版後、2002年末に退官し、2003年の三重県知事選挙に出馬した後、2004年には自身の三重県庁改革と知事選について語った『「行政」を変える!』を出版しています。本書に関心を持たれた方にはこちらも合わせて読んでみることをお奨めします。


■ 個人的な視点から

 ちょうど1年前の2004年3月に、著者を囲んだ勉強会に参加する機会があり、少しお話しすることもできましたが、「熱血漢」という感じの方でした。そのときには社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)について話題になったのですが、「社会を変える」という情熱が、著書や行革推進ネットワーク「WHY NOT」の活動、知事選出馬などの一連の活動の原動力になっていると感じました。そして、本書は、著者から国民に当てられた「檄文」ではないかと思います。無視を決め込むか、じゃあやってみようか、と思うかどうかの判断は読者に委ねられています。
 本書を読んで、「役所は変わるかもしれない」という期待を持つことができましたら、次は、『生活者起点の「行政革命」』や『行政革命』などに読み進むと、本書の内容が補強されるでしょう。


■ どんな人にオススメ?
 ・「役所なんて変わりっこない」と思っている人。
 ・NPMについての分かりやすい解説を探している人。


■ 関連しそうな本

 村尾 信尚 『「行政」を変える!』
 北川 正恭 『生活者起点の「行政革命」』 2005年03月07日
 デビッド オズボーン, テッド ゲーブラー 『行政革命』 2005年01月22日
 山田 宏, 中田 宏, 長浜 博行 『ニュージーランド行革物語―国家を民営した国』 2005年03月04日
 沢 昭裕, 経済産業研究所『公を担う主体としての民』研究グループ (編集) 『民意民力―公を担う主体としてのNPO/NGO』
 大住莊四郎 『ニュー・パブリック・マネジメント  理念・ビジョン・戦略』 2005年01月23日


■ 百夜百マンガ

釣りキチ三平【釣りキチ三平】

 子供の頃、学校が終わった夕方、よく近くの海に釣りに行きました。アジやヘシコ、イシモチなどをよく釣りました。晩御飯のおかずになるくらいの量が釣れると翌日の餌代が出るという「自転車操業」でした(毎朝その日のメルマガを書いてる現在と変わらない・・・)。
 山奥が舞台のこの作品を読んでは、「近くにイワナがいてうらやましい」と思ったものです。

2005年3月17日 (木)

包括的地方自治ガバナンス改革

■ 書籍情報

包括的地方自治ガバナンス改革   【包括的地方自治ガバナンス改革】

  村松 岐夫, 稲継 裕昭 (編著)
  価格: ¥3,990 (税込)
  東洋経済新報社(2003/03)

 本書は、京都大学大学院法学研究科に地方自治体(多くは都道府県庁)から派遣された職員の修士論文をベースに再編集されたものです。
 本書は、「地方分権の軸」、「ニュー・パブリック・マネジメントの軸」、「住民自治の軸」の3つの軸によって構成されています。プロローグとエピローグを編者が執筆し、本編はほとんどが地方自治の実務家である自治体職員によって執筆されています。


■ 個人的な視点から

 本書のオビに「実務家が実証的に解明」とありますが、各修論のテーマは実務よりももう一段メタな視点からの分析なので、各執筆者が直接そのテーマの実務に携わった経験者かどうかは確かではありません。ですので、実務的な解説を目当てに本書を買い求めると当てが外れるかもしれません。
 しかし、各章ごとに独立していますので、どうしても1ページ目から順番に読まないと気が済まない、という人以外は、目次から関心のある修論を読んで行く、という読み方が適していると思います。
 本書は、RIETI(経済産業研究所)の「経済政策分析シリーズ」として刊行されており、「専門分野ごとのレフェリー審査をクリアした、学問的水準が高く、深い政策関連性を有する研究成果を世に問うことを目的として刊行」されていますので、本書のレベルの高さと政策的意義と千円札4枚分の価値は保証します。RIETIが。


■ どんな人にオススメ?
 ・NPMをテーマに修士論文を書こうと思っている人。


■ 関連しそうな本

 稲継 裕昭 『日本の官僚人事システム』 2005年02月10日
 大住莊四郎 『ニュ-・パブリック・マネジメント  理念・ビジョン・戦略』 2005年01月23日
 山内 弘隆, 上山 信一 (編著) 『パブリック・セクターの経済・経営学』 2005年03月01日


■ 百夜百マンガ

県立地球防衛軍【県立地球防衛軍】

 「地方の時代」と言われます。世界征服もまず地方から。
 そして、県民の血税で運営されている県立学校の生徒ならば、県民の安全を守るのは義務です。
 見る影もなく出番がなくなる主人公の提灯屋の息子、盛田。電柱組の戦闘員たち。苦学生の悪の幹部、ばらだぎ様、暴力の嫌いな「まっする日本」、季節ものの「正月仮面」、桜前線とともに北上する下戸の味方、鉄の肝臓「グリコーゲンX」など、キャラクター(変人)の掛け合いが全てです。
 この時期の作品は『陸軍中野予備校』も同じノリでお奨め。

2005年3月16日 (水)

ぬるま湯的経営の研究―人と組織の変化性向

■ 書籍情報

ぬるま湯的経営の研究―人と組織の変化性向   【ぬるま湯的経営の研究―人と組織の変化性向】

  高橋 伸夫 (著)
  価格: ¥2,854 (税込)
  東洋経済新報社(1993/01)

 本書は、「ぬるま湯」的経営に関する学術書です。タイトルがソフトなのでうっかり注文するとゴリゴリの学術書でショックを受けるかもしれません。著者は、本書に先立って学会でぬるま湯に関する発表をしたときに、学会の大御所から「冗談で論文を書いてはいけないよ」「もっとアカデミックなテーマを選ばなきゃ」とありがたい「アドバイス」をいただいたそうです。
 組織の「ぬるま湯感」を測る上で鍵となるのは「体温」と「システム温」です。「体温」は、組織のメンバーの組織人としての変化性向を、「システム温」は、組織のシステムとしての変化性向をそれぞれ表しています。つまり、「体温」の高い人は組織の変化性向(システム温)が低いときに「ぬるま湯感」を感じる、というものです。本書では、この仮説を検証するために、延べ44社、4194人のデータを取っています。
 自分の組織が「ぬるま湯だ」と感じている方、一度、体温とシステム温を測ってみてはいかがでしょうか。


■ 個人的な視点から

 「役所はぬるま湯でけしからん!」という話をよく聞きます。しかし、役所で働く公務員の声を聞くと「役所はこれでも中から見ると大変なんだ。ぬるま湯なんてとんでもない」という意見も多く出てきます。
 ではどちらが正しいのでしょうか。どちらかが嘘をついているのでしょうか?
 本書の「ぬるま湯」説に基づけば、どちらも嘘をついていない、ということになります。「役所はぬるま湯だ」と感じる人にとっては、役所の「システム温」の低さ、つまり、変化性向の低さが「ぬるま湯」だと感じられます。これには、議会制度や文書主義など、制度的に変化性向が低く抑えられていますので、仕方がない面もあります(もちろん、制度的制約以上にシステム温を下げている要因は山ほどありますが。)。一方の公務員の側は、社会の変化の速さと制度的制約の間の軋轢を感じているので、システム温を高く感じているのかもしれません。
 しかし、ぬるま湯感を感じないケースというのは、「体温高・システム温高」の場合と「体温低・システム温低」の場合とがあります。常識的に考えると、役所の場合は後者と考える方が妥当なのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・自分の組織はぬるま湯だ、と感じている人。
 ・自分ではぬるま湯だとは思わないが、世間からは「ぬるま湯だ」と非難されることの多い人。特に公務員。


■ 関連しそうな本

 高橋 伸夫 『日本企業の意思決定原理』
 別冊宝島編集部(編) 『わかりたいあなたのための経営学・入門』 2005年01月26日
 沼上 幹 『組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために』 2005年02月05日
 印南 一路 『すぐれた組織の意思決定―組織をいかす戦略と政策』 2005年03月14日
 戸部 良一, 寺本 義也, 鎌田 伸一, 杉之尾 孝生, 村井 友秀, 野中 郁次郎 『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』 (文庫) 2005年03月09日


■ 百夜百マンガ

What’s Michael? 【What’s Michael? 】

 作者が猫を徹底的に観察して出てきたギャグが多い初期の方が好きです。
 後期は猫そのものよりも猫をめぐる人々や猫社会の話が中心になったと感じてます。

2005年3月15日 (火)

市民起業家―新しい経済コミュニティの構築

■ 書籍情報

市民起業家―新しい経済コミュニティの構築   【市民起業家―新しい経済コミュニティの構築】

  D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳)
  価格: ¥2,940 (税込)
  日本経済評論社(1997/07)

 本書は、シリコンバレーをはじめとするアメリカ各地の「市民起業家」、ビジネス、政府、教育及びコミュニティが交差する場所において新しい力強い結合を鍛え上げる新しい世代のリーダー、を紹介しています。
 「起業家」と言うだけあり、本書に登場するのは営利企業の経営者が中心ですが、それだけでなく、市長や議員などの政治家や行政官、教育関係者などが、「経済コミュニティの中の市民」として、それぞれの専門知識や経験を背景に活躍する様子が描かれています。
 アメリカ各地で発生した、企業、行政、非営利セクターなどの様々なセクターを結んだアライアンスによる様々なイノベーションを、「市民起業家」というキーワードを軸に解説する本書は、営利・非営利というこれまでの縦割りに縛られずに社会を変革していこうと考える社会起業家にはぜひ読んでいただきたいと思います。


■ 個人的な視点から

 社会的な活動、市民活動というと、どうしても「私財を投げ打って社会のために役立てる」とか「無私の精神でボランティアに打ち込む」という美しいイメージが付きまとうのですが、そこには「辛いのを我慢して打ち込む姿が美しい」という殉教者的な美意識にも見えてしまって、「偉いなぁ」とは思いますが、正直なところあまりシンパシーを感じません。
 さて、本書で紹介されている市民起業家たちの多くは、どんな意識で活動しているのでしょうか。本書から感じるのは、殉教者的な意識ではありません。楽しいから、そして将来の利益につながるから、自分がやりたいからやっている、という意識を強く感じました。「自分はアンハッピーだけど社会のお役に立てるなら仕方ない」というのではなく、「自分もハッピーになる、社会もハッピーになる、だからやる」という明快な姿勢です。
 同じ地域に暮らしながらも、違った世界で離れて活動している様々な人たちを結びつけ、お互いがハッピーになる関係をコーディネイトする市民起業家の役割は今後ますます大きくなると思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・補助金頼りの「地域の活性化」に疑問を感じている人。
 ・自分とは異なるセクターのドアをノックする勇気がほしい人。


■ 関連しそうな本

 町田 洋次 『社会起業家―「よい社会」をつくる人たち』 2005年02月16日 
 斎藤 槙 『社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流』
 上山 信一 『「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ』 2005年03月28日
 レスター・M. サラモン (著), 入山 映 (翻訳) 『米国の「非営利セクター」入門』 2005年01月25日


■ 百夜百マンガ

栄光なき天才たち【栄光なき天才たち】

 個人的には、千葉の生んだ伝説のレーサー浮谷東次郎が登場する11~12巻が一番お奨めなのですが、Amazonのマーケットプレイスでもプレミアが付いているようで、現在2巻セットで2600円の値が付いています。

「浮谷東次郎website」

2005年3月14日 (月)

すぐれた組織の意思決定―組織をいかす戦略と政策

■ 書籍情報

すぐれた組織の意思決定―組織をいかす戦略と政策   【すぐれた組織の意思決定―組織をいかす戦略と政策】

  印南 一路 (著)
  価格: ¥1,995 (税込)
  中央公論新社(1999/04)
文庫

 本書は、組織の意思決定について、規範論と現実論の両方の立場から、非常に明快に解説されています。
 「第1部 組織の意思決定とは」では、そもそも意思決定とは何か、組織を作る意義、組織で意思決定をする意義について明らかにした後、事業との関係や、組織構造の病理について解説しています。
 「第2部 組織戦略の意思決定」では、環境へのダイナミックな適応や組織間関係のマネジメントなどの「戦略の意思決定」と、組織の意思決定プロセスの内部的な統合としての「組織構造の選択に関する意思決定」を取り上げています。
 「第3部 組織政策とすぐれた意思決定」では、コミットの継続と打ち切り、組織目的・文化・倫理・理念、組織変革と組織内の政治プロセスなどの、組織の意思決定の難しい部分を扱っています。

 こうやって構成を書くとなにやら非常に分厚くて小難しい大著のような印象を与えてしまいますが、項目ごとに短い文章で構成され、文庫にもなっていますので、通勤電車の中で読むという目的に非常に適していると思います。


■ 個人的な視点から

 前著『すぐれた意思決定』とあわせて、経営学の分野では個人的に大注目の研究者です。心理学の話から取引コストの話まで幅広い知識を動員して、意思決定論を分かりやすく伝える、という能力では大変すぐれていると思います。
 いろいろな学説を紹介するだけの理論べったりになるわけでもなく、現実の話だけにどっぷりつかるわけでもなく、「現実をどう読み解くか」というツールとして経営学を活用している点に深い共感を覚えます。


■ どんな人にオススメ?
 ・読書の時間はそれほど取れないけれど組織の意思決定に関心のある人。
 ・「自分の組織はどこかおかしい」とは感じているけれど口では説明できない人。


■ 関連しそうな本

 印南 一路 『すぐれた意思決定―判断と選択の心理学』 (文庫)
 高橋 伸夫  『日本企業の意思決定原理』
 ヘンリー ミンツバーグ, ジョセフ ランペル, ブルース アルストランド (著), 斎藤 嘉則, 奥沢 朋美, 木村 充, 山口 あけも(翻訳) 『戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック』 2005年02月15日
 戸部 良一, 寺本 義也, 鎌田 伸一, 杉之尾 孝生, 村井 友秀, 野中 郁次郎 『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』 (文庫) 2005年03月09日


■ 百夜百マンガ

サンクチュアリ【サンクチュアリ】

 知恵と暴力で裏社会・表社会の権力の階段をのし上がる、という現代版『野望の王国』です。
 やたらな権力志向の裏には、カンボジアで生き地獄を経験してきた二人の若者の目に映った日本、という一応の理由付けがされてますが、それはさておき、あらゆる手を尽くして体制からて既得権益を奪い取る若者、というのが両作品に共通するカタルシスなわけです。

『野望の王国』

2005年3月13日 (日)

入門公共選択―政治の経済学

■ 書籍情報

入門公共選択―政治の経済学   【入門公共選択―政治の経済学】

  加藤 寛 (編集)
  価格: ¥3,675 (税込)
  三嶺書房 改訂版 (1999/01)

 「公共選択」とは、「現実の政治過程における「政府の失敗」の実態、原因、その防止策について考察したもので、政治の経済学的分析ともいえるもの」(土居, 2002)で、政治を分析する新しい「窓」の一つといえるものです。
 本書は、「公共選択論」という経済学の一分野について、様々な角度からアプローチした解説書です。1983年に第1版が出版され、長く読み継がれてきたものに、約15年間の業績の蓄積を反映して改定したものです。
 出版当初は、二流・俗流の扱いを受けてきた「公共選択論」も今では一定の地位を確立し、特に、民主主義の下での意思決定の過程(集団的意思決定過程)の分析や、財政赤字の問題(官僚の予算規模最大化行動(ニスカネン)、財政錯覚(fiscal illusion)等)については、よく用いられるようになりました。


■ 個人的な視点から

 実は私が読んだのは第1版の方です。千葉大学の鈴木庸夫教授の研究室で、行政経営について雑談をしているときに、「そういう分野に関心があるならこの本を読んでおくといい」とお借りしたのがこの本でした。
 面白くて、メモをとりながら10日位一生懸命読んだ記憶があります。その後、改訂版を自分で購入し、関連する参考文献に読み進んでいきました。
 「政治や政治過程を見る視点」を持ちたいという方には、ぜひお奨めしたい入門書です。


■ どんな人にオススメ?
 ・民主主義の下での意思決定過程に関心のある人。
 ・「大きな政府」の問題に関心のある人。


■ 関連しそうな本

 小林 良彰 『公共選択』
 J .ブキャナン, R . E . ワグナー, 『赤字財政の政治経済学』
 土居 丈朗 『入門 公共経済学』
 アビナッシュ・K. ディキシット(著), 北村 行伸 (翻訳) 『経済政策の政治経済学―取引費用政治学アプローチ』 2005年02月06日
 Jean-Jacques Laffont 『Incentives and Political Economy』
 岩本 康志, 斉藤 誠, 大竹 文雄, 二神 孝一 『経済政策とマクロ経済学―改革への新しい提言』
 赤井 伸郎, 山下 耕治, 佐藤 主光 『地方交付税の経済学―理論・実証に基づく改革』  2005年01月27日

■ 百夜百マンガ

画像が見つかりませんでした。【わが家のささえ】

 実業団のスポーツチームが次々と廃止される中で、チームの人たちってその後どうなっちゃうんだろう、と他人事ながら心配にはなってたんです。
 しかし、それまで積み上げてきた経験やスキルがあっという間に陳腐化してしまう今の世の中では、他人事ではありません。

2005年3月12日 (土)

変革型ミドルの探求―戦略・革新指向の管理者行動

■ 書籍情報

変革型ミドルの探求―戦略・革新指向の管理者行動   【変革型ミドルの探求―戦略・革新指向の管理者行動】

  金井 壽宏
  価格: ¥5,040 (税込)
  白桃書房(1991/07)

 本書は、著者の初期の研究の集大成的な位置づけを持つ学術書です。値段も高く400ページ以上のボリュームがあり、内容も学術書そのものなので読むのに時間がかかります。少なくとも混んでいる電車で立って読むという方にはお奨めできません。
 しかし、前半部分、特に「第1部 リーダーシップ論の成熟化」は、リーダーシップに関する1980年代までの学説のレビューとしてはとてもコンパクトにまとまっています。どのようなリーダー行動が部門の高業績・低業績に結びついているのかという1940~50年代の初期ミシガン研究、情報影響力と集団凝集性、現実のリーダー行動の測定尺度そのものの開発に意義をおくオハイオ州立研究、リーダーシップ有効性はリーダーが置かれた状況に依存するというコンティンジェンシー要因の探求など、単に歴史年表のように学説と研究者の名前を暗記させるような教科書と違い、研究課題の連続性を意識させる形でコンパクトにまとめています。
 コッターやミンツバーグが好きな人は、本書を読むと、彼らの研究の位置づけが理解しやすくなるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 キャリアデザインやリーダーシップに関心を持っている人は、著者の本を何冊か手にしたことがあると思います。難しい概念、新しい学説をやさしい分かりやすい言葉や喩えで解説している著書には定評がありますが、訳書以外ではここまでゴリゴリの学説書はないのではないかと思います。
 ですので、「著者の研究を時系列で追体験するのだ!」といって、古い順に読んで行くことは危険です。まずは分かりやすい一般向けの著書や、コッターやミンツバーグのビジネスマン向けのリーダーシップの本から入って、外堀から埋めて行く方法のほうが理解がしやすいのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・リーダーシップに関心のあるビジネスマン。
 ・コンパクトなリーダーシップ論の解説を探している学生。


■ 関連しそうな本

 金井 壽宏, 沼上 幹, 米倉 誠一郎 (編集) 『創造するミドル―生き方とキャリアを考えつづけるために』
 金井 壽宏 『中年力マネジメント―働き方ニューステップ』
 金井 寿宏, 高橋 潔 (著) 『組織行動の考え方―ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト』
 ジョン・P. コッター (著), 梅津 祐良 (翻訳) 『企業変革力』 2005年02月19日
 ヘンリー ミンツバーグ (著), 奥村 哲史, 須貝 栄 (翻訳) 『マネジャーの仕事』
 モーガン マッコール (著), 金井 壽宏, リクルートワークス研究所 (翻訳) 『ハイ・フライヤー―次世代リーダーの育成法』
 二村 敏子 (編) 『現代ミクロ組織論―その発展と課題』 2005年03月26日


■ 百夜百マンガ

HEAVY METAL甲子園【HEAVY METAL甲子園】

 少年サンデーに連載してました。青年誌では『冒険してもいい頃』とかを書いていた作者が、少年誌では「エロ」を「ヘビメタ」に変えて超絶アホマンガになりました。
 いまなら『エアギター甲子園』とかあってもいいかもしれません。「東京ドーム養成ギプス」なんてどう考えてもエアギター向きだし。

2005年3月11日 (金)

政治学講義

■ 書籍情報

政治学講義   【政治学講義】

  佐々木 毅
  価格: ¥2,940 (税込)
  東京大学出版会(1999/01)

 本書は、著者が受け持っていた東大法学部の「政治原論」での講義の骨格部分を元に、書き下ろしたものです。著者の問題意識としては、「政治原論」という講座において、「政治をどのように読み解くか」という点に重点を置いているということです。
 構成としては、「第1部 原論」と「第2部 現代民主政治論」の2部構成になっており、第1部は、「人間とは」、「政治とは」、「権力とは」というまさに原論的なテーマについて学説史的に展開しています。第2部は、民主政治、投票行動、官僚制、利益集団などの各論的な構成になっており、教科書的な読みやすさで言えば第2部の方になります。
 もし、本書どおりに1年間講義が進められていたとすれば、夏休み前までは辛く難解な上り坂が続くことになりそうです。そして、第1部の峠を越してしまえば、第2部の各論は頭に入りやすくなっているのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 一応法学部卒(東大ではないです)ではありますが、1年間に1単位も取得できないこともあった私ですので、政治学も「なんだか難しそう」ということで苦手意識を持っていました。そこに来てこの本です。おそらく学生時代であれば、苦手意識に拍車をかけることになっていたと思いますが、社会人の目で読むと、結構面白いことが書いてある、という印象です。とはいえ難解なことは難解なのですが。
 「政治学って勉強不足だな」と感じていたときにブックオフで入手しました。正直なところ、いきなりこの本から読むと挫ける可能性がありますので1冊目としてはあまりお奨めしません。しかし、体系的に政治学を学んでみたい、と思う人にとっては挑戦する価値はある本だと思います。本書で紹介されている参考文献も興味深そうなものばかりです。


■ どんな人にオススメ?
 ・気合を入れて政治学を学びたいと思っている人。
 ・とりあえず1冊政治学の本を押さえておきたい人(要根気)。


■ 関連しそうな本

 加藤 寛 (編) 『入門公共選択―政治の経済学』
 高瀬 淳一 『情報と政治』
 岩崎 正洋 (編) 『サイバーポリティクス―IT社会の政治学』
 アビナッシュ・K. ディキシット(著), 北村 行伸 (翻訳) 『経済政策の政治経済学―取引費用政治学アプローチ』 2005年02月06日


■ 百夜百マンガ

江口寿史’S〈なんとかなるでショ!〉【江口寿史’S〈なんとかなるでショ!〉】

 一番のお気に入りは「うしみつ君」。ラッコを呪い殺したり、祟られたりの気の弱さが最高です。
 「白いワニ」は出てこないですが、「落とす」ことを芸の一つにしていた作者ならではの危うい笑いが満載されています。

たけくまメモ:「共犯者」としての編集者

編集とは、一般社会と魑魅魍魎の世界(作家とかライターとか)をつなぐ
恐山のイタコみたいな存在であるといえるでしょう

ということですが、この作品を担当したイタコの皆さんの苦労がしのばれます・・・。

2005年3月10日 (木)

ディジタル・エコノミーを制する知恵

■ 書籍情報

ディジタル・エコノミーを制する知恵   【ディジタル・エコノミーを制する知恵】

  エリック ブラインジョルフソン, ブライアン カヒン (編著), 室田 泰弘, 平崎 誠司 (翻訳)
  価格: ¥2,730 (税込)
  東洋経済新報社(2002/09)

 本書は、ITが社会をどう変えるか、ということにまじめに取り組んだ論文集です。
 元はMITから2000年に出版されていて、下記のサイトから各章を読むことができます。(当時、経済学の分野からIT革命の分析をしたものとしては、他にはOECDの報告書やシャピロ=ヴァリアンなどがありました。)

【Understanding the Digital Economy】

 4つのパートから構成されており、本書の元になったワーキンググループの4つの会議のテーマを反映しています。

・マクロ経済的側面
・ディジタル・エコノミーの構造
・労働需要と市場参加への影響
・組織的な変化

 会議から6年が経ち、「ITバブルに浮かれた古い時代の話」と思われる方もいるかもしれませんが、どちらかというと研究者向けの議論であっただけに、コンサルタントが書いたような単なる未来予測の書ではなく、現在でも通用する理論展開がなされています。
 「電子商取引なんて自分には関係ない」とお思いの方も、ITが社会と組織に与える影響は無視できないと思います。『「ネットワーク経済」の法則』と併せて読むのがお奨めです。


■ 個人的な視点から

 本書を取り上げたのは、特に電子政府や電子申請の関連というわけではありません。ITによって社会や組織がどのように変化するのか、ということを理解するための参考書という位置づけです。
 通信技術の進化は、社会や組織、そして仕事のやり方を大きく変えて行きます。確かに当初は「こんなことができるようになる」ということだけに関心が向きますが、単に「便利になった」というレベルの話ではありません。現在の組織や仕事のやり方を規定しているボトルネックが解消されることで、組織の方が変化させられるのです。
 例えば、現在の「コンビニエンスストア」という業態はIT無しには成立しません。全国のチェーン店の単品ごとの売れ行きを、ほぼリアルタイムで把握することができることで、あれだけの面積しかない店舗に、大量の品種、サービスを詰め込むことができるのです。
 行政の世界は、技術の進化をものともしない程の強い組織慣性を持っていそうですが、社会は行政などには目もくれない程のスピードで変化しています。自分の仕事、職場、組織が、将来どのような姿をしているか、そもそも存在しているのか、という危機感をおぼろげにでも感じた方はぜひ本書を手にとってみてください。


■ どんな人にオススメ?
 ・「バラ色の未来」でも「ヒステリックな拒否反応」でもない冷静なIT革命の分析を探している人。
 ・20年後は自分はどんな仕事をしているのか、という漠然とした不安を持っている人。


■ 関連しそうな本

 カール シャピロ, ハル・R. バリアン (著), 千本 倖生, 宮本 喜一 (翻訳) 『「ネットワーク経済」の法則―アトム型産業からビット型産業へ…変革期を生き抜く72の指針』
 尾高 煌之助, 都留 康 (編著) 『デジタル化時代の組織革新―企業・職場の変容を検証する』
 奥野 正寛, 池田 信夫 『情報化と経済システムの転換』
 岡部 曜子 『情報技術と組織変化―情報共有モードの日米比較』
  横江 公美 『Eポリティックス』 2005年02月11日
 岩崎 正洋 (編) 『サイバーポリティクス―IT社会の政治学』
 矢作 敏行 『コンビニエンス・ストア・システムの革新性』


■ 百夜百マンガ

原色恋愛図鑑【原色恋愛図鑑】

 ビッグコミックスピリッツに連載されていたのをきっかけに単行本買っちゃいました。
 絵だけ見ると少女漫画なんですが、この「妄想モード」炸裂感は『東京大学物語』の村上君も真っ青です。男でも絶対にハマれます。

2005年3月 9日 (水)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究

■ 書籍情報

失敗の本質―日本軍の組織論的研究   【失敗の本質―日本軍の組織論的研究】

  戸部 良一, 寺本 義也, 鎌田 伸一, 杉之尾 孝生, 村井 友秀, 野中 郁次郎
  価格: ¥2,957 (税込)
  中央公論社(1991/08) 文庫

 本書は、日本軍の作戦失敗にいたる意思決定過程を分析することで、現代の日本の様々な組織(企業、行政、他)の意思決定過程の欠陥をあぶりだすことを目的としたものです。そんなわけで、この本は「戦史モノ」ではありません。表紙のデザインが当時の東アジアの地図だったりするので、いわゆる「軍オタ」の人が間違って買ってしまうかもしれませんが、本書はむしろ企業人、経営者という現代の組織人に読んでもらうことを目的としています。
 軍隊という、合理的・階層的官僚制組織の最も代表的な近代組織であるはずの日本軍が、しばしば合理性と効率性に欠く行動をしたのはなぜか、組織的欠陥は何か、を探ることによって、現代の日本の組織一般にも同じような特性や欠陥を見出すことを目的としています。
 ですので、「失敗の本質」として分析されている内容は、現代の日本組織に生きる我々にとっても耳の痛いものばかりです。

○戦略上の失敗要因分析
 ┗あいまいな戦略目的:
   個々の作戦を有機的に結合し、戦争全体をできるだけ有利なうちに終結させるグランド・デザインが欠如していたため、作戦目的が多義性・不明確性を持った。
 ┗短期決戦の戦略志向:
   日米開戦後の確たる長期的展望のないまま戦争に突入した。
 ┗主観的で「帰納的」な戦略策定―――空気の支配:
   戦略策定の方法論を、日本軍は帰納的、米軍は演繹的と単純化することができる。
 ┗狭くて進化のない戦略オプション:
   一連の香料類が存在し、せい添加する過程で、視野の狭小化、想像力の貧困化、思考の硬直化という病理現象が進行した。
 ┗アンバランスな戦闘技術体系:
米軍が平均的軍人の操作が容易な武器体系に標準化したのに対し、日本軍は一点豪華主義で、その操作に名人芸が要求された。

○組織上の失敗要因分析
 ┗人的ネットワーク偏重の組織構造:
   官僚制の中に情緒性を混在させ、インフォーマルな人的ネットワークが強力に機能するという得意な組織であった。
 ┗属人的な組織の統合:
   個人による統合は、融通無碍な行動を許容する一方で、原理・原則を欠いた組織運営を助長し、計画的、体系的な統合を不可能にしてしまった。
 ┗学習を軽視した組織:
   失敗の蓄積・伝播を組織的に行うリーダーシップもシステムも欠如していた。
 ┗プロセスや動機を重視した評価:
   個人責任の不明確さが評価のあいまいさ、組織学習の阻害、声の大きな者の突出につながった。

 これらを読んでどう感じますか。「日本軍」を「我が社」「我が組織」に置き換えてもほとんど違和感がない、という人も少なくないのではないでしょうか。


■ 個人的な視点から

 『1940年体制』には、戦後の統制経済を効率的に運営するために、戦前の官僚組織、地方組織が活用され、主な官僚組織の機能は戦後も維持されてきた、ということが書かれています。つまり、『失敗の本質』によって分析された戦前の日本軍が持つ官僚組織の組織風土・組織文化が現代に根強く残っているのは省庁・地方自治体ではないか、ということです。
 本書(失敗の本質)を読むと、国・地方問わず公務員の多くは、「ほとんど自分の組織に当てはまる」と感じるのではないかと思います。また、歴史のある企業のなかには、戦前の組織風土を残している企業もあるかもしれません。
 『哲学する民主主義』によって分析された地域が持つソーシャルキャピタル、歴史的経路依存性は、国家や地域にのみ存在するわけではありません。官庁や企業という組織にも「負のソーシャルキャピタル」とでも言うべき「失敗の本質」は脈々と受け継がれているのです。


■ どんな人にオススメ?
 ・省庁・地方自治体・大手企業など歴史のある組織で働いている人。
 ・「戦史」に関心のある人にはオススメしません。


■ 関連しそうな本

 野口 悠紀雄 『1940年体制―さらば戦時経済』
 ステファン・P. ロビンス (著), 髙木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日
 印南 一路 『すぐれた組織の意思決定―組織をいかす戦略と政策』 2005年03月14日
 ロバート・D. パットナム (著), 河田 潤一 (翻訳) 『哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造』 2005年03月03日


■ 百夜百マンガ

レッド【レッド】

 『勝手にジャンキイロード』の方が有名な萩原玲二ですが、バンドやってた人にしかわからないギャグ、ステージの高揚感、貧しい生活が描かれた本作品の方が好きです。

2005年3月 8日 (火)

小説スーパーマーケット

■ 書籍情報

小説スーパーマーケット   【小説スーパーマーケット】

  安土 敏 (著)
  価格: ¥530 (税込)
  講談社(1984/01)

 本書は、映画『スーパーの女』の原作となった企業小説です。舞台は埼玉県内の中小スーパーマーケットチェーン、主人公はこのスーパーマーケットを「日本一質の高いチェーンストア」に変えるべく奮闘中、と書くと、行政経営と関係なさそうな感じがするのですが、この小説、または映画はぜひ行政経営に関心のある皆さんに読んでいただきたい必読書です。
 主人公は、スーパーマーケット業界とは全く関係のない金融業から転職してきた全くの素人です。創業者一族の縁故で取締役という肩書きはありますが、武器として持っているのは「顧客の目を持てること」です。「業界の常識」、「職人の壁」に、「お客様の目からどう見えるか」という視点から次々と切り込んでいきます。そして、権威ではなく、共感の輪を広げながら改革の仲間を増やして行くリーダーシップのスタイルからは、多くの学ぶべきことがあります(なんだか最近毎日リーダーシップの話ばかりですね。)。
 初出が昭和55年(1980年)ということもり、今読むとかなり古い部分もありますが、改革の本質は時代には左右されない、のかもしれないので、ぜひ一度手にとってみてください。まずは映画から、というのも当然ありです。難しいこと抜きで面白いですよ。


■ 個人的な視点から

 映画では主人公は普通の主婦(宮本信子)でしたが、小説の主人公は元都市銀行のエリートサラリーマン、しかも創業者一族の親戚、ということもあり、ちょっとかっこよすぎで感情移入しにくいところもあるかもしれません。一段高みから他の登場人物を観察するような描写(企業小説という性質上仕方ないのかもしれませんが)は、作者の目、読者の目としては、物語の状況を理解しやすくするという点でのメリットがありますが、「はじめから強いヤクザ映画の主人公」みたいな感じで個人的には感情移入できませんでした。逆に感情移入できてしまえば、「映画館を出ると肩で風を切った歩き方になる」のかもしれませんね。
 スーパーマーケット業界に限らず、どこの業界でも「職人問題」は改革のキーポイントなのかもしれません。同じ著者による『日本スーパーマーケット原論』ではより鮮明に「職人問題」を取り上げています。


■ どんな人にオススメ?
 ・改革の必要性は感じていても最初の一歩を踏み出せない人。
 ・改革のリーダーシップのスタイルを模索している人。


■ 関連しそうな本

 安土 敏 『日本スーパーマーケット原論―本物のスーパーマーケットとは何か』
 中尾 英司 『あきらめの壁をぶち破った人々―日本発チェンジマネジメントの実際』
 柴田 昌治 『なぜ会社は変われないのか―危機突破の風土改革ドラマ』
 ジョン・P. コッター (著), 梅津 祐良 (翻訳) 『企業変革力』 2005年02月19日


■ 百夜百マンガ

座敷女【座敷女】

 『ドラゴンヘッド』で有名な作者ですが、見えないもの、闇、得体の知れないものへの恐怖という意味ではこちらの作品が習作的な位置づけになっているのではないかと思います。都市伝説というモチーフはドラゴンヘッドでも繰り返し現れています。
 『ドラゴンヘッド』を既に読んだ人にも、まだ読んでない人にもオススメです。

2005年3月 7日 (月)

生活者起点の「行政革命」

■ 書籍情報

生活者起点の「行政革命」   【生活者起点の「行政革命」】

  北川 正恭
  価格: ¥2,000 (税込)
  ぎょうせい(2004/09)

 本書は、前三重県知事、現早大教授の著者が、8年間に渡る「行政革命」のビジネスモデルを自ら語る、というものです(「現早大」と打ったら「幻想大」と変換されてしまいました・・・)。
 三重県庁の改革そのものについては、これまでにもいくつかの文献が出版されています。また、本書の前書きにも「ほとんどが失敗」か「8勝7敗くらいだったかもしれない」とあるとおり、実施された改革策そのものを真似ることにはあまり意味が内容に思われます。むしろ大切なのは、どのようにしてこれらの改革が生まれてきたのか、さらに言えば著者のリーダーシップのスタイルそのものが、「新しい行政のビジネスモデルへの挑戦」だったのではないかと考えられます。
 例えば、「利害調整型の知事ではなく、目的達成型の知事」という言葉は、「問題提起をし続けることが首長の仕事」という横浜市の中田市長の言葉とダブります。また、1万2千時間を職員との対話(ダイアローグ)に充ててきたという姿勢は、日産のCOO就任決定以来、世界中の現場を巡って対話を重ねたカルロス・ゴーン氏の経営姿勢に通じるものがあります。
 本書の構成は、全4章からなり、「第1章 パラダイムの転換期」では、目的達成型の知事、生活者起点の行政、自己決定・自己責任型の職員について語られています。「第2章 行政システム改革」では、事務事業評価システムや率先実行運動など、他自治体の視察が大挙して押し寄せるような三重県庁の改革について、具体的な内容よりも「生活者起点」という視点から見た意味に重点を置いて語られています。「第3章 首長のリーダーシップと緊張感のあるパートナーシップ」、「第4章 新しい国のかたちと協働型市民社会の創造」では、首長のリーダーシップのあり方や新しい国・自治体の形について述べられています。三重県庁改革の資料として本書を手にした人にとっては、読み飛ばされてしまうところかもしれませんが、本書の値段2000円くらいのうち、1500円分くらいの価値はこの第3章、第4章にあると言っても過言ではありません。ぜひこちらもきちんと読んでください。


■ 個人的な視点から

 個人的に行政経営に関心を持ったきっかけは、8年ほど前に「行政評価」という言葉を知ったことでした。その後、「三重県庁が事務事業評価というのをやっているらしい」という事を聞きつけ、人づてに頼んで一連の資料を送ってもらいました。当初、「事務事業評価」という言葉から持っていたイメージは、事業の優劣が数字になってはっきり表れる、という機械的なイメージでしたが、三重県庁の事務事業評価システムで強調されていたのは、「その事業の目的は何か」、「生活者起点で考えた成果は何か」というもので、出てくる数字そのものよりも、数値化にいたる思考・議論のプロセスそのものに重点が置かれたものでした。
 本書を読むと、当時の北川知事がどのような姿勢で事務事業評価システムに取り組んでいたかが伝わってきます。誰が顧客なのか、事業の目的は何か、ということが重要であり、評価システムはそのための(生活者および庁内との)共通言語である、という姿勢は私が送っていただいた資料によく表れていたものでした。

 本書は、「三重県庁の改革そのもの」について書かれているのではなく、新しいリーダーシップのあり方を模索した8年間の「新しいビジネスモデルの実験結果」の報告書として読むこともできます。行政そのものにはそれほど関心がない、という方もぜひ一読されることをお奨めします。


■ どんな人にオススメ?
 ・新しいリーダーシップのあり方を模索している人。
 ・「三重県庁の改革って何だったのか?」と思っている人


■ 関連しそうな本

 印南 一路 『すぐれた組織の意思決定―組織をいかす戦略と政策』 2005年03月14日
 カルロス・ゴーン, フィリップ・リエス 『カルロス・ゴーン経営を語る』 2005年03月05日
 ジョン・P. コッター (著), 梅津 祐良 (翻訳) 『企業変革力』 2005年02月19日
 ばば こういち 『改革断行―三重県知事北川正恭の挑戦』
 南 学, 上山 信一 『横浜市改革エンジン フル稼動 中田市政の戦略と発想』


■ 百夜百マンガ

マッドメン【マッドメン】
 パプワ・ニューギニアと文明社会をつなぐ物語。
 この作品で初めて諸星大二郎を読みましたが面白いです。独特のタッチもはまると抜けられません。

2005年3月 6日 (日)

おしゃべりで世界が変わる

■ 書籍情報

おしゃべりで世界が変わる   【おしゃべりで世界が変わる】

  川上 善郎
  価格: ¥1,680 (税込)
  北大路書房(2004/09)

 本書は「うわさ」の研究の第一人者による「おしゃべり」についての解説書です。本書における「おしゃべり」とは、面と向かって話すものだけに限らず、携帯電話、メール、インターネット掲示板やテレビでのおしゃべりも含む「あらゆる場でのパーソナルコミュニケーション」を指しています。
 これまで、無駄なもの、意味のないもの、とみなされてきた「おしゃべり」の意味を、携帯電話やインターネットなどの新しいコミュニケーションツールの登場という文脈の中で捉えなおしています。
 さて、一口に「おしゃべり」といっても、「楽しくする」、「対面を大事にする」、「社会的なつながりを深める」、「共通の課題を成し遂げる」、「共通理解への到達」など、おしゃべりは多くの目標を持っています。これらの目標を、携帯電話やメール、インターネットなどの新しいメディアによるおしゃべりがどう達成しているのか、また、「口コミ」がどのように広がって行くのか、などが事例とともに解説されています。本書には、著者が東京女子大学と白百合女子大学での講義で行ったアンケートをもとにした事例がふんだんに盛り込まれており、その回答部分を読むだけでも楽しむことができます。
 『ティッピング・ポイント』や『ソーシャルマーケティング』に関心がある人には特にお奨めします。


■ 個人的な視点から

 本書の中で一番インパクトがあるのは、悪口について解説した「第5章 うわさというおしゃべり」ではないかと思います。「入念に計画された悪口の開始」は、悪口を始めるときには自分が言いだしっぺになり「見境なく悪口を言う人」というレッテルを貼られてしまうこと避けるために、他人から悪口を引き出す慎重な誘導方法について触れています。また、「悪口の働き」として、「情報の共有」、「内と外を作る」、「内なる権力抗争」、「社会規範の強化」などを挙げています。
 そして、「悪口のカタルシス効果」ということで紹介されている事例は特に強烈です。
 「悪口を言わないでいるとストレスがたまっていき、自分のなかで何かが破裂しそうになってしまうような気がします。」
 ここまで「悪口」を楽しみにしていることを、自分で認める人は多くはありませんが、本書で取り上げられている悪口体験の多くには思い当たる点が多いのではないでしょうか。

 どこの職場や仕事以外の集まりにも、こういう「悪口好き」の人というのはいるものです。本書では、「女性はうわさ好き」というのは女性自身も持っているステレオタイプな思い込みに過ぎないことを述べていますが、男の悪口好き、特に人に悪口を言わせようとして軽い「ジャブ」を振ってくる人には要注意です。そういう人に乗せられてペラペラと悪口を話させられた翌日には、今度は悪口の相手のところで嬉々として自分の悪口を話させているに違いありませんから。


■ どんな人にオススメ?
 ・「社会を変える」方法を探している人。
 ・「おしゃべりは無駄なもの」と考えている人。


■ 関連しそうな本

 マルコム グラッドウェル (著), 高橋 啓 (翻訳) 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 2005年02月12日 
 フィリップ コトラー, エデュアルド L. ロベルト (著), 井関利明(監訳) 『ソーシャル・マーケティング』 2005年02月14日 
 柴田 昌治 『なぜ会社は変われないのか―危機突破の風土改革ドラマ』


■ 百夜百マンガ

ショムニ【ショムニ】

 ドラマ化されたのでタイトルだけは知っている人の多い作品ですが、ドラマと原作はまるで異なります。ドラマは主人公「坪井千夏」が大活躍する痛快OL活劇ですが、原作は地味OL「塚原佐和子」の成長(?)物語がメインの軸になっています。千夏は作者の「飲み屋の説教」を肩代わりする役なのでドラマのような「カッコイイ痛快お姉さま」を期待していると外れかもしれません。(その線のキャラクターなら最近では「巨娘」のジョーさんがいます。朝チュン・・・)

2005年3月 5日 (土)

カルロス・ゴーン経営を語る

■ 書籍情報

カルロス・ゴーン経営を語る   【カルロス・ゴーン経営を語る】

  カルロス・ゴーン, フィリップ・リエス
  価格: ¥1,680 (税込)
  日本経済新聞社(2003/09/10)

 一昨日の報道で、
「「憧れる経営者」の首位は日産ゴーン氏、2位にライブドア堀江氏」

という記事が出てましたので、今日はカルロス・ゴーン関連の書籍を紹介します。
 明日はホリエモンです(嘘です。でも『100億稼ぐ仕事術』は本当に良いです。)。

 本書は、カルロス・ゴーン氏へのインタビューをまとめたもので、原書には『CITOYEN DU MONDE(地球市民)』というタイトルが付けられています。ブラジルで生まれ、フランスで教育を受け、フランス、ブラジル、北米、欧州でキャリアを積み、日本で日産の再建を果たした経営者であるゴーン氏のインタビューに冠するタイトルとして、「地球市民」はまさにふさわしいものだと思われます。
 先日、後任のCOOを指名し、「日産のゴーン」から「ルノー・日産連合のゴーン」に就任する予定のゴーン氏の、生い立ちから、経営者として重ねてきたキャリアが本人の誠実な言葉で語られています。
 本書に先立つ2年前に出版された前著『ルネッサンス』と重複する部分も多く、続けて読むのは大変かもしれませんが、日産の改革そのものに関心がある人は別として、「カルロス・ゴーン」という経営者がどのように育ってきたのか、クロス・ファンクショナリティに代表される彼の経営手法がどのように育まれてきたのかを知る上では、むしろこの重複した部分、特に南米・北米ミシュラン、ルノーでの経験の部分が大変重要です。『ルネッサンス』はミシュラン時代の話が、本書はルノーと日産の話が充実していますので、両方を読み比べると複眼的に読むことができるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 リーダーシップというものを考える上で大変参考になります。ゴーン氏が重視しているのは「命令すること」ではなく、「聴くこと」と「意思決定すること」です。「部下の話は聴かず、意思決定は連帯責任」という経営とは全く逆のことをやっているのです。
 行政の世界だと、前三重県知事の北川早大教授は、8年間の任期中に1万2千時間に及ぶ職員との対話(ダイアローグ)を重ねてきたそうです。また、横浜市の中田市長は、「問題提起をするのが政治家である首長の役目、それに対するオプション(選択肢)を用意するのが職員の役目。」、「自分自身の腹案は持っていても、それを職員に話してしまうことはしない。職員が自分の頭で考えなくなる。」と言っています。
 今後、このようなリーダーシップのスタイルが、企業だけでなく多くの組織で一般的になると考えられます。しかし、強調しておきたいのは、このリーダーシップというものが企業経営者や知事・市長だけ、「リーダー」だけが持つ特別なものではない、ということです。中間管理職にも、一社員にも、アルバイトにも共通したビジネスのスキルとしてリーダーシップは必要とされます。
 今後、「地球市民」的なリーダーシップを身に付けたい方には必読書です。


■ どんな人にオススメ?
 ・「自分のマネジメントスタイルは『地球市民』的か?」と自問できる経営者・管理職の人。
 ・「将来はゴーン氏のようなリーダーになりたい」と思う人。


■ 関連しそうな本

 カルロス・ゴーン (著), 中川 治子 (翻訳) 『ルネッサンス ― 再生への挑戦』
 デビッド・マギー (著), 福嶋 俊造 (翻訳) 『ターンアラウンド ゴーンは、いかにして日産を救ったのか?』
 北川 正恭 『生活者起点の「行政革命」』 2005年01月22日
 南 学, 上山 信一 『横浜市改革エンジン フル稼動 中田市政の戦略と発想』


■おまけ

100億稼ぐ仕事術   【100億稼ぐ仕事術】

  堀江 貴文 
  価格: ¥690 (税込)
  ソフトバンクパブリッシング(2005/02/19)

 ゴーン氏に続いて「あこがれる経営者」第2位にランキングされているホリエモンこと堀江社長の本です。
 マスコミで注目される派手な言動と異なり、「ヒト、ジカン、ジョウホウ、カネ、ツール」の各章に書かれているのは非常にシンプルで地味なことばかりです。もし、堀江社長のことを知らない人が読んだら、単なる当たり前の仕事の仕方が書いてある本だと思うかもしれません。100億稼ぐのも1000万稼ぐのも基本は同じシンプルなところにあるものなのでしょうか。
 先月文庫本も出たことですし、とにかく先入観無しに読んでみてください。ホリエモンを見る目が変わるかもしれません。


■ 百夜百マンガ

サーキットの狼【サーキットの狼】

 この当時「スーパーカーブーム」というのがありました。
 絵は下手、特に人間を書くのは下手なんですが、とにかく作者の車への熱い思いが山のようにこめられています。

2005年3月 4日 (金)

ニュージーランド行革物語―国家を民営した国

■ 書籍情報

ニュージーランド行革物語―国家を民営した国   【ニュージーランド行革物語―国家を民営した国】

  山田 宏, 中田 宏, 長浜 博行
   価格: ¥1,529 (税込)
  PHP研究所(1996/10)

 本書は、現杉並区長(山田)、現横浜市長(中田)、現衆議院議員(長浜)の3人の松下政経塾出身者が、3人とも衆議院議員だった1996年にニュージーランドを訪れ、首相をはじめとする政治家や官僚、企業関係者らにインタビューを行ってきたものです。
 このインタビューから約9年が経ち、ニュージーランドの改革の成否については、功罪ともに様々な検証がされているところではありますが、何よりも本書から伝わってくるのは、改革への強い意志と実行力です。
 国家財政の破綻という現実の危機に直面していたからこそ、ドラスティックな改革を実行することができたという見方もできますが、規制大国から「世界で最も規制の少ない国」への転換は、世界中の行政改革、もちろん日本の行政改革に大きな影響を与えてきました。
 ニュージーランドの改革に関する文献は数多くありますが、「政治家自身の目で綴られた改革」という意味で本書は大きな価値を持っています。


■ 個人的な視点から

 先月は4日(ハマリバ収穫祭)、5日(PMFJ例会)と2日続けて横浜市の改革の話を聞く機会があり、中田市長の話も聴けたのですが、「民の力が存分に発揮される都市」という横浜市のコンセプトは、2002年の横浜市長選挙に先立つこと6年前のこのニュージーランド訪問が大きな影響を与えたことは間違いないと思われます。
 また、横浜市をはじめ全国の自治体、省庁改革に影響を与えた三重県の改革もニュージーランドの影響を受けており、本書のインタビューが行われた3ヵ月後の7月に、当時の村尾信尚総務部長の指揮の下、ニュージーランドの視察を行っています。
 ニュージーランドは、「人間よりも羊が多い」と言われるほどで、人口は約400万人ですので、横浜市(350万人)、三重県(190万人)の改革のモデルにするにはちょうど良い規模だったのかもしれません。「日本とは人口や財政の規模がまるで違うので参考にならない。」ということもよく言われますが、「公(おおやけ)の仕事は身分保障のある公務員でないとできない」という固定観念を覆す先例としては大変な価値があると考えられます。


■ どんな人にオススメ?
 ・横浜市や三重県の改革に関心を持っている人。
 ・市場化テストなどの行政の民間開放をビジネスチャンスと考える人。


■ 関連しそうな本

 デビッド オズボーン, テッド ゲーブラー 『行政革命』 2005年01月22日 
 大住莊四郎 『ニュ-・パブリック・マネジメント  理念・ビジョン・戦略 』 2005年01月23日 
 白川 一郎, 富士通総研経済研究所 『NPMによる自治体改革―日本型ニューパブリックマネジメントの展開』
 南 学, 上山 信一 『横浜市改革エンジン フル稼動 中田市政の戦略と発想』
 中村 征之 『三重が、燃えている』
 村尾 信尚 『「行政」を変える!』
 P.ダルジール, R.ラティモア (著), 青山 則雄, 岡田 良徳 (翻訳) 『ニュージーランド・マクロ経済論―改革の成果と評価』
「NPMの展開およびアングロ・サクソン諸国における政策評価制度の最新状況に関する研究」 『国土交通政策研究』第7号 (要旨) (PDF)


■ 百夜百マンガ

キン肉マン【キン肉マン】

 連載を開始した当時は、牛丼食ってるギャグマンガだったんですが、いつの間にかトーナメントで戦ってました。
 『ターちゃん』や『ドラゴンボール』とかでもそうなんですが、トーナメントで戦い始めるとどんどん強さがインフレして行っちゃって後で読むとつまんないですね。
 『ジョジョ』でもワムウ(Wham!)との戦いなどは「闘技場方式」でしたが、世代交代によって話がリセットされるので長く読めるんでしょうか。

2005年3月 3日 (木)

哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造

■ 書籍情報

哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造   【哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造】

  ロバート・D. パットナム (著), 河田 潤一 (翻訳)
  価格: ¥4,095 (税込)
  NTT出版(2001/03)

 本書は、南北に長いイタリアにおいて、20年にわたる調査を行い、州によって民主制度のパフォーマンスに差が生じる原因が、市民共同体にどれだけの「社会資本」、つまり、互酬性の規範や市民的積極参加といった形態で蓄積された信頼、規範、ネットワークを持っているか、が蓄積されているか、にあることを見出したものです。
 鍵となる概念としては、「ある社会のゲームのルール」としての制度、歴史的経路依存性(path dependence)、共有地の悲劇、囚人のジレンマ、などです。
 本書の読み方としては、第1章から順を追って読んで行くという方法ももちろんありますが、延々と制度や統計の話を読み続けるというのは結構根気が要りました(幸いにして、私が本書を読んだのは「ぷらっとこだま」を使って東京から名古屋に移動する車中だったので何とか投げ出さずにすみましたが)。『ボラ経』や『コモンズ』の流れから本書にたどり着いた方ならば、最初に第6章の種明かしを読んでから本編に入った方が読み進めやすいのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書のタイトルだけ見ると、「哲学」「民主主義」「市民」という言葉が並んでいて、気圧されてしまうところがあるのですが、鍵となる概念を考えてみると、実は企業の組織風土改革の話にも通じる相似形を成していることが分かります。
 近年、「社会資本(social capital)」という言葉が至るところで使われるようになり、様々な問題に対して、「社会資本を高めていけば解決できる」というようなことを主張する人が増えてきましたが、本書は、社会資本の蓄積は数百年にわたる歴史的な経緯に大きく左右され、一朝一夕には変えられない頑健さを持っていることを示しています。つまり、便利に使われる「社会資本」という言葉が課題解決の難しさそのものを表している、ということです。
 似たような使われ方をする言葉に、「企業文化」や「組織風土」という言葉があります。何か課題が発生したときに、「企業文化が問題の原因だ」、「組織風土を変えることが重要だ」ということが主張されることがありますが、企業文化や組織風土とは、その企業は組織における「社会資本」そのものであり、様々な制度の間の補完性によって補強された、社員をはじめとする多くの主体間の均衡状態そのものなのです。そのため、「現在の企業文化」という均衡点そのものを動かそうとしても、直ぐに元の均衡点に戻ってきてしまいます。

 では、この均衡点は絶対に移動しないものなのでしょうか。
 青木昌彦らによる「比較制度分析」の研究成果によれば、均衡点は必ずしも一つではなく、複数の均衡点が存在しえます。ある均衡点Aから別の均衡点Bに移動するのは、外生的なマクロショック(アメリカの大恐慌や石油ショックなど)を受けた場合があります。また、制度同士が補完性を持っているということは、どれか一つの制度が変化するとドミノ倒し的に他の制度が変化する、ということもありえます。
 本書の巻末においても、「公式の制度を変えると政治的実践も変わる」という事実を指摘しています。改革への希望を捨てる必要はありませんが、「大半の制度の歴史はゆっくり動く」ということを肝に銘じながら粘り強く取り組むことが大切だということだと考えます。


■ どんな人にオススメ?
 ・「社会資本」という言葉に関心を持った人。必読書です。
 ・制度改革を担当している人。


■ 関連しそうな本

 ダグラスC. ノース (著), 竹下 公視 (翻訳) 『制度・制度変化・経済成果』
 スロウイン エッゲルトソン (著), 竹下 公視 (翻訳) 『制度の経済学―制度と経済行動』
〈上〉〈下〉
 松井 彰彦 『慣習と規範の経済学―ゲーム理論からのメッセージ』
 ローレンス・レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳) 『コモンズ』
 金子 郁容 『ボランタリー経済の誕生―自発する経済とコミュニティ』
 R. アクセルロッド (著), 松田 裕之 (翻訳) 『つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで』
 リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆, 岸 由二, 羽田 節子, 垂水 雄二 『利己的な遺伝子』
 青木 昌彦 (著), 滝沢 弘和, 谷口 和弘 (翻訳) 『比較制度分析に向けて』


■ 百夜百マンガ

あさりちゃん【あさりちゃん】

 小学館の学習雑誌で連載されていたものをよく読んでいました。
 当時「アサリ」は分かったのですが、「タタミ」は何のことだか分かりませんでした。今の小学生は尚のこと分からないのではないかと思います。

こんなんです→「たたみいわし」

2005年3月 2日 (水)

知識創造の経営―日本企業のエピステモロジー

■ 書籍情報

知識創造の経営―日本企業のエピステモロジー   【知識創造の経営―日本企業のエピステモロジー】

  野中 郁次郎 (著)
  価格: ¥2,650 (税込)
  日本経済新聞社(1990/12)

 本書は、一時期ブームになった「ナレッジ・マネジメント(KM)」の理論的な基礎になっていたものです。KM自体は、ブームが暴走して、「情報システムを入れてナレッジのデータベースさえ作ればいい。さあ、あなたが持っている暗黙知を入力しなさい。」という誤った受け止められ方としてしまったために、「ナレッジ・マネジメント? データベースのことでしょ? あんなの誰も書かないよ。」という拒否反応を示す人が少なくありませんが、本書で分析されている「知識(ナレッジ)」とは、そのようなものではありません。以下に概要を紹介します。

 「第1章 経営理論における知識と情報」では、それまでの経営理論における人間観や組織観、そしてそれが依拠する知識・情報観を概観しています。これらに共通するものは、
(1)人間の「諸能力の限界」に注目している
(2)人間を「情報処理者」としてみなす
(3)環境の変化に対する組織の「受動的な適応」を重視している
という点です。
 これに対して著者は、「組織は各構成員の創造性に注目し人間を知識・情報創造者としてみなし、組織的知識の創造過程を通じて環境に対し積極的な提案をしていかなければならない」としています。

 「第2章 組織的知識創造理論」では、「知識創造」(knowledge creation)という視点から、新たな組織理論を構築することを目的としています。
 著者は、「知の変換過程の類型」を下図のように分類しています。
知の変換過程の類型
 そして、暗黙知と形式知の循環を知の創造の基本とし、その理由を以下のとおりとしています。
(1)分節化と内面化には、自我(セルフ)あるいは主観性が深く関わっている
(2)分節化と内面化はみずからが主体的に関与するために、自ら主体的に情報と知識を創り出そうとする→自己組織化(self-organizing)
(3)分節化の過程は矛盾を内在させている

 「第3章 組織的知識創造のマネジメント」では、具体的な事例分析として、
・自己組織化が生起する単位としての異質な個からなる集団という相互作用の「場」
 →ホンダのシティ開発、松下電器の自動ホームベーカリー商品化、エプソンのグループ制
・暗黙知が共有され、新たなパースペクティブが創造されるための濃厚かつ継続的な対話
 →ホンダの「タマ出し会」、日本企業の製品開発プロセスにおける合宿、キャノンのミニコピア開発
・組織間ネットワークの中からの暗黙知の共有と新たな概念の創造
 →マツダのニューRX7開発、富士ゼロックス
などの例が紹介されています。

 「第4章 企業における知識創造――事例研究」では、GEの企業革新(トップダウン)、3Mの製品革新(ボトムアップ)、花王のコンパクト洗剤「アタック」の製品開発および日産自動車の企業変革(ミドル・アップダウン・マネジメント)などの事例を通じて、「ミドル・アップダウンに象徴的に表される組織的知識創造は、革新的な日本企業が意識的あるいは無意識的に創り出した概念として世界に貢献できるマネジメント方法論の一つ」であることを示しています。

 最後の「第5章 組織的知識創造の課題と超克」では、前章まで論じてきた組織的知識創造の問題点を指摘し、その問題点の克服策を探索しています。

 本書は、「経営における知識」を考える上での基本書です。この問題に関心がある方はぜひ手にとってみてください。また、より読みやすいものとしては、ビジネス書的な体裁の『知識創造企業』や新書の『知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代』などがあります。


■ 個人的な視点から

 「ナレッジ・マネジメント」と聞くと、何か大掛かりなものというイメージがありますが、最近のblogの広がりや「2ちゃんねる」なども「暗黙知→形式知」という流れの中にあるような気がします。
 日本企業における年齢構成の変化や働き方の変化、「飲みニケーション」の減少などの中で、「知識」のあり方は大きく変わっています。様々な最新の「ツール」を導入すること自体が悪いことだとは思いませんが、まずは基本に立ち返って「知識とは何か」を考えることが大切だと思います。


■ どんな人にオススメ?
 ・職場のコミュニケーションのあり方に不満を持っている人
 ・「ナレッジ・マネジメント」は情報システムのことだと思っている人


■ 関連しそうな本

 野中 郁次郎, 竹内 弘高 (著), 梅本 勝博 (翻訳) 『知識創造企業』
 野中 郁次郎, 紺野 登 『知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代』
 尾高 煌之助, 都留 康 (編著) 『デジタル化時代の組織革新―企業・職場の変容を検証する』
 奥野 正寛, 池田 信夫 『情報化と経済システムの転換』
 青木 昌彦, 安藤 晴彦 『モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質』


■ 百夜百マンガ

コブラ【コブラ】

 小学生の頃に、少年ジャンプで読んでました。
 どうしても左腕の「サイコガン」の方に目が行ってしまうんですが、「ラグボール」とか面白かったです。
 でも今見ると『スターウォーズ』って言われればそうですね。当時の時代を感じます。

2005年3月 1日 (火)

パブリック・セクターの経済・経営学

■ 書籍情報

パブリック・セクターの経済・経営学   【パブリック・セクターの経済・経営学】

  山内 弘隆, 上山 信一 (編著)
  価格: ¥3,570 (税込)
  NTT出版(2003/09)

 本書で言いたいことを端的に表しているのは、帯に書いてある『「行政」から「経営」へ、「制度」から「戦略」へ。』という言葉ではないかと思われます。ものすごく大雑把に言うと「応用経済学者+行政経営フォーラム」という感じの執筆者陣なんですが、これだけ異質な内容・執筆者を一緒にしてしまったところがまず面白いです。
 大雑把に言うと、「第1部 パブリック・セクターの経済学の考え方」が経済学者サイド、「第2部 パブリック・セクターの経営学の考え方」が行政経営フォーラムサイド、「第3章 事例分析」が両者混合、という構成になっています。
 本書の持つ意味は、『「行政」が作る「制度」こそがパブリックだ!』という固定観念(これは、官僚だけが持っているというよりも、何でも政府に頼ろうとする「お上」意識との共依存関係が生んでいるわけですが)を壊し、パブリックとは「官」のことではなく「公」、つまり自分たち自身の問題であり、今必要なのは「制度」ではなく「戦略」なんだ、ということをぶち上げるための狼煙という部分にあるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 最近の若い経済学者は、著書などを通じて、積極的にパブリック・セクターの改革についての意見を発信するようになったような気がします。『地方分権改革の経済学』などはその一例です。また、竹中平蔵経済財政・郵政民営化担当大臣のように、経済学者が直接政策の責任者として登用される例もできました(今は国会議員ですが)。
 しかし、いまだに経済学者が政策に関与する「正式ルート」は、省庁の審議会の委員という立場を通じてではないでしょうか? ここで議論されることは、いったん官僚のフィルターを通した「制度」としてでしか政策として現れません。実際には、法案作成のテクニックを持つ官僚の裁量部分はかなり大きいのではないかと思われます。
 本書のような理論と実務をつなぐ意欲的な本が多く世に出ることで、制度を作る官僚というフィルターを通さずに、より本質的な議論が盛んになることを期待します。


■ どんな人にオススメ?
 ・「行政経営」の理論的な裏づけを探している人。
 ・経済学の分野からパブリック・セクターの実務に関心を持った人。


■ 関連しそうな本

 大住 荘四郎, 玉村 雅敏, 上山 信一, 永田 潤子 『日本型NPM―行政の経営改革への挑戦』
 土居 丈朗(編著)『地方分権改革の経済学―「三位一体」の改革から「四位一体」の改革へ』
 佐藤 雅彦, 竹中 平蔵 (著) 『経済ってそういうことだったのか会議』


■ 百夜百マンガ

代打屋トーゴー【代打屋トーゴー】

 昼は東京区役所土木課の地味な公務員の吉本大介が、夜はスーパー探偵『代打屋トーゴー』に。
 『警察署長』の連載を残して亡くなられた作者の人情味とエンタ-テイメントが同居したすばらしい作品です。

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