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2005年10月

2005年10月31日 (月)

eデモクラシーと行政・議会・NPO

■ 書籍情報

eデモクラシーと行政・議会・NPO   【eデモクラシーと行政・議会・NPO】

  岩崎 正洋, NTTデータ システム科学研究所
  価格: ¥2,310 (税込)
  一藝社(2004/03)

 本書は、(株)NTTデータのシステム科学研究所が立ち上げた「次世代電子政府研究会」の議論と、同研究所が実施した「eデモクラシーに関する全国個人調査』をベースに、研究所の機関誌『コンセンサス・コミュニティ』誌で6回にわたって紹介されたeデモクラシー特集のさらに詳細な報告、という位置づけにあるものです。
 編者の岩崎氏は、本書出版当時において『サイバーポリティクス』を既に出版されていて、日本のeデモクラシー研究の第一人者として活躍されていました。まだeデモクラシーと言っても海のものとも山のものとも知れず、2001年に出版された前述書にしても大半は海外の文献の要約が紹介されている、という段階のものでした。
 本書の構成は、「次世代電子政府研究会」での議論を元に本研究の全体像を概説した序章と、行政(自治体職員)と議会(地方議員)、NPO(まちづくり系)をそれぞれ対象としたアンケート結果を紹介した3つの章からなります。序章では、eデモクラシーを切り口として、「公」という概念の再構築と、その主役である市民の民主主義観やコミュニティの形について論じられています。また、行政、議会、NPOを対象としたアンケートに基づく第1章~第3章では、それぞれがお互いに対してどのような印象を持っているのか、というギャップが描き出されていて興味深い内容になっています。
『コンセンサス・コミュニティ』http://www.riss-net.jp/bulletin/


■ 個人的な視点から

 eデモクラシーというと民主主義や「公共」についての概念論や技術論に目が向きがちな中で、アンケート調査に基づく地に足がついた研究の成果を紹介する本書は、この分野の研究者(と言っても数は多くないでしょうが)が必ず押さえておくべき資料であるだけでなく、このアンケートの対象となった自治体職員、地方議員、まちづくり系NPOにとっても、eデモクラシーに限定せず「自分がどう見られているか」を知る大変よい鏡になるのではないかと思います。
 ただし、基本的には「シンクタンクが書いたアンケートの解説」ですので、頭から最後まで通して読んでも退屈に感じる方も少なくないかもしれません。そのため、読み方としては、
(1)目次を見て面白そうだと思う項目から読む。
(2)巻末の調査票から見て対応する項目を読む。
(3)自分が当事者の項目から読む。
等ではないかと思います。
 まだ国内のデータや研究の蓄積が少なく、海外の文献が引用されることの多いこの分野において貴重なデータであることは間違いありませんので、研究者や院生はぜひ手元においておきたい一冊です。


■ どんな人にオススメ?

・eデモクラシーに関する地に足のついたデータがほしい人。


■ 関連しそうな本

 岩崎 正洋(編著) 『eデモクラシー』 2005年05月02日
 岩崎 正洋 (編集) 『サイバーポリティクス―IT社会の政治学』 2005年04月09日
 岩崎 正洋, NTTデータ システム科学研究所 『eデモクラシーと行政・議会・NPO』
 金子 郁容, 藤沢市市民電子会議室運営委員会 『eデモクラシーへの挑戦―藤沢市市民電子会議室の歩み』 2005年10月21日
 新開 伊知郎, 山田 英二, 春日 真紀, 金谷 年展, NTTデータシステム科学研究所 『eデモクラシーという地域戦略』
 金安 岩男, 新開 伊知郎, 長坂 俊成, NTTデータシステム科学研究所 『電子市民会議室のガイドライン―参加と協働の新しいかたち』


■ 百夜百マンガ

マンガ黄金時代 '60年代傑作集【マンガ黄金時代 '60年代傑作集 】

 手塚治虫や石森章太郎、水木しげる、白戸三平のような大御所の作品ももちろんなんですが、現在主流のマンガに受け継がれなかったタッチの劇画や前衛的な作品を読むことができるのが貴重です。中には弟子などを通じて形を変えて受け継がれているタッチもあるようですが。

2005年10月30日 (日)

ニッポン型上司が会社を滅ぼす!

■ 書籍情報

ニッポン型上司が会社を滅ぼす!   【ニッポン型上司が会社を滅ぼす!】

  宋 文洲
  価格: ¥1,365 (税込)
  サンマーク出版(2004/11)

 本書は、中国から日本に留学し、ベンチャー企業を興した著者が、日本の非製造部門、つまりオフィスワークや営業のマネジメントスタイル(というよりもマネジメント不在)の非効率性に痛烈な批判を行っているものです。
 槍玉に挙げられている「ニッポン型上司」はこんな人たちです。
 ・上司というだけで人間的に偉い―――「上司」「部下」は役割分担に過ぎない。
 ・部下は会社に「滅私奉公」するもの―――個人と企業は平等。
 ・上司の仕事は部下を「管理・監督」すること―――上司が働かない組織は滅びる。
 この他、ニッポン型上司の困った例として、「がんばれ!」の精神論、思いつきの指示、カタカナ英語好き、部下への丸投げ発注などを挙げています。
 ニッポン型企業の問題点指摘は上司だけではなく、「成果主義」や曖昧さにも向けられます。業務内容と責任が不明確なまま結果だけを見ていてはフェアな評価はできない、単なる結果ではなく部下が担当業務をいかにこなしたか(上司からの「発注」に対して何を「納品」したか)によって評価すべきであることを述べています。
 最後は、ビジネスにも「大義」を持つこと、そして人生の帆である「大義」さえ持っていれば、世界のどこに行っても生きて行ける、という、著者自身の人生に裏付けられたメッセージが語られます。
 本書で批判されているのは特定の世代だけではなく、日本企業のマネジメントスタイル全般を指していますので、部下が数人しかいなかったり、場合によっては部下がいなくても「ニッポン型上司」のスタイルを身につけた「筋の良い」人もいらっしゃるかもしれません。上司だけでなくわが身を振り返るのにも最適な一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者が批判している「ニッポン型上司」の内容自体は、サラリーマンむけのビジネス書や週刊誌などで「こんな上司が会社をつぶす」と書かれるような上司のタイプとさほど異なるわけではありません。「困った上司」の実例を挙げるだけならば、実体験を積んだ人が世の中にうなるほどいますが、その上司が、なぜそのような行動をとり、これからどうすれば良いのか、という前向きな批判が伴っていなければただの愚痴を並べただけにすぎません。
 本書の強みは、各章末にまとめられた「改善のための【宋のススメ】」というコーナーです。これがあることによって、単なるダメ上司の列挙にとどまらずに、ニッポン型マネジメントスタイルをどのように変革すべきか、という本書のメッセージが明確になります。


■ どんな人にオススメ?

・ニッポン型マネジメントスタイルを脱却したい、という人。


■ 関連しそうな本

 橋本 治 『上司は思いつきでものを言う』 2005年07月17日
 高橋 伸夫 『できる社員は「やり過ごす」―尻ぬぐい・やり過ごしの凄い働きを発見した』 2005年05月12日
 高橋 伸夫 『日本企業の意思決定原理』


■ 百夜百音

FLOWER BURGER【FLOWER BURGER】 FAIRCHILD オリジナル盤発売: 1989

 今ではすっかりタレント/女優(カンヌ行っちゃうし)になってしまったYOUですが、平成の最初の頃はこんなバンドをやってました。
 セカンドアルバムは、「O型でごめんね」とか「わたしと鰐の一日」とかのポップな曲が詰まった名盤。三枚目で一番頭に残ってるのは「そんなもんだカンガルー」。んで自分もウクレレを買ってしまいました。

『UKULELE』UKULELE

2005年10月29日 (土)

リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神

■ 書籍情報

リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神   【リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神】

  ペッカ ヒマネン, リーナス トーバルズ, マニュエル カステル (著), 安原 和見, 山形 浩生 (翻訳)
  価格: ¥1,680 (税込)
  河出書房新社(2001/05/26)

 本書は、リナックスを作り出したような「ハッカー」の仕事観、倫理観を、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』と対比する形で描き出したものです。原題は、邦訳で副題となっている『ハッカー倫理とネット社会の精神』に対応しており、内容からしても「プロ倫vsハカ倫」という感じの書きぶりです。「はじめに」にも「著者としては、これを日本語版でもそのまま使ってもらいたかったのだが、「ハッカー」と「クラッカー」の二語は日本ではひどくごちゃごちゃにされているから、「ハッカー倫理」というタイトルでは何のことかわからないだろう。」と書かれているとおりです。でも本音のところではリーナスがエピローグを書いているので、リナックスブームにあやかって適当につけたタイトルなのだと思います。結果オーライと言えば必ずしも批判されることではないですが。
 エピローグの中で「リーナスの法則」という3つの動機付け要因が紹介されています。「生き残り」→「社会生活」→「娯楽」という3段階がそれですが、ではハッカーに当てはめるとどうなるでしょうか。生き残りの段階は「プログラムで飯食ってます。」、次の段階は社会的な結びつきのために、そしてハッカーにとっては、コンピュータはそれ自体が「娯楽」である、と述べられています。
 プロテスタンティズムにおいて労働は義務であり、「労働は、あたかもそれじたいが究極の目的あるかのように、つまり神から与えられた使命であるかのようにおこなわれなくてはならない」とされているのに対し、ハッカー活動の精神には「情熱」という言葉が用いられ、ハッカーがプログラムを書くのはそれ自体が元々おもしろく、エキサイティングで楽しいことだから述べられています。
 金銭に対する感覚も、古い資本主義の精神の中心に「所有」の概念があり、近年情報にも拡大されているのに対し、ハッカーの倫理では元々公開性が重視され、フリーソフトの文化や「コピーレフト」という考え方が使われています。ハッカーの働く動機は、金銭(=生き残り)ではないことが強調され、ウォズニアック氏の言葉として「人生の定理はH=F^3(3乗)」という公式が紹介されています。これは、Happinessは、FoodとFunとFriendsが揃ったところにある、というものですが、プロローグでの「リーナスの法則」にそれぞれ対応しています。また、ハッカーの世界では「フリーソフト」の「フリー」という言葉は、「無料」という意味ではなく、情報を囲い込むことによる金儲けへの反対、すなわち「言論の自由」の意味で使われていることが述べられています。
 一部のコンピュータ・オタクの世界と思われていた「ハッカー」の倫理観が、新しい社会モデルとして世の中に大きなイノベーションを起こしていることを知ることができる一冊です。


■ 個人的な視点から

 ハッカーの倫理観は、田坂広志さんの著者で紹介されている社会起業家の職業観に通じるものがあると思います。本書の中でも、ハッカーの倫理観は必ずしもコンピュータ・ハッカーに限ったものではなく、より大きな社会現象の中であることが述べられています。
 本書で紹介されている「コピーレフト」という言葉に初めて出会ったのは、2年前にキャメル・ヤマモトさんのお話を聞く機会があった時に、資料に「copyleft」と書かれていたものを読んだことがきっかけです。しかもそのお話のテーマは社会起業家に関するものでした。後から考えれば、「社会起業家+copyleft」という組合せは、シリコンバレーに住んでいたキャメル氏らしいものと考えることもできます。


■ どんな人にオススメ?

・「ハッカー」は何だか怖い人のことだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 エリック・スティーブン レイモンド (著), 山形 浩生 (翻訳) 『伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト』 2005年10月22日
 リチャード・M・ストールマン (著), 長尾 高弘 (翻訳) 『フリーソフトウェアと自由な社会 ―Richard M. Stallmanエッセイ集』
 リーナス トーバルズ, デビッド ダイヤモンド (著), 風見 潤 (翻訳) 『それがぼくには楽しかったから』
 マックス ヴェーバー (著), 大塚 久雄 (翻訳) 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
 ローレンス レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳), 柏木 亮二 (翻訳) 『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』 2005/02/01
 田坂 広志 『これから働き方はどう変わるのか―すべての人々が「社会起業家」となる時代』 2005年10月02日


■ 百夜百音

BABY,YOU'RE LOV【BABY,YOU'RE LOV】 INSTANT CYTRON オリジナル盤発売: 1993

 小気味良い打ち込みと切れのよいカッティングギターのバックに、かわいいヴォーカルが乗っかる、とてもポップなミニアルバムです。
 加藤けんそー氏のオムニバスにも参加していました。


『トロイの木馬~TROJAN H』トロイの木馬~TROJAN H

2005年10月28日 (金)

明日は誰のものか イノベーションの最終解

■ 書籍情報

明日は誰のものか イノベーションの最終解   【明日は誰のものか イノベーションの最終解】

  クレイトン・M・クリステンセン, スコット・D・アンソニー, エリック・A・ロス (著), 宮本 喜一 (翻訳)
  価格: ¥2,520 (税込)
  ランダムハウス講談社(2005/09/16)

 本書は、クリステンセンによる「イノベーション三部作」の締めくくりとなる、次にくる変化は何か、を見逃さないための着眼点についてまとめたものです。
 本書では、「産業の変化を予見するためのプロセス」として、
(1)変化のシグナルを探す。
(2)競争のための戦いを評価する。
(3)企業が下す重要な戦略的決断に注目する。
の3点を挙げています。
 「変化のシグナル」では、「1.非消費者」、「2.満足度不足の顧客」、「3.満足度過剰の顧客」の顧客グループのうち、多くの研究者が着目する2のグループではなく、1と3のグループに着目した分析を行っています。「競争のための戦い」では、「他の企業にはする意志がない、あるいはする能力がないことを実行し続け」る、という「不均等の盾と矛」を持つ企業の見極め方を述べています。「戦略的な決断」では、既存企業については「破壊の達人」になるための方法を、参入企業については適切なマーケットに足がかりを築くことと重複したバリューネットワークへの進出について、それぞれ述べています。
 本書では、「次」を分析する目によって、教育、航空、半導体、ヘルスケア、国家戦略、通信のそれぞれの分野を分析しています。
 本書を読んだからといって産業の次が見える、というものではありません。ですので、三部作のうち本書の部分だけ読めば答えが見えるかといえば、そういうものではありません。むしろ、前二作を読んだ人向けの応用編という位置づけになると思います。


■ 個人的な視点から

 本書の中で日本の読者の目を引くのは、第9章「海外のイノベーション」ではないかと思います。この章では、シンガポールや台湾なども扱われていますが、特に日本に関して紙幅を割いています。日本の経験とアメリカの経験とを比較し、日本にはなくアメリカにはあるものとして、「破壊の歯車」となる企業、すなわち、「破壊的な地盤を築き、成長し、成長の鈍化を経験し、組織内のアイデアを潰し、経営者を離反させ、あるいは起業家と一緒に資金を調達し、新しいビジネスを立ち上げ、新たな破壊的地盤を築こうとする企業」を挙げています。
 そして、アメリカにおいて破壊の歯車が活性化している理由として、以下の6点を挙げています。
(1)才能人間を求めるマーケット
(2)資本のマーケット
(3)規制のない製品のマーケット
(4)整備されたインフラストラクチャ
(5)活気に満ちた業界の力学
(6)研究開発環境
 ここに挙げられている6点は、どれも日本に比べたアメリカの強みとみなせそうですが、どれもそのまま真似するのは難しい問題です。国レベルでの破壊的なイノベーション、という観点で考えてみても面白いかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・イノベーション三部作の応用編として読んでみたい人。


■ 関連しそうな本

 クレイトン・クリステンセン (著), 玉田 俊平太, 伊豆原 弓(翻訳) 『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』 2005年10月17日
 クレイトン・クリステンセン, マイケル・レイナー (著), 玉田 俊平太, 櫻井 祐子 (翻訳) 『イノベーションへの解―利益ある成長に向けて』 2005年09月29日
 キム・クラーク, カーリス・ボールドウィン (著), 安藤 晴彦 (翻訳) 『デザイン・ルール―モジュール化パワー』
 米倉 誠一郎 『経営革命の構造』 2005年09月09日


■ 百夜百マンガ

喜劇新思想大系【喜劇新思想大系 】

 山上たつひこと言えば『がきデカ』のイメージが強いので、『光る風』のシリアスさに驚く人も多いようですが、元々はシリアス路線の人だったところ、この作品からギャグ路線に転じたようです。
 とは言え、そのそこに流れるブラックさは通じるものがあるのですが。

2005年10月27日 (木)

コミュニティ

■ 書籍情報

コミュニティ   【コミュニティ】

  岩崎 正洋, 田中 幹也, 河井 孝仁 (編集)
  価格: ¥2,625 (税込)
  日本経済評論社(2005/06)

 本書は、「Eデモクラシー・シリーズ」三部作の3冊目ということで、「eデモクラシー」、「電子投票」に引き続いて、コミュニティをテーマにまとめられたものです。
 取り上げられている内容としては、編者の一人である田中氏が立ち上げに携わった三重県の「e-デモ会議室」という電子会議室や、岡山市が進めている「電子町内会」などの地域コミュニティのネット上での展開を紹介する第1部「行政の取り組み」、「八千代オイコス」の事例を中心としたまちづくりや、災害支援、ICTを通じたサイコセラピーである「eセラピー」など、実践活動へのICTの導入事例を紹介した第2部「草の根レベルの実践」、アメリカ、カナダ、韓国の事例を紹介した第3部「海外の先進事例」、の3部から構成されています。
 中でも、本書のタイトルである「コミュニティ」にドンピシャリのストライクな内容は、第2章の電子町内会の事例です。これは、町内会というリアルなコミュニティをネットによって強化して、特に女性の参加を促しているという点で、本書の中核的な位置を占めているのではないかと思います。
 一方で、ネットを中心としたコミュニティの生成などの社会心理学的な内容を期待して本書を手にした方は、期待する内容にはたどり着けません。三重県の「e-デモ」の事例も、そこまで踏み込んだ内容にはなっていないという印象です。


■ 個人的な視点から

 全体を通じて、どれも興味深い事例が紹介されていますが、内容があちこちのベクトルを向いていて、残念ながら「eデモクラシー・シリーズ」の中で「コミュニティ」というタイトルをつけて出版してしまうのはやや強引な印象を受けました。よくとれば、1冊分のテーマにするほどの分量が蓄積していない(そして、それだけでは出版が辛そうな)ホットな情報を紹介するための場作りの口実にしたとも考えることができますし、悪くとれば「その他」を集めた寄せ集めと考えることもできます。
 とは言え、現時点で手に入るホットな情報が詰まったこの一冊は、この分野に関心のある人ならば読んでおいて損はないと思います。本書をきっかけに、さらに具体的な文献(おそらく雑誌論文やシンクタンクのレポートレベルのものや海外のものがほとんどになると思いますが)に読み進んでいくことができるのではないでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・eデモクラシーの最新事情に関心のある人。


■ 関連しそうな本

 岩崎 正洋(編著) 『eデモクラシー』 2005年05月02日
 岩崎 正洋 (編集) 『サイバーポリティクス―IT社会の政治学』 2005年04月09日
 岩崎 正洋, NTTデータ システム科学研究所 『eデモクラシーと行政・議会・NPO』
 金子 郁容, 藤沢市市民電子会議室運営委員会 『eデモクラシーへの挑戦―藤沢市市民電子会議室の歩み』 2005年10月21日
 横江 公美 『Eポリティックス』 2005年02月11日
 谷口 尚子 『現代日本の投票行動』 2005年05月25日


■ 百夜百マンガ

中空知防衛軍【中空知防衛軍 】

 「ローカルな防衛軍」というと、「県立学校の生徒たるもの県民の平和を守る義務があって当たり前」のアノ作品を思い出しますが、やはり、北海道人のソウルフードであるマトンのジンギスカンを食べながら描いたのでしょうか。

2005年10月26日 (水)

働くということ - グローバル化と労働の新しい意味

■ 書籍情報

働くということ - グローバル化と労働の新しい意味   【働くということ - グローバル化と労働の新しい意味】

  ロナルド・ドーア
  価格: ¥735 (税込)
  中央公論新社(2005/04/25)

 本書は、日本の労働者を半世紀以上見つめてきたイギリスの社会学者である著者が、日本人の働き方の変化、特にグローバル化に対して警鐘を鳴らしているものです。
 1930年にケインズは、「われわれの孫たちにとっての経済的可能性」という論文の中で、技術的進歩によって、20世紀の終わりになれば我々の労働時間は週5時間程度になっているだろうと予言しました。しかし現実には、着実に進んできた平均労働時間の短縮が、多くの国で逆転してきています。日本の労働時間延長は90年代後半に起こり、週60時間以上働いている人は、1995年から2002年の間に、15%から21%に増えています。著者は、これらの日本企業の変化を「従業員主権企業」から「株主主権企業」への移行と説明しています。著者は、75年前にケインズが予期し得なかったのは、人間の競争本能であったと述べています。
 著者の目は、企業間だけでなく従業員間の競争へも向けられます。精緻な成果給と成果評価制度の発達により、人事政策にも競争が加速されましたが、成果主義の元もとの形態である単純な出来高払い制から賃金制度が変質して行った歴史をたどりながら、サッチャー革命以降、政府の業績給制度がモデルになり、民間企業でもそれまでの時間給・固定年俸制度から業績給が普及して行く過程を紹介しています(業績給が上手く働いていたのは製造業のみのようでしたが)。
 著者は、近年のOECD諸国におけるコンセンサスを「市場個人主義」という思想としてまとめています。その特徴は、以下のようなものです。
(1)社会セーフティーネットは明らかに必要だが、それは最低賃金法と社会扶助によって提供できる。
(2)これらは、仕事を探すインセンティヴを低下させるような水準や条件に設定されるべきではない。
(3)これらによってやや強制的に就業インセンティヴを与えることは、失業統計が政府の経済運営を測定する上での象徴的な重要性を持っていること、職を持ち社会に貢献することが一級市民の条件とみなされる勤労倫理、の2点から望ましい。
(4)すべてのレベルにおける労働の主たる動機はお金である。
(5)権力は腐敗させるが、市場は規律をもたらす。
 この他本書では、日本の不平等社会化や、グローバル社会の新しい支配層である「コスモクラット」、イタリアで流行した新しい造語「プレカリアート」(無安定階級)などについて言及しています。
 半世紀にわたり、外からの目で日本人の「働くということ」を見てきた著者の言葉は大変重みがあります。


■ 個人的な視点から

 ドーア氏といえば、日本とイギリスの工場労働者を比較した『イギリスの工場・日本の工場―労使関係の比較社会学』が有名で、特に80~90年代の日本企業の研究の中で多く引用されてきました。
 日本でも近年「成果主義」を巡る議論が盛んになっていますが、イギリスにおいて、サッチャーによって政府部門に行政級の考え方が導入されたことが、民間企業に影響を与えた、という事実の紹介は驚きでした。我々はイギリスの政府部門の改革自体の研究を調べることはありますが、民間企業も含めたイギリス社会全体の流れの中でのサッチャー改革の位置づけを知るには政府部門を見るだけでは足りないということでしょう。


■ どんな人にオススメ?

・グローバル化と自分の働き方との関係に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 ロナルド・P. ドーア (著), 山之内 靖, 永易 浩一 (翻訳) 『イギリスの工場・日本の工場―労使関係の比較社会学』
 ロナルド ドーア (著), 藤井 真人 (翻訳) 『日本型資本主義と市場主義の衝突―日・独対アングロサクソン』
 青木 昌彦, ロナルド ドーア (編集), NTTデータ通信システム科学研究所 (翻訳) 『国際・学際研究 システムとしての日本企業』
 高橋 伸夫 『虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ』 2005年3月30日


■ 百夜百マンガ

常務島耕作【常務島耕作 】

 本屋で平積みにされている表紙を見たときには、「いよいよここまで来たか!」と驚きましたが、だんだんビッグになっていく島常務に団塊の世代のサラリーマンは感情移入できるのでしょうか。
 とは言え「万年課長 島耕作」や「リストラ請負人 島耕作」とかも読みたくないでしょうが。

2005年10月25日 (火)

認められたい!―がぜん、人をやる気にさせる承認パワー

■ 書籍情報

認められたい!―がぜん、人をやる気にさせる承認パワー   【認められたい!―がぜん、人をやる気にさせる承認パワー】

  太田 肇
  価格: ¥1,470 (税込)
  日本経済新聞社(2005/06)

 本書は、人間にとって大きな欲求の一つである「承認欲求」を正面から扱い、それがいかに人を動かしているか、またその一方で、日本の社会的風土の中でどれほど屈折しているか、そして、抑圧された承認欲求を解放し、組織や社会の活力に結びつけるためには何が必要か、ということを論じているものです。なお、有名なマズローの欲求段階説では、下から、「生理的→安全・安定→社会的→承認→自己実現」という欲求の階層をなしているとされています。
 著者は、本書の中で人間を「ホモ・リスペクタス(認められたい人間)」と位置づけています。出る杭を打ち、奥ゆかしさや謙譲を美徳とする日本の社会的風土の中では、一見、承認欲求が人間の動機付けに働いていないようにも見えますが、そんな欲求など微塵もないような人の行動を探ってみると、意識した目的や価値の背後には、媒介変数(原因と結果の間を影で媒介するプロセス)として、承認欲求が大きな役割を果たしていると言うのです。
 承認欲求は、本人の地位とともにその内容が変質していきます。第1レベルの承認欲求は、日常の中で自分の仕事ぶりや個性を認められることによって満たされます。平社員やアルバイトのレベルでは名誉欲や権力欲を満たすような機会はないからです。そして、第2レベルの承認欲求は、競争を勝ち抜くことによって得られる組織の中での地位や肩書きによって満たされます。近年は能力主義・成果主義と組織のスリム化によって、ポストによる承認を満たす機会が減ってきていることが指摘されます。さらに高いレベル、例えば経営者のようなトップの地位になると、組織内での地位や肩書きだけでは満たされない社会的な名声や名誉・尊敬を求める第3レベルの承認欲求を求めます。経営者として名を成した人たちが、財界活動や社会貢献などを通じて自分の名声を高めようとする行動はこのレベルに属します。
 本書ではこの他、日本において承認欲求が過小評価される理由、例えば、他国と比べて青少年の人生の目標に占める「高い社会的地位や名誉を得ること」の回答がわずかしかない点、について論じたり、いわゆる「成果主義」がなぜ失敗するのかを承認欲求の観点から分析するなどしています。
 あとがきによれば、本書の内容は、過去の著作にちりばめられていた考えを、さらに凝縮して掘り下げたもの、と位置づけられており、それだけに良くこなれています。人間の行動の奥底に潜む承認欲求についてコンパクトにまとまった入門書だと思います。


■ 個人的な視点から

 本書で、なるほどとうなづいたのは、組織内のポストによって承認欲求を満たそうとするのは、基本的にゼロサムであり、勝者と敗者が生じるが、承認の場を組織の外に広げることで、多様な価値観の中で誇りと意欲を引き出すことができる、ということです。
 硬い表現では、「準拠集団の外部化」という言葉が使われていますが、個人にとって今いる会社は絶対的な存在ではなく、業界や顧客、友人や家族、地域といった会社の外で認められることに価値を置く、という意識が高まっている、と述べられています。
 このメルマガ・blogにも当てはまるかもしれませんが、匿名・顕名に関わらず、個人が自分の考えをネットに載せていく、という行動も、この「承認欲求」の表れなのかもしれません。そういえば、中央公論11月号で官僚の書くblogについての記事が載っているそうです。おそらくコラムの「ブログ・ハンティング 吉田 操」ではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・正面から「認められたいか」と訊かれると戸惑ってしまう人。


■ 関連しそうな本

 勢古 浩爾 『自分様と馬の骨―なぜ認められたいか?』
 太田 肇 『選別主義を超えて―「個の時代」への組織革命』
 太田 肇 『ベンチャー企業の「仕事」―脱日本的雇用の理想と現実』 2005年07月22日
 ステファン・P. ロビンス (著), 高木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日
 金井 寿宏, 高橋 潔 (著) 『組織行動の考え方―ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト』 2005年04月27日


■ 百夜百マンガ

気分は形而上【気分は形而上 】

 下手な絵でアイデア勝負!なところが良かったです。娘が連れてきた恋人に「どこの馬の骨かわからないようなやつには・・・」と言いかけたところで、男の顔を見ると、「馬」だった、しかも骨が出てる、というベタなギャグが記憶にあります。

2005年10月24日 (月)

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

■ 書籍情報

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く   【新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く】

  アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳)
  価格: ¥1,995 (税込)
  NHK出版(2002/12/26)

 本書は、世の中の様々な事象を「リンク」という観点で捉えなおすことで、ハリウッドの共演関係や電力供給網、インターネット、エイズやコンピュータウィルス、遺伝子工学、そして企業活動まで、「ノード」や「ハブ」からなるダイナミックなネットワークの構造を見出すことができ、要素還元的な手法ではたどり着けない解決へのブレークスルーを手にすることができる、という「新しい世界の見方」を読者に提供するものです。
 例えばハリウッドの共演関係のネットワークである「ケビン・ベーコン・ゲーム」や、偉大なる数学者との共著関係で数えた距離を次数で表した「エルデシュ数」などの人間関係やインターネットなどは、まだ直感的にネットワークという考え方を当てはめやすいものの、細胞内のタンパク質の働き方や生態系の食物連鎖をノードやハブのリンクとして捉えなおすことは大きな知的興奮を呼び起こします。
 本書でキーとなる概念は、「スケールフリー・ネットワーク」という考え方です。これは、大半のノード(点)がほぼ同数のリンクを持ち、その分布が釣鐘型になるような「ランダム・ネットワーク」と異なり、大半のノードはごく少数のリンクしか持たないのに対し、ごく少数の「ハブ」は膨大なリンクを持った右肩下がりの分布を持つネットワークのことです。スケールフリー・ネットワークの例としては、膨大なサイトからリンクが集中する少数の超有名サイトが存在する一方で、どこともほとんどリンクされないサイトが大多数であるWWWや、少数のハブ空港と多数の地方空港からなる航空会社のルートマップ、生涯で数人との性的関係しか持たない人が多数いる一方で、生涯に数千~数万人との性交渉を持つ人(エイズの「ゼロ号患者」と呼ばれるガエタン・デュガや伝説のNBAプレイヤーであるウィルト・チェンバレンなど)が性感染症を拡大させる男女の性関係ネットワーク、ごく少数の論文だけが多数の研究者から引用される学術論文の引用ネットワークなどがあります。
 この分布は、「ベキ法則」に従っていて、よく「パレートの法則」として使われる「80対20の法則」の背後にもベキ法則があります。本書では、パレートの研究でも問題になった「金持ちはより金持ちに」という社会で新参者が成功するにはどうするか、米国の電力供給ネットワークで起きた大停電事故を防ぐには、ハブに対するテロにどう対応するか、などの様々な問題も同時に投げかけています。
 本書全体を通して、サイエンス・ライターをやっていたという著者の平易な語り口(と読みやすい訳)が光ります。文系・理系を問わず、「ネットワーク」という思考体系への入門書としては最適の一冊ではないかと思います。
 千円冊二枚ででお釣りが来る値段で、複雑な世界を捉える視点を一つ手に入れることができる本書は大変お買い得です。


■ 個人的な視点から

 個人的に本書で印象に残ったのは、ウェブの世界の大陸の地図です。これは、WWWの世界をリンクの関係から4つに分けたもので、第1の「中央大陸」には大きなサイトがここに集まり、容易なナビゲーションが特徴です。第2、第3の「IN大陸」と「OUT大陸」は大きさは中央大陸と同程度なもののナビゲーションは困難を伴い、IN大陸から中央大陸に行くことはできるが、逆戻りはできず、同様に中央大陸からOUT大陸(住人の多くは企業サイト)に入ると出て来れません。第4は「半島」と「島」からなり、中央大陸とは孤立して存在しています。
 インターネットの世界の広さを誰もが夢想したことがあると思いますが、こういったWWWの地図やインフラとしてのインターネットの地図がこれから整備されて行くことが楽しみです。


■ どんな人にオススメ?

・世界を見る新しい視点を身につけたい人。


■ 関連しそうな本

 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 マルコム グラッドウェル (著), 高橋 啓 (翻訳) 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 2005年02月12日
 安田 雪 『実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法』 2005年10月04日
 安田 雪 『人脈づくりの科学 「人と人との関係」に隠された力を探る』 2005年10月05日
 スティーヴン・ストロガッツ (著), 蔵本由紀, 長尾力 (翻訳) 『SYNC』
 ローレンス レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳), 柏木 亮二 (翻訳) 『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』 38384


■ 百夜百マンガ

ヤサシイワタシ【ヤサシイワタシ 】

 結末を予め知ってしまうとつまらないのですが、こういう痛い話の作品より今の高校野球のほうが読みやすいです。

2005年10月23日 (日)

働こうとしない人たち - 拒絶性と自己愛性

■ 書籍情報

働こうとしない人たち - 拒絶性と自己愛性   【働こうとしない人たち - 拒絶性と自己愛性】

  矢幡 洋
  価格: ¥777 (税込)
  中央公論新社(2005/05/11)

 本書は、カウンセラーである著者が、カウンセリングの中で出会った「働こうとしない人たち」を中心に、アメリカの事例の紹介を交えながら、働こうとしない影に見える「拒絶性」と「自己愛性」について述べたものです。
 1人目のAさんは、大学卒業後、決まっていた企業への内定を蹴り、「留学したい」だの理由をつけては働こうとはせず、ゲームセンターに夜中まで入り浸っています。将来の夢と言えば「人並みより良い暮らしがしたい。」くらいしか浮かびません。やりたいことがないのです。
 2人目のB子さんは、「天職を探している」と言って勤めていた会社を辞め、ディズニー映画の翻訳がしたいと翻訳学校に通い翻訳の仕事を始めます。しかし、実際に仕事を始めてみるとつまらなかったのですぐに辞めてしまい、今は「アニメの脚本家になりたい」と言っています。しかし具体的な行動は何一つ起こさず、「天職探し」だけをしているのです。
 著者は、個人のパーソナリティーを「他己チュー→自己チュー」の軸に沿って、
 ・依存性パーソナリティー
 ・演技性パーソナリティー
 ・マゾヒスティック・パーソナリティー
 ・自己愛性パーソナリティー
 ・サディスティック・パーソナリティー
 ・反社会性パーソナリティー
に分類しています。このうち、演技性、拒絶性、マゾヒスティックの3つは、「自分がやりたいことがなさすぎて仕事に就けない「拒絶性スタイル」に、自己愛性、サディスティックの二つは「自分がやりたいこと」にこだわりすぎて仕事が選べない「自己愛性スタイル」に位置づけられています。
 心理学の切り口からニートの問題にアプローチした本書は、普段、失業率などの統計数字に接している人にとっては、ミクロの事例を知る良い参考書になるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書は読み物としては面白いのですが、本書で取り上げられている当人たちにとってはこの上なく不愉快なものでしょう。また、現在他の理由でカウンセリングを受けている人にとっても、本書のように面白おかしく(と言っても誇張しているわけではなくやり取りそのものが面白いのですが)カウンセリングの様子を紹介している本の存在は心中穏やかなものではないと思います。
 ちょうど、コンピュータのサポートセンターにかかって来た相談の事例を面白おかしく紹介する本が存在するために、サポートセンターの人がいくら丁寧に接しても、「心の中では、仲間内では笑いものにしているんじゃないか?」という不安を持つのと同じように、カウンセラー全般に対する不振を招く危険もあるのではないかと思いました。


■ どんな人にオススメ?

・ニート問題に関心のある人。


■ 関連しそうな本

 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』 2005年07月20日
 玄田 有史, 曲沼 美恵 『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』
 宮本 みち子 『若者が『社会的弱者』に転落する』 2005年05月04日
 大久保 幸夫 『新卒無業。―なぜ、彼らは就職しないのか』
 FOX‐兄貴 『サポセン黙示録』


■ 百夜百音

ゴールデン・ベスト【ゴールデン・ベスト】 SHOW-YA オリジナル盤発売: 2002

 今日が「大復活祭」ということで、往年のファンの皆さんは昔の服を引っ張り出したり歌詞を覚えなおしたりと準備に余念がないようです。
 「会場での託児サービス、地方からのバスツアーを実施します!」という周到さが同窓会的な雰囲気を盛り上げています。


『1990 BUDOKAN-REACH FOR THE WORLD』1990 BUDOKAN-REACH FOR THE WORLD

2005年10月22日 (土)

伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト

■ 書籍情報

伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト   【伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト】

  エリック・スティーブン レイモンド (著), 山形 浩生 (翻訳)
  価格: ¥1,890 (税込)
  光芒社(1999/09)

 本書は、Linuxに代表されるオープンソースの開発コミュニティについて、
(1)なぜそのようなやり方で優れたソフトができるのか?・・・「伽藍とバザール」
(2)何がそこに参加する人たちを突き動かすのか?・・・「ノウアスフィアの開墾」
(3)そのビジネスモデルはどのようなものか?・・・「魔法のおなべ」
の3つの論文+著者へのインタビューによって解説しているものです。
 第1部の「伽藍とバザール」では、集権的なソフト開発(伽藍方式)とオープンソースのソフト開発(バザール方式)を対比しながら、オープンソースによって優れたソフトが開発できる理由、例えば「デバッグは並列処理可能である」などについて解説しています。この中で、クローズドなソフト開発での過剰なマネジメントのスタイルよりも、ソフト開発者を突き動かすのは、「セクシー」で技術的に魅力ある仕事であり、「おもしろさというのは、ソフトに限らずあらゆるクリエイティブな仕事に言えるわけだけれど、ただのお金なんかよりもずっとずっと優れたニンジンなんだ」と語られています。
 第2部の「ノウアスフィアの開墾」では、オープンソースの世界における、「所有権」の考え方や贈与経済としてのハッカー文化、そして評判のメカニズムについて解説されています。中でも評判に関しては、「仲間内のよい評判はそれ自体が重要な報酬」であること、「名声は他人の注目を集めて協力を得るのにすごく有効な方法」であること、「もし贈与経済が交換経済や上意下達方式と接触していたり混じり合ったりしていた場合にも、評判がそっちに持ち越されて、もっと高い地位を得る役に立つかもしれない」ことなどが述べられています。そして、自分で名乗るだけではハッカーになれず、「ほかのハッカーにハッカーと呼ばれた時点で、人はハッカーになる」という格言が紹介されています。
 第3部の「魔法のおなべ」では、オープンソースのビジネスモデルを解説し、コンピュータ・プログラムが他の財などと異なり2種類の経済価値、すなわち、「利用価値」(ツールとして使うときの経済価値)と「販売価値」(販売できる商品としてみたときの価値)を持っていることが述べられています。
 オープンソースの世界の価値観を知りたい、という人にとっては入門書としても最適ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 オープンソースの考え方は、Linux等のコンピュータ関連で取り上げられることが多いですが、その考え方をコンピュータ以外、例えばビジネスモデルなどに拡張することができそうです。
 例えば、社会起業家を支援しているアショカ財団は、自らが支援するフェローを選定する条件の中に、そのビジネスモデルを他の地域に広げることが可能か、というものを挙げています。
 本書は、このような社会起業家やNPOの世界を捉える視点を提供するものの一つではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・オープンソースの世界の入り口を探している人。


■ 関連しそうな本

 リチャード・M・ストールマン (著), 長尾 高弘 (翻訳) 『フリーソフトウェアと自由な社会 ―Richard M. Stallmanエッセイ集』
 ペッカ ヒマネン, リーナス トーバルズ, マニュエル カステル (著), 安原 和見, 山形 浩生 (翻訳) 『リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神』
 金子 郁容, 松岡 正剛, 下河辺 淳 『ボランタリー経済の誕生―自発する経済とコミュニティ』 2005年08月29日
 Jr.,フレデリック・P. ブルックス (著), 滝沢 徹, 富沢 昇, 牧野 祐子 (翻訳) 『人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない』
 渡邊 奈々 『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』 2005年08月11日

■ 百夜百音

少年ホームランズ12【少年ホームランズ12】 少年ホームランズ オリジナル盤発売: 1987

 ChibaWave(チャイバウェーヴ)界の伝説的バンド。総武線沿線住人は必ず聞くべきではないかと。ハルメンズは知っていてもこちらは知らない人が多いようです。
 焼きそば食べましょう。


『ハレはれナイト』ハレはれナイト

2005年10月21日 (金)

eデモクラシーへの挑戦―藤沢市市民電子会議室の歩み

■ 書籍情報

eデモクラシーへの挑戦―藤沢市市民電子会議室の歩み   【eデモクラシーへの挑戦―藤沢市市民電子会議室の歩み】

  金子 郁容, 藤沢市市民電子会議室運営委員会
  価格: ¥1,890 (税込)
  岩波書店(2004/05)

 本書は、1997年2月26日にスタートしたインターネット上の会議室である「藤沢市電子市民会議室」によって、どのような議論がされ、どのような市民参加が起こったのか、そして電子会議室が藤沢市民にもたらしたものは何か、をまとめたものです。
 執筆者は、慶應大学の金子教授を代表に、会議室の運営委員や世話人、会議室立ち上げ当時に慶應SFCの学生だった橋本岳衆院議員、歴代の藤沢市の担当職員の皆さんです。どの文章も、市民会議室への愛情とともに、そこでの議論をどう捉えるべきか、という真剣な想いとが感じられ、藤沢市の市民会議室はシステムがあったからできたのではなく、会議室を支える人的な面での要素の方が大きいのだ、ということを感じさせます。
 本書の構成は、市民会議室立ち上げ当初の経緯や、市民や市職員の戸惑い、そして暗黙の取り決めが生まれてくるまでを描いた第1章や、市民会議室の仕組みをシステムとともに、「ルール、ロール、ツール」という金子氏の得意とする切り口から分析した第2章など、会議室での生の議論からどのような意味を見出すかというところまで、様々な視点から書かれていて、臨場感と分析のバランスが取れているのではないかと思います。
 電子会議室のシステムが一般化し、安易に取り入れたり、逆に不必要に恐れたりする自治体が多いなかで、システムではなく人的な要素を中心に解説する本書は大変参考になるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 藤沢市の電子会議室はシステムよりも人による面が大きい、と書いたものの、会議室のシステムである「コミュニティ・エディター」のシステム面からの貢献も見逃すことはできません。私も以前このシステムを開発した編集工学研究所のサーバを借りた会議室を使用したことがありますが、メーリングリストと掲示板の両方の機能を持ち、掲示板からもメールからも投稿でき、投稿内容が登録された参加者にメールで配信されるこのシステムは、その使い勝手の良さから札幌市など他の自治体の電子市民会議室でも使用されました。「拍手」とかのオプションはあまり使いませんでしたが・・・。
 しかし、システムはインストールできても、藤沢市の会議室で培われた「ノウハウ」、というより本書中の言葉を使えば「ソーシャルキャピタル」は簡単には移すことができません。この辺りが自治体での電子会議室導入のネックになっているのではないでしょうか。既存のコミュニティが持っているソーシャルキャピタルに大きく依存するのであれば、岡山市の「電子町内会」のような取り組みや、八代市の「ごろっとやっちろ」のような地域密着型のSNSの方が確実なのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・ネット上とリアルとの両方のコミュニティのあり方を考える人。


■ 関連しそうな本

 金安 岩男, 新開 伊知郎, 長坂 俊成, NTTデータシステム科学研究所 『電子市民会議室のガイドライン―参加と協働の新しいかたち』
 岩崎 正洋(編著) 『eデモクラシー』 2005年05月02日
 岩崎 正洋, 田中 幹也, 河井 孝仁 『コミュニティ』
 岩崎 正洋, NTTデータ システム科学研究所 『eデモクラシーと行政・議会・NPO』
 岩崎 正洋 (編集) 『eデモクラシー』
 金子 郁容, 松岡 正剛, 下河辺 淳 『ボランタリー経済の誕生―自発する経済とコミュニティ』 2005年08月29日


■ 百夜百マンガ

電車男 1―ネット発、各駅停車のラブ・ストーリー【電車男 1―ネット発、各駅停車のラブ・ストーリー 】

 原作(というかまとめサイト)は読んだものの映画やドラマは読んでない「電車男」ですが、コミック版は何誌かで競作しているようです。ヤングサンデーに連載された本作品は小学館のベテラン「ラブコメ作家」である原秀則氏。20年ほど前に月刊サンデー増刊でミニFM局のマンガを描いていたのはオタクっぽさがいい感じでした。当時の作者が描くのならば電車男のイメージに合うかもしれませんが、20年後の今でも通用するかどうか・・・。今のところ読む機会はなさそうです。

2005年10月20日 (木)

ローカル・マニフェストによる地方のガバナンス改革―自治体が変わる、地域も変わる

■ 書籍情報

ローカル・マニフェストによる地方のガバナンス改革―自治体が変わる、地域も変わる   【ローカル・マニフェストによる地方のガバナンス改革―自治体が変わる、地域も変わる】

  UFJ総合研究所国土地域政策部
  価格: ¥2,500 (税込)
  ぎょうせい(2004/08)

 本書は、主に地方自治体の首長、特に都道府県知事によって掲げられたマニフェスト(政権公約)を中心に、このローカル・マニフェストがいかに地域を変え、有権者を変え、議会を変え、行政職員を変えていくか、ということを論じたものです。
 大きく取り上げられているのは、本文中でも何度も取り上げられ、また巻末の第8章に個別の事例分析が行われている増田寛也岩手県知事、松沢成文神奈川県知事、古川康佐賀県知事、西寺雅也多治見市長のローカル・マニフェストです。また、2003年の統一地方選前の「シンポジウム三重」に集まった知事たちとローカル・マニフェストを提唱し、統一選では全国の首長選挙候補者にマニフェストの作成を働きかけてきた、運動の立役者である北川正恭早大教授(前三重県知事)の30ページにわたるロングインタビューが第7章で取り上げられていることからも、ローカル・マニフェストが都道府県レベルを中心に盛り上がっていることを現しているのではないかと思います。
 本書は、UFJ総研の複数の執筆者によって書かれていますが、特にローカル・マニフェストの問題に深くコミットして精力的に論文を発表しているのは、第6章(と第2章)を担当している西尾真治氏です。第2章ではローカル・マニフェストの基本4要素を、「目標値、期限、財源、ロードマップ(工程)」として掲げ、これらの有無や項目の多少によって、マニフェストを以下の4つのタイプに分類しています。
・タイプI:基本的な4要素の一部のみ記載されている。
・タイプII:政策ごとに全要素が網羅されている。
・タイプIII:4要素全てそろい、項目数は絞り込まれている。
・タイプIV:4要素全てそろい、項目数は多く網羅的である。
 この4つのタイプ分けに基づき、タイプI(上田埼玉県知事ら)、タイプII(松沢神奈川県知事ら)、タイプIII(増田岩手県知事、古川佐賀県知事ら)、タイプIV(浅生福岡県知事、西川福井県知事ら)に分類されています。こうして見ると、タイプIIIやタイプIVは現職知事や副知事、元官僚など行政経験の豊富さがものを言う部分があるようです。
 また、第6章で紹介されている政策目標の妥当性評価の基準である「SMART基準」は分かりやすいものです。これは、
・Specific(明確性)政策に具体性があるか。
・Measurable(測定可能性)数値目標などが明示されているか。
・Achievable(達成可能性)政策手段や財源などが明示されているか。
・Relevant/Realistic(妥当性/現実性)政策が整合的で問題の核心が示されているか。
・Timed(期限明示)政策達成の期限が明示されているか。
の5項目の頭文字をとったものですが、先ほどの4つのタイプ分けに比べ、よりマニフェストとしての高いハードルを示したものではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 「ローカル・マニフェストとは何か?」という解説は多く見かけますが、本書の特徴は、第4章の「ローカル・マニフェストと市民協働」、第5章の「ローカル・マニフェストと地方議会」の2つの章にあるのではないかと思います。これらの章は「ローカル・マニフェストが地域をどう変えたか」という影響について述べていると言うことができます。
 第4章では住民主導によるローカル・マニフェストの取り組みとして、東京の「青梅スタイル」や、マニフェスト比較サイト「seiron」の事例が、第5章では、地方議会の変革とマニフェストの関係について、長野県議会を事例として取り上げています。
 マニフェストそのものを解説する本は増えてきましたが、「その次」の段階として、マニフェストがどう社会にインパクトを及ぼしたか、の検証が求められているのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・ローカル・マニフェストの解説を読みたい人。


■ 関連しそうな本

 金井 辰樹 『マニフェスト 新しい政治の潮流』 2005年10月14日
 四日市大学地域政策研究所 『ローカル・マニフェスト―政治への信頼回復をめざして』
 松沢 成文 『実践ザ・ローカル・マニフェスト』
 自治分権ジャーナリストの会 『「闘う知事」が語る!「三位一体」改革とマニフェストが日本を変える』


■ 百夜百マンガ

気まぐれコンセプト【気まぐれコンセプト 】

 マニフェストのコンセプトが気まぐれでは困りますが、ホイチョイの気まぐれは面白いので大歓迎です。カノッサとか大好きでした。

2005年10月19日 (水)

横浜改革中田市長1000日の闘い

■ 書籍情報

横浜改革中田市長1000日の闘い   【横浜改革中田市長1000日の闘い】

  〈横浜改革〉特別取材班, 相川 俊英
  価格: ¥1,575 (税込)
  ブックマン社(2005/04)

 本書は、2002年に最年少の政令市長に就任してから3年間の中田横浜市長の奮闘を、多くの関係者へのインタビューを中心に追ったものです。
 構成としては、就任時の施政方針演説から始まり、市民や職員とのカレーランチミーティング、住基ネット、横浜リバイバルプラン、アントレプレナーシップ事業、G30(ゴミの3割減量)、交通局と市立病院、談合問題、地下室マンション、みなとみらい21など、テーマごとに章立てし、最後にインタビューをつけた、という感じです。イメージとしては、週刊誌か何かの集中連載で各分野のテーマを追ったものがベースなのではないか、と言うと伝わりやすいでしょうか。本書の著者となっている「〈横浜改革〉特別取材班」の実態が分からない(まるで官僚が本を出す時の「○○法研究会」や組合関係者の「○○問題研究会」のようです)ですが、どこかの雑誌か新聞社なのでしょうか。
 内容としては、中田改革のメニューをざっと追ったようなところで深い分析はありませんが、改革の概要や関係者の発言が収められているので、中田市政をコンパクトにつかむにはちょうど良いかもしれません。


■ 個人的な視点から

 中田市長と直接お話したことはありませんが、何度か講演を聴かせていただいたことがあります。そのときに感じたのは、中田市長の「眼力」の強さです。元々目つきのいいタイプではないということも感じますが(^^;、聴いているこちらをじっと見据えたような話し方をするのです。「貴様見ているなッ!」(byディオ)ではないですが、一聴衆として気楽に聴くことができないような迫力があります。
 後で市役所の人に聞いたのですが、最初は市の職員もあの話し方にはびびった人が多いそうです。単なる理屈ではなく、日頃の「駅立ち」で鍛えた演説術が中田改革の大きな力になっているのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・中田改革をざっと押さえておきたい人。


■ 関連しそうな本

 南 学, 上山 信一 『横浜市改革エンジン フル稼動 中田市政の戦略と発想』 2005年04月13日
 山田 宏, 中田 宏, 長浜 博行 『ニュージーランド行革物語―国家を民営した国』 2005年03月04日


■ 百夜百マンガ

バオー来訪者【バオー来訪者 】

 「バオーが来る!」
 荒木作品の魅力の原型が詰まった作品。そういえば、トキワ荘のドキュメンタリーに手塚賞を受賞した若き日の荒木氏が出てました。

2005年10月18日 (火)

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして

■ 書籍情報

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして   【トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして】

  大野 耐一
  価格: ¥1,470 (税込)
  ダイヤモンド社(1978/05)

 本書は、産みの親である著者自らが語るトヨタ生産方式の秘訣と歴史です。現在ではこの方式は世界中に広がり、米国人による解説書が書かれたりしていますが、その本家、そして本人である著者の解説は、冗長になりがちな米国のビジネス書に比べてシンプルでずばり要点を突いてきます。
 「『なぜ』を5回繰り返す」、「自動化ではなくニンベンのついた自働化」、「山は低く谷は浅く平準化する」、「かんばん」や、昭和20年代に2~3時間かかったプレス型の交換が30年代には15分になり50年代には3分に短縮されたという「段取り替え」など、他の解説書で書かれているようなトヨタ生産方式の特徴が分かりやすく最小限の記述で述べられています。また、1人の仕事を0.9人分減らしても、0.1人分の仕事をやれば、結局は1人分の経費がかかり原価は下がらない、という「省力化」→「省人化」→「少人化」という発想や、各工程で価値が付加されず、ベルトコンベアで運搬するだけならば「流し作業」であるという「流れ作業」の考え方など、現場で培った目から鱗の金言が詰まっています。
 わざわざ他人による解説書を読むくらいならば、まず本書を読み、細かいところや他の産業、他の国への導入例を見るために解説書を読む、という順序が望ましいのではないかと思います。
 また、著者本人が語るトヨタ生産方式の歴史も、資料的価値を含め、一見に値します。

■ 個人的な視点から

 フォード・システムと比較されることの多いトヨタ生産方式ですが、著者は、その始祖であるヘンリー・フォード一世がもし現在に生きていたならばトヨタと同じ方式をとるのではないか、と語っています。著者が引用しているフォード一世の言葉として、「効率とは、まずい方法をやめて、われわれが知りうるかぎりの最もよい方法で仕事をするという簡単なことである。」というものがあります。私たちは「効率化」という言葉を聞くと、首切りなどのネガティブなイメージを連想しますが、効率という言葉は実にシンプルな意味なのです。むしろ、多くの人が「効率」という言葉を、効率的でない事柄に使ってきたためにイメージが悪くなったのではないかと述べられています。
 不良生産を事前に防ぐ仕組みである「ポカヨケ」という言葉がありますが、本書の中では「バカヨケ」という言葉で紹介されています。ちなみに英語では「fool proof」という言葉を使うそうです。「バカ」というと言葉の響きが悪いからなのか、うっかりミスという意味では「ポカ」の方が近いからなのかは分かりませんが、「大野の円」という厳しい逸話(工場に小さな円を書いて一日直立不動で工程を観察させる)が残っている著者のキャラクターからすると「バカ」の方が正しいのかもしれません。ある弟子は、常にバカと怒られ誉められたことがないらしいです。


■ どんな人にオススメ?

・トヨタ生産方式のルーツを知りたい人。


■ 関連しそうな本

 ジェフリー・K・ライカー (著), 稲垣 公夫 (翻訳) 『ザ・トヨタウェイ(上)』 2005年09月13日
 ジェフリー・K・ライカー (著), 稲垣 公夫 (翻訳) 『ザ・トヨタウェイ(下)』 2005年09月14日
 ジェームズ・P. ウォーマック, ダニエル・T. ジョーンズ (著), 稲垣 公夫 (翻訳) 『リーン・シンキング』 2005年09月26日
 ジェームズ・P. ウォマック, ダニエル・T. ジョーンズ, ダニエル ルース (著), 沢田 博 (翻訳) 『リーン生産方式が、世界の自動車産業をこう変える―最強の日本車メーカーを欧米が追い越す日』
 日本経済新聞社 (編集) 『俺たちはこうしてクルマをつくってきた―証言・自動車の世紀』 2005年07月05日
 中沢 孝夫, 赤池 学 『トヨタを知るということ』 2005年08月05日


■ 百夜百マンガ

僕はミニに恋してる【僕はミニに恋してる 】

 ヘビメタも大好きな作者はミニも大好きです。・・・ってもちろんクルマのことデスヨ。
 「GT-Roman」でもミニ好きの人の話がありましたが、やっぱりクルマは美意識なんでしょうか。

2005年10月17日 (月)

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき

■ 書籍情報

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき   【イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき】

  クレイトン・クリステンセン (著), 玉田 俊平太, 伊豆原 弓(翻訳)
  価格: ¥2,100 (税込)
  翔泳社増補改訂版 (2001/07)

 本書は、「優良企業がなぜリーダーの座を追わせるのか?」という問題に対し、優良企業が失敗するのは、顧客の声に熱心に耳を傾け、新技術に投資し、利益率の向上を目指し、大きな市場を目標にするという、経営としてすべて正しいことを行うが故に失敗する、というジレンマを指摘したものです。
 著者は、イノベーションを「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の二種類に分類します。持続的イノベーションが、主要市場の顧客が評価する性能指標に従い、既存製品の性能を向上させるものであるのに対し、破壊的イノベーションは、主流市場においては製品の性能を引き下げるものであるが、主流市場以外の新しい顧客に評価される、通常は低価格、シンプル、小型、使い勝手が良い、という製品を生み出すという特徴を持ちます。
 本書で取り上げる事例は、技術、市場構造、全体規模、垂直統合が急速に変化し、「産業界のショウジョウバエ」にたとえられるディスク・ドライブ業界です。1956年に開発された世界初のディスク・ドライブである「RAMAC」(24インチディスクを50枚持ち、容量5MBに対し大きさは大型冷蔵庫ほど)から8インチ、5.25インチ、3.5インチ、2.5インチ、1.8インチのHDD、そしてフラッシュメモリーまで、主流の市場から見ると低スペックの新しい技術が、新しい市場を基点に次々に既存の市場を下から奪って行く様が描かれています。市場が求める性能向上の傾きよりも、製品の性能向上の傾きの方が急であるために、これら「破壊的イノベーション」によって、「持続的イノベーション」を続ける既存製品は、ローエンドの市場から徐々に追いやられることになります。
 この他、油圧式掘削機に追いやられるケーブル式掘削機や会計ソフト、インシュリン・ペン製品、トランジスタラジオ等、様々な破壊的イノベーションの例が紹介されています。
 これらのジレンマを、著者は次の5つの原則によってまとめています。
・原則1:企業は顧客と投資家に資源を依存している。
・原則2:小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない。
・原則3:存在しない市場は分析できない。
・原則4:組織の能力は無能力の決定的要因になる。
・原則5:技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない。
 本書は、理論と実務のバランスがとれた読みやすい構成になっていますので、研究者はもちろん、ビジネスマン向けにもおすすめできる経営書のひとつではないでしょうか。


■ 個人的な視点から

 昔、よくアキバのジャンク屋で古いコンピュータを買ってきてLinuxやBeOSなどをインストールして遊んでいました。そういうところに売っているパソコンは、リース切れで回収された4~5年前のものが多かったのですが、最先端のスペックのモデルが、OSを入れるだけで精一杯になってしまうことに、この世界のイノベーションの速さを感じました。
 特にハードディスクは、古いコンピュータから外された340MBとか850MBの3.5インチや2.5インチが無造作に並べられ、1000円~2000円で投げ売られているのを見て、「当時は数万円だった」と思うと不思議な感じがしました。
 残念ながら最近は、時間や居住スペースの関係でジャンクPCをいじって遊ぶ機会はなくなりましたが、今でもアキバに行くとパーツ屋やジャンク屋をひやかし、サンボで牛丼を食べてしまいます。


■ どんな人にオススメ?

・優良企業がつまづく理由を知りたい人。


■ 関連しそうな本

 クレイトン・クリステンセン, マイケル・レイナー (著), 玉田 俊平太, 櫻井 祐子 (翻訳) 『イノベーションへの解―利益ある成長に向けて』 2005年09月29日
 クレイトン・M・クリステンセン, スコット・D・アンソニー, エリック・A・ロス (著), 宮本 喜一 (翻訳) 『明日は誰のものか イノベーションの最終解』
 キム・クラーク, カーリス・ボールドウィン (著), 安藤 晴彦 (翻訳) 『デザイン・ルール―モジュール化パワー』
 米倉 誠一郎 『経営革命の構造』 2005年09月09日


■ 百夜百マンガ

逮捕しちゃうぞ【逮捕しちゃうぞ 】

 TVアニメ化もTVドラマ化もされたこの作品ですが、メカマニアックな内容はアニメはともかくドラマではどう表現されたのかが気にかかるところです。
 メカマニアと言えば、作品の中でホンダのシティ搭載用のバイクである「モトコンポ」がかっこよかったです。それにしても発売は1981年、今から20年以上前ですね。

2005年10月16日 (日)

取材学―探求の技法

■ 書籍情報

取材学―探求の技法   【取材学―探求の技法】

  加藤 秀俊
  価格: ¥693 (税込)
  中央公論新社(1975/01)

 本書は、新聞記者に限らず、主婦にとってもサラリーマンにとっても、そして学生にとっても仕事の基本である「取材」という行為、すなわち情報を仕入れ、それを取りまとめ、分析し、判断する行為について、その実践的な技法を中心に紹介しているものです。
 具体的には、図書館の正しい使い方から始まり、リファレンス・ブックや索引、雑誌記事検索の具体的な使い方を示すとともに、日本の教育において、そのような情報を使う技術がきちんと教えられていないことを指摘しています。また、限られた時間を有効に使うための「見出し読み」によって新聞を読むことの効用や、本や統計資料の探し方、一次資料の重要性など、文字の世界での「取材」の技法が集約されています。
 他に、「耳学問のすすめ」として、「もの知りにきく」こと、すなわち現代で言えば「Know Who」の重要性や、インタビューの技法、対談の面白さなどが語られています。また何よりも「現地をみる」ことの大切さを強調しています。現地に行ってみなければ、「情報としての風物」は分からない、実際にフィールドに立たなければ何も書けない、と述べています。特に、社会学者として、農村でのインタビューを専門にしている著者のインタビューに対する重点の置き方は、大変参考になります。


■ 個人的な視点から

 最近ネットワーク論やコミュニケーションとかの社会学系の本棚(図書分類で361番台)を読むことが多いのですが、ネットワーク論でもインタビューを重視してますし、経営学でもアンケートとインタビューは重要な手法です。一度きちんと身に付けておきたいですが、そんなセミナーとかあるのでしょうか。
 また、現代で言えば、よく使い方を知らないままGoogleの使っている人の時間の無駄も大変なものではないかと思います。個人的には、検索結果が200件を超えるようだと何らかの追加条件を入れないと目当ての情報には近づけないのではないかと思います。例えば、特定の項目を「含まない」条件として「-」を追加(または検索オプションで指定)すれば、何十回も「次へ」をクリックせずに済みます。
 また、標準では10件ずつしか表示されない検索結果も、アドレスバーの末尾に「&num=100」を加えるか検索オプションで指定すれば、100件分表示することができます。
 これらも現代の「取材学」で学ぶべき内容ではないかと思います。本書が出版されたのは今から30年前ですが、現代版『取材学』の出版も待たれるところです。誰か書いてみませんか。


■ どんな人にオススメ?

・日々「取材」を行っている主婦やサラリーマン。


■ 関連しそうな本

 梅棹 忠夫 (著) 『知的生産の技術』 2005年05月05日
 中野 不二男 『メモの技術―パソコンで「知的生産」』 
 板坂 元 『考える技術・書く技術』
 渡部 昇一 『知的生活の方法』 2005年10月09日


■ 百夜百音

POPCONシングルコレクション80's【POPCONシングルコレクション80's】 オムニバス オリジナル盤発売: 2005

 一発屋アーティストを語る時には外すことができないのが「完全無欠のロックンローラー」を歌ったアラジンですが、他にもブレスの間隔に合わせて洗面器に顔をつけてみた「ふられ気分でRock'n'Roll」のTOM☆CAT(真ん中に☆が入ると「つのだ☆ひろ」みたいです。)や「顔が嫌い~顔が嫌い~」を歌ったコンセントピックスなど、一発屋アーティストおよびそれ未満のアーティストが満載です。
 ポプコン入賞者のその後の人生を追ったドキュメンタリーとかあったら読んでみたいですね。


『POPCONシングルコレクション70's』POPCONシングルコレクション70's

2005年10月15日 (土)

インターネットの心理学

■ 書籍情報

インターネットの心理学   【インターネットの心理学】

  パトリシア ウォレス (著), 川浦 康至, 貝塚 泉 (翻訳)
  価格: ¥3,360 (税込)
  NTT出版(2001/09)

 本書は、社会心理学の立場から、インターネット上の人間の行動を分析したものです。実社会では普通の人が、インターネット上ではなぜ奇妙な行動をとるのか、温厚な人柄の人がネット上では過激なフレーム戦に巻き込まれると攻撃的になるのはなぜか、などの疑問を社会心理学の研究成果を元に解説しています。
 本書で扱っているのは、一般的なWWW(World Wide Web)や電子メールの他、非同期型ディスカッション・フォーラム(メーリングリストやニュースグループ、掲示板など)、同期型のチャット、そしてMUD(Multiuser Dungeon)と呼ばれるテキストベースのバーチャル・リアリティの世界、グラフィカルなアバターが行き来する「メタワールド」など様々です。
 これらの世界において、まずは、オンライン・ペルソナ(オンラインで出会う人に自分がどんな印象を与えているか)に関する印象形成を印象操作に関する研究、特に年齢を偽ったり異性に成りすます(ジェンダー・スワッピング)などを扱った研究を取り上げます。
 また、オンライン上における集団力学の問題を、集団の凝集性や同調、過度の集団成極化、集団間競争、エキスパート偏重などの観点から、ドッキリカメラやリスキーシフトの実験、子供たちの集団間の葛藤の実験などを紹介しながら解説しています。
 この他、ネットの世界でたびたび発生する「フレーミング」(激しい罵倒や激昂)がどのようにしてエスカレートするのか、そして、なぜネット上では人間が攻撃的になりやすいか、などを解説したり、逆にネット上で生まれる友情やロマンス、ボランティアが持つ愛他精神の分析、ネット上のポルノやネット中毒の解説などを行っています。
 原書の出版は今から6年前の1999年ですが、現在でもネットの世界の中心はキーボードで入力した文字を読むテキストベースのコミュニケーションが中心です。一部のマニアや若者だけでなく、携帯電話も含めれば、子どもからお年寄りまで、かつてない人数が膨大なテキストでコミュニケーションをとっている現代において、本書が紹介している研究分野は重要性を増しています。


■ 個人的な視点から

 日本では本書出版当時のアメリカとは多少事情が異なり、ニュースグループは一般的ではありませんが、変わりに「2ちゃんねる」に代表される電子掲示板や、最近では「mixi」に代表されるSNS(Social Networking Service)上のコミュニケーションが活発化しています。また、チャットに状況が似ているものとしてケータイメールが浸透しています(ギャル字や顔文字の文化は、チャットにおける短縮語(cuやbtwなど)やスマイリーの日本独特の発展形態ということができるのでしょうか。)。
 よく、「2ちゃんねる」は、その匿名性のために、人間の低俗な部分や攻撃性が前面に出ている汚らしいもの、下らないもの、という見方をされることがあります。私も5~6年前に初めて2ちゃんを読んだ時は暗澹とした気持ちになりましたし、その後にネオムギによるバスジャック事件が起きたときは、「やっぱり危ない人たちが参加しているのでは」という気にもなりました。しかし、慣れてくると、汚い言葉やお決まりの煽り、意味のないアスキーアートを読み飛ばして議論の文脈をつかめるようになります。そうなると膨大な「板」ごとの参加者や議論のキャラクターも分かるようになり、無数のスレッドの中から良質な議論や質の高い情報、親切な物知りがいる「良スレ」と呼ばれるスレッドを探し出すこともできるようになりました。
 ネット上のコミュニケーションは、そのアーキテクチャや性質が大きく変化する流動的なものではありますが、本書のような社会心理学の研究成果に裏付けられた分析が進むことによって、「匿名でしか議論できないような連中は下らない奴らだ」といった無用なバイアスを排除し、顕名と匿名のバランスの取れた使い分けができるようになるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・メールや2ちゃんねるはなぜ荒れるのか、を知りたい人。


■ 関連しそうな本

 アダム N.ジョインソン (著), 三浦 麻子, 畦地 真太郎, 田中 敦 (翻訳) 『インターネットにおける行動と心理―バーチャルと現実のはざまで』
 ローレンス レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳), 柏木 亮二 (翻訳) 『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』 38384
 井上 トシユキ, 神宮前.org 『2ちゃんねる宣言 挑発するメディア』
 吉田 純 『インターネット空間の社会学―情報ネットワーク社会と公共圏』
 鈴木 淳史 『美しい日本の掲示板―インターネット掲示板の文化論』
 池田 謙一 『ネットワーキング・コミュニティ』


■ 百夜百音

DISCO-ZONE ~恋のマイアヒ~【DISCO-ZONE ~恋のマイアヒ~】 The O Zone オリジナル盤発売: 2004

 2ちゃんといえば話題の「のまネコ」ですが、こういうアスキーアートに対する思い入れや愛着って心理学で分析すると面白そうです。特に集団でエスカレートするところは分析し甲斐がありそうです。誰か本出してくれないかな。

2005年10月14日 (金)

マニフェスト 新しい政治の潮流

■ 書籍情報

マニフェスト 新しい政治の潮流   【マニフェスト 新しい政治の潮流】

  金井 辰樹
  価格: ¥735 (税込)
  光文社(2003/10/18)

 本書は、「日本初のマニフェスト選挙」となった2003年11月9日の衆院選に向けて、新聞社の政治記者である著者が、それまで追い続けてきたマニフェストの動きをまとめたものです。
 本書の何が凄いかというと、「よく間に合わせたな」というところです。このときの総選挙は、10月10日に衆院が解散され、10月28日に公示という日程でしたが、本書には、9月18日の民主党マニフェスト一時草案や、10月6日に自民党の政権公約検討委員会に示されたマニフェスト素案、自民党総裁選に向けた9月8日の小泉マニフェストなど、各党のマニフェストに関する情報が盛り込まれ、その発売は10月20日です。「新書って2週間前まで手が入れられるのか!」ということに驚きを感じました。
 もちろん本書の内容は、時事ネタばかりではなく、イギリスを中心とした諸外国のマニフェストの紹介や、マニフェスト以前の日本の政党の「公約」(これらは単なる「ウィッシュ・リスト」(おねだり集)で公約の名に値しない、という扱われ方ですが)、2003年4月の統一地方選挙直前のタイミングに仕掛けられた北川前三重県知事の周到なマニフェスト運動の提唱、21世紀臨調や若手議員によるマニフェスト作りなど、日本の政治にマニフェストを導入するために奔走してきた人たちを丹念に追った記録が収められており、急ごしらえの流行りものにはない深みを本書に与えています。
 選挙が終わった後に読むと、各党のマニフェストの内容そのものは若干色あせますが、日本初の政党マニフェストがどのように作られ、どんな矛盾に直面したか、という分析は貴重な記録になります。初のマニフェスト選挙の結果と次の選挙までの2年間に何が実行されたのか、それまでの公約とは何が異なったのか、という検証編をぜひ読んでみたくなります。


■ 個人的な視点から

 従来型の公約とマニフェストとが最も異なる点は、マニフェストでは達成すべき数値と期限が示され事後的な検証が可能であるという点ではないかと思います。本書で扱われている2003年の選挙の結果である衆議院はその2年後に解散されてしまいましたので、期間が短すぎるという理由で検証が甘めになると考えられます。そのためか、2005年の衆院選では、2003年選挙時のマニフェストの検証はあまり話題に上がりませんでした。
 しかし、地方自治体の首長選挙におけるローカル・マニフェストを含め、日本の選挙にマニフェストを定着させたという点で、2003年のマニフェストは評価されてよいのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・2003年当時のマニフェストの熱気を感じたい人。


■ 関連しそうな本

 四日市大学地域政策研究所 『ローカル・マニフェスト―政治への信頼回復をめざして』
 UFJ総合研究所国土地域政策部 『ローカル・マニフェストによる地方のガバナンス改革―自治体が変わる、地域も変わる』
 松沢 成文 『実践ザ・ローカル・マニフェスト』
 自治分権ジャーナリストの会 『「闘う知事」が語る!「三位一体」改革とマニフェストが日本を変える』
 数字で日本を暴く会 (著), 和田 秀樹 『数字のどこをみてるんだ!―マニフェストなんて誰だって作れる肝心なのは、「数字」の分析だ!』


■ 百夜百マンガ

いしいひさいちの大政界【いしいひさいちの大政界 】

 『ののちゃん』や『がんばれタブチくん!!』で知られる作者が政治マンガを書くとこんな感じです。コミカルさと毒気と憎めなさのバランスが良くて個人的には好きなんですが。

2005年10月13日 (木)

ネットワーク分析―何が行為を決定するか

■ 書籍情報

ネットワーク分析―何が行為を決定するか   【ネットワーク分析―何が行為を決定するか】

  安田 雪
  価格: ¥2,310 (税込)
  新曜社(1997/02)

 本書は、「ネットワーク分析」という研究分野の、日本語ではおそらく唯一の入門書です。あとがきによれば、1997年の出版に先立つ10年前に、コロンビア大学のRonald Burt教授が語るこの学問の魅力に触れて以来、日本語のネットワーク分析の本を書くのが著者の夢だった、と書かれていますが、いかにわかりやすくネットワーク分析の魅力を伝えるか、というその熱意が、本書の端々から溢れています。
 本書の構成は、前半がネットワーク分析の基本的概念やツールの説明に当てられ、後半が具体的な応用例ということになっています。前半では、ネットワークをグラフや行列で表す方法、紐帯の重み付け、個人の持つネットワークを調査するための「ネットワーク・クエスチョン」の方法などが説明されています。後半では、パソコン通信の会議室での発言のつながりからネットワークの中心性を調べたり、パーソナル・ネットワークと昇進速度を調べた研究を紹介し、ネットワーク分析が得意とする領域がわかるようになっています。
 ネットワーク分析という研究分野に登場する用語が簡潔に解説されており、学部学生への入門書には最適ではないかと思います。また、研究目的でない一般社会人の好奇心を満たすにも適しているのではないでしょうか。


■ 個人的な視点から

 私が本書にたどり着くまでに、(1)『ティッピング・ポイント』(2/12紹介)→(2)『スモールワールド・ネットワーク』(9/28)→(3)『実践ネットワーク分析』(10/4)→(4)『人脈づくりの科学』(10/5)→(5)本書、の順に読み進んできました。しかし、本書を読んで、「もっと先にこっちを読んでいれば・・・」ということに気づきました。本書では、ネットワーク分析に関する概念が平易な文章でわかりやすく説明されていて、この入門書を読んでおけば、ネットワーク分析という研究分野の大まかな全体像をつかんでおくことができます。
 では、どんな順序で読んでいれば良かったのでしょうか。おそらく、ネットワーク分析への関心を持つきっかけ、接点になるのは、(1)の『ティッピング・ポイント』辺りではないかと思います。ここから(2)の『スモールワールド~』に進むのが順当な線かもしれませんが、(2)を読む前に本書を読んでおくと、(2)の内容がつかみやすくなります。その後、(4)の『人脈づくりの科学』を読み、さらに関心のある人は(3)の『実践ネットワーク分析』のまで読み進むのがいいのではないかと思います。ただし、(3)は本書に対する中上級編的な位置づけにあるので、専門とする学生には必要ですが、一般社会人はここまで読み進む必要はないかもしれません。
 この二週間ほどの間に、集中的にネットワーク分析の本を芋づる式に読んできましたが、こういう本のネットワーク関係を解説してくれるソシオグラムのようなものがあれば読書ガイドとして最適なんではないかと思います。できれば、引用関係や「こういう順序で読むと良い」とかの矢印がついていると、なお使いやすそうです。印刷物よりもコンピュータ上のほうが使い勝手もよさそうな感じがします。現在はamazon.comの「この本を買った人はこんな本も買っています」や「本のおすすめ」で代用していますが、誰か作ってくれないものでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・人間関係を科学的に理解したい人。


■ 関連しそうな本

 安田 雪 『実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法』 2005年10月04日
 安田 雪 『人脈づくりの科学 「人と人との関係」に隠された力を探る』 2005年10月05日
 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 マルコム グラッドウェル (著), 高橋 啓 (翻訳) 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 2005年02月12日
 金子 郁容, VCOM編集チーム 『「つながり」の大研究―電子ネットワーカーたちの阪神淡路大震災』
 アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳) 『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』


■ 百夜百マンガ

人間交差点【人間交差点 】

 ビッグコミックオリジナルに連載されていた作品です。この雑誌の主な読者層は25歳~45歳くらいのサラリーマンではないかと思いますが、青年誌よりも上だけれどもビッグコミックよりもやや下、という位置づけでしょうか。どの雑誌もそうですが、ヒット作でつかんだ読者が年齢を重ねるとともに、だんだん雑誌自体のターゲット読者が上がって行く、という関係があるのではないかと思います。この辺りを分析した研究があったら読んでみたいです。

2005年10月12日 (水)

決定の本質―キューバ・ミサイル危機の分析

■ 書籍情報

決定の本質―キューバ・ミサイル危機の分析   【決定の本質―キューバ・ミサイル危機の分析】

  グレアム・アリソン (著), 宮里 政玄 (翻訳)
  価格: ¥3,885 (税込)
  中央公論新社(1977/01)

 本書は、1962年10月のキューバ・ミサイル危機を題材に政府における意思決定方法を分析した優良なケーススタディです。
 本書では、政府の意思決定を3つの概念モデルで分析します。古典的に用いられてきた第一モデルに対して、第二モデル、第三モデルによる分析が、「よりよい説明と予測を生み出すための基礎となる」というのが本書の基本的なスタンスです。
 第一モデルは、政府を合理的行為者とみなします。ここでは、政府の合理的行為者として擬人化され、その内部は一体のブラックボックスとしてみなされ、分析の基本単位は「選択としての政府の行為」になります。その分析における推理パターンは、「もし国家がこの種の行為をしたのであれば、それはこの型の目標を持っていたに違いない」というものになります。
 第二モデルは、政府を「反封建的でゆるく結託した組織の集成体から成っていて、組織はそれぞれ独自の実質的な生活を営んでいる」ものとみなします。そして、「組織的出力としての政府の行為」を分析の基本単位とし、「どういう組織的な脈絡と圧力によってこの決定が生み出されたのか」と考えます。その推理パターンは、「組織が今この種の出力を生み出したとすれば、その行動は現存する組織の特徴、手続、レパートリーから結果したものである」というものです。
 第三モデルは、政府内部における政治に焦点を当てます。つまり、組織の「指導者」は一元的なグループではなく、グループを構成する個々人は、「自ら中枢の競争的ゲームのプレーヤー」であるとみなすのです。このモデルでは、政府の行動は、これらの「かけひきから派生する結果」と見ることができます。その推理パターンは、「もし政府がある行為をなしたのであれば、この行為はゲームのプレーヤーの間のかけひきから派生した結果である」というものです。
 これらのモデルは、いずれかが優れている、というものではなく、相互補完的なものとみなされ、下記の点に焦点を当てているとされています。
・第一モデル・・・より広い脈絡、より大きな国家的パターンと共有のイメージ
・第二モデル・・・情報や選択肢や行為を生み出す組織的ルーティン
・第三モデル・・・政府の個々の指導者と、主要な政府の政府の選択を決定する指導者間の政治のより細かい分析
 本書は、合理的な国家という想定のもとでの、国家が誤って核戦争に突入することはありえない、という自信に対し、第二モデルと第三モデルの立場から警告を発し、「米ソの政府のような巨大な機構間の核危機は本来的に不安定なものである」という教訓を導き出しています。今から40年以上前の事件、そして35年近く前の文献ではありますが、本書が持つ価値は色あせていないどころか、その重要性を増しているのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 良い本です。ぜひとも所有したい、と思わせるに十分ながら、アマゾンでは現在、7450円の値がついていて悩んでしまいますが、せめて定価なら間違いなく買ってしまいます。
 本書の中で一番魅力を放っているのは、第三モデルによる分析を扱っている第5章と第6章です。特に第6章は、小説や映画のクライマックスシーンのような緊張感が読む側にも伝わってきます。JFKが「もし私がフルシチョフならば」という言葉を多用したことは、ソ連を第一モデル的に見るのではなく、第三モデル的に捉えようということではないかと思います。
 一方で、閣僚の本性が現れている言葉として、引用されている「閣僚は、理論上は命令に等しい大統領の示唆の半数を無視しても差し支えない。そして大統領が同じ示唆について二度口にするならば、それは検討中ですと答えればよい。しかし三回も同じことについて問いただすならば、大統領が示唆したことを少なくとも部分的に実施するのが、閣僚として賢明なやり方である。しかし、極めて重要な問題を除いて、大統領が三回も問いただすことはあまりない。」というジョナサン・ダニエルズの言葉は、日本の政府や自治体でもそのまま使えるのではないかと思いました。使ってみたい、ということではないですが・・・。(^^;


■ どんな人にオススメ?

・政府の意思決定に関心のある人。


■ 関連しそうな本

 ロバート ケネディ (著), 毎日新聞社外信部 (翻訳) 『13日間―キューバ危機回顧録』
 印南 一路 『すぐれた意思決定―判断と選択の心理学』 2005年07月07日
 印南 一路 『すぐれた組織の意思決定―組織をいかす戦略と政策』 2005年03月14日


■ 百夜百マンガ

月下の棋士【月下の棋士 】

 意思決定の教科書に出てくる話には、欧米の本にはチェス、日本だと碁や将棋が多いのではないかと思います。
 将棋マンガに麻雀マンガのスタイルを持ち込み、テレビドラマ化された本作品ですが、「背中が煤けてるぜ」の決め台詞に匹敵するインパクトは、編集者の「次号、詰むや詰まざるや」くらいしかありませんでした。

2005年10月11日 (火)

企業のなかの男と女―女性が増えれば職場が変わる

■ 書籍情報

企業のなかの男と女―女性が増えれば職場が変わる   【企業のなかの男と女―女性が増えれば職場が変わる】

  ロザベス・モス カンター (著), 高井 葉子 (翻訳)
  価格: ¥2,854 (税込)
  生産性出版(1995/03)

 本書は、企業組織におけるジェンダーの問題を扱った古典的研究のひとつとして知られているものです。しかし、本書のアプローチは、女性に限った問題ではなく、人種や学歴など、より広い観点から企業組織の内部を分析している点に特徴があります。
 企業組織においては、様々な同調性を求める圧力や「部外者」に対する排他的な態度が見られます。著者は、この理由を組織が直面する不確実性に求めます。不確実性に対処するために、信頼や忠誠心・コミットメントなどが求められ、共同体的な要素が生まれるのです。また、経営業務の大部分を占めるコミュニケーションを容易にするために、経営業務を社会的に均質のグループに限定していきます。こうして、社会的基準が評価基準の代用をし、そのことが、自分たちと同じような人間だけが権威を持つに値するという信念を強化します。この結果、管理者はある限りの時間を組織のためにつぎ込み、常に会社のことを気にかけることを求められるのです。
 キャリアの中で「機会」は重要な要素になります。「昇進のスピードコース」に乗った「ウォーター・ウォーカー(水の上を歩く者)」は、そこからつながるキャリアパスがあるからというよりも、その仕事が目に付くチャンスやコネをもたらすポジションであることが重要になります。一方で、昇進の機会が限られている以上、機会は常に満たされるわけではなく、高められた期待を裏切られたと感じる人々は、大変な苦痛を感じることになります。この苦痛は、アファーマティブ・アクションに対する恨みとなって現れます。行き止った人たちが、自分たちより下にいると思っていた女性や少数民族に追い抜かれることに対する特別な恨みを抱くことになります。
 また、本書の重要なキーワードに「トークン」という言葉があります。紅一点の存在である女性が、全女性を象徴し代表する役割を担ってしまうことです。このことは、知名度の点で有利に働く場合がある一方で、アウトサイダーとしての孤独と、多数派のカルチャーにどうかする家庭での自己疎外を招くことがあります。トークンは、「可視性(注目の的になる)」、「対照性(両極化と誇張化)」、「同化(ステレオタイプ化)」という3つの視覚的特徴を持ちます。スポットライトの下での生活は「諸刃の刃」であり、トークンは多数派(ドミナント)のカルチャーを誇張化し、忠誠心を示すことを求められ、ステレオタイプとしてインフォーマルな役割(母、誘惑者、ペット、鉄の女)を求められます。
 本書のまとめとして、著者は、組織行動を決定する以下の3つの変数を挙げています。
(1)機会:期待や将来への見通し。
(2)権力:資源を動員する力。
(3)割合(相対的な数):ほぼ同じ状況にいる人間の社会的な構成。
 そして、これらに基づいた実践への貢献として、以下のような提案を行っています。
(1)機会を高める努力:事務職と管理職との間の「職務間のブリッジ(連結)」を見つける。またジョブローテーションやプロジェクトマネジメントの他、フレックス・タイム制も有効である。
(2)エンパワーの戦略:分権化やコミュニケーションの経路の開発、直接の上司以外の上司による「人工的なスポンサー制度」など。
(3)数字の均衡のための戦略:女性を一人ではなく一群として入れることを原則とすべき。
 本書は、ジェンダーの文脈の中で語られることが多い文献ですが、先入観をなくして読んでみると、組織のあり方そのものに対する鋭い分析が根底にあることがわかります。


■ 個人的な視点から

 本書の、ジェンダーの問題に踏み込む前の組織そのものの分析には鋭いものがあります。本書は、「インダスコ社」という仮名の組織が舞台となっていますが、インダスコ社の社風を表す言葉として、次のようなものがあります。
 「もし仕事をきちんと終わらせたいなら、忙しい人間にまわせ(管理職の金言)」
 「方々へ出かける上司につく方が給与が上がる(秘書の金言)」
 これは、ある管理職が、仕事に対する興味を失ったことを隠すために、わざと忙しそうにしたり外の会議に頻繁に出かけることを説明する部分で紹介された言葉ですが、社員が社風をきちんと理解し、おそらく無意識にそう見えるような行動をしているところが、社風が持つ恐ろしさなのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・鋭い組織分析を読みたい人。


■ 関連しそうな本

 佐野 陽子, 志野 澄人, 嶋根 政充 (編著) 『ジェンダー・マネジメント―21世紀型男女共創企業に向けて』
 赤岡 功, 長坂 寛, 渡辺 峻, 筒井 清子, 山岡 煕子 『男女共同参画と女性労働―新しい働き方の実現をめざして』 2005年09月08日


■ 百夜百マンガ

女社長【女社長 】

 「女社長」というよりも「こども社長」という感じなのは、「いまどきのこども」のイメージを引きずってしまうからなのでしょうか。
 そういえば、「女流棋士」とか「女流作家」とかは使いますが、「女流社長」とは言わないですね。

2005年10月10日 (月)

定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?

■ 書籍情報

定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?   【定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?】

  三戸 祐子
  価格: ¥620 (税込)
  新潮社(2005/04)

 本書は、私たちが当たり前だと思っている、時計のように正確な日本の鉄道の運行が、世界的には極めて特殊なものであること、そして、どうしてこのような運行をするようになったのか、この正確さはどのようにして生み出されるのか、を鉄道マニアではない著者の一歩引いた視点から分析したものです。
 多くの日本人は、鉄道は時間通りに運行されるもの、という認識を持っていて、都市部の人は5分遅れただけで駅員に食って掛かり、田舎では汽車が通る時間を時計代わりにしています。しかし、この「時計のような正確さ」はどこの国の鉄道でも同じわけではありません。
 日本の鉄道では、一列車当たりの遅れは平均1分以下に収まっているのに対し、フランスのTGVでは、「遅れ」とは14分以上遅れたものを指し、イタリアの普通列車では15分以上、イギリスのインターシティでは10分からが「遅れ」になるということです。つまり、運行を秒単位で捉えるか分単位で捉えるかくらいの発想の違いがあるのだということです(これが途上国では時間単位とかになり、珍しく定刻に到着かと思ったら前日につくはずの列車だったという笑い話もありますが。)。
 では、このような正確さは何に由来するものなのでしょうか? 多くの人は「日本人は昔から几帳面だから」と答えるかもしれません。しかし、本書は、このような国民性の問題だけでは説明がつかないことを解説しています。明治政府が鉄道を導入する以前から整っていた環境として、時鐘による時間感覚や、参勤交代という大規模移動プロジェクトをつつがなく実行する能力の高さ(なんと参勤交代の旅程ダイヤグラムまで考案されていた)、人が歩ける距離で鈴生りに発展した都市、そして築城技術にルーツを持つ土木技術などが整っていた点が指摘されています。
 そして、日本の鉄道を正確にしたキーマンと言うべき人物も存在し、明治期の鉄道国有化の時に国鉄入りした「運転の神様」と呼ばれる結城弘毅氏が知られています。結城氏はそれまで30分遅れるのが当たり前だった長野管内の列車を、機関手とともに沿線の目印の設定や石炭のくべ方などを研究し、ついに正確運転を達成します。この運動は全国の機関庫に広がり、ついに日本中の列車が正確運転に成功します。トヨタ自動車における大野耐一氏の存在を想像させます。
 また、関東大震災をきっかけに、住宅が都市郊外に広がり、輸送力の増強が急務になり、大量の乗客を「捌く」ために、同じ車両を使いまわす正確な運行が必要になったことが解説されています。駅の停車時間を短くするための乗車テクニックや駅の構造など、大都市と鉄道が二人三脚で発展していた過程は、日本の鉄道の正確さは、鉄道だけの要因だけでなく乗客や都市の構造と相互依存の結果で成り立っていることを教えてくれます。
 この他、正確な運行を支えるシステムの解説として、「人車一体」の運転技術(戦争から復員した機関士が電球も切れ計器も見えない真っ暗な運転台で正確な運転をしたエピソード)や、「遅れない鉄道」と「遅れてもすぐに回復する鉄道」という二つの発想、「スジ屋」(ダイヤ作成担当者)の経験とバランス感覚(「カゲスジ」なんて言葉も出てきます。)などが述べられていて、鉄オタでない人の知的好奇心も刺激します。
 尼崎の脱線事故をきっかけに、
「日本のダイヤは諸外国に比べて過密すぎる。」
「オーバーランや遅延など日本の鉄道はたるんでいる。」
「JR西日本の組織風土の問題が原因だ。」
などの批判がテレビのコメンテーターを中心に語られ、同じようなことをブログに書く人もたくさんいます。本書は、そもそも日本の鉄道の正確運行の発想自体が外国とは異なること、そして、正確な運行と過密なダイヤを求めているのは鉄道会社を批判している都市住民そのものであること等、色々な論点を整理し、問題をシステムとして大局的に見るきっかけを与えてくれるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 昔、フィレンツェまでユーロスターで移動しようとしたローマのテルミナ駅で、イタリア名物のストライキにぶつかったことがあります。駅員さんにチケットを見せるとインターシティには乗れる、と教えられ、「ユーロスター高かったのに・・・(T_T)」と思いながらしぶしぶインターシティで移動しましたが、風景を眺めたり、相席のおばさんと話(と呼べるかどうかはともかく)をしたりと、「世界の車窓から」のような楽しい体験でした。翌日、窓口で交渉しましたが、残念ながらストライキで運休したチケットの払い戻しはできないようでした。この辺りも日本とは常識が違うのかもしれません。
 一方、台湾の鉄道は、ハード整備や運行も戦前に日本が行ったインフラ整備の名残が残っているようで、かなり正確に運行されていました。阿里山森林鉄道という登山鉄道に乗ってご来光を見に行ったのですが、古い日本のローカル線のような感じで安心して乗ることができました。でも2003年に脱線転覆事故を起こしてるんですね・・・。


■ どんな人にオススメ?

・電車は時間通りに来るのが当たり前だと思っている人。


■ 関連しそうな本

 大野 耐一 『トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして』
 織田 一朗 『日本人はいつから〈せっかち〉になったか』
 富井 規雄 『列車ダイヤのひみつ―定時運行のしくみ』
 大村 平 『信頼性工学のはなし―信頼度99.9999…%をめざして』


■ 百夜百音

ハルメンズの近代体操【ハルメンズの近代体操】 ハルメンズ オリジナル盤発売: 1980

 最近、電車運転シミュレーションのゲームが流行りましたが、おそらくそのタイトルの元ネタになっていると思われるのが、このアルバムの4曲目「電車でGO」ではなかろうかと思います。この場合、「電車」というのは間違いなく総武線の黄色い電車で、駅は本八幡から乗らねばなりません。
 さて、ミュージシャンで血中鉄分濃度が高い人といえば「くるり」の人が有名(昔、ラジオでモーター音を聞いて車種を当てる、っていうのをやってました。)ですが、いよいよこのたび電車の歌を出してしまいました。


『赤い電車』赤い電車

2005年10月 9日 (日)

知的生活の方法

■ 書籍情報

知的生活の方法   【知的生活の方法】

  渡部 昇一
  価格: ¥735 (税込)
  講談社(1976/01)

 本書は、「本を読んだり物を書いたりする時間が生活の中に大きな比重を占める人たち」に向けた「知的生活」の送り方を、主に読書に関する著者の生活を中心に解説したものです。
 知的生活を送る上で、著者最も大事にしているのは、「知的正直(Intellectual Honesty)」、すなわち、「わからないのに、わかたったふりをしない」ということです。著者のこの信念は、繰り返し精読することで自分にとっての古典を作ることや、若いうちには漱石の小説は読むべきではなく、わかったつもり、読んだつもりになってしまうことを避けるためにも、人生経験を積んでから読むべきである、という主張に現れています。
 また、本を所有することの重要性を強調しているのも本書の特徴です。著者は学生時代を知的生活を送るために捧げ、食堂では「丼飯+味噌汁+香の物」しか食べず、靴も靴下も入学式に使ったものを4年後の卒業式でも使い、アルバイトもせず、持てる全ての時間と金を、本を読み所有することに向けています。図書館で借りて要点をカードに写す時間があれば、本を買って赤線を引いた方が遥かに節約になる、「時は金なり」というのが著者の考えです。学者や小説家などの知的生産者の生産性は、所有している蔵書の数に比例する、ということで小説家や学者などが誇る膨大な蔵書の例が紹介されています。中でも漫画家の水木しげる氏が収集した1億枚を超える膨大な変死体や殺人現場などの資料や、本を置くために家を建てたりマンションを買ったりといった豪快なものが目立ちます。本書には蔵書の整理から発展して、知的生活を送るための住宅の設計図まで収められています。敷地の塀をかねた回廊式の本棚、というのはちょっとうらやましいです。
 この他、知的生活のための時間の使い方も大きく二つの観点から解説されています。一つは、人間の寿命は有限という観点から、「見切り」の大切さです。「見切り」とは、ある程度調べてもわからないものはあきらめたり、モノになりそうにないもの(例:第二外国語)には手を広げないというもので、今風に言えば「選択と集中」ということになるでしょう。
 もう一つは、一日の時間の有効な使い方です。先人の例としてカントやゲーテの早起きの生活を紹介しています。カントは夜10時に就寝し、召使に必ず朝5時に起こさせていました。5時から7時まで講義の準備をし、9時まで講義、その後1時までを仕事にあて、1時から昼食をとる、という生活だったといいます。また、ゲーテも早起きで知られ、「朝の時間は金貨をくわえている」という有名な格言を残しているらしいです。著者は残念ながらカントやゲーテとは異なり、深夜から夜明けにかけてが調子の出るピークだったようで、著者はこのタイプの違いを「血液型」ならぬ「血圧型」という理由で説明しています。この他、まとまった時間をとることの重要性と、通勤時間などの細切れな時間の有効な活用法なども紹介されています。


■ 個人的な視点から

 本書が出版された1976年から約30年が経ちましたが、その間にワープロやコンピュータ、インターネットが登場し、情報を収集・整理し、(メールを含め)文章としてアウトプットする時間は格段に増え、知的生活を送るべき人は激増したのではないかと思います。本書の内容は時代を反映して、知の情報源を主に読書に求めていますが、コンピュータの時代になったと言っても情報の多くは文章を読むことで脳にインプットされることには変わりがありません。当時であれば、よっぽどの知識人でもなければ入手できなかったほどの膨大な情報を、現代の我々は簡単に手にすることができるようになったのです。
 しかし、入手できる情報が多いことと、それを使いこなせることはイコールではありません。その意味で、本書は一部のインテリだけに向けられたものではなく、大量の情報の中に暮らす多くの人たちにとっても有用なのではないかと思います。
 
 私個人も一般的には本好きの部類に入る方ではないかと思いますが、残念ながら最近は本を所有するのが経済的に厳しくなってきて、図書館通いを続けています。読みたい本があると、図書館サイトの蔵書検索で調べ、著者名や分類番号などを自分の携帯にメールしておき、週に1回、図書館に本を借りに行って、限度の8冊を借りてきます。手元の8冊の値段を合計すると約2万円になるので、月で8万円近い書籍代を節約できることになります。元々自分の持っている本にも線を引くのは嫌いなので、その面での不便はありませんが、それでも、必要なときにすぐ参照することができない不便さは時折感じます。もし唸るほど金があれば、書庫と書斎を備えた「知的生活用の家」の一軒でも建てたいところです。


■ どんな人にオススメ?

・毎日の生活の中で、本を読んだり文章を書いている人。


■ 関連しそうな本

 梅棹 忠夫 (著) 『知的生産の技術』 2005年05月05日
 中野 不二男 『メモの技術―パソコンで「知的生産」』
 松山 真之助 『マインドマップ読書術―自分ブランドを高め、人生の可能性を広げるノウハウ』 2005年05月01日
 板坂 元 『考える技術・書く技術』


■ 百夜百音

ケダモノの嵐【ケダモノの嵐】 UNICORN オリジナル盤発売: 1990

 元々は「バンドブームに乗ったアイドルバンド」というくらいしか見ていなかったのですが、だんだんひねくれサウンドが前面に出てきてから面白く聴くようになりました。このアルバムだと、「ロック幸せ」や「いかんともしがたい男」がヒネクレ度高い感じです。「自転車泥棒」や「スターな男」は単純に聴いていて楽しいですし。
 ヤプシに入っているTMネットワークをおちょくった「PTA ~光のネットワーク」も笑いました。最近まで小西康陽プロデュースだということを知りませんでしたが。


『おどる亀ヤプシ』おどる亀ヤプシ

2005年10月 8日 (土)

ダッドガレージスタイルブック―ビジネスマンのための子育てガイド

■ 書籍情報

ダッドガレージスタイルブック―ビジネスマンのための子育てガイド   【ダッドガレージスタイルブック―ビジネスマンのための子育てガイド】

  山本 秀行
  価格: ¥1,155 (税込)
  英治出版(2005/04)

 本書は、「ビジネスマンのための子育てガイド」と銘打たれた、「社長の子育て観インタビュー集&遊びの提案書」です。お父さんの子育て、というと「父親も育児に参加しよう」というお役所の啓蒙的なポスター(パパイヤ鈴木やTRFのサムとか)を思い出してしまい、説教臭い感じがしますが、本書からは、「子供と一緒に過ごす生活はこんなに素敵でカッコイイ」というスタンスが感じられます。
 インタビューは、タカラの佐藤会長やワタミの渡邉社長などの実業界のお父さんから、三國シェフまで幅広い「子育て観」が語られています。本書の著者はメルマガ「ダッドガレージ通信/ビジネスマンのための子育て情報マガジン」を発行されていますが、佐藤会長との対談でお顔を見ることができます。

「ダッドガレージ通信/ビジネスマンのための子育て情報マガジン」

 また、遊びに関しては、野外キャンプや釣りなどのアウトドア系から、人生ゲームや懐かしの「学研 電子ブロック」まで幅広い「父と子の遊びのスタイル」が提案されています(子供の頃、電子ブロックが欲しい、と言ったら代わりに半田ごてを渡され、秋葉に連れて行かれました。そのおかげで今でもアキバ好きな人間になってしまいました。)。
 本書のターゲットは、「スタイルブック」というタイトルに現れているように、男性向けファッション雑誌が大量に創刊された現在30代くらいのお父さんだと思います。構成も、俳優やミュージシャンのインタビューの代わりに社長の子育て談義が、服やアクセサリーの変わりに遊びのメニューが紹介されている、という感じですが、全体を統一しているのは、あくまでも親子の素敵な生活を提案する『「ライフ」スタイルブック』だということではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 人間の行動を変えるには、(1)法、(2)市場、(3)モラル、(4)アーキテクチャの4つの方法があると言われます。例えば、シートベルトを着用させるには、
(1)法・・・シートベルト未着用を厳罰化する。
(2)市場・・・シートベルトをしていなかったら保険が減額される。
(3)モラル・・・シートベルトをしていないと同乗者から非常識な人と思われる。
(4)アーキテクチャ・・・シートベルトを装着しないとエンジンがかからないようにする。
といったものです。
 では、育児に参加しない父親が多いのはなぜでしょうか。一つには、「(2)市場」の要因として、家族と夕食をとるために残業しないで早く帰ったり休日出勤をしないと出世コースから外れる、「(3)モラル」の要因として、仕事より家庭を大事にする人が職場で白い目で見られる、などがあります。
 一方、本書のようなアプローチは、(3)のモラルに訴えかけ、父親が育児に参加する生活が当たり前、という世論を形成しようというものではないかと思います。また、(1)の法の要素として、育児休業など父親の子育てに対する制度の整備などが考えられます。
 この他に(4)のアーキテクチャを考えると、自宅で仕事ができる在宅勤務やモバイル機器の充実によって、通勤時間を削減して育児に振り向ける、という方法がありそうです。


■ どんな人にオススメ?

・お父さん


■ 関連しそうな本

 佐藤 博樹, 武石 恵美子 『男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット』 2005年04月07日
 藤原 和博 『父生術』 2005年06月12日


■ 百夜百音

EZ DO DANCE【EZ DO DANCE】 TRF オリジナル盤発売: 1993

 TRFと言えば「哲也・小室・レイヴ・ファクトリー」の略として有名ですが、小室哲也がウゴウゴルーガの「教えてえらい人」のコーナーに「レイヴのえらい人」として出演していたのはネタとしてマイナーかもしれません。
 今では想像もつきませんが、デビュー当時の電気グルーヴとTMNがコラボCDを出してました。一応くくりで言えば「テクノ」つながりになるのでしょうが・・・。


『RHYTHM RED BEAT BLACK VERSION 2.0』RHYTHM RED BEAT BLACK VERSION 2.0

2005年10月 7日 (金)

概説市場化テスト―官民競争時代の到来

■ 書籍情報

概説市場化テスト―官民競争時代の到来   【概説市場化テスト―官民競争時代の到来】

  市場化テスト研究会 (著), 本間 正明(監修・著)
  価格: ¥2,520 (税込)
  NTT出版(2005/01)

 本書は、行政改革の手法として昨今注目を集めている「市場化テスト」について、研究者、実業界、地方自治体の多彩な執筆陣の手によって解説しているものです。市場化テストそのものの内容や、その理論的背景、イギリスやアメリカ、オーストラリアなど制度化の手本となった諸外国の事例、先進事例の紹介など、これ一冊で市場化テストの全体像がつかめるような構成となっています。
 本書(第2章)では、市場化テストを
(1)行政のあり方を見直し、官業や行政府のあり方を再考する契機になる。
(2)公的部門の生産性を向上し、効率化を促す契機にもなり、行政の担う業務自体にイノベーションと創意工夫をもたらす。
(3)財政負担の縮減とともにサービスの質を向上させるという考え方は、消費者の観点から公共サービスのを捉えるということでもあり、サービスの提供主体が官民であるとを問わず、社会的な便益を向上させる。
と述べています。
 市場化テストでは、それまで対象となる業務を行っていた公的部門と民間企業とが受注を巡って競争することになります。ここで問題になるのが、それまで公的部門で働いていた公務員の雇用問題です。諸外国の例では、他の部門への配置転換や退職させる場合もあれば、落札した企業への雇用を義務付ける場合、民間企業での欠員の補充は公的部門で働いていた職員から雇用し、残りは配置転換か退職させる場合など、様々な事例が紹介されています。実際の例では、過半は元の公的部門が落札するケースが多く、原因としては、官業部門についての市場ができていないことが挙げられています。


■ 個人的な視点から

 本書で印象に残ったのは、第5章で述べられていた職員のインセンティブの問題です。市場化テストに対する公務員の抵抗のベースには、自らの雇用という切実な問題と同時に、「公務としての誇り」というモチベーション面での問題もあると考えられるからです。
 これに関してイギリスの実態調査によれば、必ずしも悲観的にならなくともよいようです。それは、権限委譲や成果主義の導入によって、仕事の達成感などの満足感が高まったからだと述べられています。
 日本ではまだここまでの実態調査は行われていませんが、今後、研究の蓄積が望まれる分野だと思います。


■ どんな人にオススメ?

・市場化テストって何?という人。


■ 関連しそうな本

 南 学, 小島 卓弥 編著 『地方自治体の2007年問題-大量退職時代のアウトソーシング・市場化テスト-』 2005年08月22日
 南 学 (編著) 『行政経営革命―「自治体ABC」によるコスト把握』
 桜内 文城 『公会計革命―「国ナビ」が変える日本の財政戦略』 2005年02月28日
 大住莊四郎 『ニュ-・パブリック・マネジメント  理念・ビジョン・戦略』 2005年01月23日
 Ewan Ferlie, Lynn Ashburner, Louise Fitzgerald, Andrew Pettigrew 『The New Public Management in Action』


■ 百夜百マンガ

キャプテン【キャプテン 】

 学園ものの場合、時間の経過→卒業、という課題に必ず直面し、奇面組やイオナ、コータローのような荒業が使われています。
 この作品は、卒業に合わせて主人公が引き継がれる、という展開は斬新でした。

2005年10月 6日 (木)

実践戦略的社内コミュニケーション―社員に情報をいかに伝えるか

■ 書籍情報

実践戦略的社内コミュニケーション―社員に情報をいかに伝えるか   【実践戦略的社内コミュニケーション―社員に情報をいかに伝えるか】

  Shel Holtz (著), 林 正, 佐桑 徹, 浦中 大我 (翻訳)
  価格: ¥2,520 (税込)
  日刊工業新聞社(2005/07)

 本書は、広報やIRなどの社外コミュニケーションに比較して軽視されやすい社内コミュニケーションの重要性を説き、そのための取り組みをケーススタディを通して詳細に解説しているものです。
 社内コミュニケーションは社外に比べて軽視されやすく、多くのメディア対応のプロは社内コミュニケーションを見下し、広報初心者やメディア相手のプレッシャーに耐えられなくなった年配者が行くところだと思われています。しかし、企業は最大の情報伝達者である社員に対するコミュニケーションを重視する理由として、次の二つを挙げています。
(1)企業に関係する外部の全ての人々にとって、社員はその企業の顔である。
(2)社外の人々に向けて発信される重要な事業計画を実際に実行するのは社員である。
 本書では、具体的な社内コミュニケーションの手段として、面談や印刷物、そしてビデオなどの媒体を挙げるとともに、イントラネットを使ったオンライン利用の効果とその限界についても述べています。また、悪いニュースや変革の伝達という経営的に重要なコミュニケーションのとり方や社員間コミュニケーションの促進、社内コミュニケーションの評価などを解説しています。
 どうしても社内コミュニケーションが社外向けに比べて添え物的な扱いを受けることは、どこでも同じなようですが、本書を読むことで「わかっちゃいるけど手が回らない」という理由で社内コミュニケーションをないがしろにする怖さが伝わるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 私自身、昔、組織内向けの広報誌の編集長をしていたことがあります。どんな特集企画を組もうか、何を取材しようか、という議論はしましたが、この広報誌がどんな目的で作られるべきか、ということを議論したのは、紙面構成の見直しの会議のときだった気がします。
 その後、広報誌は経費削減を理由にイントラネット上に移行しましたが、残念ながら印刷媒体の内容をそのままイントラに移行しただけのものになってしまい、結局アドホックな告知で十分ということで廃止されてしまいました。
 いまさらながらに残念に思うのは、内部コミュニケーションとしての広報誌がどのように位置づけられるのか、そして、印刷媒体とオンラインとの違いは何か、ということをもう少し議論していれば、ということです。例えば、広報誌は家に持ち帰って家族に読んでもらうことができ、職場紹介や政策提案などで取り上げられることは本人にとってだけでなく、家族にとっても大きな励みになっていました。また、オンラインならではこコミュニケーションのとり方、例えば掲示板やアンケートなどのインタラクティブなコミュニケーションを取り入れることもできたはずです。これらの議論をもっとしていれば、と悔やまれます。


■ どんな人にオススメ?

・社内向けのコミュニケーションの本当の意義を理解したい人。


■ 関連しそうな本

 福西 七重 『冒険する社内報―もっと自由に、もっと変態(メタモル)』
 藤江 俊彦 『はじめての広報誌・社内報編集マニュアル―目からウロコのデジタル時代の編集・印刷知識』
 丸山 尚 『広報紙・社内報づくりの実務』
 佐桑 徹 『広報部 図解でわかる部門の仕事』


■ 百夜百マンガ

蟲師【蟲師 】

 昭和初期だか大正だかよく分からないですが、村人が和服を着ていて主人公はくたびれた洋服でも違和感がないところが不思議な感じ、文明と蟲の住む世界との接触をイメージさせます。
 一話完結でもハズレが少ないのがうれしいです。

2005年10月 5日 (水)

人脈づくりの科学 「人と人との関係」に隠された力を探る

■ 書籍情報

人脈づくりの科学 「人と人との関係」に隠された力を探る   【人脈づくりの科学 「人と人との関係」に隠された力を探る】

  安田 雪
  価格: ¥1,995 (税込)
  日本経済新聞社(2004/08)

 本書は、「ネットワーク分析」の研究の成果から「人脈づくり」という観点から40の「原則」を拾い出し、ビジネスマンと想定される一般書の読者向けに解説したものです。本書の位置づけは、『実践ネットワーク分析』などの研究書と『大学生の就職活動』などの一般書とをつなぐ位置に少なくとも著者は意図しているのではないかと思います。
 本書の各章は、過去のネットワーク分析の研究成果をビジネスの世界の例に引き当てながら解説し、そのまとめとして「原則」が示される、という構成になっています。例えば「スモールワールド問題」を解説している章では、
 ・原則14:ネットワークは普及・伝染機能を持ち、それは良きものも悪しきものも同様に運ぶ。
と一般化した原則が示されます。また、「弱い紐帯」の解説では、
 ・原則30:弱い紐帯は情報収集機能に富む。
とされています。このような原則が40まで示されていて、イメージとしては、講演や授業の中で、「いいですか、ここがポイントです。覚えてくださいね。」と強調するような点だと言えば想像がつきやすいでしょうか。
 ビジネスマンの視点から本書に書かれている内容をピックアップすると、
 ・世界は狭い
 ・異なるグループをつなぐブリッジが重要
 ・上司は仕事の邪魔
 ・顔の広い人は昇進が速い
 ・転職には疎遠な人の情報が重要
 ・身動きが取れないほど密な関係は思い切って断ち切れ
等になるでしょうか。また、次に挙げる、ネットワークの重要人物の特徴もビジネスマンにはうなづけるところではないかと思います。
 (1)重要な個人的な事柄を話し合える人
 (2)余暇を一緒に過ごす人
 (3)報告義務のある上司
 (4)部下の中で最も有望だと思える人
 (5)社内で最も大切だと思う人
 (6)情報源として最も頼もしい人
 (7)会社で昇進していくために重要な人
 (8)社内でもっとも苦手な扱いにくい人
 (9)転退職するとしたら相談する人
 同様に、研究者の立場(想像ですが)から本書を見たとすると、
 ・ネットワークの密度
 ・構造同値
 ・「小さな世界の問題」
 ・弱い紐帯
 ・ランダムネットワークとスケールフリーネットワーク
などが書かれている、ということになるのでしょうか。
 本書の課題は、これらの二つの視点から見える内容の結び付け方がブラックボックスの部分が多く、本書を読んだだけでは上手く結び付けられないところにあるのではないかと思います。
 とは言え、ネットワーク分析とビジネスマンの視点を結び付けようという本書の意図するところは大変意欲的であり、このようなスタンスで、よりわかりやすい本を出してもらえると大変ありがたいと思います。その意味では、必ずしもネットワーク分析の専門家でないライターさん(例えば、『社長!それは「法律」問題です』における秋山進氏の役割を担ってくれるような)と組んだりすると傑作が生まれるかもしれません。


■ 個人的な視点から

 本書に限らず他の分野の一般書にも共通する課題ではあるのですが、「学術研究の成果を難しい言葉を使わないでわかりやすく説明する」というのは非常に困難なことです。例えば、経済学の世界では、竹中平蔵大臣や伊藤元重教授などがこの能力に非常に長けています。経済ニュースの解説(お二人とも「ワールド・ビジネス・サテライト」の常連でした。)や討論番組において大変な強さを誇っているのは、お二人の説明が、背景となっている理論の本質部分を一般視聴者にもわかりやすく述べた上での発言であるからです。これらの発言が(少なくともその場での)頑健さを持つのは、他の討論者がこの発言を批判するには、発言のバックボーンの理論ごと批判しなければならないためです(人の上げ足を取ることが「討論の強さ」と思っているような学者もいますが・・・。)。
 本書に難があるとすると、山形浩生氏がアマゾンの書評で「何がネットワーク分析から導かれ、何がそうでないかもごっちゃ」と書いていましたが、この部分こそが竹中大臣や伊藤教授が得意とする(少なくとも一般視聴者がテレビでの発言を聞く限りでは。実際にはかなり無理なこじつけもありますが。)部分であり、本書を読んでも「なんかしっくり来ない」と感じる部分ではないかと思います。
 本書の内容から少し外れますが、本書で紹介されている「ソシオグラム」というネットワークの記述方法を使って、この「行政経営百夜百冊」で紹介している本をネットワーク化できないかと考えています。簡単なものでは、クラスの生徒の人間関係をソシオグラム化する「ソシオグラム for Excel97,2000」というソフトで書けるみたいなので今度ためしに作ってみようかと思います。
 
「ソシオグラム for Excel97,2000 」

■ どんな人にオススメ?

・人脈づくりの理論的理解をしたい人。


■ 関連しそうな本

 安田 雪 『実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法』 2005年10月04日
 安田 雪 『ネットワーク分析―何が行為を決定するか』
 安田 雪 『大学生の就職活動―学生と企業の出会い』
 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 マルコム グラッドウェル (著), 高橋 啓 (翻訳) 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 2005年02月12日
 中島 茂, 秋山 進 『社長!それは「法律」問題です―知らないではすまないビジネスのルール』 2005年09月06日


■ 百夜百マンガ

なぜか笑介【なぜか笑介 】

 大切な仕事があるのに困った人は放っておけない・・・という性格で人助けをしたら、実は大事な取引先の偉い人でした・・・という類の「世界は狭い」話がたくさん出てくる作品です。
 それにしても主人公の名前が「小原笑介」っていうのは朝寝が大好きな感じがしそうです。ズッ!

2005年10月 4日 (火)

実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法

■ 書籍情報

実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法   【実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法】

  安田 雪
  価格: ¥2,520 (税込)
  新曜社(2001/10)

 本書は、人々の関係で成り立っている社会を読み解く「ネットワーク分析」の概念や指標、そしてコンピュータプログラムを含むツールについて紹介しているものです。3部構成になっていて、概念の全体像を示す「第1部 概念の具体化と操作定義」、関係・派閥・中心・競争というネットワークの特性を解説する「第2部 ネットワーク特性の概念操作」、新たな仮説の提示と有用やプログラムの紹介をしている「第3部 理論と道具箱」のそれぞれについては、著者自身が好きなところから読んでもよい、と述べていますが、ネットワーク分析に初めて触れる人は、第1部、第2部の順に読むのがよいのではないかと思います。第3部は関心がなければ飛ばしてしまってもかまいません。
 ネットワークにおいて点と点を結ぶ線は紐帯と呼ばれ、ネットワーク分析ではこの紐帯によって点どうしがどのような形で結ばれているかという「つながりの形」が問題とされます。本書では、この「つながり方」を記述するために、点(行為者)を線(紐帯)で結んだグラフや行列が用いられています。行列で記述することによって、行為者間の距離を求め、行為者間の競争関係を分析することができるようになります。
 本書は、「実践」と銘打ってありますが、実社会で直ちに「実践」するという意味ではなく、ネットワーク分析という研究分野に足を踏み入れる際の基本的な概念やツールを説明しているものなので、本書を読むことによって人間関係の洞察が直ちに深くなる、というものではありませんが、ネットワーク分析の世界を覗いてみたい人には入門書になるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 著者は、一般には大学生や高校生の就職活動を分析した研究によって知られているので、この方向から本書にたどり着いた人も少なくないのではないかと思いますが、残念ながら本書の内容と就職活動の研究の間には、もう一ステップ中間段階のものがあるような気がします。それが著者の他の著書、例えば『人脈づくりの科学』等になるのか、他の文献になるのかはまだ読んでいないのでわかりませんが、直接本書にアタックすると、飛躍しすぎてしまう可能性があります。
 就職活動に関して有名な説に「弱い紐帯の仮説」というものがあります。これは異なる社会圏をつなぐ「ブリッジ」となる紐帯が転職時の情報収集に力を発揮する、というものですが、残念ながらこのテーマに関する記述は2ページ半くらいしかありません。「就職活動とネットワーク分析」に関心がある方は、まずは本書以外の別の文献に当たってからのほうが良いかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・「ネットワーク分析」自体に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 安田 雪 『人脈づくりの科学 「人と人との関係」に隠された力を探る』
 安田 雪 『ネットワーク分析―何が行為を決定するか』
 安田 雪 『大学生の就職活動―学生と企業の出会い』
 安田 雪 『働きたいのに…高校生就職難の社会構造』
 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 マルコム グラッドウェル (著), 高橋 啓 (翻訳) 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 2005年02月12日


■ 百夜百マンガ

アキバ署!【アキバ署! 】

 雑誌の『ネットランナー』とか2ちゃんねる的な題材を扱った作品。Winny問題など旬のテーマを取り上げているだけに陳腐化も早いかもしれませんが、それもアキバ的な感じがします。
 「電車男」で注目されたアキバですが、電気街好き(昔の月刊宝島で「アキバキッズ」特集なんかもありました。)にとっては、エロゲーとメイド喫茶の街に変質して行くスピードの速さには驚いています。
(10月21日に発売延期されたようです。)

2005年10月 3日 (月)

社会変革する地域市民―スチュワードシップとリージョナル・ガバナンス

■ 書籍情報

社会変革する地域市民―スチュワードシップとリージョナル・ガバナンス   【社会変革する地域市民―スチュワードシップとリージョナル・ガバナンス】

  D.ヘントン (著), J.メルビル (著), K.ウォレシュ (著), 小門 裕幸 (翻訳), 榎並 利博, 今井 路子
  価格: ¥2,940 (税込)
  第一法規(2005/01)

 本書は、同じ執筆陣による前著『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』で述べられた「市民起業家」の活動が、全米各地で確実に根を張り、成果を挙げている様子をフォローし、その多くの事例から学ぶべき点をクローズアップしているものです。前著が「市民起業家という概念を説明するために各地の事例を紹介している」というものであるとすれば、本書は「全米各地での取り組みを紹介するために市民起業家の考え方を使っている」と言ったら良いのでしょうか。
 「スチュワードシップ」とは、「人々から委ねられているものを注意深く、責任を持って管理すること」と定義され、環境問題の分野などで使われることが多い言葉ですが、本書では、地域コミュニティにおけるスチュワードシップのあり方がテーマとなっていて、「地域スチュワードシップは、地域の市民の当事者意識と場のスチュワードシップの考え方を合体させたもので、地域のスチュワードは、地域のリーダーを越えた存在であり、地域圏の長期的な厚生に責任を持って行動する特別の人材である。」と説明されています。
 本書の各章には、各地の地域スチュワードシップの紹介に関して、「実践のポイント」として、
 ・Discover:人を動かすケースをつくりあげる
 ・Decide:社会実験で重大な選択を行う
 ・Drive:変革に向けて仲間を結集する
 ・What Success Looks Like:成功のイメージ
などの点が、それぞれ分析されています。
 前著『市民起業家』を読まれた方は、二冊合わせて読むことで理解が深まるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書で印象に残るのは、各章の書き出しがアメリカ建国当時の民主主義に関する議論から始まっていることです。当時のフェデラリスト・ペーパー議論されている内容が、決して歴史上の出来事にとどまらず、現代の地域が抱える問題解決の鍵になっていることがアメリカ社会の強みなのかもしれません。
 また、本書でもたびたび取り上げられている『ティッピング・ポイント』でも、独立戦争当時のポール・リヴィアの「深夜の騎行」が大きく取り上げられていますが、アメリカ人にとってこの当時の故事は相当馴染み深いものであるのか、ということを想像しました。日本でもことあるごとに戦国武将の話を持ち出す人がいますが、使われ方としては似たようなものなのでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・スチュワードシップに関心のある人。


■ 関連しそうな本

 D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳) 『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』 2005年03月15日
 上山 信一 『「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ』 2005年03月28日
 マルコム グラッドウェル (著), 高橋 啓 (翻訳) 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 2005年02月12日
 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 小滝 敏之 『アメリカの地方自治』


■ 百夜百マンガ

クマのプー太郎【クマのプー太郎 】

 不条理4コマブームの中では比較的受け入れやすかったのか、テレビアニメにもなりました。
 昨日、本家「くまプー」のビデオを見たのですが、エンディングでクリストファー・ロビンが学校に行くのでみんなにお別れを言う場面で涙が出てしまいました。本物のクリストファー・ロビンは、実生活ではどこに行っても「あのクリストファー・ロビン?」と言われてしまい大変だったようです。

2005年10月 2日 (日)

これから働き方はどう変わるのか―すべての人々が「社会起業家」となる時代

■ 書籍情報

これから働き方はどう変わるのか―すべての人々が「社会起業家」となる時代   【これから働き方はどう変わるのか―すべての人々が「社会起業家」となる時代】

  田坂 広志
  価格: ¥1,575 (税込)
  ダイヤモンド社(2003/10)

 本書は、「私たちは何のために働くのか?」というストレートな問いかけを出発点に、営利企業の中で働く人を含めたすべての人が「社会起業家」となることができる「7つのスタイル」を提示するものです。
 本書は、有名な「二人の石切り職人」(様々な人が色々なバリエーションで語っています)という寓話からスタートします。同じような仕事をしていても、一人は「このいまいましい石を切るために、悪戦苦闘しているのさ。」と語り、もう一人は「今、私は、多くの人々の心の安らぎの場となる素晴らしい教会を作っているのです。」と語ります。著者は仕事の報酬を「目に見える報酬」と「目に見えない報酬」に分け、前者には(1)給料や収入、(2)役職や地位、の2点を挙げ、後者には(1)職業人としての能力、(2)働き甲斐ある仕事、(3)人間としての成長、の3点を挙げています。そして、「目に見える報酬」がだいじなのはもちろんだが、これらに目を奪われすぎて「目に見えない報酬」を見失っていないか、という問いかけをします。そして、「社会に貢献する仕事」こそが「働き甲斐ある仕事」、すなわち「社会起業家」のスタイルであると述べています。
 「社会貢献」という言葉からは、非営利組織で働くことがイメージされ、「起業家」という言葉は、独立してベンチャーを起こす困難さが想起されます。しかし、著者は、次の2つの疑問を投げかけます。1つは、「営利企業に勤めているかぎり、社会貢献はできない」という固定観念は、企業が本来持っていた社会貢献という原点を忘れてしまったからではないか、という疑問です。もう1つは、「起業家」とはベンチャー起業家のような「新しい企業を起こす人」という狭い意味ではなく、「新しい事業を起こす人」という広い意味に解釈できるのではないか、という疑問です。
 著者はこれらの疑問を踏まえ、誰でも「社会起業家」になることができる「6つの理由」を挙げています。それは、
(1)「社会貢献」の働き方を求める人々が増えている。
(2)営利企業にも「社会貢献」が求められる時代となる。
(3)非営利組織にも「事業性」が求められる時代となる。
(4)「起業家」という言葉が広い意味で使われるようになる。
(5)会社を創らずとも「起業家」としての活動が可能になる。
(6)「起業家」に必要な知識が容易に手に入るようになる。
の6点です。そして、社会起業家に必要になるのは、冒頭の石切り職人の寓話で示された、わずかな視点の転換であると述べています。
 著者は、新しい「社会起業家」の定義のもとでの、働き方の新たなスタイルとして、「7つのスタイル」を提唱します。これは、「立志、成長、共感、革新、創発、信念、伝承」の7つです。この7つのスタイルによって、単なる個人としての働き方の問題を超えた、百年単位で社会を変革する「社会起業家」のあり方を提唱しているのです。


■ 個人的な視点から

 昨年5月に、ETIC.の「スタイル2004」のプレ交流会で著者のお話を聴く機会がありました。「スタイル」とは、ETIC.というNPOが開催している社会起業家向けのビジネスプランコンペで、当日は、過去の「スタイル」に参加した若き社会起業家のゲストスピーカーとともに、「社会起業家の7つのスタイル」のお話をされていました。
 著者が設立した「社会起業家フォーラム」ではメールマガジンも発行していますので、本書を読んで関心を持たれた方はこちらも購読してみてはいかがでしょう。
 
「社会起業家フォーラム」


■ どんな人にオススメ?

・働き甲斐ある仕事を探している人。


■ 関連しそうな本

 渡邊 奈々 『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』 2005年08月11日
 町田 洋次 『社会起業家―「よい社会」をつくる人たち』 2005年02月16日
 斎藤 槙 『社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流』 2005年06月01日
 D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳) 『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』 2005年03月15日
 谷本 寛治, 田尾 雅夫 (編著) 『NPOと事業』 2005年01月28日
 金子 郁容 『ボランタリー経済の誕生―自発する経済とコミュニティ』 2005年08月29日


■ 百夜百音

恋する惑星【恋する惑星】 オリジナル・サウンドトラック オリジナル盤発売: 1994

 金城武が出演していて日本でもヒットした映画ですが、フェイ・ウォンが歌う主題歌の「夢中人」が凄く良いです。
 カバー元のクランベリーズの「Dreams」は今でもコーヒーのコマーシャルで使われていました。

『Everybody Is Doing It, So Why Can't We: The Complete Sessions 1991-1993』Everybody Is Doing It, So Why Can't We: The Complete Sessions 1991-1993

2005年10月 1日 (土)

なぜ電車の席は両端が人気なのか―行動の心理学

■ 書籍情報

なぜ電車の席は両端が人気なのか―行動の心理学   【なぜ電車の席は両端が人気なのか―行動の心理学】

  本明 寛
  価格: ¥860 (税込)
  双葉社(2001/01)

 本書は、人間の何気ない行動に隠された心理を対する理解を深めるとともに、人間関係をよくするためにどのように行動を変えていったら良いか、ということを解説したものです。
 タイトルにある、端の席を選んでしまう行動に隠されている「パーソナル・スペース」については、一人ひとりの性格や属している文化によって広さが変わる、という解説があり、傷害事件を起こしやすい人は他の人よりパーソナル・スペースが広いために他の人が"侵入"してくることにパニックを起こしてしまう、という事例や、逆に体が密接する満員電車に私たちが乗っていることができる「非人格化」などが紹介されています。
 他にも、マイホーム・パパを作り出す、酸っぱい葡萄と同じ「合理化」や、看守の役を演じるアルバイトの学生がどんどんサディスティックな行動をとり始める「役割」の恐ろしさなど、「心理学四方山話」的な話が盛りだくさんです。
 本の構成としては、ダラダラと脈絡なく心理学の豆知識を寄せ集めた感じで、一冊を通した統一性はなく、あちこちの雑誌に書いたコラムを寄せ集めたような読みにくさはありますが、電車の中などで個別のコラムを断片的に読むのには適しているかもしれません。もちろん席は両端に座ることになると思いますが・・・。


■ 個人的な視点から

 本書にはところどころにチェックリストが用意されいて、簡単な性格判断ができるようになっています。これ自体は心理学系の読み物によくある話なのですが、本書の場合は構成的に少し辛い部分があるのではないかと思います。
 それは、本書の前半は「電車の両端」に代表される心理学コラムを軽いタッチで書いているので、読んでいる方も気楽にいられるのですが、後半部の「4章 あなたの行動が人間関係を変える」や「5章 自分が生まれ変わる行動術」の辺りは非常に説教臭い口調になってしまっています。心理学界の大御所による「チェックリスト+説教」が待っていると思うと、それだけで気が重くなりそうです。
 本書の前半と後半では対象とする読者層が異なると思うので、前半部分は『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 』のように、日常の出来事を入り口に心理学の世界に招待するような一冊に、後半部分は人間関係に悩んでいる人のための行動術としての一冊に分けたほうがいいのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・心理学コラムを読みたい人。
・人間関係を改善したい人。


■ 関連しそうな本

 山田 真哉 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』 2005年08月19日
 矢幡 洋 『働こうとしない人たち - 拒絶性と自己愛性』


■ 百夜百音

GOLDEN☆BEST Complete Best 1974-1997【GOLDEN☆BEST Complete Best 1974-1997】 憂歌団 オリジナル盤発売: 2002

 阪神優勝!ということですが、最近は珍しいことではなくなってきました。大阪と言えば憂歌団。「君といつまでも」のカバーが有名ですが、「大阪で生まれた女」もカバーしてます。BOROは昔、TBSの「アップルシティ500」で見た記憶があります。「だいじょうぶマイフレンド」を歌っていた"のおちん"が司会でした。


『大阪で生まれた女・18』大阪で生まれた女・18

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