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2006年4月27日 (木)

リストラと転職のメカニズム―労働移動の経済学

■ 書籍情報

リストラと転職のメカニズム―労働移動の経済学   【リストラと転職のメカニズム―労働移動の経済学】

  玄田 有史, 中田 喜文 (編集)
  価格: ¥3,150 (税込)
  東洋経済新報社(2002/10)

 本書は、「クビ斬り」というイメージが先行している「リストラ」という言葉や、「流動化」という面だけが強調されている「転職」の実態を、経済学の立場から客観的に捉えることを目的とするものです。
 まず、「リストラ」という言葉とすぐに結びつく「中高年」の離転職に関して、これまで大企業の雇用調整の受け皿となってきた「出向」が飽和状態になったことや、ホワイトカラーがそれまで蓄えてきた能力の急激な陳腐化により、外部労働市場においても価値が低下したこと、中高年の離転職にとって重要な役割を果たしてきた前の会社による再就職の斡旋が抑制されてきたこと、本人の自助努力による能力開発だけでは再就職が極めて困難であること、等が述べられています。また、スムーズな転職に必要なものとして、人的ネットワークの重要性が指摘されています。
 また、中高年の再就職のためには、本人の転身マインドの高さが重要であることを述べた上で、
(1)本人の転身・やり直しの前向きな気持ちを高める事前の努力。
(2)正確情報などの私的情報が本人と受入企業との間で自然・自律的に交換される仕組みを設けることで逆淘汰の発生を防止すること。
が重要であることを指摘しています。
 この他、年功的処遇と雇用に関する分析では、年功的処遇が、怠業の防止、企業特殊熟練投資、技能継承の効率性などのメカニズムを通じて企業業績を高めることが、間接的に雇用を下支えする効果を有している、というロジックが示されています。また、若年失業の問題では、「たまたま不況期に学校を卒業した『世代』では、不満足な仕事に就く人が多くなる。そうなると、彼らは不満を抱えているがために、将来離職する可能性が高まり、離職率を引き上げる。逆に、好況期に学校を卒業した『世代』は、自分の満足のいく仕事に遭遇する確率が高まるので、将来転職のために仕事をやめる必要が少なくなる。」という「世代効果」が紹介されています。
 本書は、「中高年リストラ悲哀!」等のように、とかく極端なケースが紹介されることが多いリストラと転職の問題について、客観的に見ることができる視点とデータを提供してくれる一冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 よく報道されていた「リストラされて路頭に迷ったサラリーマン」の話を詳しく見てみると、住宅ローンや子供の学費が払えない、という話が多くあることに気づきます。本人にとっては切実な問題ではあると思うのですが、後から他人の目で見ると、将来の自分の収入を過大(一生給料は安定して上がり続ける)に見積もって、身の丈に合わない高い買い物をして借金をこしらえてしまった、と見えてしまいます。
 最近はリストラ中高年報道は飽きられたのか、同様な話は「成果主義批判」の報道の中に見られるようになりました。最近の例では、賃金が年功制から成果主義に変わった結果、住宅ローンと子供の学費が払えなくなった、という報道がされることが多いです。
 そもそも昔は、親元を離れて私立の大学に子供を通わせるなんてことは、相当の金持ちでないとできないことだったのですが、「大企業や役所に勤めていれば住宅ローンを払いながら子供を私学に通わせることができる」ことがいつから当たり前のことになったのでしょうか。パチンコや浪費で作った借金は「自業自得」とみなされ、身の丈に合わないローンを組んだ住宅や子供の学費のための借金が「悲劇」と見なされるのには釈然としないところがあります。


■ どんな人にオススメ?

・リストラと転職の実態に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 猪木 武徳, 大竹 文雄 『雇用政策の経済分析』 2006年03月01日
 樋口 美雄 『雇用と失業の経済学』
 八代 尚宏 『日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済』 2005年03月23日
 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳) 『人事と組織の経済学』 2005年04月05日
 樋口 美雄, 阿部 正浩, 児玉 俊洋 『労働市場設計の経済分析―マッチング機能の強化に向けて』 2006年04月14日
 梅森 浩一 『「クビ!」論。』 2005年06月02日


■ 百夜百マンガ

恐怖新聞【恐怖新聞 】

 「読むと100日寿命が縮む」という恐怖新聞。7回読むと2年縮むと換算すると、1年読んだら100年縮む計算になります。つまり、長期連載に向かないのでしょうか。
 問題は、日刊かどうか、というところですが、毎日窓ガラスやら網戸やらを壊されたらそちらの方が大変です。

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