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2005年9月 8日 (木)

男女共同参画と女性労働―新しい働き方の実現をめざして

■ 書籍情報

男女共同参画と女性労働―新しい働き方の実現をめざして   【男女共同参画と女性労働―新しい働き方の実現をめざして】

  赤岡 功, 長坂 寛, 渡辺 峻, 筒井 清子, 山岡 煕子
  価格: ¥2,730 (税込)
  ミネルヴァ書房(2000/11)

 本書は、企業における女性労働の問題について、主として経営学の立場からの分析を行うことによって、男女共同参画社会のあり方を模索したものです。5人の著者により、女性労働の問題点が、人的資源管理の研究成果をベースに指摘しています。
 本書の構成は、まず女性労働に関する世界と国内の動きとして、国連やILOなどの取り組みと男女雇用機会均等法など国内の法制度の環境整備について、基礎知識的に紹介した後、日本型の雇用管理、パートタイム労働、雇用管理の複線化、賃金格差、組織風土の問題など、女性が企業や労働市場の中で置かれている状況について解説を行っています。制度などに関して、人的資源管理の専門用語が多用されていますが、企業の人事担当者にとっては比較的馴染みのある用語が使われているので、特にこの分野に関心がある、というわけではなくても読めるのではないかと思います。
 新しい日本型雇用管理については、男女雇用機会均等法と雇用に関する規制緩和を受け、女性が正社員として活躍する機会を得ることは簡単ではないことが述べられています。パートタイム労働については、日本におけるパートタイム労働の歴史を概説し、長期間働いているにもかかわらず、反復更新によって不安定な身分に立たされている問題が指摘されます。雇用管理の複線化については、一般職と総合職というこれまでのコース別管理が、女性の勤続期間の長期化や男性中高年の処遇の問題と絡んで変容して行くことが述べられています。賃金格差については、男女の賃金格差が生じる理論的背景を紹介し、メンターの存在の重要性などが述べられています。組織風土については、日本企業が持つ「社会的家父長制」の特徴を指摘し、OJTの機会の平等や情意考課の問題点などを指摘しています。
 女性労働の問題に関して、一通りの基礎知識を持つ目的であれば一冊を巻頭から一通り、特定の問題に関心があるのであれば該当する章を読むという二種類の読み方ができます。


■ 個人的な視点から

 通して読んだ感想としては、女性労働の問題を通して男女共同参画を語るという本書の趣旨と同時に、女性労働の問題を切り口にして日本企業の人的資源管理の問題点が浮き彫りにされている、ということがあります。本書で紹介されている女性の人的資源管理の問題点は、程度の差はありますが、男性にとっても同じ問題点が存在します。現在、契約社員やパートタイム労働の男性も多くなっています。また人事管理の複線化については、男性中高年社員がポスト不足によるプラトー現象でだぶついている中では切実な問題です。賃金格差の問題も男女間だけではなく、男性同士の間でも大きな賃金格差が存在します。
 つまり、単純に「男性社員と女性社員の間の格差」の問題だけではなく、「コア社員とノンコア社員の間の格差」の問題も同時に孕んでいるということです。この二つの問題を混同して議論すると混乱するのではないかと思います。

   ノンコア社員
     ↑
     |
男性←――+――→女性
     |
     ↓
   コア社員

 5人の著者の間でアプローチに相違点があると思われる点としては、人的資源管理の立場、経営学の研究者の立場から女性労働の問題点を指摘しようというアプローチの章と、女性の地位向上を訴える立場から情緒的な表現が多用されている章が混在している点です。この辺りは共同執筆の難しい点ではあります。学術書の場合は、個々の研究者の研究内容を尊重して、各章間の調整は大まかにしかとらないケースが多いようですが、ある程度は本全体の方向性に関する意思統一を図ってもらった方が、本全体としてのメッセージが強まるのではないかと思います。本書の場合は、編著者も立てず、5人の共同執筆の形になっているため、その傾向が顕著なのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・企業の人事担当者。


■ 関連しそうな本

 八代 尚宏 『日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済』 2005年03月23日
 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳) 『人事と組織の経済学』 2005年04月05日
 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在 中公文庫』 2005年07月20日


■ 百夜百マンガ

この女(ひと)に賭けろ―Hiromi,a long tall lady【この女(ひと)に賭けろ―Hiromi,a long tall lady 】

 「切れ者女性銀行員」として、連載開始当初は「過酷な銀行業界で活躍する女性」という点が強調されていましたが、この作品の面白さはストーリーそのものにあり、単なるキャラクターの一特徴に過ぎない感じです。先入観無しで面白く読めます。

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コメント

これ、全巻読みました!
クールなエリートなのに、実は熱い想いで、いーい仕事をしていて、生活も大切にしている女性なので、仕事を進めていく視点が適切ですばらしいと思いました。おもしろかったです。

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