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2005年10月26日 (水)

働くということ - グローバル化と労働の新しい意味

■ 書籍情報

働くということ - グローバル化と労働の新しい意味   【働くということ - グローバル化と労働の新しい意味】

  ロナルド・ドーア
  価格: ¥735 (税込)
  中央公論新社(2005/04/25)

 本書は、日本の労働者を半世紀以上見つめてきたイギリスの社会学者である著者が、日本人の働き方の変化、特にグローバル化に対して警鐘を鳴らしているものです。
 1930年にケインズは、「われわれの孫たちにとっての経済的可能性」という論文の中で、技術的進歩によって、20世紀の終わりになれば我々の労働時間は週5時間程度になっているだろうと予言しました。しかし現実には、着実に進んできた平均労働時間の短縮が、多くの国で逆転してきています。日本の労働時間延長は90年代後半に起こり、週60時間以上働いている人は、1995年から2002年の間に、15%から21%に増えています。著者は、これらの日本企業の変化を「従業員主権企業」から「株主主権企業」への移行と説明しています。著者は、75年前にケインズが予期し得なかったのは、人間の競争本能であったと述べています。
 著者の目は、企業間だけでなく従業員間の競争へも向けられます。精緻な成果給と成果評価制度の発達により、人事政策にも競争が加速されましたが、成果主義の元もとの形態である単純な出来高払い制から賃金制度が変質して行った歴史をたどりながら、サッチャー革命以降、政府の業績給制度がモデルになり、民間企業でもそれまでの時間給・固定年俸制度から業績給が普及して行く過程を紹介しています(業績給が上手く働いていたのは製造業のみのようでしたが)。
 著者は、近年のOECD諸国におけるコンセンサスを「市場個人主義」という思想としてまとめています。その特徴は、以下のようなものです。
(1)社会セーフティーネットは明らかに必要だが、それは最低賃金法と社会扶助によって提供できる。
(2)これらは、仕事を探すインセンティヴを低下させるような水準や条件に設定されるべきではない。
(3)これらによってやや強制的に就業インセンティヴを与えることは、失業統計が政府の経済運営を測定する上での象徴的な重要性を持っていること、職を持ち社会に貢献することが一級市民の条件とみなされる勤労倫理、の2点から望ましい。
(4)すべてのレベルにおける労働の主たる動機はお金である。
(5)権力は腐敗させるが、市場は規律をもたらす。
 この他本書では、日本の不平等社会化や、グローバル社会の新しい支配層である「コスモクラット」、イタリアで流行した新しい造語「プレカリアート」(無安定階級)などについて言及しています。
 半世紀にわたり、外からの目で日本人の「働くということ」を見てきた著者の言葉は大変重みがあります。


■ 個人的な視点から

 ドーア氏といえば、日本とイギリスの工場労働者を比較した『イギリスの工場・日本の工場―労使関係の比較社会学』が有名で、特に80~90年代の日本企業の研究の中で多く引用されてきました。
 日本でも近年「成果主義」を巡る議論が盛んになっていますが、イギリスにおいて、サッチャーによって政府部門に行政級の考え方が導入されたことが、民間企業に影響を与えた、という事実の紹介は驚きでした。我々はイギリスの政府部門の改革自体の研究を調べることはありますが、民間企業も含めたイギリス社会全体の流れの中でのサッチャー改革の位置づけを知るには政府部門を見るだけでは足りないということでしょう。


■ どんな人にオススメ?

・グローバル化と自分の働き方との関係に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 ロナルド・P. ドーア (著), 山之内 靖, 永易 浩一 (翻訳) 『イギリスの工場・日本の工場―労使関係の比較社会学』
 ロナルド ドーア (著), 藤井 真人 (翻訳) 『日本型資本主義と市場主義の衝突―日・独対アングロサクソン』
 青木 昌彦, ロナルド ドーア (編集), NTTデータ通信システム科学研究所 (翻訳) 『国際・学際研究 システムとしての日本企業』
 高橋 伸夫 『虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ』 2005年3月30日


■ 百夜百マンガ

常務島耕作【常務島耕作 】

 本屋で平積みにされている表紙を見たときには、「いよいよここまで来たか!」と驚きましたが、だんだんビッグになっていく島常務に団塊の世代のサラリーマンは感情移入できるのでしょうか。
 とは言え「万年課長 島耕作」や「リストラ請負人 島耕作」とかも読みたくないでしょうが。

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