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2005年11月22日 (火)

企業福祉の終焉 - 格差の時代にどう対応すべきか

■ 書籍情報

企業福祉の終焉 - 格差の時代にどう対応すべきか   【企業福祉の終焉 - 格差の時代にどう対応すべきか】

  橘木 俊詔
  価格: ¥756 (税込)
  中央公論新社(2005/04/25)

 本書は、退職金、社宅、企業年金、社会保険料負担など、日本企業が提供する様々な福祉について、その成立の過程と歴史的な意義をたどるとともに、今後、企業が福祉から撤退すべき積極的な理由を提示するものです。
 企業は、自社の社員のみがベネフィットを受ける非法定福利(社宅、保養所、病院施設、退職金、企業年金など)と、国民一人一人がベネフィットを受ける法定福利厚生費(公的年金、医療保険などの企業負担)の二つの分野で福祉に貢献しています。本書ではこれらの企業福祉が先進資本主義国で発達してきた歩みを追うとともに、日本における社宅の起源である鉱山の納屋制度や紡績産業での保険事業や住居の整備、教育を受けながら大企業の熟練工になれる養成工制度など、日本の企業福祉の成立過程が解説されます。中でも興味深いのは、敗戦によって住居を失った人たちや、高度成長期に地方から移動してきた大量の労働者にとって、企業による社宅や寮の整備は大きな役割を果たしてきたことです。日本の企業福祉の特徴としては、住宅施設と退職一時金の支払いが中心であり、それが大企業に集中していることが挙げられます。
 本書は、企業福祉の現状として非法定福利厚生に期待されるベネフィットが減少していることを指摘するとともに、社会保険給付の財源調達は保険料方式から税方式に転換することが望ましいとして、歴史的意義を終えた企業福祉からの撤退を主張しています。
 福利厚生の担当者のみならず、企業で働く多くの人にとって、今後の企業福祉のあり方を考える上では、必読書になる一冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 よく「会社人間」という言葉が使われます。多くの場合は会社にべったりで自律性のない人間、という意味で使われることが多いですが、本書を読むと、企業で働く人間が給与だけでなく様々な福利厚生制度で守られていて、逆に抜け出ようとするには大変がんじがらめな制約になることが伝わってきます。
 キャリアの流動化に関して必ず話題になるのが企業年金の取り扱いですが、年金に限らず様々な非法定福利のあり方を含めて議論する必要があると思います。


■ どんな人にオススメ?

・企業の福利厚生制度を利用している人。


■ 関連しそうな本

 田尾 雅夫 『会社人間はどこへいく―逆風下の日本的経営のなかで』 2005年02月27日
 日本経済新聞社 (編) 『働くということ』 2005年02月24日
 八代 尚宏 『日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済』 2005年03月23日
 金井 壽宏 『働くひとのためのキャリア・デザイン』 2005年01月30日


■ 百夜百マンガ

ギャラリーフェイク【ギャラリーフェイク 】

 美術界の裏世界を描いた作品といえば『オークションハウス』が有名ですが、軽みがあって楽しく読めるのはこちらです。
 少年誌から大人向けの作品に上手く移行できた作家の一人だと思います。

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