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2006年1月20日 (金)

隣りの成果主義

■ 書籍情報

隣りの成果主義   【隣りの成果主義】

  溝上 憲文
  価格: ¥1,000 (税込)
  光文社(2004/11/19)

 本書は、是非はともかく割合としては日本企業にすっかり導入された「成果主義」についての100社を超える取材を元に、「日本企業の成果主義の今」を明暗の両面から紹介しているものです。
 著者は冒頭で、「いったん導入された以上、成果主義が日本企業から消え去る日は絶対に来ない」と断言し(と言っても、いったん導入した成果主義を撤退させる企業がない、という意味ではなく、全ての日本企業から成果主義が消え去ることはない、という意味の極端な話だと思いますが)、「あなたがどんなに成果主義反対を叫んでも、こうした"時代の波"に抗うことは決してできない」と脅しをかけます。そして、「社内貧民層の仲間入り」というフレーズで読者の危機感を煽ります。
 では、本書の内容は、このような派手なキャッチフレーズに見合うようなものでしょうか。残念ながら「成果主義に関して取材した結果」は載っていますが、それを寄せ集めた結果が「日本企業の成果主義の今」かというと甚だ心もとない感じがします。もちろん、著者が100社を超える上場企業を取材した結果は貴重な資料ではありますが、その結果を単著の一冊の本として纏め上げているかというと、著者の存在感はどこにもなく、それらしい内容が書かれた「Chapter 9 「成果主義」と共存するか、戦うか」にはオマケみたいなことしか書いてありません。あれほど冒頭で派手なフレーズを使いながら、本文では「日本企業というシステムにしみこんだこの制度は、たちの悪いソフトがパソコンから完全にアンインストールできないのと同じようなものだ。」と述べていて何が言いたいのか全く伝わってきません。イメージとしては、「一人で書いた別冊宝島」みたいな感じでしょうか。
 価格もそれほど高いものではありませんから、色々な雑誌の「成果主義特集」をスクラップするよりは便利ですが、予め、その程度のものだと思って読まないと落胆も大きいでしょう。


■ 個人的な視点から

 本書の内容で一番有用な点は、成果主義とは人件費削減のツールとして経営者が導入したもの、ということをはっきり言っていることでしょう。巷で問題になっている「成果主義の弊害」と言われている様々な点は、ここをスタートに考えると非常に整理しやすくなります。
 例えば、米国の人事マニュアルを直訳しただけの「成果主義システム」の導入で現場が大混乱する「人事コンサルバブル」は、人事コンサルがトップに人件費削減を謳ってセールスした結果、本音ベースでは成果主義を入れたくない人事部(何しろ米国の人事システムは権限を現場に分権化して初めて機能するものなので、既得権益を奪われることになる)が、やる気なく導入したためであることがわかります。また、権限は人事部に抱え込んだままで「成果主義システム」を構築しても富士通の失敗例のように機能しません。
 そして、本書で取りあげられている「成果主義の弊害」の多くは、成果主義そのものに起因すると言うよりもマネジメント自体の問題であることが少なくありません。本書で取り上げられている「理論先行のMBAホルダーの上司」の例などは、成果主義に関係なく失敗する例ではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・成果主義に関連する雑誌記事を集めるのが面倒な人。


■ 関連しそうな本

 城 繁幸 『日本型「成果主義」の可能性』 2005年12月08日
 城 繁幸 『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』
 高橋 伸夫 『虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ』 2005年3月30日
 高橋 伸夫 『〈育てる経営〉の戦略―ポスト成果主義への道』 2005年06月16日
 都留 康, 阿部 正浩, 久保 克行 『日本企業の人事改革―人事データによる成果主義の検証』 2005年06月24日


■ 百夜百マンガ

少年雀鬼東【少年雀鬼東 】

 少年誌(週刊少年サンデー)に掲載された異色麻雀マンガです。
 子供が主な読者なだけに麻雀漫画で使われる勝負の駆け引きや男の生き様ネタは使いにくいためか、麻雀自体を茶化したネタが目立ちました。

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