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2006年3月30日 (木)

女性たちの平成不況―デフレで働き方・暮らしはどう変わったか

■ 書籍情報

女性たちの平成不況―デフレで働き方・暮らしはどう変わったか   【女性たちの平成不況―デフレで働き方・暮らしはどう変わったか】

  樋口 美雄, 太田 清, 家計経済研究所 (編集)
  価格: ¥1,890 (税込)
  日本経済新聞社(2004/04)

 本書は、結婚や離婚、結婚しても外で働き続ける、子供を生まない等、女性のさまざまな「選択肢」が平成不況によってどのような制約を受け、何が選択され、その結果はどうなったのか、について、「パネル調査」という手法によって分析したものです。この「パネル調査」とは、生活習慣病の調査やマーケティング、世論調査などに使われる「複数の人(調査対象)を長年にわたって追跡調査したもの」です。本書では、財団法人家計経済研究所が実施してきた「消費生活に関するパネル調査」によって得られた統計データを使用しています。
 家計全般に関しては、デフレ不況が家計に与えた影響としては、住宅ローンなどの実質の負債額が増大したことに加え、上の世代のように年齢に応じて実質所得が伸びなくなっていることにより、ローンの重圧感が増していることが指摘されています。
 女性の就業行動への平成不況の影響については、「均等法成立以前に学校を卒業し就職した世代」と「均等法世代」、「バブル崩壊後世代」の3つの世代を比較しています。ここで指摘されているのは、均等法や育児・介護休業法がそれなりの効果をあげている一方で、その成果が必ずしも大多数の女性によって享受されていないことが指摘されています。また、賃金格差の是正や育休法などの法制度適用労働者の範囲拡大など、正社員と非正規労働者の均衡是正の強化の必要性が指摘されています。
 また、世間に浸透している「優雅なパラサイトシングル」の現実についても、結婚選択者と未婚継続者との性格特性の比較において、結婚選択者が社交性の高い傾向(「いろいろな人と付き合うのは好き、話していると楽しい」など)にあるのに対し、未婚継続者は、精神的負担があると回答する割合が相対的に高い(「仕事が多すぎて、睡眠不足に思う」、「精神的ストレスが多い」、「取り越し苦労する方だ」、「朝早く目覚めて、気分が重い」など)ことが指摘されています。
 出産・子育ての世代間の差異に関しては、主観的な年齢可変子育て費用が、最適出産年齢を考えていた年を越えることで増加し、子育ての純便益を上回ることが、「若いうちは子を欲しかった人が、あきらめにかわり、産みたくなくなってしまう」メカニズムとして解説されています。これらの分析を踏まえ、子育て環境の整備に関して以下の4点が挙げられています。
(1)特に若い世代での出生率低下には、人々が「子供の数」を少なく生んでいるからではなくて、「生まない」という選択の結果が反映している。
(2)出生力の低下には、人々の意識だけでなく、所得環境や就業環境、あるいは仕事と子育ての両立支援に関する法律や制度の整備など、社会経済環境の変化が大きく影響している。
(3)バブル崩壊後世代ほど出産前後で仕事を辞める女性の割合が高い。
(4)夫の家事・育児や両親との同居が出産確率を高めて子供の数を増やすが、その効果はとくにバブル崩壊後世代で顕著である。
 結婚、出産、離婚というイベントが所得に与える変化に関しては、結婚前後で所得が(増減ともに)大きく変わる女性が多いこと、出産の前後で所得が減少する人が多くこと、離婚で所得が減少する人が多く、4人に1人は半分以下になる人がいることなどが指摘されています。
 この他、デフレによる家計への影響、特に住宅ローンの負担の増加や、所得階層の固定化、「デプリベーション(標準的生活様式からの脱落)」等に関して分析されています。
 本書は、少子化問題を考える上で、子供を育てやすい社会をつくるにはどのような政策が必要か、というインプリケーションを与えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 少子化対策というと、子供を産み育てることが正しいことであることを前提にしたような議論が目につきます。どのような選択を行うかは個々人の価値観によるものであるので、一方的な価値観の押し付けにならないかは心配です。
 本書で示されているライフコース類型別生活満足度では、「結婚-就業継続」型の生活満足度が最も高い趨勢を示している一方で、「未婚-離職」型の生活満足度が最も低いという結果が出ています。これも情報の一つではありますが、やはり、結婚や出産をしても働き続けられる環境の整備は重要なのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・平成不況が家計に与えた影響を捉えておきたい人。


■ 関連しそうな本

 佐野 陽子, 志野 澄人, 嶋根 政充 (編著) 『ジェンダー・マネジメント―21世紀型男女共創企業に向けて』 2005年12月06日
 ロザベス・モス カンター (著), 高井 葉子 (翻訳) 『企業のなかの男と女―女性が増えれば職場が変わる』 2005年10月11日
 赤岡 功, 長坂 寛, 渡辺 峻, 筒井 清子, 山岡 煕子 『男女共同参画と女性労働―新しい働き方の実現をめざして』 2005年09月08日
 佐藤 博樹, 武石 恵美子 『男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット』 2005年04月07日
 白波瀬 佐和子 『少子高齢社会のみえない格差―ジェンダー・世代・階層のゆくえ』 2006年03月10日
 山田 昌弘 『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』 2006年01月11日


■ 百夜百マンガ

燃える!お兄さん【燃える!お兄さん 】

 担任の先生が「用務員」になって主人公にバカにされる話という言葉に自治労大阪府本部が抗議して回収騒ぎとなったことで有名な作品です。
 今なら「萌えるお兄さん」というパロディを書いてる人もきっといることでしょう。

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