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2005年11月 4日 (金)

ホワイトカラーの人材形成―日米英独の比較

■ 書籍情報

ホワイトカラーの人材形成―日米英独の比較   【ホワイトカラーの人材形成―日米英独の比較】

  小池 和男, 猪木 武徳 (編著)
  価格: ¥3,780 (税込)
  東洋経済新報社(2002/01)

 本書は、巷間に出回っている「米国企業の管理職は企業間を渡り歩くスペシャリストで、日本企業の管理職は新卒から社内を歩いてきたジェネラリスト」という社会通念論に対して、日米英独の4カ国におけるアンケートとヒアリングによって、ホワイトカラーの人材開発がどのように行われているかを検証しているものです。
 まず、各国に共通するのは、技量形成の核心、経験の幅において、「幅広い1職能型」及び「主と副型」が優位であった点です。本書では、その理由として、標準化できない問題の処理、すなわち不確実性をこなすノウハウを挙げています。また、他社経験の有無という観点では、日本では他社経験のある幹部が圧倒的に少ないものの、全くの部課長への外部優先は、米企業の4分の1、独企業の5分の1に過ぎず、実際には初期他社経験者採用タイプが多く、部課長への昇進にはそれ以降の内部経験がものを言うという点では日本に共通しています。
 また、人事部門の機能比較という点では、一般に思われている日本の大企業は人事部主導の下で定期的なローテーションというのは、都市銀行などの一部の業種に限られ、本書でヒアリングしている日本企業では、事業本部内の人事異動は事業本部内で、事業本部間の異動は本社で決めていると言うことが述べられています。一方、英国企業における人事部門の機能は、「人材紹介機能」(適当な経験を持った人材の紹介)、「検索機能」(一定期間同じ仕事に配置されている人のリストアップ)、「採用面接」に限定されていることが紹介されています。
 この他、本書は、幹部の早期選抜など、各国企業の間で異なる点、共通点を丹念な調査によって明らかにしています。社会通念を鵜呑みにしないためにもこのような研究は重要であると考えます。


■ 個人的な視点から

 本書では、年功的な賃金制度と「成果給」・「能力給」との対比の例として、米国の法律事務所の事例が紹介されています。アメリカの法律事務所では70年代初頭までは年功ベースで給与が配分されていたのに対し、訴訟件数の増加により有能なパートナーの引き抜き合戦が始まり、給与の高さにより人を引き止めるために「成果給」・「能力給」が導入されました。
 しかし、「成果に応じて」の定義を厳密に行うことができないため、「有能」と評価されるために「割のよいケース」の奪い合いが生じた、というものです。結果、法律事務所全体としての品質が低下し、80年代にはその反省から、従来からの年功制を維持していた事務所は、若いアソシエートの人数を増やし競争を激化させることで、有能なパートナーの給与を引き上げたり、パフォーマンス・ベースにシフトしたところは年功給に戻したりしたそうです。
 米国の法律事務所というと、生き馬の目を抜く世界という印象を(ドラマや映画で)持ちがちですが、むしろ、だからこそ年功制が用いられているというのが興味深い点です。


■ どんな人にオススメ?

・「アメリカでは~」という社会通念に踊らされたくない人。


■ 関連しそうな本

 八代 尚宏 『日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済』 2005年03月23日
 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳) 『人事と組織の経済学』 2005年04月05日
 小池 和男 『日本企業の人材形成―不確実性に対処するためのノウハウ』
 梅森 浩一 『「クビ!」論。』 2005年06月02日


■ 百夜百マンガ

三丁目の夕日【三丁目の夕日 】

 今でこそ昭和30年代というと相当昔ですが、連載が開始された1973年時点では、本の一昔、二昔、つまり読者層である20~30代のサラリーマンにとって子供の頃の話だったのですが、連載自体の長さによって大昔の話になってしまいました。
 まさに、「時間の流れが止まった感覚」というところでしょうか。

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