« ファシリテーション入門 | トップページ | 情報編集力―ネット社会を生き抜くチカラ »

2006年4月25日 (火)

14歳からの仕事道

■ 書籍情報

14歳からの仕事道   【14歳からの仕事道】

  玄田 有史
  価格: ¥1260 (税込)
  理論社(2005/02)

 本書は、労働経済学の研究者である著者が、「14歳、中学2年生くらいの読者をイメージしながら、仕事の道を自分の足で歩いていくために、今のうちにぜひ知っておいてほしい『働くことの本当』」を述べたものです(ルビの多さには読むのが疲れますが、「若者」や「自身」にまでルビが必要でしたっけ?)。
 著者は、仕事に関する情報が増え過ぎたせいで「やりたいこと、選びたいことが見つけにくく」なり、「むしろ、多様化よりも画一化のほうが進んでいるようにさえ」感じると述べています。そして、『13歳のハローワーク』を現した村上龍氏の、「あの本では、好きなことを仕事にしたほうがこれからは有利に生きられるとは書いたけれど、好きなことややりたいことがなければダメなんだとか、書いたつもりはない」という発言を引用しています。
 また、企業が求める人材として、すぐに通用する資格や語学力などを身につけた「即戦力」のある学生が求められている、という発言をする人に対して、「本当に働くということがわかってないんだなあ」という憤りを感じると述べています。そして、「大学の時に即席で身につけた知識なんて、あっという間に時代遅れになって役に立たなく」なる、「大学の使命は、ワケのわからん真実を、本気になって学生の一人ひとりに伝えようとすること」である、としています。
 著者は、日頃禁句にしている言葉として、「頑張る」、「忙しい」、「普通」という3つの言葉を挙げています。1つ目の「頑張る」という言葉に関しては、これでエネルギーが湧いてくるのは、「今やっていることを続けることが、最大唯一の目標としてはっきり定まっているとき」だという村上龍氏の言葉を引用しています。2つ目の「忙しい」は、「忙しさを言い訳にしていると、本当に心の余裕がなくなってくる」からだそうです。3つ目の「普通」という言葉を軽々しく言っていると、「自分を狭い型にはめ込んでしまったり、人を勝手なイメージに決め付けてしまう」ことがあるからだそうです。
 最近のビジネス書コーナーに躍っている、「自分らしく生きていくことが大事」や
「他の誰でもないオンリーワンの存在になることが大切」というメッセージに対しては、「個性的な生き方ができたり、専門的な能力が持てれば、それはいいだろうなあ」と思うとしながらも、個性や専門性などなくても十分に充実した人生を送ることができること、「本当の個性や専門性なんて、そんなに簡単に見つかったり、得られるものでは絶対にないんだよ」という意見を述べています。社会のなかの「個性的であれ」、「専門的な能力が必要」、「即戦力志向」という風潮に惑わされることがないように、という主張は、著者の他の著書でのメッセージに共通している大きなテーマです。
 この他本書では、年功賃金と成果主義賃金の話や、「働くことの誇り」について述べられています。なかでも、ある長距離トラックの運転手が、体調を万全にするため、「毎朝しっかり時間をかけてトイレで用を足してから出ないと車に乗らない」と決めているという話は、「働くことの誇り」を伝える良いエピソードだと思います。また、シンガポールの大型施設建設プロジェクトの責任者を任された人が、トラブルの連続に見舞われた中で、「これから先、どんなことが起こっても、とにかく開き直ることにしよう。でも、あきらめることだけはやめよう。」と決心し、成功に導いた、というエピソードも良い話です。
 本書は14歳に向けられて書かれたものではありますが、ぜひ、社会人や大学生、特に「個性的」「専門的な能力」「即戦力」という言葉に過剰に不安を持ってしまいがちな20代の社会人にこそ読んで欲しい1冊です。


■ 個人的な視点から

 著者は、学生やその両親が、安定を求めて公務員を志向することに対し、「安定を求めて公務員になると不幸になるよ」と語っています。「たくさんある職業の中で、これからいちばん変わっていくもの、変わらなければやっていけないもの」が公務員であるとした上で、「自分の所属する組織がまちがいなく変わっていく、それがどんな変化なのかわからないけど、とにかく不安定でもいいから、働きながら変化すること自体を楽しんでみたい、って心の底から思える人だけが公務員に向いてる」という著者の言葉は、これから就職する学生だけでなく、ぜひとも現職の公務員に聞いてもらいたい言葉だと思います。


■ どんな人にオススメ?

・「働くことの本当」を知りたい人(大人含む)。


■ 関連しそうな本

 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』 2005年07月20日
 玄田 有史 『ジョブ・クリエイション』 2005年11月09日
 玄田 有史, 中田 喜文 (編集) 『リストラと転職のメカニズム―労働移動の経済学』
 ダニエル ピンク (著), 池村 千秋 (翻訳), 玄田 有史 『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』 2005年02月02日
 玄田 有史, 曲沼 美恵 『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』
 本田 由紀 『若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて』 2006年03月02日


■ 百夜百マンガ

喰いタン【喰いタン 】

 「クイタン」と聞くと麻雀の方を思い出してしまうのですが、「大喰い探偵」の略でした。
 『ミスター味っ子』の読者も歳をとったということでしょうか。

« ファシリテーション入門 | トップページ | 情報編集力―ネット社会を生き抜くチカラ »

キャリアデザイン」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1244312/30598746

この記事へのトラックバック一覧です: 14歳からの仕事道:

« ファシリテーション入門 | トップページ | 情報編集力―ネット社会を生き抜くチカラ »

2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ