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2005年9月 1日 (木)

昇進の研究―キャリア・プラトー現象の観点から

■ 書籍情報

昇進の研究―キャリア・プラトー現象の観点から   【昇進の研究―キャリア・プラトー現象の観点から】

  山本 寛
  価格: ¥3,360 (税込)
  創成社三訂版 版 (2003/05)

 本書は、昇進の階段が頭打ちになり、同じ職位に長いあいだとどまる「キャリア・プラトー(plateau:高原、台地)」現象について、日本企業を中心に実証研究を行ったものです。プラトー現象は、「現在の職位以上の職階上の昇進の可能性が非常に低いキャリア上の地位」と定義され、縦軸に職位の高さを、横軸に年数を置いたグラフを書いたときに、上り坂を描いてきたキャリアが同じ高さで高原状に横ばいになることから名づけられたものと考えられます。
 組織の業績が悪いから昇進ポストが頭打ちになる、という感覚がありますが、本書によれば、組織業績などのマクロ要因とプラトー現象の間には明確な関係を見ることができず、多くの組織で類似して見られる現象だということです。「高原」という言葉のイメージから、プラトー化は職位の高いところで発生するもののようですが、多数の職位を多数の候補者で争う低いポストの方がプラトー現象が顕著だということです。
 プラトー化には、客観的なものと主観的なものとがあり、それらは必ずしも一致していない場合が多くあります。将来の昇進目標は主観的なプラトー現象に影響し、昇進目標が高いほど、昇進目標に対する受容性が高いほど、また途中段階の目標を設定しているほど、主観的なプラトー現象が起こりにくいことが述べられています。
 本書の研究から導かれる人的資源管理への提言としては、以下の点が述べられています。
(1)プラトー現象を認識し、短期では解消困難なことを前提にすること。また、プラトー現象のマイナス面を極力解消するよう努めること。
(2)低い職位の従業員、中途採用者、女性のプラトー化を考慮することや、早期退職優遇制や昇進・昇格試験の長所である手続き上の公正性を活かすようにすること、昇進目標の設定を行うこと。
(3)専門職制度などの複線型人事管理システムの構築や、人的資源管理システムの公正性の評価を高めること、ジョブ・ローテーションや職種転換のマイナス効果に留意すること。
 また、組織内キャリア発達の観点からは、以下の提言が述べられています。
(1)職位、職務ともにノン・プラトーの「二筋道志向」型従業員には、「双方向キャリア開発」型の人的資源管理施策(管理職研修と専門別研修)。
(2)職位上プラトーで職務上ノン・プラトーの「職務志向」型従業員には、「専門キャリア開発」型施策(主に専門別研修、関連会社への出向など)。
(3)職位上ノン・プラトーで職務上プラトーの「管理志向」型従業員には、「管理職キャリア開発」型施策(管理職研修やジョブ・ローテーション)。
(4)職位、職務ともにプラトーである「キャリア変更志向」型従業員には、「変更キャリア開発」型施策(ジョブ・ローテーションや関連会社への出向など)

        キャリア・プラトー
   「職務志向」型  ↑ 「キャリア変更志向」型
   (専門キャリア ―|→(変更キャリア
    開発型施策)  |  開発型施策) 
職務    ↑     |    ↑
ノン・←――――――――+――――――――――→職務プラトー
プラトー  |     | |
   「二筋道志向」型 | 「管理志向」型
   (双方向キャリア―|→(管理職キャリア
    開発型施策)  ↓  開発型施策) 
        キャリア・ノン・プラトー

 本書は、人事担当者にぜひ読んでもらいたいのはもちろん、ポストが頭打ちで昇進の遅れを感じている本人にとっても、客観的に自分を見る参考になるのではないかと思います。ただし、真面目に読むとそれだけで辛くなりますので、第1部(第1章~3章)と、第2部の終章だけでも読んでみたらいかがでしょうか。


■ 個人的な視点から

 「昇進の遅れ」という言葉をよく聞きます。「組織の業績が悪いから昇進の遅れが発生するんだ」という人もいれば、「昇進の遅れは人事当局の責任だ。何とかしろ!」ということを仰る方もいます。しかし、本書を読むと、洋の東西を問わず、また、組織の業績に関わらず、プラトー現象というものが発生していることがわかります。
 高度成長期の日本を知っている人、特に団塊の世代やその直後くらいの人にとっては、一定の速度でぐんぐん昇進して行く上の世代と比較して、自分たちは不当に昇進で割を食っている、という意識があるのかもしれませんが、本書を読めば、高度成長期の日本の組織の方が異常であったことが理解できるのではないかと思います。つまり、戦争で上の世代の人材が、人数で見ても教育訓練の質で見ても稀少であったために、大卒のエリートはものすごいスピードで昇進し、高卒や中卒でも本人の努力次第でかなり上まで昇進できたのに対し、人口が増え、進学率が上昇するに連れ、昇進のスピードは遅くなり、同じ職位に長く滞留するようになったのです。
 本書が示唆しているのは、社会が安定している状況下では、キャリア・プラトー現象は避けがたいものであり、組織の側も従業員の側も、プラトー現象が発生することを前提にしたキャリア設計をする必要がある、ということではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・人事担当者。
・昇進の遅れを感じている人。


■ 関連しそうな本

 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳) 『人事と組織の経済学』 2005年04月05日
 八代 尚宏 『日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済』 2005年03月23日
 樋口 美雄 『人事経済学』
 伊丹 敬之, 伊藤 元重, 加護野 忠男 (編集) 『人的資源 リーディングス 日本の企業システム』 2005年05月20日
 稲継 裕昭 『日本の官僚人事システム』 2005年02月10日


■ 百夜百マンガ

GUNSMITH CATS【GUNSMITH CATS 】

 ガンアクションものではやはりこの人。ガンマニアぶりが画面の隅々ににじみ出ています。最近連載再開しました。

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