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2005年4月 7日 (木)

男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット

■ 書籍情報

男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット   【男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット】

  佐藤 博樹, 武石 恵美子
  価格: ¥777 (税込)
  中央公論新社(2004/03)

 本書は、男性の育児休業取得について、現実の男女の仕事や家庭での役割分担のデータに立脚しながら、企業にとっても、職場にとっても、本人のキャリアにとってもプラスの効果があることを解説しています。
 印象に残ったのは以下の点でした。
・両立支援は従業員から高い勤労意欲を引き出すための労働条件、「新しい報酬」であること。
・ファミリー・フレンドリー施策には、性別による役割分業を固定化しかねない要素があり、女性の職場を「マミー・トラック」(母親が子育てしながら仕事を続けられる職場)に限定させてしまうことにもなるので、均等施策と同時に進める必要がある。
・男性の育児休業取得の動機の中には、長期の休業を取れるチャンスだからこれを機会にゆっくりしたい、というものも多いが、実際に育児休業に入ると「休業」生活には程遠いこと。
・男性の育児休業取得をきっかけにして、職場においても、情報共有など仕事のやり方を見直し、生産性を上げることができること。

 次世代育成支援のための施策が行政や企業から次々と打ち出される中で、単なる従業員サービスや出生率を上げるという観点だけではなく、企業や社会全体を新しい時代に対応した生産性の高いものにしていくという観点から、個々の施策を捉え直すとより有効性が高まるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 1月に著者による「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」セミナーに参加しました。賃金や労働時間だけでなく、就ける仕事や能力開発が大事な労働条件になっているので、企業の側にとっても取り組む価値があることや、新しい従業員像(就業ニーズ)に対応できる人事の制度・運用・働き方の再編の必要性についての話を聴き、WLBという言葉に関心を持ちました。それまでは、男女平等の観点から捉えた男性の育児休業の話を聞くことが多かったので、育児に限らない「仕事と生活のバランス」という視点は大変新鮮でした。

 さて、キャリアデザインを考えて行く上で、仕事の上でも脂の乗る時期は、育児という家庭生活においても最もエネルギーが必要な時期でもあります。この時期に、家庭を顧みずに仕事に打ち込む、という生活を送ることは、短期的には仕事上の能力を伸ばす上で有効な選択肢かもしれません。しかし、生活の全て、体力と時間の全てを振り向けるような仕事のやり方で身につけてきた能力を、40代50代になってもそのまま活かすことができるでしょうか。中長期的に見ると、年齢を経て、仕事上の責任が重くなり、家庭や地域での責任も重くなる中で、がむしゃらに体力と時間をつぎ込むような仕事のやり方を続けていたら、仕事か家庭のどちらかがパンクしてしまうのではないでしょうか。
 高橋伸夫の『できる社員は「やり過ごす」』は、ちょうど子育て時期と重なる「係長」(的な仕事)の時期に、能力に対して過剰な仕事、全部馬鹿正直にこなしていたらパンクしてしまうような量の仕事を与えられることによって、重要な仕事を取捨選択し他者に仕事を振る能力、つまり「やり過ごす」能力を身につけることができる、ということを述べています。育児休業を取得し、その後の育児にもコミットしながら仕事を続けて行くことは、この「やり過ごす」能力を仕事と生活の全般において身につけることにもなります。そのため、将来、より責任のある仕事、体力だけでは対応しきれないような仕事に就くための能力を身につけるという意味でも、育児へのコミットは重要な役割を持つことになります。自分一人で抱え込む以上の仕事をできるようになるためには、育児休業などをはじめとする育児へのコミットは、大変有効なきっかけを提供してくれるのです。


■ どんな人にオススメ?

 ・(子供の年齢にかかわらず)子育てをしているお父さん。
 ・育児以外にも仕事と生活のバランスを考え直したい人。


■ 関連しそうな本

 高橋 伸夫 『できる社員は「やり過ごす」―尻ぬぐい・やり過ごしの凄い働きを発見した』
 ダニエル ピンク (著), 池村 千秋 (翻訳), 玄田 有史 『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』 2005年02月02日
 秋山 進, 山田 久 『インディペンデント・コントラクター 社員でも起業でもない「第3の働き方」』
 日本経済新聞社 (編) 『働くということ』 2005年02月24日
 金井 壽宏 『働くひとのためのキャリア・デザイン』 2005年01月30日
 田尾 雅夫 『会社人間はどこへいく―逆風下の日本的経営のなかで』 2005年02月27日


■ 百夜百マンガ

よしえサンち【よしえサンち】

 上に関連して育児マンガです。
 元「実在OL」のよしえさん夫婦の親バカぶりは、自分に子供ができる前はバカにして読んでましたが、自分も人の親になると笑えません。
 妊娠、出産、育児をリアルタイムで書いているように感じられますが、本当は心配なので1年のタイムラグを置いていたそうです。

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