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2005年11月16日 (水)

ここからはじまる人材育成―ワークプレイスラーニング・デザイン入門【300回記念号】

 おかげさまで、1月21日にスタートして今回で300回を迎えることができました。

■ 書籍情報

ここからはじまる人材育成―ワークプレイスラーニング・デザイン入門   【ここからはじまる人材育成―ワークプレイスラーニング・デザイン入門】

  北村 士朗, 中原 淳 (編さん), 荒木 淳子, 松田 岳士, 浦嶋 憲明, 小松 秀圀
  価格: ¥2,520 (税込)
  中央経済社(2004/07)

 本書は、企業の人材育成担当者が学びの場を作り出そうとするときに参考にできる情報として、富士ゼロックス、オートバックスセブン、東京海上火災保険、マイクロソフト、富士通、デンソーなどの企業における「最新の人材育成事例」を紹介し、その中から「人材育成をしていくにあたり頻出する基礎知識・キーワード」を押さえようというものです。
 各事例に共通したポイントとして、本書は、以下の5つの点を挙げています。
(1)「課題」を把握し、「そうした課題を解決できる人材像」を想定する。
(2)学習者を知ること。
(3)学習者の声を活かす
(4)学習の軌跡を考慮する
(5)学び手としての人材育成担当者
 この中で、(2)の学習者の想定としてオートバックスセブンに勤務する若者のイメージ図(オレンジのつなぎを着て、茶髪に長髪、少しひげを生やした若者)とともに、「車は大好きだけれど勉強は嫌い。ゲームやテレビは好きで、読書は大嫌い。」という想定が紹介されていますが、確かにカー用品店にはこんな感じの人がいます。この具体的なイメージが重要であることが述べられています。
 本書の事例は、どれもeラーニングが取り入れられています。eラーニングに対するイメージは「相手の顔が見えなくて無機質」というものであるのに対し、東京海上火災の担当者は「eラーニングでは学習者が寄ってくるのが見える」と述べています。また、オートバックスセブンでは、eラーニングの学習者の想定とコンセプトづくりに一番の労力をつぎ込み、コダワリが随所に込められています。マイクロソフトでは、グローバルな教育システムの中で、アジアとアメリカの学習スタイルに違いがあり、オンディマンドのビデオを見るときに、アメリカでは個人のデスクトップで一人で見るのに対して、アジア地域では、部署の仲間と一緒に見るという違いがあるそうです。
 人材育成のキーワードという点では、デンソーの『人材育成心得帖』に収められた職場における人材育成のポイントである「七つの心得」が参考になりそうです。
・心得一 異論こそ創造、ぶつかり合いは進歩
・心得二 一つひとつの段階を、確実に
・心得三 指導は場づくりはメンバーの指導を始める前の心構え
・心得四 説得して、納得させる
・心得五 意識して「ほめる」、意識して「しかる」
・心得六 「聞く」な、「聴け」
・心得七 変えようとするな、わかろうとせよ
 本書の構成は、事例紹介の合間に、著者らによる2ページ程度の短いコラムが数多く収められていて、ミニ知識的に役立つものが数多くあります。「社会人の5つの学習ニーズ」(トレーニング、資格、ネットワークづくり、特定集団への帰属、勉強を楽しみたい)や、短期間で効率的、効果的な教育コースづくりを行う手法である「インストラクショナル・デザイン」、「コミュニティ・オブ・プラクティス」(実践コミュニティ)など人材育成担当者の関心が向きそうなものばかりです。
 人材育成を担当する方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書の内容は「最新の事例」と「基礎知識・キーワード」、と言葉にしてしまうと実も蓋もないようですが、人材育成の情報が企業の壁を超えることが少ない中で、実際に企業の人材育成担当者が直面しているのはこういった基礎的な問題なのかもしれません。
 いくつかの企業の人材育成担当者が、大学の組織論の教授と一緒に、ケースを分析したり人を読んで話をしたり、ときには合宿をしたりする勉強会に参加したことがありますが、社内に同業者がいない人材育成の担当者が、いかに横のつながりを求めているかということを感じました。


■ どんな人にオススメ?

・企業や自治体の人材育成担当者


■ 関連しそうな本

 金井 寿宏, 守島 基博(編著), 原井 新介, 須東 朋広, 出馬 幹也(著) 『CHO―最高人事責任者が会社を変える』 2005年08月23日
 原井 新介 『キャリア・コンピテンシー・マネジメント―どうすれば人材のミスマッチは防げるのか』
 ウィリアム パウンドストーン (著), 松浦 俊輔 (翻訳) 『ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?』 2005年11月11日
 ウォルター ディック, ジェームス・O. ケアリー, ルー ケアリー (著), 角 行之 (翻訳) 『はじめてのインストラクショナルデザイン』
 小池 和男 『日本企業の人材形成―不確実性に対処するためのノウハウ』
 エティエンヌ・ウェンガー, リチャード・マクダーモット, ウィリアム・M・スナイダー, 櫻井 祐子 (翻訳), 野中 郁次郎(解説), 野村 恭彦 (監修) 『コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践』 2005年08月25日


■ 百夜百マンガ

やさぐれぱんだ【やさぐれぱんだ 】

 「癒し系」なのか・・・?
 ネットで読める大人気四コマの書籍化ということらしいです。「たれぱんだ」や「りらっくま」が好きな人におすすめできるかどうかわかりません。
「山賊UNDERGROUND」
http://szug.biz/

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