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2005年5月

2005年5月31日 (火)

国の常識は地方の非常識―志ある首長39人が本音で語る

■ 書籍情報

国の常識は地方の非常識―志ある首長39人が本音で語る   【国の常識は地方の非常識―志ある首長39人が本音で語る】

  PHP研究所 (編集)
  価格: ¥1,260 (税込)
  PHP研究所(2004/06)

 本書は、全国の市区町村及び府県の首長39人が、地方から国を変えようとする志をそれぞれの実践をベースに熱く語ったものです。本書を生むきっかけとなったのは、「全国首長連携交流会」、「提言・実践首長会」、「21世紀臨調」、「市町村サミット」などの多くの首長同士の連携組織です。巻末にはこれらの組織の提言も収められています。
 ニセコ町の逢坂町長、志木市の穂坂市長、太田市の清水市長、増田岩手県知事、浅野宮城県知事など、マスコミや多くのシンポジウム、講演会などで全国区で顔が知られている首長さんのメッセージももちろん「買い」ですが、全国的にはあまり名が売れていないローカルな(地方自治体の首長なのだからローカルなのは当たり前なのですが)首長さんのメッセージの方がとても読み応えがあります。どうしても全国区の論者が「国と地方」という大きな話になるのに対し、あくまで「おらが町(村)」をベースに国のあり方を論じているところに足腰の強さを感じました。


■ 個人的な視点から

 本書の面白いところは、首長さんの主張が必ずしも一枚岩ではない点です。特に、権限委譲を求める府県の知事と、「地方切捨て」を危惧する小さな町村の首長では地方分権に対する考え方が相当異なってくると思います。しかし、この多様性こそが地方の持つ強みでもあり、本書に深みを与えているところではないかと思います。
 39人もいますので、中には企画課の職員にゴーストライターをまかせっきりにしたような、個性が伝わってこないものもありますが、首長本人の思い入れがたっぷり凝縮されたようなメッセージもたくさんあります。将来、この中から新しい「地方の顔」となる首長さんが現れるかもしれないかと思うと楽しみです。


■ どんな人にオススメ?

・全国の個性的な首長さんのお話を聞いてみたい人。


■ 関連しそうな本

 逢坂誠二 『町長室日記―逢坂誠二の眼』 2005年05月27日
 浅野 史郎, 北川 正恭, 橋本 大二郎 『知事が日本を変える』 2005年04月02日
 埼玉新聞社 (編集) 『生き生きまちづくり 埼玉県志木市の挑戦』 2005年04月17日
 清水 聖義 『前例への挑戦―自治体はサービス創造企業』


■ 百夜百マンガ

茄子 (2)【茄子 (2) 】

 1巻に引き続き登場する借金苦の女子高生「高橋」が世捨て人の「高間」の村に登場、守銭奴と言われても生活力を発揮します。
 そして2巻の一番の山は「東都早もの喰」「続・東都早もの喰」です。大真面目な顔で天狗のお面をつけちゃう釜谷がおもしろすぎます。
 国際スパイに巻き込まれる妄想炸裂サラリーマンもグーです。

2005年5月30日 (月)

日本企業 変革期の選択

■ 書籍情報

日本企業 変革期の選択   【日本企業 変革期の選択】

  伊藤 秀史 (編著)
  価格: ¥3,780 (税込)
  東洋経済新報社(2002/09)

 本書は、「競争力が低下した」と言われている日本企業について、アンケートや聞き取り調査、理論モデルの構築、新しいデータセットによる実証によって、日本企業が進むべき方向を議論したものです。
 構成としては、「第1部 「日本企業」を問い直す」では、編著者による概論やシリコンバレーの企業システムとの比較を、「第2部 企業統治(コーポレート・ガバナンス)のメカニズム」では、経営者選任の分析や自律的ガバナンス、持合解消などの資金調達方法の変化を、「第3部 戦略的意思決定は行われるのか」では、トップマネジメントに関するアンケートや事業経営管理者に対する聞き取り調査、子会社のガバナンスに関するアンケートを、「第4部 イノベーションの源泉は何か」では、工作機械産業へのアンケートや半導体露光装置産業への聞き取り調査、ゲーム産業におけるリーダーシップの理論モデルの構築、となっています。
 本書のメッセージである「理念型としての日本企業への理解がまだまだ不十分である」は、政策提言書や理論書のように明解ではありませんが、様々な対象へのアンケート、聞き取り調査によって構成されているので、厚みと重みを持っています。


■ 個人的な視点から

 編著者の他の文献と比較すると、アンケートや聞き取り調査に重点を置いている点が本書の特徴です。以前、別冊宝島の『わかりたいあなたのための経営学・入門』に収録された「「組織の経済分析」とはいかなるものか」において、加護野忠男氏の「「鋭い刃物」が切り残すもの」の一部を引用し、企業組織を分析対象とする以上、面接調査、質問表調査などに頼らざるを得なくなる、と書かれていましたが、本書では、その言葉どおり、「切り口の鈍い方法」を全面的に用いています。本書の重みは、「鋭い刃物」による理論書を数多く執筆した編著者が、アンケートや聞き取りなどの方法を用いているからこそ生まれているのではないかと思います。

「組織の経済分析」とはいかなるものか


■ どんな人にオススメ?

・薄っぺらな「提言書」「警告の書」に飽き飽きした人。


■ 関連しそうな本

 伊藤 秀史 (編) 『日本の企業システム』 2005年04月24日
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳) 『組織の経済学』 2005年01月24日
 小佐野 広 『コーポレートガバナンスの経済学―金融契約理論からみた企業論』 2005年02月23日
 伊藤 秀史, 小佐野 広 『インセンティブ設計の経済学―契約理論の応用分析』 2005年02月26日
 別冊宝島編集部(編) 『わかりたいあなたのための経営学・入門』 2005年01月26日


■ 百夜百マンガ

茄子 (1)【茄子 (1) 】

 映画『アンダルシアの夏』の原作として有名ですが、映画になったのはオムニバス形式の1作品で、他の作品ではスペインは出てきません。
 「若い女には値打ちがあるが 若い男にはないからなあ」って言っちゃう世捨て人のような高間(天狗に出てきた高間教授ではないけど結局は教授に?)や宝探しをしている松浦など魅力的なおっさんが多数登場します。

2005年5月29日 (日)

つげ義春全集 (別巻) 苦節十年記/旅籠の思い出

■ 書籍情報

つげ義春全集 (別巻) 苦節十年記/旅籠の思い出   【つげ義春全集 (別巻) 苦節十年記/旅籠の思い出】

  つげ義春
  価格: ¥2,205 (税込)
  筑摩書房(1994/06)

 本書は、「ねじ式」などで有名な漫画家つげ義春氏によるエッセイを、『つげ義春全集』の別巻として収録したものです。
 フラリと立ち寄った旅先の宿、それも「旅籠」という言葉が似合う古い商人宿が著者の作中にはよく出てきますが、それらのイメージの元になった各地の宿が多くは地名入りで紹介されています。著者の作品には、房総を舞台にしたものが多く、本書の「亀田屋の女」は「庶民御宿」という作品とリンクしますし、「やなぎや主人」は内房の長浦駅の近くまでまだ砂浜があった頃(今は埋め立てられて跡形もありません。)の話です。本書にも大多喜の「寿恵比楼旅館」や「大屋」等の写真が掲載されています。
 「旅籠の思い出」の他にも、「必殺するめ固め」「ヨシボーの犯罪」などの悪夢系作品の元ネタと思われる「夢日記」などのエッセイのほか、全国の鄙びた温泉を旅した「桃源行」「つげ義春流れ雲旅」のイラストが収録されています。


■ 個人的な視点から

 昨日に続いて、漫画家によるエッセイ集の紹介です。
 手塚治虫氏のエッセイが、作品自体と距離を置いた作者自身の語りとして安心して読むことができるのに対して、つげ氏の作品は、作中に作者自身が登場する私小説的な内容のものが多いため、エッセイといっても作品と切り離して読むことができず、作品を読むのと同じように引き込まれてしまいます。
 ちなみに、「やなぎや主人」のモデルになった千葉県袖ヶ浦市の食堂は現存しているようで、ファンサイトの企画で作者と同じようにカツ丼を食べに行く「つげ義春に会いに行く」という記事がネットに載っていました。

「『やなぎや主人』になりに行く」


■ どんな人にオススメ?

・つげ作品ファンの人。
・鄙びた温泉地が好きな人。


■ 関連しそうな本

 つげ 義春 『ねじ式』
 つげ 義春 『紅い花』
 つげ 義春 『無能の人・日の戯れ』


■ 百夜百音

Liquidizer【Liquidizer】 試聴あり Jesus Jones オリジナル盤発売: 1989

 バチバチの打ち込みにワウギターを乗せた「吹っ切れた感じ」がかっこよかったです。New Orderの「Fine Time」(試聴)にも通じるところがあります。
 何も考えずにカーステで大音量で鳴らすにはピッタリの一枚です。


『Technique』Technique

2005年5月28日 (土)

ぼくはマンガ家―手塚治虫自伝

■ 書籍情報

ぼくはマンガ家―手塚治虫自伝   【ぼくはマンガ家―手塚治虫自伝】

  手塚 治虫
  価格: ¥1,575 (税込)
  大和書房新装版(1988/04)
(文庫)

 本書は、「マンガの神様」と呼ばれ、日本のストーリーマンガの手法を生み出した手塚治虫が昭和44年に出版した自伝の「第1巻」です。と言っても第2巻が出版されているわけではないのですが。
 昆虫や宝塚やプラネタリウムに夢中だった少年時代、自宅で何千枚も原稿を書き続けた戦時下の青春時代、大阪で「赤本」と呼ばれた安マンガを書いていた大阪時代、寝る間もない東京でのマンガブームや「鉄腕アトム(アストロ・ボーイ)」を製作した虫プロの話まで、「マンガの神様」ができるまでが語られています。昆虫好きは「治虫」というペンネームに、宝塚好き(著者は宝塚市出身)は「リボンの騎士」に実を結んでいきます。
 また、「神様」と呼ばれるだけに、『まんが道』の中では神格化(と言うと大げさですが)され、仕事の鬼ぶりやトキワ荘の若い後輩たちへの人格者ぶりが強調されている著者ですが、『イガグリくん』の福井英一氏らライバルマンガ家へのジェラシーや、才気溢れる更新たちの登場とマンネリへの焦りや苛立ち、そして編集者たちと追いかけっこの知恵比べ(この部分は江口寿氏に受け継がれている?)など、「神様」ではない、「人間・手塚治虫」の姿が著者の言葉で語られています。


■ 個人的な視点から

 本書が出版される60年代までの「手塚治虫」の存在のすごさをリアルタイムで体験していないので、子供の頃、私にとっての「マンガ家」といえば「藤子不二雄」でした。『ドラえもん』や『藤子不二雄のまんが入門』など藤子作品はマンガとして家にあっても、手塚作品は『吾空の大冒険』や『リボンの騎士』、『ジャングル大帝』などの再放送のアニメで見る存在で、『鉄腕アトム』よりも『ジェッター・マルス』という世代でした。
 本書の中で、「漫画家は悪運が強いというが、めったなことでは病死しない。たいてい長命で、七十過ぎてもかくしゃくとして書き続けている長老が多い。」という言葉がありますが、当時の長老と現在の長老とでは体にかかる負担がぜんぜん違うような気がします。一方で、「死ぬとなると、たいてい、突然の事故か、ポックリ死である。」とも言っています。本書の中でも福井英一氏をはじめ、若くして亡くなった漫画家が紹介されていますし、著者自身も1989年に60歳で、また藤子・F・不二雄氏も62歳で亡くなられています。
 以前、NHKで放送された「わが青春のトキワ荘 ~現代マンガ家立志伝~」でもマンガ家の浮き沈みの激しさを強調していました。


■ どんな人にオススメ?

・手塚マンガが大好きな人。
・手塚マンガを読んだことが無い人。


■ 関連しそうな本

 藤子 不二雄A 『まんが道 (1)』 2005年01月22日


■ 百夜百音

Spring Session M【Spring Session M】 試聴あり Missing Persons オリジナル盤発売: 1982

 ポップなメロディなのに普通ではない斬新なサウンド、特にギターのククルロ(後にDuran^2に参加)のエフェクターの多用ぶり、というよりもギターに聴こえない不思議なサウンドには驚きました。
 ちなみに、このアルバムのタイトルはグループ名を並べなおしたものです。
 日本では、「NOTHING PERSONAL」というバンドがもろに影響を受けたサウンドを展開していました。後にグループ名変えましたが、こちらもエフェクター・マニア振りを発揮しています。

『NO MORE TEARS』NO MORE TEARS

2005年5月27日 (金)

町長室日記―逢坂誠二の眼

■ 書籍情報

町長室日記―逢坂誠二の眼   【町長室日記―逢坂誠二の眼】

  逢坂誠二
  価格: ¥1,600 (税込)
  柏艪舎(2004/08)

 本書は、ニセコ町の逢坂町長が毎朝職員向けに発信している電子メールを、再編集した「よりぬき町長メール」です。このメールは平成9年の11月から開始され、今日は1634号目が送信されています。本来は町職員向けのものですが、外の人からも送信依頼が相次いだので、現在は逢坂町長の個人ホームページに毎朝掲載されています。
「Seiji Ohsaka , Niseko」
http://www5a.biglobe.ne.jp/~niseko/
 日記の内容は、その日の町の行事予定や町民とこんな話をした、といったごくローカルな話題から、周辺地域との合併を巡る議論、北海道全体の話、日本の国政の話、湾岸戦争などの国際情勢といったグローバルなテーマまでの地理的な広がりを持つと同時に、ビートルズや天文など趣味の分野までの質的な広がりも持っています。
 志木市の穂坂市長とともに、小さな町村の改革派首長の代表的な存在として、テレビやシンポジウムなどに飛び回っている様子を窺い知ることができる日々の町長室日記も良いですが、このように本の形になると、逢坂町長の思考を流れとして読むことができ、ネットで毎日読んでいる人にとっても楽しめる一冊です。


■ 個人的な視点から

 誰の本で読んだのかは忘れてしまったが、研修などで高い金を出して外から講師を呼んでくるよりも、一番価値があるのは、その会社のトップや幹部が直接社員に話をすることだ、という話を聞いたことがあります。それは単に時間単価的な問題ではなく(社長の単価は高いですから)、トップの話を直接聴く、トップが直接語りかける、ということに価値がある、という話だったかと思います。
 その点で、「町長室日記」は毎朝全職員を集めて朝礼をしているような機能を果たしています。しかも「訓示」という上から下に一方的に伝えるような内容ではなく、職員と同じ目線に立ち、業務に限らずつれづれに考えたことも語りかけているので、より問題意識や関心を共有できるのではないかと思います(高い場所から思いついたことを聞かされることほど辛いものはありません。)。
 これは、トップだけでなく、中間管理職や一般職員にとっても、考えたことを発信していくことは、今後より大切になっていくと思います。


■ どんな人にオススメ?

・部下と問題意識を共有したいトップ。
・こんな人が上司だったらなあ、と思っている人。


■ 関連しそうな本

 木佐 茂男, 逢坂 誠二 (編集) 『わたしたちのまちの憲法―ニセコ町の挑戦』 2005年03月25日
 細川 珠生 『自治体の挑戦―改革者たちの決断と実践』 2005年05月13日


■ 百夜百マンガ

ドラえもん (5)【ドラえもん (5) 】

 今週は「ドラえもんウィーク」にしてみました。
 さて、第5巻はSFテイスト溢れる名作が多いのが特徴です。
 夢と現実が交錯し、読後感を引きずる「うつつまくら」。話の収拾がつかなくなって「夢オチ」で逃げる連載は終了するというジンクスがありますが、せっかくならここまでやってほしいものです。
 タイムパラドクスで頭がこんがらがる「ドラえもんだらけ」は3巻の「あやうし!ライオン仮面」に通じる面白さがあります。
 「かがみの中ののび太」は、1巻の「かげがり」のバリエーション的な影が実体に入れ替わろうとする恐怖物です。
 巻末の「ぞうとおじさん」は名作童話「かわいそうなぞう」のパラレルワールド
的な内容になっています。

2005年5月26日 (木)

はめられた公務員

■ 書籍情報

はめられた公務員   【はめられた公務員】

  中野 雅至
  価格: ¥1,000 (税込)
  光文社(2005/05/23)

 本書は、市役所職員→キャリア官僚→(都道府県の課長に出向)→大学教員という国と地方の両方の役人生活を経験してきた著者が、現在進められている地方分権と公務員制度改革のシナリオに隠された意図を明らかにする、というものです。
 裏表紙には、「430万人の地方公務員のみなさん。あなたたちは「犠牲者」です!」というコピーがありますが、内容的には必ずしも地方公務員を擁護しているものではなく、特に小さな市町村の縁故採用やコネ人事には批判的です。
 主な内容は、「政官業癒着」によって破綻した財政のツケが「弱い官」に押し付けられ、このツケがさらに地方分権の名の下に地方自治体に押し付けられ、地方公務員のリストラを求める世論が形成されつつある、というものです。
 とかく感情的になりやすい、「役人批判」と「役人からの反論」という構図ではなく、財政破綻という構造的な問題から切り込んでいるので、ところどころ派手な言い回し(光文社ペーパーバックだからかもしれませんが)が見られるものの、告発本のような乱暴な論理展開ではない、冷静な分析になっていると思います(さすがは元キャリア官僚。厭味ではなく作文の上手さには感嘆します。)。
 「公務員バッシングに対する反論」を期待して組合関係者が読んでもかえって不快な気分になると思います。


■ 個人的な視点から

 本書には、国・県・市の3種類の公務員経験に基づいた職員への評価・印象が述べられていますが、概ね違和感なく頷くことができました。ただし、著者も全ての職場を組まなく知り尽くしているわけではないので、本書に嘘が含まれるとしたら、都合の悪いところが書かれていない「白い嘘」の類だと思います(著者が知りえなかったということもありますが。)。
 国家公務員に関しては、キャリア官僚の悲惨な勤務実態が強調されていますが、現場の実態(著者が在籍していた職業安定所など)はあまり書かれていません。既にかなりのバッシングを受けていること、本書の主な「警告」の対象が地方公務員であること、などが理由ではないかと思います。
 都道府県の職員に関しては、比較的好意的に書かれている印象がありますが、著者は本庁の課長しか経験していないので、都道府県の現場の勤務実態は知りえなかったのではないかと思います。これも、本書の主な警告の対象が市町村であるため、対比としてよく書かれているだけだと思います。
 市町村の職員に関しては、特に小さな町村でのボス支配、コネ社会が強調されています(「ジャパニーズ・シシリー」という表現もあります。)が、現在問題になっているような大都市の強大な組合の話は出てきません。国家公務員と併せて官公労の問題の中に含めて指摘している、というものだと思いますが、大阪市の組合天国ぶりがこれだけ報道されている中での出版だったので、報道をきっかけに関心を持った人には物足りないかもしれません。
 全体的な感想としては、やはり国家公務員の目線から書かれたものだと感じました。それは、よい意味では天下国家の観点から地方公務員の問題を見ることができるということだと思いますが、キャリア公務員の生活にリアリティがあるのに比べると、地方公務員に関する情報は新聞記事等が中心で、若干リアリティに欠ける部分もありました。


■ どんな人にオススメ?

・公務員ってどういう人だか知りたい、という人(当の公務員含む)。


■ 関連しそうな本

 別冊宝島編集部 『ザ・地方公務員―ゆりかごから墓場までの職場へようこそ』
 若林 アキ 『ホージンノススメ―特殊法人職員の優雅で怠惰な生活日誌』
 西村 健 『霞が関残酷物語―さまよえる官僚たち』
 赤井 伸郎, 山下 耕治, 佐藤 主光 『地方交付税の経済学―理論・実証に基づく改革』 2005年01月27日
 土居 丈朗(編著) 『地方分権改革の経済学―「三位一体」の改革から「四位一体」の改革へ』
 土居 丈朗 『三位一体改革ここが問題だ』


■ 百夜百マンガ

ドラえもん (4)【ドラえもん (4) 】

 ドラミちゃん初登場の「海底ハイキング」が収録されえています。比較的長い14ページの中に夏休みの大冒険が詰まっています。
 無視される恐怖「石ころぼうし」や感動の「おばあちゃんのおもいで」など4巻も見所いっぱいです。

2005年5月25日 (水)

現代日本の投票行動

■ 書籍情報

現代日本の投票行動   【現代日本の投票行動 叢書21COE-CCC多文化世界における市民意識の動態 (5)】

  谷口 尚子
  価格: ¥3,150 (税込)
  慶応義塾大学出版会(2005/04)

 本書は、争点や政策、政党に対して、日本の有権者がどのような関心を持ち、投票行動を行うかについて、1995年の参院選と2003年の衆院選時の実証データを元に、仮説の検証を行うものです。
 本書では、有権者の最適点と政党の政策的立場の距離が小さいほど、有権者の政策効用が高まると仮定する「近接性モデル」と、有権者と政党が志向する政策の方向性の一致の度合いで有権者の政策効用が高まる「方向性モデル」とのパフォーマンスを比較しています。
 ゴリゴリの専門書なので読むのに骨が折れますが、「政党感情温度」などは直感的な床屋談義にも使えそうです。


■ 個人的な視点から

 現在の主流である近接性モデルを支持することを「野球で巨人を応援するがごとき」と言ってしまう辺りに関西ノリを感じてしまうのですが、実際にお会いした感じも、関西系のアクセントで元気のある美人研究者さんでした。
 帝京大学の先生ですが、昨年の9月からはアメリカで研究生活を送っていて、現在は、カリフォルニア大学サンディエゴ校で訪問研究員をされています。
 個人的には同年代(というか同い年)の若い研究者の皆さんが、業績を量産され、単著になって世に出るようになるのは、何だかうれしく応援したい気持ちになります。


■ どんな人にオススメ?

・有権者の行動パターンを実証的に理解したい人。


■ 関連しそうな本

 三宅 一郎 『投票行動』
 小林 良彰 『公共選択』 2005年04月15日
 佐々木 毅 『政治学講義』 2005年03月11日
 岡沢 憲芙 『政党』
 丸楠 恭一, 坂田 顕一, 山下 利恵子 『若者たちの"政治革命"―組織からネットワークへ』 2005年05月11日
  『』


■ 百夜百マンガ

ドラえもん (3)【ドラえもん (3)】

 あの有名な「オシシ仮面」が登場する第3巻です。
 何気にSFらしいタイムパラドックスものの「あやうし!ライオン仮面」では、後に何度か出てくることになるフニャコフニャオ先生がいい味を出しています。F先生は他にも「おはなしバッジ」の中で喫茶店でタバコをすってたり、2巻の「タイムふろしき」で車を運転したり、しょっちゅう登場します。
 小さい子供を持つ親としては、「ママととりかえっこ」は身につまされます。子育てエピソードという軸で総集編を作っても面白そうです。

2005年5月24日 (火)

稼ぐ人、安い人、余る人―仕事で幸せになる

■ 書籍情報

稼ぐ人、安い人、余る人―仕事で幸せになる   【稼ぐ人、安い人、余る人―仕事で幸せになる】

  キャメルヤマモト
  価格: ¥600 (税込)
  幻冬舎(2003/09)

 本書は、ワトソン・ワイアットの人材・組織コンサルタントの著者による人材の3類型を前面に出したベストセラーです。あとがきによれば、元々は「子供の教育にビジネス人材論から切り込む」ことを目的に書き始めたものを、ビジネス人材論をメインにした内容に変更したそうです。そのため、本書を自分に引き当てて読んでも身につまされる思いをすることが多いかもしれませんが、本書で示されているグローバル・タレントに必要な「7つの才」を自分に子供に身に付けさせるにはどうしたらいいか、という視点で読むと、教育に対する見方が変わるかもしれません。
 タイトルになっている「稼ぐ人・安い人・余る人」とは、
・稼ぐ人(登山者:Clibmer):市場に評価される成果をコンスタントに出して、会社にとって稼ぎ頭になっているような人。
・安い人(安住者:Camper):企業への貢献以上の給与をもらっている人。
・余る人(脱落者:Quitter):安い報酬で主に定型的な仕事に従事する人。
と説明されています。
 では、どうすれば稼ぐ人になれるのでしょうか。著者は、「7つの才」を示しています。
(1) 志が高く明確である。
(2) 現実を直視する力。
(3) 成果へのインスピレーションがわく。
(4) 失敗しながらやりぬくタフネス。
(5) リードしリードされる。
(6) 学習が早い。
(7) 仕事で遊んでいる。
 これらはハイパフォーマーに必要なコア部分のコンピテンシーを優しく噛み砕いたものと見ることもできます。もともと本書の下敷きになっているのは、著者がワトソン・ワイアットでの「人材鑑定」インタビューで数多くの稼ぐ人から成果を生み出す行動を聞き取ってきた内容です。
 世に多く出ている「コンピテンシー本」のように、コンピテンシーの由来や学説を紹介しているものよりも、本書の「稼ぐ人・安い人・余る人」のカテゴリー分けの方が我が身にグッと来る分だけ伝わりやすいのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 2年ほど前に、広島県東京事務所で著者にお会いしたことがありますが、名前の由来どおりラクダのような優しい目をした方でした。
 「外資系人材・組織コンサルタント」というと、非情でドライな社風をイメージする方もいるかもしれませんが、著者の所属しているワトソン・ワイアットは、とても家族的な社風だそうです。最近の日本企業では、「社員旅行なんて前時代的だ」という雰囲気がありますが、ワトソン・ワイアットでは、社員だけでなく家族同伴の旅行やパーティを行っているそうです(淡輪社長のキャラクターなのかもしれませんが)。米国企業の例では、『隠れた人材価値』でも、社員を大切にする企業が、社員の家族同伴のパーティを頻繁に行っていることが紹介されています。
 そういえば私の職場(20人くらい)でも、毎年1泊2日で旅行に行ったり、自宅の庭で家族も連れたバーベキューパーティーを開いたりしています(何しろ田舎ですから。)。私の部屋に集まったときには手打ちピザを作りました。デロンギのオーブンにはピザストーンがついているのでカリッとしたピザを焼くことができます。残念ながら頭の上で回したりするのは苦手です。部屋中粉だらけになりますので。


■ どんな人にオススメ?

・自分が「余る人」かもしれない、と不安に思っている人。
 ・「稼ぐ人』を目指している人。


■ 関連しそうな本

 キャメルヤマモト 『コツコツ働いても年収300万、好きな事だけして年収1000万―シリコンバレーで学んだプロの仕事術』
 淡輪 敬三 『ビジネスマンプロ化宣言―自分の人事権は自分で握れ!』
 金井 壽宏 『働くひとのためのキャリア・デザイン』 2005年01月30日
 小池 和男 『日本の雇用システム―その普遍性と強み』 2005年04月06日
 チャールズ オライリー , ジェフリー フェファー (著), 広田 里子, 有賀 裕子 (翻訳), 長谷川 喜一郎 『隠れた人材価値―高業績を続ける組織の秘密』 2005年02月03日

(オーブン)
 DeLonghi 『コンベクションオーブン 95FL』


■ 百夜百マンガ

ドラえもん (2)【ドラえもん (2) 】

 2巻になってドラえもんの体型は現在のものに落ち着きました。
 名作「ぼくの生まれた日」が収録されています。子供の名前は、結構いい加減に決める人もいれば、過剰に親の夢が凝縮された名前を付けられちゃう場合もあります。あんまり期待されすぎると子供もプレッシャーを感じちゃいますね。
 定番アイテムになる「タイムふろしき」も収録されています。

2005年5月23日 (月)

人は仕事で磨かれる

■ 書籍情報

人は仕事で磨かれる   【人は仕事で磨かれる】

  丹羽 宇一郎
  価格: ¥1,365 (税込)
  文藝春秋(2005/02/24)

 本書は、「掃除屋」と自称し、伊藤忠商事の負の遺産、バブル期の不良資産を一気に片付け、就任前の予告どおり6年でスパッと社長を辞めた丹羽宇一郎現会長が、自らの半生と仕事の哲学を語ったものです。
 若い頃の学生運動や独身寮の思い出なども当然楽しく読めるのですが、仕事の哲学としては以下の点が印象に残りました。

・トップは決断したら一気呵成にやる。「3年かけてやろう」といったら終わり。社長が「一気にやれ」と言えば実際に会社は動く。・・・横浜市の中田市長の「1年でできないことは4年かけてもできない。」という言葉に通じるところを感じました。
・わからないときは半分切れ。上がったとしても「まだ半分ある」ということになる。下がれば「半分切っておいて良かった」ということになるし、さらに下がったら次は4分の1にする。最低限のリスクマネジメント。商社マンは相場をやらなければダメだ。
・「金の匂い」がしないやつはだめ。悪事を働くということではなく、その人が就いた部署は業績が上がる、ずっと儲けている、どんなに役職が上がってもお金の管理をきちんとしている、という「金の匂い」がすることがトップの条件。「ネズミの仕事」ばかり追いかけても仕方が無い。

 「社長の話」と聞くと成功者の自慢話、という先入観を持つかもしれませんが、面白い社長の話は失敗の体験談が満載です。「一勝九敗」のように、それ自体がタイトルになっているものもあります。本書にもたくさんの失敗体験が収められていて、それを読むだけでも十分楽しい一冊です。


■ 個人的な視点から

 今月の日経の「私の履歴書」はカトカンこと加藤寛千葉商大学長が登場され、毎日楽しみにしていますが、21日の回では、「最近の若者は「メザシの土光さん」を知らない」と嘆いてました。知らないでしょう、それは。自分が生まれた頃の話ですから。仮にメザシを食べている映像を見たとしても、当時の世間の生活水準を知らない中では、インパクトが無いと思います。
 さて、本書では、著者が郊外の自宅から満員電車で通勤し、自家用車はカローラ、社長を辞めたらただの小父さん、という話が紹介されていますが、これを聞いてまず思い出したのが「メザシの土光さん」でした(ということは私は「若者」のカテゴリーには入らないようです。)。やはり、過去の膿を全て書き出すような仕事をするトップには、目に見える形での清廉潔白さが求められるようです。
 一方で、成果主義の導入によって、それまで年収1000万の人が500万円になることも1500万円になることもある変動給制度になった、という話が紹介されています。これに対して、ある30代の社員が年収500万円では生活できないというので、「そんなことはないだろう」と話を聞くと、30代で都内の高給マンションに住んでBMWに乗っている(社長がカローラなのに!)、よそでは2000万円くれるのでそこに転職したい、という話です。
 ここで本書のタイトルにつながる「見える報酬、見えざる報酬」が出てきます。「見える報酬」はもちろん給料です。では「見えざる報酬」は何か。著者は「自分の成長」だと言い、「人は仕事で磨かれる」というタイトルはここから来ています。
 人材コンサルタントのワトソン・ワイアットの淡輪社長は、マッキンゼーにいたとき、土日も無く深夜まで働いて、時給換算するとマクドナルドのアルバイト並みだった、というお話をされています。なぜそんなに苦労して割に合わない給料で働くかと言うと、マッキンゼーは「銀座の寿司屋」だからだそうです。つまり、寿司職人が銀座の寿司屋でただ同然で修行するのも、「銀座で修行した」という看板が後で効いてくるからなのと同じように、マッキンゼーで実績を作ることが、コンサルタントとしての将来のブランドになるというものでした。これも、仕事によって人を磨いている例なのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・自分を磨きたいと思っている人。
 ・目の前の仕事にうんざりしている人。
 ・カローラに乗っている人。


■ 関連しそうな本

 柳井 正 『一勝九敗』
 南 学, 上山 信一 『横浜市改革エンジン フル稼動 中田市政の戦略と発想』 2005年04月13日
 淡輪 敬三 『ビジネスマンプロ化宣言―自分の人事権は自分で握れ!』
 キャメルヤマモト 『稼ぐ人、安い人、余る人―仕事で幸せになる』


■ 百夜百マンガ

ドラえもん (1)【ドラえもん (1) 】

 記念すべき第1巻です。
 ドラえもんは何だか肩がずんぐりしてしてオバサン体型していますし、やたらに泥棒(強盗)がでてきます(「コベアベ」「ペコペコバッタ」「おせじ口べに」)。パパもたくさん出てきますが、家では和服を着ています。「プロポーズ作戦」での若い頃のパパもいいですが、一番の名演は「古道具きょう争」での「蓑笠キセル火打石」のページ(p.79)です。
 一番怖い話は「かげがり」で、のび太がだんだん黒くなるところでる。

2005年5月22日 (日)

必ず上司を説得できる情報活用術

■ 書籍情報

必ず上司を説得できる情報活用術   【必ず上司を説得できる情報活用術】

  週刊ダイヤモンド編集部 (編集)
  価格: ¥510 (税込)
  新潮社(2002/05)

 本書は、元々は『週刊ダイヤモンド』2002年1月19日号に「仕事の情報源」として特集された記事だったものを文庫本に再編集したものです。
 構成は、「探す」「使う」「伝える」「説得する」の4部構成になっていて、
・「探す」:専門図書館や行政資料館、インターネットを使った一次資料の収集方法
・「使う」:データの読み方やデータマイニングの方法
・「伝える」:メーリングリストでの打ち合わせや電子メールの作法
・「説得する」:組織風土に応じたプレゼン手法の使い分け
などを、「あなたは携帯電話市場への参入を命じられた」という縦軸でつないでいます。
 3年前の記事なので、一部情報源や技術に古い部分もありますが、適宜最新のものにアップデートして読みかえれば、仕事の作法としてはまだまだ現役で使える一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書を買うきっかけは、ある人に妹尾堅一郎教授の「コラジェクタ」はすごい、というお話を聴いたからです。私は会議や講演会に参加すると、持ち歩いているDoCoMoのシグマリオン2を使って議事録を作成しながら聴いています。一字一句では入力できませんが、話の概要メモがほぼリアルタイムで作成できるので、自分に取っても要点が整理でき、他の人との共有も容易になるので、6年位前から続けています(その間に、A4ノートPC→文豪ARDATA(乾電池で動くA5サイズワープロ)→シグマリオン1→シグマリオン2と入力機器は変わりましたが。)。
 それを見ていた人から、妹尾教授の「コラジェクタ」では、議論をしている内容がそのまま議事録になる、という話を教えられたので、ネットで検索してたどり着いたのが本書です。
 「コラジェクタ」とは、プロジェクタを使ったコラボレーションのことで、プロジェクタで映し出した画面上でパワーポイントやワープロソフト上で、議論している内容をリアルタイムで図にしていくというものです。松山真之助さんオススメのマインドマップを複数人で作成しているような内容です。行政経営フォーラムの打ち合わせなどでも玉村助教授(慶應SFC)がMS-Wordのアウトライン機能を使って同じようなやり方をしていますし、ファシリテーションの方法でも、A3の紙を壁に貼りながら同じようなことをやっています。
 コンピュータならではの機能(画面に収まるように自動的に再配置される、リンクが何階層にも貼れる、など)や手書き並みの入力の容易さ(図の間を簡単に線でつなげられる、ファンクションキーだけで四角枠が描ける、など)があるといいのではないかと思いますので、今後も注目していきたいと思います。


■ どんな人にオススメ?

・情報を集めるのは得意だけどうまく使えない、という人。


■ 関連しそうな本

 梅棹 忠夫 (著) 『知的生産の技術』 2005年05月05日
 中野 不二男 『メモの技術―パソコンで「知的生産」』
 松山 真之助 『マインドマップ読書術―自分ブランドを高め、人生の可能性を広げるノウハウ』 2005年05月01日


■ 百夜百音

バンビ(BAMBI)【バンビ(BAMBI)】 立花ハジメ オリジナル盤発売: 1991

 古くは「プラスティックス」で名をはせた立花ハジメと当時Deee-Liteで脚光を浴びていたテイ・トウワのコラボレーションで生まれた名盤です。
 今でもテレビ番組のBGMに使われることの多い1曲目の「バンビ」は、曲を聴けば多くの人が聴き覚えがあるのではないかと思います。
 テイ・トウワは、CASIOの名作サンプリングキーボード「FZ-1」を多用してアルバムを作っていましたが、私も同じサンプラーを使っていたということで、大変刺激を受けました。


『World Clique(試聴あり)』World Clique(試聴あり)

2005年5月21日 (土)

日本の地酒百選 銘酒のふる里を訪ねて

■ 書籍情報

日本の地酒百選 銘酒のふる里を訪ねて   【日本の地酒百選 銘酒のふる里を訪ねて】

  中野 忠良
  価格: ¥2,520 (税込)
  日本名書出版(1986/07)

 本書は、全国の銘酒の蔵元を巡って、由来やこだわりを聴いて回ったものです。「百選」と題されていますが、紹介されている蔵元は北は青森から南は沖縄まで23蔵。これらの蔵元へのインタビューを中心に、日本酒の歴史や酒造りの工程などの薀蓄と日本酒復権への提言(自動燗付機はまずい、など)が収められています。
 何しろ20年前の出版なので、もう廃業した蔵もあるかもしれませんが、最近の蔵元は、酒蔵見学や展示・即売コーナーを設けたり、蕎麦を食わせてもらえるところもあるので、蔵元を訪ねる小旅行のプランを組む参考になるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書に紹介されている中では、個人的には「菊姫」(石川県)が好きです。金沢の都ホテル地下に「白山茶屋」という蔵元直営の居酒屋があり、安くて美味しい金色の菊姫を飲むことができました。(「金沢の居酒屋」
 表紙になっている写真は、長野県の戸倉温泉にある「坂井銘醸」ですが、写真だけ使われて本編では紹介されてないです。10年ほど前に、ふらりと立ち寄り、併設の蕎麦料理店「萱」で蕎麦と大吟醸をいただいてきました。しなの鉄道の戸倉駅から歩いて5分ほどです。当時はまだJRだったので18切符で行けました。


■ どんな人にオススメ?

・酒と旅行が好きな人。


■ 関連しそうな本

 穂積 忠彦 , 水沢 渓 『これが究極の幻の酒だ』
 和歌森 太郎(編著) 『地酒礼讃 (味覚選書)』
  『最新日本酒銘鑑―厳選565蔵元』
 尾瀬 あきら 『夏子の酒』 2005年02月10日


■ 百夜百音

In the Garden【In the Garden】 試聴あり Eurythmics オリジナル盤発売: 1981

 「There Must Be an Angel (Playing With My Heart)」(試聴)や「Sweet Dreams (Are Made of This)」で有名な彼らですが、「通」はファーストのこれ(笑)。ドイツ(当時は西ドイツ)でレコーディングされたトータルコンプの効いた硬質なサウンドはテクノ好きにはたまりません。1曲目の「English Summer」(試聴)が一番好きですね。
 後のポップなサウンドを期待して買うと後悔するかもしれません。

2005年5月20日 (金)

人的資源 リーディングス 日本の企業システム

■ 書籍情報

人的資源    リーディングス 日本の企業システム   【人的資源 リーディングス 日本の企業システム】

  伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集)
  価格: ¥2,625 (税込)
  有斐閣(1993/05)

 本書は、「リーディングス 日本の企業システム」シリーズの全4巻中第3巻で、人的資源管理について、経営学や労働経済学の研究者が様々な角度から論じているものです。
 本書の構成は、3部に分かれており、「第1部 雇用関係」は日本型雇用システムについて、「第2部 技術とヒト」は組織における知の共有や技能の蓄積について、「第3部 キャリアとインセンティブ」は、企業におけるインセンティブのメカニズムについて、主に解説されています。
 10年以上前に出版されたものなので、最新ではないですが、内容的に十分「枯れて」いますので、HRMに関心がある方ならば、本書を足がかりに各論者の単著などに読み進んではいかがでしょうか。


■ 個人的な視点から

 本書に収められた論文のうち、個人的に「面白い」「使える」と思ったものは、
・イギリスと日本の比較で有名なドーアの「第1章 日本的雇用システムの諸源泉」(江戸時代まで遡っています。)
・「定義できない知識」を論じている猪木「第4章 経済と暗黙知」
・トヨティズムを簡潔に解説している門田「第6章 トヨタ生産方式」と鎌田「第7章 トヨティズムの流れ」
・数多くのパターンの「キャリア・トリー」を解説している花田「第11章 日本の人事制度における競争原理」
などです。
 人事システムについて何か調べようと思ったときには、まず手に取ってみる便利な存在です。Amazonマーケットプレイスだと半額程度で入手できるシリーズですので、関心のある方は1冊入手しておくといいでしょう。


■ どんな人にオススメ?

・HRMに関心のある人。
・人事担当者の人。


■ 関連しそうな本

 伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集) 『企業とは何か リーディングス 日本の企業システム』 2005年03月20日
 伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集) 『組織と戦略 リーディングス 日本の企業システム』
 伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集) 『企業と市場 リーディングス 日本の企業システム』
 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳) 『人事と組織の経済学』 2005年04月05日
 八代 尚宏 『日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済』 2005年03月23日
 樋口 美雄 『人事経済学』


■ 百夜百マンガ

ナニワ金融道【ナニワ金融道 】

 カネのためなら法律でも何でも使う非情の世界を描いた作者の代表作です。
 背景までみっちり書き込まれた(これだけなら大友克洋と同じですが)独特のタッチ(というか汚い絵)は、外国の作家の作品をよく掲載していたモーニング誌でも異彩を放っていました。
 マルクスを信奉しながら肉体労働に従事する若者を描いた読み切り作品もありましたが、題名が分かりませんでした。

2005年5月19日 (木)

秩禄処分―明治維新と武士のリストラ

■ 書籍情報

秩禄処分―明治維新と武士のリストラ   【秩禄処分―明治維新と武士のリストラ】

  落合 弘樹
  価格: ¥693 (税込)
  中央公論新社(1999/12)

 本書は、前政治体制の支配階層だった士族に与えられていた家禄を、一定額の国債を与えることで打ち切る「秩禄処分」の経緯を当時の時代背景とともに解説したものです。
 現代で言えば、公務員をいったん全員解雇して退職金を国債で支払うようなものに喩えられますが、現代の公務員と違って「戦士」である彼らから生活給を奪うようなことがスムーズにできたのでしょうか。本書は、処分に至るまで交わされてきた様々な激論を紹介しながら、現代に生きる我々が失ってしまった「武士の気概」や公と私のあり方など多くの示唆を与えてくれます。
 「休まず遅れず働かずで一生安泰」が揺らいできた現代の公務員にもオススメの一冊です。


■ 個人的な視点から

 「座食」「居候」「平民の厄介」「無為徒食」・・・。士族の俸禄打ち切りは一気に行われたわけではありません。まず、段階的に俸禄が削減されていき、下級士族は生活できるぎりぎりまで追い込まれます。その後、国民皆兵によって徴兵された国民が国防の中心を担うようになり、士族の本分である「戦士」としての役割が奪われます。これによって、士族は国民から冒頭のような「ただ飯食い」との非難を受けるようになるのです。
 しかし、全ての士族が職を失い路頭に迷ったわけではなく、新政府の官僚になる者もあれば、国債を元手に事業を起こした者も多くいます。俗に「士族の商法」といえば下手な商売を指しますが、現代のベンチャー企業も「千三つ」と言われるように起業にはリスクはつき物で、繊維産業や原野開拓において士族が果たした役割は小さくありません。
 現代の「士族の商法」は、資金もリスクも役所丸抱えで大赤字を出していますが、退職した公務員が自らリスクを負って社会的起業をするのであれば、千に3つくらいは社会を変えるような出来事が起きるかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・社会起業家を目指している公務員。


■ 関連しそうな本

 町田 洋次 『社会起業家―「よい社会」をつくる人たち』 2005年02月16日
 D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳) 『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』 2005年03月15日
 上山 信一 『「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ』 2005年03月28日
 稲継 裕昭 『日本の官僚人事システム』 2005年02月10日


■ 百夜百マンガ

無限の住人【無限の住人 】

 時代劇なのにキャラクターのネーミングが秀逸です。シドやロットン、ブラック・サバスにシンリジイまでハードロック系のミュージシャンが中心です。
 キャラクターの名前がミュージシャンと言えば『ジョジョの奇妙な冒険』が有名ですが、「むげにん」のネタ元一覧とかもあるのでしょうか。

2005年5月18日 (水)

民意民力―公を担う主体としてのNPO/NGO

■ 書籍情報

民意民力―公を担う主体としてのNPO/NGO   【民意民力―公を担う主体としてのNPO/NGO】

  沢 昭裕, 経済産業研究所『公を担う主体としての民』研究グループ (編集)
  価格: ¥1,995 (税込)
  東洋経済新報社(2003/05)

 本書は、公の担い手を行政部門である「官」が独占するのではなく、公の担い手としての民のあり方を解説しているものです。
 構成は、巻頭に青木昌彦RIETI所長と北川前三重県知事の対談(この組合せで対談してるというだけでも「買い」です。「姫岡玲治」こと青木教授が安保闘争にも少し触れています。)、第1部にはNPOやNGOの当事者による「公」の分野での活動の実際、第2部には本書執筆の中心となった目加田説子氏、菅谷明子氏、村尾信尚氏の論文、そして、巻末には北川前知事他による座談会が収録されています。
 本書では「民」としてはNPOやNGOが中心的に取り上げられていますが、企業の社会的責任(CSR)や社会起業家の話にも拡張してきいそうな内容です。


■ 個人的な視点から

 本書では、「公」とか「官」とか「民」とかの言葉が出てきて、混乱しやすいのですが、ちょっと図に描いてみるとこんな感じです。
公私官民
 日本では、「公=官」という先入観が強い人が多いため、「公が責任を持つべき」という言葉はそのまま「行政が責任を持つべき」という意味として通用しています。
 先週の日経の「経済教室」のシリーズ「公共を問う」でも、まさに本書に関連するテーマを田中直毅氏らが書いてますのでまだ読んでない方はぜひどうぞ。


■ どんな人にオススメ?

・新しい「公」の在り方に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 村尾 信尚 『役所は変わる。もしあなたが望むなら』 2005年03月18日
 北川 正恭 『生活者起点の「行政革命」』 2005年03月07日
 谷本 寛治, 田尾 雅夫 (編著) 『NPOと事業』 2005年01月28日
 上山 信一 『「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ』 2005年03月28日
 D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳) 『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』 2005年03月15日
 フィリップ コトラー, エデュアルド L. ロベルト (著), 井関利明(監訳) 『ソーシャル・マーケティング』 2005年02月14日


■ 百夜百マンガ

湾岸MIDNIGHT【湾岸MIDNIGHT 】

 『シャコタン★ブギ』の合間の不定期連載だったはずが、いつの間にかこちらがメイン連載になってしまったのですが、『シャコタン★ブギ』はどうやって終わったのでしょうか・・・?
 『頭文字D』にしてもそうですが、「悪魔のZ」も連載から10年以上経つとさらに旧車度が高まります。
 作者は、売れない頃はキャベツばかり食べていたらしいですが、ヒット作が2つ続いてよかったですね。

2005年5月17日 (火)

日本経済 競争力の構想―スピード時代に挑むモジュール化戦略

■ 書籍情報

日本経済 競争力の構想―スピード時代に挑むモジュール化戦略   【日本経済 競争力の構想―スピード時代に挑むモジュール化戦略】

  安藤 晴彦, 元橋 一之
  価格: ¥2,100 (税込)
  日本経済新聞社(2002/12)

 本書は、気鋭の経済官僚による、日本企業の競争力の現状と再生にむけたコンセプトの提示です。国際的な競争戦略論の立場から主に分析している前半部分(1~3章)を元橋氏が、企業内部の構造に主に目を向けた分析(組織IQやモジュール化)を行っている中後半部分(4章~9章)を安藤氏が担当して執筆しています。
 80年代にブームになっていた日本企業の強さを分析した研究の焼き直しだ、と言って一顧だにしない人もいるかもしれませんが、その時々で上手くいっているもの、流行っているものに場当たり的に飛びつくことしかできない人にとっては、その程度の価値しかないのかもしれません。
 内容的には、国家間競争から生産現場まで取り扱っている幅が広く、また、先端理論から現実の個別政策まで「抽象-具体」を行き来するので、ややつまみ食い的な散漫な印象を残しますが、政策の現場と純粋な学術研究(大学等)の中間に位置する経済産業研究所(RIETI)という立場上、こういった構成になるのだと思います。
 本書をきっかけに、国際競争論やモジュール化などの各論に入ることができるならば、それらの各論の位置づけを示すものとして読むことができると思います。


■ 個人的な視点から

 本当は著者が訳している『デザイン・ルール』の方を紹介したかったのですが、何しろ厚い(548p!)ので物怖じしてしまい、とりあえず手軽そうな本書の方を先に紹介しました(『デザイン・ルール』は図書館で借りてたのですが、読み終えた時点で買うことを決めて注文しました。)。
 青木昌彦教授の「比較制度分析」は、コンセプトとしては秀逸なんですが、取り扱っている内容が企業内部から国家全体まで幅がありすぎてなかなかとっつきにくい、という難点を抱えています(デザインルールやモジュール化は、比較制度分析から影響を受けながらも、より理解しやすい切り口で整理されています。)。本書の持つ、幅の広さや(悪い意味ではない)大風呂敷感には、比較制度分析の影響を色濃く感じます。所長が青木教授だったから、というのも当然あるのですが。


■ どんな人にオススメ?

・日本企業が競争力を失った理由を知りたい人。
・「モジュール化」に関心があるけど分厚い本ばかりで物怖じしてしまった人。


■ 関連しそうな本

 キム・クラーク, カーリス・ボールドウィン (著), 安藤 晴彦 (翻訳) 『デザイン・ルール―モジュール化パワー』
 青木 昌彦, 安藤 晴彦 (編著) 『モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質』 2005年04月22日
 青木 昌彦, 奥野 正寛(編著) 『経済システムの比較制度分析』 2005年05月10日
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳) 『組織の経済学』 2005年01月24日


■ 百夜百マンガ

気分はもう戦争【気分はもう戦争 】

 ストーリー分かりにくいですが、なぜだか義勇兵になってしまう「巻き込まれ型」です。登場人物のドタバタと、その背景で起こっている何だか得体の知れない大きな出来事。全体を一度に理解することができないという意味で、本当の戦争もこんな感じなのかもしれません。

2005年5月16日 (月)

eコミュニティが変える日本の未来―地域活性化とNPO

■ 書籍情報

eコミュニティが変える日本の未来―地域活性化とNPO   【eコミュニティが変える日本の未来―地域活性化とNPO】

  Eジャパン協議会 (編集)
  価格: ¥1,470 (税込)
  NTT出版(2003/02)

 本書は、地域情報化の担い手としての、コミュニティ活動のリーダーたちのインタビューをまとめたものです。
 取り上げられているのは、FUSION長池や早稲田商店街、はりまスマートスクールプロジェクト、八千代オイコスなどです。それぞれに共通しているのは、「情報化」は後からついてきたもので、まず地域コミュニティでの活動があることです。地域で活動をする上で、サラリーマンと商店主と学生と主婦では生活の時間帯がバラバラだから打ち合わせをする時間も取れない。そこで、メーリングリストを使ってみる、ホームページを作ってみる、という活動に入っていく、というのが多いパターンのようです。ですから、登場する人たちの中には、コンピュータなんてほとんど触ったことが無かった、という人がたくさんいますが、そこに、情報リテラシーを持った人がどこからか現れて一緒に問題を解決しているのです。例えばサラリーマンのお父さんがパソコンの使い方を教えに行ったり、学生がサーバを管理したりといった形で地域コミュニティに関わりを持ち始めます。
 「地域活性化」という言葉は何か大げさで、自分には関係ない、というサラリーマンはたくさんいると思いますが、いろいろな人たちが、自分のできること、得意なことで地域の問題解決に貢献できることはすばらしいことだと思います。


■ 個人的な視点から

 本書は、とても地味な本です(もしかすると書店では派手な帯が付いていたのかもしれませんが・・・。)。たまたま図書館でボールドウィン=クラークの『デザイン・ルール』を借りたときに隣に並んでいたので借りたのですが、タイトルと編者、出版社しか書かれていないほぼモノクロの表紙のこの本が、これほど面白いとは事前には分かりませんでした。2冊とも読み終えたんですが、結局アマゾンで買ってしまいました。
 本書には、リアルかネット上で面識(?)のある方が何人か登場されているので、そういった点でも楽しめました。

(5/18追記:本届きました。帯がないとのっぺりしていますが、帯が付くとちゃんとでデザインが締まりますね。ということで写真も差し替えました。)


■ どんな人にオススメ?

・地域の活動に関心はあるけど参加するきっかけが無い、という人。


■ 関連しそうな本

 岩崎 正洋(編著) 『eデモクラシー』 2005年05月02日
 上山 信一 『「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ』 2005年03月28日
 町田 洋次 『社会起業家―「よい社会」をつくる人たち』 2005年02月16日


■ 百夜百マンガ

魔界都市ハンター【魔界都市ハンター 】

 「大地震で東京が外部から隔絶された魔界に変貌」という設定は、バイオレンスジャックやAKIRAなどでもお馴染みの設定なのですが、AKIRAのように単なる廃墟にするよりも、地理感だけが残っている方が面白いですね。→魔都新宿

2005年5月15日 (日)

残業しない技術

■ 書籍情報

残業しない技術   【残業しない技術】

  梅森 浩一
  価格: ¥1,050 (税込)
  扶桑社(2004/07/16)

 本書は、タイトルのとおり、残業をしないための「技術」を紹介しているものです。中には、普段と違ういいスーツを着ていく、ホワイトボードの帰社予定を少しずつずらす、などのセコイ感じの「小技」も含まれていますが、多くは仕事を「サクっ!」と片付けるための、段取りや無駄な仕事の切捨て方が中心です。
 構成もエピソードごとに細切れになっていて、全体としても1時間くらいで読めてしまうものですので、通勤電車の中でも1日で読めてしまうでしょう。


■ 個人的な視点から

 本著の著者は『「クビ!」論』で有名ですが、ではクビになる人は次のどちらの方でしょうか。
(1)深夜まで毎日残業して他の人の2割増しくらいの仕事をこなす人。
(2)ほとんど残業しないで他の人と同程度の仕事をこなす人。
 一般的には、(1)の方が評価が高いような印象を受けます。「深夜まで働いて人より多くの仕事をこなしている」ということで、「勤勉さ」「仕事量」ともに、(2)よりもプラスだからです。少なくとも役所においては(1)の方が上司の受けがよく、また、過去にそういう仕事のやり方をしていた人が出世して上司になっているので、その傾向が強まっていきます。
 しかし、深夜まで残業することは、本人や家族にとって負担がかかり、組織にとっても人件費が嵩む要因になります(サービス残業だからお金はかからない、なんてバカなことを言っている人は、将来訴えられたり部下の人望・健康を失うリスクが高いということ、自分には「コスト」という概念が無いことを自覚しましょう。)。また、(1)が深夜までかけてやっている「2割」の部分は本当に必要な仕事でしょうか。人間が集中できる時間には個人差はあっても限度があります。眠い目をこすりながら深夜にやっている仕事は、どうでもいいような仕事か、後回しにしてきたツケが回ったのか(これを、自分に対する『瀬戸際戦略』と言います。ろくな仕事はできません。)のどちらかでしょう。
 一方で、「仕事をする技術」は、人によって大きな差があります。特に、日々の仕事にコンピュータが欠かせないホワイトカラーの場合は、本当に倍くらいの差が付きます。毎日情報と技術を吸収するインプットが無いまま、日々の仕事を深夜までこなしている人は、「刃を研ぐ暇が無いと言って、切れない鋸で木を切っている人」に他なりません。職業人としての自分の切れ味に磨きをかけることをしないままでは、切れ味が悪くなったら捨てられる「替え刃」のような存在でしかないことを意識するべきでしょう。
 ドラスティックな『「クビ!」論』の著者が残業をしないことを推奨していることは、一見矛盾するようにも見えますが、本書を併せて読むと納得できるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・深夜まで毎日残業している人。
・残業しないことに引け目や不安を感じている人。


■ 関連しそうな本

 梅森 浩一 『「クビ!」論。』
 奥井 規晶 『外資の3倍速仕事術―「できる自分」へのムダ消しレッスン!』
 高橋 伸夫 『できる社員は「やり過ごす」―尻ぬぐい・やり過ごしの凄い働きを発見した』 2005年05月12日


■ 百夜百音

Cupid & Psyche 85【Cupid & Psyche 85】 (試聴あり) Scritti Politti オリジナル盤発売: 1985

 タイトルに「85」と入っているとおり、今から20年前のアルバムですが、それを知らずに聴かされたら、いつごろの音楽なのか分からないような独特の未来感は、当時も衝撃的でしたし、今聴いても新たな発見がたくさん詰まっています。
 16分食った「ツチャー、ツチャー」というテンション入りまくりのギターや、ボーカルとの相性抜群なベースライン(ベース弾きながら主旋律を考えたような感じ)は、個人的にも大変影響を受けました。
 国内では、ポータブル・ロックが、同年に発売したアルバム『QT』の「スパイがいっぱい Everybody is a spy」(デカパンチョの曲ではない)で、もろにパクったアレンジをしています。

『QT+1』QT+1

2005年5月14日 (土)

「できる人」はどこがちがうのか

■ 書籍情報

「できる人」はどこがちがうのか   【「できる人」はどこがちがうのか】

  斎藤 孝
  価格: ¥735 (税込)
  筑摩書房(2001/07)

 本書は、元もとの仮タイトルが「上達の秘訣」であったように、「生きる力に直接つながる上達の普遍的な論理を身につける」ことを提示しているものです。
 「上達の普遍的な論理」とは、
・まねる力:うまい人のやることをよく見て、その技をまねて盗む。
・段取り力:数人が関わる場をクリエイティブにする。
・コメント力:要約力・質問力を含む。
の3つの力を技として活用しながら、自分のスタイルを作り上げて行くことだと著者は述べています。
 『声に出して読みたい日本語』などのベストセラーを持つ著者の上達論のエッセンスが詰まった一冊です。


■ 個人的な視点から

 NHKの「にほんごであそぼ」でも知られている著者ですが、この番組と言えば野村萬斎など古典芸能が大フィーチャーされていることでも知られています。
 本書でも、世阿弥の「離見の見」や兼好法師の『徒然草』などの古典が取り上げられています。特に『徒然草』は上達論の基本書として数多くのエピソードが使われていて、「高名の木登り」(第109段)、「双六上手」(第110段)などが引用されています。
 私が特に印象に残ったのは、第150段の「能をつかんとする人 」で、芸事を身につけようとする人で、上手くできるようになってから人前に出よう、と思っているような人は上達しない、という話です。私もお世辞にも文章を書くのが得意ではありませんが、上手く書けるようになってから人前に出よう、と思っていたら一生上達しないので、恥ずかしげも無くメルマガなどを書いています。
 と言い訳に使うために本書を取り上げたわけではなく、本当に読みやすい本です。短いエピソードの積み重ねで講演録のように構成されており、通勤電車の中で読むにはもってこいです。

■ どんな人にオススメ?

・「上達の秘訣」を身につけたい人。


■ 関連しそうな本

 齋藤 孝 『声に出して読みたい日本語』
 齋藤 孝 『段取り力』
 齋藤 孝 『コメント力』
 岡本 呻也 『「人間力」のプロになる―誰もここまで教えてくれなかった仕事ができる人の基本メソッド』 2005年05月03日


■ 百夜百音

SONGS【SONGS】 SUGAR BABE オリジナル盤発売: 1975

 山下達郎や大貫妙子が在籍していたことで知られています。「SHOW」「DOWN TOWN」「パレード」などの有名な曲も収められています。当時他のバンドに混じってステージに立つと盛り下がったというほど、男ボーカルが裏声で歌うバンドは珍しかったのですが、「今日はなんだか」のようなライブ向きの盛り上がりそうな曲もあります。
 カバーしている大瀧詠一の「指切り」は、ピチカートファイヴの『月面軟着陸』でもカバーされています。

『月面軟着陸』

2005年5月13日 (金)

自治体の挑戦―改革者たちの決断と実践

■ 書籍情報

自治体の挑戦―改革者たちの決断と実践   【自治体の挑戦―改革者たちの決断と実践】

  細川 珠生
  価格: ¥1,680 (税込)
  学陽書房(2000/11)

 本書は、全国の自治体の様々な挑戦の現場を著者が取材し、『サンデー毎日』に連載した「自治体の挑戦」を元にしています。連載自体が1998~99年ということもあり、現在から見ればやや古い事例や挑戦の結果行き詰ってしまった事例もありますが、地方分権一括法施行前夜の、自治体に対する期待と不安が高まっている雰囲気をよく伝えています。
 今でこそ、全国の自治体が独自の施策、「全国初」の冠の付いた施策を競うようになりましたが、当時はまだ横並びが良しとされ、出る杭は打たれると言われた時代です。本書に取り上げられている事例は、今では当たり前になってしまったものも多いですが、当時は本当に「挑戦」だったのです。
 ほんの数年前なの、遠い昔のできことのように感じられます。


■ 個人的な視点から

 当時は、地方分権一括法を前にして、新聞などで全国で胎動していた「行政経営」の試みが少しずつ紹介され始めた時期でした。三重県の北川前知事をはじめとした平成7年4月の統一地方選挙で就任した改革派首長たちが1期目の後半に入り、やっと改革の成果が着目され始めたのです。
 私は、どこか遠い外国の出来事のように感じながら、新聞記事などをスクラップしていました。出張などで宮城や三重の県庁に行ったときは、「おお!」と驚嘆しながら建物を見ていました。建物自体はただの役所そのものなんですが。(^^;
 それを言い出すと、改革派知事・市町村長さんも外見は普通のオジサンということになりますが・・・。来週は元テレビ局記者のおじさんに、来月は日本プータローおじさんにお話を伺う予定です。


■ どんな人にオススメ?

・自治体が何か新しいことにチャレンジしても、もう驚かなくなってしまった人。


■ 関連しそうな本

 デビッド オズボーン, テッド ゲーブラー 『行政革命』 2005年01月22日
 中村 征之 『三重が、燃えている』
 木佐 茂男, 逢坂 誠二 (編集) 『わたしたちのまちの憲法―ニセコ町の挑戦』 2005年03月25日


■ 百夜百マンガ

ふぁいてぃんぐスイーパー【ふぁいてぃんぐスイーパー 】

 とにかく掃除です。一応「掃除屋」という設定はあるのですが、探偵小説とかに出てくるような遠まわしな意味はなく、本当に掃除をする人です。ただし、掃除の対象は物に限らない、というところで、箒を振り回して戦ってます。『県立地球防衛軍』とかと並んで当時の少年サンデーらしいギャグマンガ(うる☆やつら、っぽいというか)の一角を占めていました。

2005年5月12日 (木)

できる社員は「やり過ごす」

■ 書籍情報

できる社員は「やり過ごす」―尻ぬぐい・やり過ごしの凄い働きを発見した   【できる社員は「やり過ごす」―尻ぬぐい・やり過ごしの凄い働きを発見した】

  高橋 伸夫
  価格: ¥1,529 (税込)
  ネスコ(1996/09)

 本書は、日本企業で日頃行われている「やり過ごし」と「尻拭い」を大真面目に研究した結果を、一般向けに分かりやすく書いたものです。
 「やり過ごし」と言うと、多くの社会人は「そんなことがあってはならない」と答えるのではないでしょうか。少なくとも公式には上司の指示を部下が勝手にやり過ごしてしまう、というのは認めにくいものです。しかし、現実には「指示が出されても、やり過ごしているうちに、立ち消えになることがある」というアンケートに約6割の企業が「ある」と回答しています。
 本書は、特に仕事の負荷のかかる30代の社員は、自ら仕事に優先順位をつけることで、時間と労力を節約していること、人事異動が頻繁な管理者の気まぐれな指示を波風立てずに抑えることができること、将来上司になるための訓練として能力以上の負荷をかけて自分で仕事を管理する訓練にしていること、など、「やり過ごし」の効能を指摘しています。
 「忙しくてそんなくだらない本を読む暇は無い」と思った人は、ぜひ一度本書を手に取ってみてください。仕事に優先順位付けをすることで、かえって評価が高くなるかもしれませんよ。


■ 個人的な視点から

 巷には「時間管理」というタイトルの付いた本がたくさん溢れています。自分で「忙しい」と思っている人がそういう本を買うときには、「もっと時間をうまく使えば、今の仕事をもっと早い時間で片付けられる」と期待しているのではないかと思います。
 しかし、時間管理の本には、「時間管理と言っても一人ひとりに与えられた時間は1日24時間しかなく時間を直接管理することはできない。」というようなことが書かれていて、時間をうまく使うことよりも、仕事に優先順位をつけて、低いものを切り捨てることを重視しています。本によっては、「3割でもやりすぎ」「2割でいい、8割は捨てる」というようなことも書かれています。でも、「仕事を切り捨てる」と言われても、一社員である自分にそんなことはできない、と戸惑ってしまうでしょう。
 そこで必要になるのが「やり過ごし」です。やり過ごすことは、仕事をやらない、という意味ではなく、優先順位の高い仕事に「時間」という有限の資源を集中投下するという意味ですので、「捨てる」ことで高い成果が出せるようになります。優先順位の付け方を間違えたら大変ですが・・・。

■ どんな人にオススメ?

・自分では「忙しい」と思っている人。
・自分の部下はなんだか忙しそうにあくせくしている、と感じている管理職。


■ 関連しそうな本

 高橋 伸夫 『組織の中の決定理論』
 高橋 伸夫 『ぬるま湯的経営の研究―人と組織の変化性向』 2005年03月16日
 高橋 伸夫 『日本企業の意思決定原理』
 高橋 伸夫 『虚妄の成果主義―日本型年功制復活の

2005年5月11日 (水)

若者たちの"政治革命"―組織からネットワークへ

■ 書籍情報

若者たちの   【若者たちの"政治革命"―組織からネットワークへ】

  丸楠 恭一, 坂田 顕一, 山下 利恵子
  価格: ¥819 (税込)
  中央公論新社 (2004/05)


 本書は、政党インターンや政党ボランティア、政策系NPOなど、様々な形で政治に関わっている若者の姿を、当事者の生の声を中心に紹介しているものです。
 登場しているのは、ママさん市議や政策系NPOの理事、議員インターンを経験者など、多様な方法で政治に関わる若者達です。
 この10年間で、NPOの人的ネットワークの充実、インターネットの普及など、若者が政治に参加するチャンネルが充実してきました。一方で、若者の政治離れも深刻化し、投票率は下降し続けています。サイバー時代の政治の姿についての文献も数多く登場していますが、現実の姿はどうなっているのか、その一片を知ることができる一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書の第4章には、8人の若者へのインタビューが収められていますが、本当に普通の若者が、スポーツや趣味に打ち込むのと同じように、政治に関わっていて新鮮です。私が学生の頃は、政治に打ち込む若者というと、ヘルメットかぶってチラシ配っているイメージがありましたので。
 どうでもいいことですが、「政治学者のマルクス先生」っていうのは、インパクトありますね。初めてお会いしたときには耳を疑ってしまいました(^^;。すぐに覚えてもらえるのはメリットですが、ゼミ生にとっては先入観をもたれたら可哀想ですね。就職の面接で「私の指導教官はマルクス先生です。」「マルクス先生を師と仰いでいます。」とか言ったら受けるかもしれませんが・・・。

■ どんな人にオススメ?

・「いまどきの若者は世の中のことに無関心だ」と嘆いている方。
 ・何か変えたいと思っているのにもどかしく思っている若者自身。


■ 関連しそうな本

 加藤 寛 『入門公共選択―政治の経済学』 2005年03月13日
 佐々木 毅 『政治学講義』 2005年03月11日
 岩崎 正洋 (編集) 『サイバーポリティクス―IT社会の政治学』 2005年04月09日
 横江 公美 『Eポリティックス』 2005年02月11日
 谷口 尚子 『現代日本の投票行動』
 小林 良彰 『公共選択』 2005年04月15日


■ 百夜百マンガ

傷だらけの天使たち【傷だらけの天使たち 】

 たしか『ヤングサンデー』が創刊(または週刊化)したときにスタートしたような気がします。
 大受けするというよりも「トホホホホ・・・」系のネタが多くて、もしかすると超正統派の四コママンガなのかもしれません。

2005年5月10日 (火)

経済システムの比較制度分析

■ 書籍情報

経済システムの比較制度分析   【経済システムの比較制度分析】

  青木 昌彦, 奥野 正寛(編著)
  価格: ¥3,360 (税込)
  東京大学出版会 (1996/04)

 本書は、経済システムを制度の集合体と考える「比較制度分析」に関する体系書です。比較制度分析は、次の5つの視点から経済システムを分析しようとしています。
(1)資本主義経済システムの多様性
(2)制度の持つ戦略的補完性
(3)経済システム内部の制度的補完性
(4)経済システムの進化と経路依存性
(5)改革や移行における漸進的アプローチ
 本書の位置づけとしては、95年の『経済システムの進化と多元性―比較制度分析序説』と2001年の『比較制度分析に向けて』の間にあり、内容的にも『~に向けて』の習作的なものになっていますが、翻訳でもあり研究の集大成的な『~に向けて』が、冗長な文章、構成になっているのに比較して、論点がよくまとまっているのではないかと思います。
 比較制度分析のポイントを理解するためには最適の一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書を読む上では、事前に『組織の経済学』を読んでおくとより理解しやすいと思います。または、本書を読みながら、分かりにくい概念があったときに、『組織の経済学』の関係する章を読んでいく、という方法も考えられます。
 また、『日本経済の制度分析』は92年の出版ということもあり、まだ比較制度分析が体系化される前なので、本書を先に読んだほうが、理解しやすいと思います。
 なお、比較制度分析以降読み進むものとしては、「モジュール化」関連の文献が読みやすくなっていると思います。


■ どんな人にオススメ?

 ・比較制度分析をコンパクトに理解したい人。


■ 関連しそうな本

 青木 昌彦 (著), 滝沢 弘和, 谷口 和弘 (翻訳) 『比較制度分析に向けて』
 青木 昌彦 『経済システムの進化と多元性―比較制度分析序説』
 青木 昌彦 (著), 永易 浩一 (翻訳) 『日本経済の制度分析―情報・インセンティブ・交渉ゲーム』
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳) 『組織の経済学』 2005年01月24日
 キム・クラーク, カーリス・ボールドウィン (著), 安藤 晴彦 (翻訳) 『デザイン・ルール―モジュール化パワー』
 青木 昌彦, 安藤 晴彦(編著) 『モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質』


■ 百夜百マンガ

オタクの御主人【オタクの御主人】

 「結婚するまでは外面はよかったのに、こんな人だとは思わなかった・・・」という悲劇は、多かれ少なかれどこでも起こっていることだと思います。
 本作品に登場する要一郎クンも何しろ大財閥の御曹司。でも家の中では・・・。
 「チャッピー」って聞くとこのCDがまず浮かびます。

 『NEW CHAPPIE』

2005年5月 9日 (月)

ハッピー社員―仕事の世界の幸福論 解決!組織で働く悩み

■ 書籍情報

ハッピー社員―仕事の世界の幸福論 解決!組織で働く悩み   【ハッピー社員―仕事の世界の幸福論 解決!組織で働く悩み】

  金井 寿宏 (著)
  価格: ¥1,000 (税込)
  プレジデント社 (2004/10)

 本書は、『プレジデント』誌の「職場の心理学」等に掲載された論文や対談などを中心に編集されたものです。帯からして「『いいゴマすり』してますか?」と書かれているので、お気楽そうな印象を受けますが、実際に中身も気楽に読めるような構成になっています。
 しかし、本書の内容は決してお手軽なものではなく、正面から向き合うと結構重いものです。「あなたは仕事をしていて幸せですか?」を面と向かって聞かれたら引いてしまいますが、そこを「あなたはハッピーですか?」「どうしたらハッピーになれますか?」と聞いているのが本書のスタンスではないかと思います。
 各章はそれぞれエッセイ(「職場の心理学」に掲載されていたもの)と対談がセットになった構成になっています。エッセイ部分だけだと、結構小難しい話をしているので、これが丸々一冊続くと投げ出してしまう人も出そうなんですが、各分野の人との対談とセットになっていることで、エッセイ部分を流し読みしていても、「ああ、こういうことが言いたかったんだ」となんとなく分かるようになっています。
 連休明けで気が重い、という方にぜひ読んでもらいたい一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書のうち、「第6章 「踊る」組織の幸福論」だけは対談のみの構成となっていますが、実はこの章が一番の楽しみだったりしてました。組織論的やキャリア論的にもとても面白い映画だった『踊る大捜査線』のプロデューサーとの対談です。
 面白かったのは、1作目と2作目の間で登場人物や製作者自身もリーダーとしての成長をしている、という点でした。1作目が青島の映画で、2作目が室井の映画になった、という言葉が象徴しています。
 警察の組織論と言うと、ニューヨーク市警を改革したブラットンの話が有名ですが、パトレイバーの「特車2課」から影響を受けた湾岸署の話も面白いです。


■ どんな人にオススメ?

 ・「仕事」と「ハッピー」の組合せに違和感を持っている人。


■ 関連しそうな本

 金井 寿宏 『リーダーシップ入門』 2005年03月31日
 マルコム グラッドウェル (著), 高橋 啓 (翻訳) 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 2005年02月12日
 『踊る大捜査線 THE MOVIE』
 『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! 』


■ 百夜百マンガ

わさび【わさび】

 超真面目そうな絵で、ものすごく真面目そうな登場人物が、くだらないことを考えていたり、日常の小さなことにものすごくこだわったり、というおかしさがこの作者の持ち味です。
 『すてきな奥さん』収録の「蔵野夫人」も同じ路線です。

『すてきな奥さん』

2005年5月 8日 (日)

人は海辺で進化した―人類進化の新理論

■ 書籍情報

人は海辺で進化した―人類進化の新理論   【人は海辺で進化した―人類進化の新理論】

  エレイン モーガン (著), 望月 弘子 (翻訳)
  価格: ¥2,310 (税込)
  どうぶつ社 (1998/03)

 人類は、なぜ直立歩行を始めたのか。なぜ毛皮が無い代わりに皮下脂肪があるのか。類人猿から人類への進化の段階での、これらの大きな変化の証拠となる化石はまだ発見されていません(「ミッシング・リンク」と呼ばれています。)。
 これらの変化を説明する仮説としては、
(1)サバンナ説:気候の変化によって森が減少し、樹上の類人猿は森を追われ草原で暮らさなければならなくなったので、遠くを見通し、空いた両手で道具を使えるように直立歩行をし、暑い草原で体温調節するために体毛を失った、とする説。
(2)ネオテニー(幼形成熟)説:類人猿の胎児期の特徴である、無毛や大きな頭部などの特徴を残したまま成熟した、とする説。
等があります。
 しかし、サバンナ説には、草原では四足歩行の方が速く移動できるのではないか、毛皮の方が体温調節には有利ではないか、等の弱みがあり、また、ネオテニー説は、どのようにして変化が起きたかを説明するものでしかない、という弱みがあります。
 そこで、本書で主に紹介しているのは、1960年にアリスター・ハーディ教授が発表した
(3)アクア説:クジラやイルカ、ペンギン、アザラシ、ジュゴンと同じように、陸生の類人猿が水辺での生活に適応したために、体毛の変わりに皮下脂肪を身につけ、背骨と足が一直線な構造に変化した、とする説。
です。
 他にもこのアクア説は、人間が涙を流すことができること、生後間もない赤ん坊はすぐに泳げること、クジラやアシカと同じように潜水反射によって水にもぐると心拍数が下がる「徐脈」という現象が起こること、などを例に挙げています。
 受験勉強の参考書にはなりそうもありませんが、人類の起源に思いをはせ、知的探究心を刺激するにはもってこいの一冊です。


■ 個人的な視点から

 昨日図書館で借りてきて一気に読んでしまいました。単純に面白いです。
 世界史の教科書などでは、前屈みの類人猿がだんだん体を起こしていき、それにしたがってだんだん体毛が少なくなり、人間まで進化して行く図が、最初の方に書かれていますが、このアクア説を採ると、変化は連続的に起きたのではなく、ある時に急激に、しかも局地的に起きていたことになります。
 同じように、社会の変化や人間の成長も連続的に、線形に起こるわけではありません。例えば、キャリア論ではリーダーが成長する上できっかけとなる重要な経験を「量子力学的な跳躍となった経験」と表現しています。また、社会変革も、ある地域で局地的に猛スピードで進化が起こり、それが社会に伝播して行くことで変革が進みます。
 本書で紹介されている「アクア説」が正解か不正解かどうかはそれほど重要ではありません。大事なことは、既存の常識に拘泥されずに物事をきちんと議論することではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

 ・海に潜ると心が落ち着くのはなぜか、と思っている人。
 ・異説・奇説に関心のある人。


■ 関連しそうな本

 エレイン モーガン (著), 望月 弘子 (翻訳) 『進化の傷あと―身体が語る人類の起源』
 エレイン モーガン (著), 望月 弘子 (翻訳) 『人類の起源論争―アクア説はなぜ異端なのか?』
 金井 壽宏 『仕事で「一皮むける」』 2005年04月25日


■ 百夜百音

Kaleidoscopic Vibrations【Kaleidoscopic Vibrations】 Perrey-Kingsley オリジナル盤発売: 1967

 ペリー&キングスレイの名前を知らない人も、ディズニーランドのエレクトリカルパレードの曲は耳にしたことがあると思います。あのピコピコした曲、「Baroque Hoedown」のオリジナルはこのアルバムに収められています。(試聴は「song clips」の3曲目です。
 ムーグシンセサイザーとアナログテープの切り貼りで作られたそのサウンドは、とても40年前に録音されたものとは思えないほどポップで不思議なものです。

 「東京ディズニーランド エレクトリカルパレード・ドリームライツショー・ミックス・エディション」

 様々な電子音や自然音を切り貼りしてリズムを組み立てる手法は、多くのアーティストに模倣され、ピチカート・ファイヴのアルバム『学校へ行こう』学校へ行こう(現在でも、多くのテレビ番組でBGMとして使われているサントラの名盤)に収められている「校庭の宇宙人」(小西)は、ペリキンそのもの、という感じでパクられています。

 ピチカート・ファイヴ 『学校へ行こう』

2005年5月 7日 (土)

佐藤雅彦全仕事

■ 書籍情報

佐藤雅彦全仕事   【佐藤雅彦全仕事】

  佐藤 雅彦
  価格: ¥3,045 (税込)
  マドラ出版 (1996/06)

 本書は、現在は慶應SFCで教鞭をとられているメディアクリエイターである佐藤雅彦氏の、電通時代の仕事を中心に編集されたものです。「バザールでござーる」や「ポリンキー」などのヒットCMが収録されています。
 本書以降は、毎日新聞の「日本のスイッチ」やNHKの「ピタゴラスイッチ」(アルゴリズムたいそう、アルゴリズムこうしんなど)、「だんご3兄弟」などの(少なくとも個人的には大)ヒットを飛ばしていますが、CM以外の分野でも次々とヒットを生み出せるのはなぜなのでしょうか。
 そのヒントは本書にあります。多岐にわたる氏の活動にピピッと刺激を受けたという方はぜひ一度手に取ってみてください。


■ 個人的な視点から

 私が本書の一番の目玉だと思っているのは、巻末に収められた「ルール 僕の表現方法」です。佐藤氏が表現を作り始めたときに書いたという「別のルールで物を作ろうと考えている。」というメモは、氏の様々な表現方法に共通する法則を示しています。
 「ルールを決める」というと、杓子定規なイメージがつきまとい、抵抗感のある人もいるんじゃないかと思いますが、この場合の「ルール」とは、法則・法則性という意味で使われています。つまり、これまでの表現とは別の法則性・仮説に基づいて物を作る、という意味に読みかえることができます。
 佐藤氏は、その法則性、別のルールを発見するために、仕事の全く無かった3ヶ月間、資料室にこもって世界中の名作CMをひたすら見続け、若手映像クリエイターと夜遅くまで議論します。こうして、発見していったルールが、「ドキュメント・リップシンクロ」や「濁音時代」など氏独自のCMに結実していきます。つまり、観察から仮説を抽出し、その仮説をCMによって実証しているのです。
 「法則に基づいて物を作る」というと、机上の空論、理論が先行したつまらないものを作っている、という先入観を持つ人がいますが、「現場主義」というのは、ただ単純に現場で旧来どおりのやり方を考えなしに踏襲するというものではなく、「観察→仮説→実証」のサイクルを常に回しながら現場で考える、ということではないかと思います。

 なお、「アルゴリズムこうしん」で登場する緑消防署は我家の近所です。


■ どんな人にオススメ?

 ・ピタゴラスイッチの好きな人。
 ・ものごとから法則性を導きたい人。


■ 関連しそうな本
だんご3兄弟 あっという間劇場
 慶応義塾大学佐藤雅彦研究室, 佐藤 雅彦 『日本のスイッチ』
 佐藤 雅彦, 内野 真澄 『だんご3兄弟 あっという間劇場』(←娘のお気に入りです。)
 佐藤 雅彦, 竹中 平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』
 佐藤 雅彦, 内野 真澄, いつもここから 『NHKピタゴラスイッチアルゴリズムたいそう―おまけおとうさんスイッチ』
 いつもここから 『NHKピタゴラスイッチ アルゴリズムたいそう』


■ 百夜百音

Age of Plastic【Age of Plastic】(試聴あり) The Buggles オリジナル盤発売: 1980

 「ラジオ・スターの悲劇」だけは聞いたことがある、という人が多いBugglesのファーストアルバムです。
SUMMER LOVERS 25年前のアルバムなので、当時最新のサンプリング・サウンドは、テクノロジーにリアルさを求めている人に取ってはチープに感じられるかもしれませんが、楽曲の素材として必然性を持って使用しているので、今聞いても違和感はありません。

 1993年には、ロング・ヴァケーションがアルバム『SUMMER LOVERS』でカバーしています。

2005年5月 6日 (金)

パブリック・マネジメント―戦略行政への理論と実践

■ 書籍情報

パブリック・マネジメント―戦略行政への理論と実践   【パブリック・マネジメント―戦略行政への理論と実践】

  大住 荘四郎 (著)
  価格: ¥2,940 (税込)
  日本評論社 (2002/01)

 本書は、『経済セミナー』誌に2000年度に連載されたものをベースにまとめられた、パブリックマネジメントの体系的な理論書です。同様のテーマでの前著に当たる『ニュー・パブリック・マネジメント―理念・ビジョン・戦略』は、NPMの理論的背景などが解説された前半部分と、公会計などの各論が展開された後半部分とに分かれていて、NPMに関する論文集(実際に既存の論文を中心に編集されたものなので)という色彩が強かったです。しかし、本書は、もともとが同じ雑誌の一連の連載だったことに加えて、大幅に加筆されていますので、より体系的にNPMの姿を理解することができると思います。
 まず最初の一冊として読もうという人向けのテキストとしては、前著よりも数段読みやすいものになっていると思います。各章のボリュームが揃っていますので、ゼミや自主勉強会で輪読する教材にするのにも向いているでしょう。


■ 個人的な視点から

 本書の元になっていた『経済セミナー』の連載を毎月一生懸命読んだ記憶があります。当時は、NPMに関して体系的に記述されたテキストが国内ではほとんど無く、行政学や政治学、法学などの様々なバックボーンを持った研究者が断片的にNPMに関する批評や海外の研究の動向などを紹介する程度でしたので、「NPMとは壁のようなものである。」、「いや紐のようなものである。」という「群盲象を撫でる」ような情報があちこちに飛び交っていて全体像がつかみにくい状況でした。
 そんな中にあって、1年分の連載のボリュームがまとまったものは大変貴重でした。断片的な情報を拾い集めていた当時に比べて、本書から読み始められる人はどれほど幸せだろうと思います。


■ どんな人にオススメ?

 ・NPMについて体系的に理解したい人。


■ 関連しそうな本

 大住莊四郎 『ニュ-・パブリック・マネジメント  理念・ビジョン・戦略 』 2005年01月23日
 Ewan Ferlie, Lynn Ashburner, Louise Fitzgerald, Andrew Pettigrew 『The New Public Management in Action』
 山内 弘隆, 上山 信一 (編著) 『パブリック・セクターの経済・経営学』 2005年03月01日
 デビッド オズボーン, テッド ゲーブラー 『行政革命』 2005年01月22日


■ 百夜百マンガ

OL進化論【OL進化論】

 連載開始は1989年!
 ということは、平成になってからのOLの進化がこれを読めば分かる・・・かどうかは分かりませんが、生活感溢れる観察は森下裕美に続いて社会面の新聞四コマに登場しても人気を取れるんじゃないかと思います。
 それにしても四コマ漫画家がどうやってアイデアを整理しているのか、ぜひ見てみたいです。「このくらい誰でも思いつく」という小ネタであっても、週に何本もそのネタを調理し続けるのは簡単なことではありません。まさに職人芸!

2005年5月 5日 (木)

知的生産の技術

■ 書籍情報

知的生産の技術   【知的生産の技術】

  梅棹 忠夫 (著)
  価格: ¥777 (税込)
  岩波書店 (1969/07)

 本書は、35年以上前に出版された、個人的な情報処理の技術について書かれたものです。当時はパソコンもワープロも無ければ携帯電話もありません。しかし、本書に書かれている数々の情報処理の技術に古さ・陳腐さを感じないのは、人間の「記憶」という曖昧なものをいかに「記録」に変換するか、頭の中で断片的にぐるぐる渦巻いている考えをいかに文章化し、更なる思考につなげて行くか、ということは、ハード的な情報処理技術だけは格段に進歩した現代においても変わらぬ課題だからかもしれません
 本書において、「知的生産」の中心に位置付けられているのが、著者が発案した「京大式カード」です。これは、B6版のカードに罫線が引かれただけのシンプルなものですが、著者は、常にこのカードを持ち歩き、様々な発見やアイデアをこのカードに書き込んでいきます。
 「忘れるために書く」というのもインパクトがありますが、曖昧な記憶に頼らず、自分の脳の外に「外部記憶装置」を作ってしまう著者のアプローチからは、最新の情報機器を、メーカーの用意してくれた機能としてしか使いこなせていない我々にも、学ぶところが多くあるように思います。


■ 個人的な視点から

 電車に乗っていたり道を歩いているときに限って、色々なアイデアがひらめきます。皆さんはそんな時どうしていますか。著者ならば鞄からサッと京大式カードを取り出して書き込むところだと思いますが、残念ながら、これまでに道端で京大式カードに書き込んでいる人を見かけたことはありません(というよりも京大式カードの現物を見たことがありません・・・。)。
 私は携帯電話のメモ機能(スケジュール機能)を使っています。問題点は、後から見たときに「これは何が言いたいのか?」が分からないメモが結構あることです。特に、飲み会の帰り道に書いたメモは後から読んでもさっぱり分かりません。(^^;

 目の前にコンピュータがあるときには、とにかく自分宛にメールを送っています。おそらく、私のメーラに最もたくさんメールを送っているのは自分自身ではないかと思います。内容は、思いついたアイデアであったり、ToDoであったり、ニュースのスクラップであったりと様々です。いくつかのメールアドレスを使い分けておくと、メーラで自動的に振り分けることができ、後から探し出す見当が付けやすくなります。
 この自分宛にメールを送る、というのは、ホリエモンの本にも書いてありました。タイムマネジメントの基本的な習慣として、「自分にアポイントを入れる」というのがあるのですが、自分に対して仕事の発注メールを送っておくと、優先度や期限などがはっきりして整理がつきやすくなります。


■ どんな人にオススメ?

 ・自分は「知的生産」でメシを食っているという自負のある人。
 ・自分では「知的生産でメシを食っている」という意識は無いけれど、本当は自覚する必要のあるホワイトカラーの人。


■ 関連しそうな本

 川喜田 二郎 『発想法―創造性開発のために』
 板坂 元 『考える技術・書く技術』
 中野 不二男 『メモの技術―パソコンで「知的生産」』
 中野 明 『書くためのパソコン』
 加藤 昌治 『考具―考えるための道具、持っていますか?』


■ 百夜百音

パールトロン【パールトロン】 パール兄弟 オリジナル盤発売: 1987

 先日、千葉市の川崎製鉄の工場跡地に新しくオープンしたショッピングセンターに行ってきました。昔は赤い「鋼鉄の炎」を吐いていた工場跡地がすっかり変わってしまったのを見て思い出したのが、このアルバムに収められている「TRON岬」という曲でした。「海だったよね この辺~」・・・って言っても海だったのは「10 years ago」ではなく何十年も前なのですが。
 何しろ、千葉が歌に歌われることなんてめったにありません。ましてや、近未来的なカッコいいイメージで歌われたこの曲は大変貴重です。もし私が市長選挙に出るならば、マニフェストの冒頭には、市歌を「TRON岬」にして、ポートタワーを「トロンタワー」に改名します、くらいのことは書くかもしれません。せっかくなのでショッピングセンターの名前も「トロンシティ」にして、神経外科医学の集約地域にしてしまえば、世界中からギブソンファンやマトリクスファンが集まる聖地「Chiba City」になるかもしれないのに・・・。
 この曲以外にも矢野顕子にカバーされた「世界はGO NEXT」など名曲ぞろいです。
ゴールデン☆ベスト 残念ながら、現在は品切れになっているようですが、「世界は~」は最近発売されたベスト版で聴くことができます。

『ゴールデン☆ベスト』

2005年5月 4日 (水)

若者が『社会的弱者』に転落する

■ 書籍情報

若者が『社会的弱者』に転落する   【若者が『社会的弱者』に転落する】

  宮本 みち子 (著)
  価格: ¥756 (税込)
  洋泉社(2002/11)

 本書は、「ニート」や「パラサイトシングル」など、親の世代から見ると「大人になれない若者」と看做されがちな若者の問題を、教育や雇用などの社会的構造の問題として捉えて解説しているものです。
 学校を卒業しても正社員として就職しないフリーターや、就職・進学・職業訓練を受けていないニートの存在は、「モラトリアム」「大人になりたがらない若者」と見られ、親からの所得移転を受けられる若者、という見方が大勢を占め、「パラサイト・シングル」という言葉も、一人前になれない若者に対する非難のニュアンスがこめられていました。
 しかし、問題は若者自身だけにあるのではなく、社会の構造的な問題と捉えないと、日本の社会自体が危機を迎えることになる、というのが著者の主張です。まず、経済的な面では、『仕事のなかの曖昧な不安』で指摘されているように、中高年世代の雇用を確保するために、若者の雇用が抑制されている、という問題があります。つまり、フリーターやニートの中には自ら望んでではなく、就職の間口が狭いためにそうせざるを得なかった人たちが多数含まれているのです。著者は、1980年代に若者の貧困化が大きな問題になった欧米の例を挙げています。
 著者は経済的な要素以外にも、心理学の発達理論等を引用し、「大人」の定義や家族観の変化などの要素を取り上げています。
 「最近の若者は・・・」とつい口にしてしまうオジサン世代や、当事者である若者にぜひ読んでほしい一冊です。


■ 個人的な視点から

 最近になって摘発の事例も多くなってきましたが、「オレオレ詐欺」(最近は「振り込み詐欺」と言うそうです。)はまだまだ後を絶たないようです。(なんと、私の実家にも「息子が300万円横領をした。これから会議にかけるところだ。」という電話がかかってきました。情け容赦の無いうちの親は「それは本人の問題だからきちんと責任とらせてください。」と取り合いませんでしたが、「上司役」や「弁護士役」が代わる代わる出てきたそうです。)
 さて、オレオレ詐欺の被害に遭うのはお年寄りと相場が決まっているようですが、単に年寄りが騙し易いという以上に、現在の日本で一番カネを持っている、現金で数百万円を即座に用意できる世代が、この世代だからという要素が大きいようです。(アメリカでは「お年寄り=金持ち」というイメージがすぐに結びつかないので、「オレオレ詐欺」の説明をしてもピンとこないそうです。)
(JMM特別号:「おれおれ詐欺は海外でも成立するか?」より)

 欧米では、手厚い失業保険を誇っていた福祉国家の終焉とともに、若者の貧困の問題がクローズアップされましたが、日本では、失業保険の代わりに豊かな親世代の資産や年金が若者の貧困化の問題を見えにくくしています。しかし、今後、社会保障の制度が変わっていく中で、若者世代の貧困の問題はますますクローズアップされると考えられます。


■ どんな人にオススメ?

 ・自由を謳歌している若者に内心羨ましく思っているオジサン世代の人。
 ・若者。


■ 関連しそうな本

 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』
 玄田 有史, 曲沼 美恵 『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』
 大久保 幸夫 『新卒無業。―なぜ、彼らは就職しないのか』
 田丸 浩史  『ラブやん』


■ 百夜百音

POP! - 20 Hits【POP! - 20 Hits】 Erasure オリジナル盤発売日: 1992/11/24

 日本では、それほどメジャーではないようですが、「ピコピコ打ち込み+ポップなメロディ」という徹底したこだわりは、日本の「Jポップ」にも大きな影響を与えているアーティストです。
 このアルバムはベスト版ということで、タイトルどおり最初から最後までポップな曲が目白押しです。

2005年5月 3日 (火)

「人間力」のプロになる―誰もここまで教えてくれなかった仕事ができる人の基本メソッド

■ 書籍情報

「人間力」のプロになる―誰もここまで教えてくれなかった仕事ができる人の基本メソッド   【「人間力」のプロになる―誰もここまで教えてくれなかった仕事ができる人の基本メソッド】

  岡本 呻也 (著)
  価格: ¥1,365 (税込)
  実業之日本社 (2004/02)

 本書は、現在『フィナンシャル・ジャパン』の編集長である著者が、ビジネスマンが身に付けておかなければならない対人スキルの基本メソッドについて解説しているものです。
 そのポイントは、「心の窓を開き、リラックスして、相手の望みをかなえようとする」という3つのポイントで表されています。
 この3つのポイントや本書のタイトルを見ると、「何やら説教臭い道徳論や心がけの話なんじゃないか。」と警戒心を抱く人もいると思います。私も著者の別の本を読んでいなかったり、立ち読みができない通販だったら、きっと買わなかったと思います。
 しかし、本書に書かれていることは、あくまでも仕事の話が中心です。目の前の仕事や数字ばかりを優先し、対人スキルをないがしろにしていることで、かえって仕事の効率が悪くなり失敗が増える例が本書にはたくさん出てきます。なにしろ、本書の、第1章は「なぜ、なにもかもうまくいかないのでしょうか」から始まっているのです。仕事で失敗した経験のある人なら誰でも思い当たる例が一つ二つあるのではないでしょうか。
 また、本書の最終章、「仕事の値打ちって、どこにあるのでしょう?」では、「人間は、仕事を通して世界全体につながっているんです」でまとめています。よく、人生における仕事観の話をするときに「二人の石工」の話が持ち出されますが、それ以上にストレートで伝わりやすい仕事観だと思います。
 連休でしばらく仕事から離れるこの時期に、「自分にとっての仕事とは何か」を考えるきっかけとして、本書を手に取られてはいかがでしょうか。


■ 個人的な視点から

 『スーパー時間管理術』という本に、木を切っている農民と通りがかった老人の会話が寓話として紹介されています。鋸の歯を研いだ方がいい、と指摘する老人に、農民は、分かっているが今忙しいので全部木を切り終ってからやるつもりだ、と答えます。
 本書で紹介されている「人間力」の話も、この寓話に通じるところがあります。「相手の望みをかなえる」ということは、目の前の仕事を片付ける、ということからは一見逆の方向のように思われますが、起こらなくてもいいトラブルを未然に防ぎ、将来の仕事がスムースになる、という意味では「鋸歯を研ぐ」行為になるのです。

 著者は、『フィナンシャル・ジャパン』のサイトに「週刊!岡本編集長」というブログを書いていたり、過去の連載ですが、日経BPのサイトに「カイシャ主義に挑戦! “オープンソース型ビジネスマン”の生きる道」という傑作を執筆されていますので、まずはこちらを読んでみても面白いです。


■ どんな人にオススメ?

 ・「なぜ、なにもかもうまくいかないのか」と悩んでいる人。


■ 関連しそうな本

 岡本 呻也 『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』
  アレック・マッケンジー(著), 佐藤洋一, 佐藤明子(訳) 『スーパー時間管理術 もう時間がないとは言わせない!』


■ 関連サイト

「週刊!岡本編集長」
「カイシャ主義に挑戦! “オープンソース型ビジネスマン”の生きる道」
「日本のカイシャ、いかがなものか!」


■ 百夜百音

DON’T TRUST OVER THIRTY【DON’T TRUST OVER THIRTY】 ムーンライダーズ オリジナル盤発売 1986

 このアルバムが出たときには、まさか自分が30になるとは想像もつきませんでしたが、なってみるとやっぱり信じられませんね。(^^;ドント・トラスト・オーバー30
 超ポップな「9月の海はクラゲの海」や「DON’T TRUST ANYONE OVER 30」からマニアックな曲までどれもカッコイイです。

 最近、ケラリーノ・サンドロヴィッチが舞台化(?)してます。

2005年5月 2日 (月)

eデモクラシー

■ 書籍情報

eデモクラシー   【eデモクラシー】

  岩崎 正洋(編著)
  価格: ¥2,625 (税込)
  日本経済評論社 (2005/04)

 本書は、ICT(Information and Communication Technology)による民主主義のバージョンアップに関する、若手研究者7名による様々な角度からの分析が収められています(お一人若手とは言い難い方が・・・って河井さんゴメンナサイ(^^;)。
 著者の皆さんのバックグラウンドはバラエティに富んでいて、バリバリの政治学や法学の研究者もいれば、民間企業の研究所員や自治体出身の研究者、コンピュータを用いた争点投票支援システムを試作した人など、これをきっかけに続編や関連文献が読みたくなるような人ばかりです。
 内容としては、一時多くなった「IT革命でこんなに世の中が変わる」的な技術的に実現できることカタログではなく、電子メールや電子掲示板など現在ではかなり一般化した技術が、現実の民主主義にどのような影響を与え、今後どのように進化して行く(させていく)かを中心に語られています。
 「e」という文字が入ったタイトルやPCのキーボードが描かれた装丁からイメージされる「未来のお話」的な内容ではなく、現在進行形の話が中心なので、内容的には地に足の着いた、言い換えれば地味な内容の本ですが、現在の民主主義の姿を理解する上では大事な一冊です。本書を含む3冊の「eデモクラシー・シリーズ」として刊行されていますので、本書以外の『電子投票』・『コミュニティ』にも期待できそうです。


■ 個人的な視点から

 「ICTと民主主義」というテーマは、行政経営との関わりがそれほど強くないと思われるかもしれません。どちらかというと純粋に政治学の分野の論文が多いことも確かです。
 しかしポイントは、ICTによって市民との接点の形が大きく変わる中で、今までの行政経営や電子政府の文脈では、「顧客としての市民」に対して実現できることという部分が注目され、「主権者(株主)としての市民」のあり方がICTによってどう変わるか、という部分はあまり注目されてこなかった、ということにあります。
 確かに、行政経営はマネジメントの話題が中心で、政治体制は所与のものとして、いかに地域を経営するか、という点に力点がおかれていました。だから、「行政経営」と「電子政府」という言葉が結びつくと、どこでも住民票が取れますとか、必要な手続きはネットで済ませられますとかの話になってしまうのだと思います。
 しかし、「電子政府」という言葉の残り半分の部分、主権者としての市民の関わり方の部分もICTによって大きく変化しています。この部分を所与のものとして捉えてしまうと、ICTはただの便利な道具の一つとしてその影響が矮小化されてしまいますが、ICTによる政治参加のあり方の変化と併せて考えることにより、よりダイナミックな社会の変化をつかむことができるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

 ・「ICT」という言葉を初めて聴いた、という人。
 ・ITで生活は便利になるけどそれだけなの、と思う人。


■ 関連しそうな本

 岩崎 正洋 (編集) 『サイバーポリティクス―IT社会の政治学』 2005年04月09日
 岩崎 正洋 『電子投票』
 横江 公美 『Eポリティックス』 2005年02月11日
 高瀬 淳一 『情報と政治』


■ 百夜百マンガ

じみへん【じみへん】

 定番として、中年男がぶつぶつ独り言を言っている、というパターンが多いのですが、その目の付け所がしょぼくて笑わせます。
 記憶にあるのは、「お父さんのトイレの後は臭い」と言われたお父さんが、「そんなことも受け入れられないのか」と家族愛の欠如を大げさに(独り言で)嘆いた後、自分がもう一回トイレに入って「臭い、俺は自分さえも愛せない人間なのか!」と。アホです。

2005年5月 1日 (日)

マインドマップ読書術―自分ブランドを高め、人生の可能性を広げるノウハウ

■ 書籍情報

マインドマップ読書術―自分ブランドを高め、人生の可能性を広げるノウハウ   【マインドマップ読書術―自分ブランドを高め、人生の可能性を広げるノウハウ】

  松山 真之助
  価格: ¥1,470 (税込)
  ダイヤモンド社(2005/01)


 本書は、「Webook of the Day」という書評メルマガの著者が書いた、本の読み方の本です。著者は、千葉から都内までの2時間の通勤時間を使って、毎朝本を読んではメルマガにする、という習慣を1997年から続けています。通勤電車の中でそんなに本を読めるはずがない、という方もいらっしゃると思いますが、著者は毎朝始発電車に乗って6時半頃には職場に到着する生活をされています(同じ著者の『早朝起業』をご覧ください。)。
 しかし、エビングハウスという心理学者の「忘却曲線」によると、毎朝読んだ本の内容も翌日には9割が忘れてしまう、というです。それではもったいない、ということで、著者は、読んだ本の内容をマインドマップにまとめ、メルマガという形でアウトプットしているのです。
 では、マインドマップとはどのようなものでしょうか。それは、コンセプトを構造的、体系的、創造的に書き出す方法です。1枚の紙の中心にテーマを書き、その周りに放射状にサブテーマを体系的に書き出していく方法です。

 本書は、いわゆる「速読術」の本ではありませんが、読書を単なる時間の消費から、自分へのインプット手段に変えるための重要な技術が紹介されています(なお、体系化して読む習慣をつけると、要点がどこに書いてあるのかが分かるようになるので、読むスピードは上がります。)。本を読むことが好きな人も、そうでない人も、一度手に取ってみてください。


■ 個人的な視点から

 2月に開催された、本書の出版を記念したセミナーに参加してきました。会場では、たくさんの方とお話させていただきましたが、「自分もメルマガを発行している」という人が何人も参加されていて、とても楽しかったです。
 著者の松山さんにもあつかましくサインをいただいてきました。クリックすると拡大します。松山さんは本業は航空関連会社の部長さんなのですが、メルマガ発行の他、BSCのキャタリストとしての講演活動や大学院の客員助教授など、マルチな活動をされているだけあって、お話も大変面白かったです。
 そんな松山さんも、始発電車での通勤を始め、メルマガを発行するまでは、普通のサラリーマンだったとおっしゃっています。個人の可能性というのは、生まれつきの能力や恵まれた環境によって制限されているのではなく、自分自身で勝手に作っている「どうせ自分なんか・・・」という「枠」によって大きく制限されている、ということを感じました。

○セミナーの内容はこちら
「「マインドマップ読書術」で遊ぶ出版記念セミナー」
「開催レポート」

○セミナーで聞いた内容をマインドマップにまとめてみました


■ どんな人にオススメ?

 ・「本を読んでる時間なんかない」と思っている自称「多忙な人」。


■ 関連しそうな本

 松山 真之助 『早朝起業―「朝5時から9時まで」の黄金時間を自分のために使う方法』
 行本 明説, 日本タイムマネジメント普及協会 『図解・仕事術 最強の時間力―タイムマネジメントの法則60』
 アレック マッケンジー (著), 倉田 良子 (翻訳) 『時間の罠(タイムトラップ)―タイム・マネジメント20の鉄則』
 梅棹 忠夫 『知的生産の技術』

■ 百夜百音

 今日から始まった「文化面」ですが、このコーナーは「百夜百音」ということで、80~90年代を中心にした「オヤジ系」サウンドの紹介をしたいと思います。

Substance 【Substance】 New Order オリジナル盤発売日: 1987/08/11

 ということで、記念すべき第1回は、1曲目に「Ceremony」の入ったこのCDから。
 昔コピーバンドをやってたときにも、やはり1曲目は「Ceremony」を演奏してました。ベースのハイポジションのリフから入って、ギターが絡んで、というイントロは1曲目に持ってきやすかったです。イントロの途中部分は試聴もできます。

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