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2005年11月 9日 (水)

ジョブ・クリエイション

■ 書籍情報

ジョブ・クリエイション   【ジョブ・クリエイション】

  玄田 有史
  価格: ¥3,780 (税込)
  日本経済新聞社(2004/03/16)

 本書は、1990年代の日本の雇用を巡る諸問題を、著者の言葉によれば、「1990年代に失われた就業機会の全体像を、自分なりにできるだけ正確に記録しておきたい」という意図の下で、各種労働統計、経済統計を丹念に扱ってまとめたものです。不良債権やデフレなどのマクロ的な現象によって語られることが多い労働市場の問題について、よりマイクロな統計データを元に、より具体的な雇用消失・創出のメカニズムを追っています。
 本書の構成は、全部で15章からなり、著者の他の一般向けの著書と内容的に重複する部分もあるものの、各章のまとめ方の統一による読みやすさを考えると、後から調べたり引用したりするには本書の方が扱いやすいものになっています。ただし、一般向けに比べて読みやすさという点ではハードルは高くなります。
 本書で主に扱っているテーマとしては、近年、著者が精力的に研究とPRを行っている若年者の雇用問題にどうしても目が行ってしまいます。中高年の失業に社会的な注目が集まり、若年者の失業は本人の就業意識の低さや定着率の低さの問題として語られることが多かったのに対し、中高年の雇用維持のための若年雇用抑制という構造的な問題であることを指摘しています。同様に、中高年サラリーマンの所得の伸び悩み以上に、若年者や自営業者の所得環境の悪化の方が深刻な問題であることが指摘されています。また、パートタイム労働者の増加によってフルタイムの雇用が減少した、という考えが、事業所レベルの実態とはかけ離れていることを指摘しています。
 元々は著者が2001年に提出した博士論文をベースにしているとこともあり、各章単位でも論文として独立して読むこともできます。全体で350ページを超える大著でもあるので、「高齢化と若年者の失業」、「中小企業や起業による雇用創出」、「中高年の転職」など、自分が関心を持っている分野に関連した何章かを読む、という読み方ができるのではないでしょうか。


■ 個人的な視点から

 本書の第12章から14章の辺りでは、中高年、特にリストラで離職した中高年の転職の問題を扱っています。この中では、リストラされた中高年の再就職には前の会社の斡旋や紹介が有効である点、再就職を支援するアウトプレイスメント会社を巡る課題、中高年の転職においてはスキル以上に本人の仕事の中で具体的に現れたやる気と人柄が重要である点、社会学で指摘される「ウィークタイズ(弱い紐帯)」と呼ばれる人的ネットワークが重要である点、などが指摘されています。
 90年代後半に雇用対策の仕事に携わり、職安の説明会で厳しい質問を受けたりすることもありましたが、その当時に本書を読んでいれば、もっと頭の中が整理できたのに、と感じました(もちろん、後から振り返ったからこそ分析が可能ではあるのですが)。


■ どんな人にオススメ?

・1990年代の雇用消失のメカニズムを知りたい人。


■ 関連しそうな本

 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在 中公文庫』 2005年07月20日
 ダニエル ピンク (著), 池村 千秋 (翻訳), 玄田 有史 『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』 2005年02月02日
 玄田 有史, 曲沼 美恵 『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』
 宮本 みち子 『若者が『社会的弱者』に転落する』 2005年05月04日
 大久保 幸夫 『新卒無業。―なぜ、彼らは就職しないのか』
 八代 尚宏 『日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済』 2005年03月23日


■ 百夜百マンガ

東京プー【東京プー 】

 本書の出版は1993年。この当時には「プー」という言葉にはそれほどの悲壮感もなく、少しお気楽な感じもあったような気がします。
 そんな当時の世相と、人情味溢れる商店街のどちらもが懐かしい作品です。

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