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2005年10月25日 (火)

認められたい!―がぜん、人をやる気にさせる承認パワー

■ 書籍情報

認められたい!―がぜん、人をやる気にさせる承認パワー   【認められたい!―がぜん、人をやる気にさせる承認パワー】

  太田 肇
  価格: ¥1,470 (税込)
  日本経済新聞社(2005/06)

 本書は、人間にとって大きな欲求の一つである「承認欲求」を正面から扱い、それがいかに人を動かしているか、またその一方で、日本の社会的風土の中でどれほど屈折しているか、そして、抑圧された承認欲求を解放し、組織や社会の活力に結びつけるためには何が必要か、ということを論じているものです。なお、有名なマズローの欲求段階説では、下から、「生理的→安全・安定→社会的→承認→自己実現」という欲求の階層をなしているとされています。
 著者は、本書の中で人間を「ホモ・リスペクタス(認められたい人間)」と位置づけています。出る杭を打ち、奥ゆかしさや謙譲を美徳とする日本の社会的風土の中では、一見、承認欲求が人間の動機付けに働いていないようにも見えますが、そんな欲求など微塵もないような人の行動を探ってみると、意識した目的や価値の背後には、媒介変数(原因と結果の間を影で媒介するプロセス)として、承認欲求が大きな役割を果たしていると言うのです。
 承認欲求は、本人の地位とともにその内容が変質していきます。第1レベルの承認欲求は、日常の中で自分の仕事ぶりや個性を認められることによって満たされます。平社員やアルバイトのレベルでは名誉欲や権力欲を満たすような機会はないからです。そして、第2レベルの承認欲求は、競争を勝ち抜くことによって得られる組織の中での地位や肩書きによって満たされます。近年は能力主義・成果主義と組織のスリム化によって、ポストによる承認を満たす機会が減ってきていることが指摘されます。さらに高いレベル、例えば経営者のようなトップの地位になると、組織内での地位や肩書きだけでは満たされない社会的な名声や名誉・尊敬を求める第3レベルの承認欲求を求めます。経営者として名を成した人たちが、財界活動や社会貢献などを通じて自分の名声を高めようとする行動はこのレベルに属します。
 本書ではこの他、日本において承認欲求が過小評価される理由、例えば、他国と比べて青少年の人生の目標に占める「高い社会的地位や名誉を得ること」の回答がわずかしかない点、について論じたり、いわゆる「成果主義」がなぜ失敗するのかを承認欲求の観点から分析するなどしています。
 あとがきによれば、本書の内容は、過去の著作にちりばめられていた考えを、さらに凝縮して掘り下げたもの、と位置づけられており、それだけに良くこなれています。人間の行動の奥底に潜む承認欲求についてコンパクトにまとまった入門書だと思います。


■ 個人的な視点から

 本書で、なるほどとうなづいたのは、組織内のポストによって承認欲求を満たそうとするのは、基本的にゼロサムであり、勝者と敗者が生じるが、承認の場を組織の外に広げることで、多様な価値観の中で誇りと意欲を引き出すことができる、ということです。
 硬い表現では、「準拠集団の外部化」という言葉が使われていますが、個人にとって今いる会社は絶対的な存在ではなく、業界や顧客、友人や家族、地域といった会社の外で認められることに価値を置く、という意識が高まっている、と述べられています。
 このメルマガ・blogにも当てはまるかもしれませんが、匿名・顕名に関わらず、個人が自分の考えをネットに載せていく、という行動も、この「承認欲求」の表れなのかもしれません。そういえば、中央公論11月号で官僚の書くblogについての記事が載っているそうです。おそらくコラムの「ブログ・ハンティング 吉田 操」ではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・正面から「認められたいか」と訊かれると戸惑ってしまう人。


■ 関連しそうな本

 勢古 浩爾 『自分様と馬の骨―なぜ認められたいか?』
 太田 肇 『選別主義を超えて―「個の時代」への組織革命』
 太田 肇 『ベンチャー企業の「仕事」―脱日本的雇用の理想と現実』 2005年07月22日
 ステファン・P. ロビンス (著), 高木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日
 金井 寿宏, 高橋 潔 (著) 『組織行動の考え方―ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト』 2005年04月27日


■ 百夜百マンガ

気分は形而上【気分は形而上 】

 下手な絵でアイデア勝負!なところが良かったです。娘が連れてきた恋人に「どこの馬の骨かわからないようなやつには・・・」と言いかけたところで、男の顔を見ると、「馬」だった、しかも骨が出てる、というベタなギャグが記憶にあります。

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