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2006年4月 4日 (火)

フリーターという生き方

■ 書籍情報

フリーターという生き方   【フリーターという生き方】

  小杉 礼子
  価格: ¥2,100 (税込)
  勁草書房(2003/03)

 本書は、人によって様々な若者像がイメージされる「フリーター」の働き方と意識について、わかる限りの実態を伝えたい、という意図の下で書かれたものです。「フリーター」という言葉は、1980年代後半、リクルートの『フロム・エー』によって広められた言葉で、当初、「フリー・アルバイター」としていたものが略されて定着したものです。このときに念頭に置かれていたのは、「何らかの目標を実現するため、あるいは組織に縛られない生き方を望んで、あえて正社員ではなくアルバイトを選ぶ若者」でした。その後、「フリーター」という言葉の解釈は拡大し、正社員以外の働き方をしている人全体に使われるようになりましたが、本書では、「15~34歳で学生でも主婦でもない人のうち、パートタイマーやアルバイトという名称で雇用されているか、無業でそうした形態で就業したいもの」と定義しています。
 本書ではフリーターを、その動機から大きく3つに類型化しています。
(1)モラトリアム型:職業的選択を先延ばしをするために、フリーターになったタイプ。
(2)夢追い型:「やりたいこと」が見えていて、それが正社員として雇用される仕事ではないために、アルバイトを選んだタイプ。
(3)やむを得ず型:本人の希望とは裏腹に周囲の事情でフリーターになったタイプ。
 本書は、高校生の進路調査を元に、フリーターになる生徒のいくつかの特徴を指摘しています。それは、「ひとつの仕事に限らずいろいろ経験したい」、「自分に合わない仕事ならしたくない」、「有名になりたい」という気持ちが強い一方、「安定した職業生活」、「人より高い収入」は望んでいない点です。ここでは、フリーターになる理由として、「やりたいこと」という言葉が使われますが、その中身は、男子では、音楽系(バンド、ダンス)、芸能系(芸人、タレント)、スポーツ系(ボクサー、レーサー)等の華やかな人気職業を挙げるものが多い一方で、女子では、音楽系の他、習い事、特定の勉強、職人的修行など地道な選択が混じっているのが特徴です。
 フリーターの仕事の実態を見てみると、週労働日数は5日、労働時間は8時間が多く、平均月収は10~15万円、となっており、残業が恒常化している正社員や自営・家業従事の男性よりも幾分短くなっています。
 欧米との比較では、欧米では若年期のパートタイム労働や有期限雇用を問題視していない点が指摘され、その理由として、その内容とともにキャリア形成上の意味が異なることが指摘されています。つまり、ヨーロッパ諸国の大卒者の大半が専門技術職に移行していて、「大学で習得した知識・技能を仕事に発揮している」という意味で、「欧米の場合は大学教育と結びついた専門職に移行する過程での無業やパートタイム・有期限雇用」であるという点です。
 著者は、フリーターを選択した若者の多くが20代後半で正社員になっている点に関して、次の4つの点で問題があることを指摘しています。
(1)低技能度の労働であるため、この時期の職業能力開発が十分に行われていない可能性。
(2)キャリア探索期間としても有効でないこと。
(3)当初から正社員になったものに比べて、就業機会が相対的に条件が悪いこと。
(4)フリーターになる背景として学歴が低く、家計の厳しい家庭状況が考えられること。
 これらへの対策として、著者は、
(1)学校在学中のキャリア探索と職業能力獲得を支援する仕組み
(2)新規学卒就職・採用の慣行の枠内で移行できる者を支援する仕組み
(3)枠外で移行する者のキャリア探索と職業能力獲得、就業機会の獲得を支援する仕組み
の3つの仕組みが必要であると主張しています。
 本書は、とかく、本人のやる気や甘い家庭のせいにされがちなフリーターに対して、より実態を伝えるものになっていると思います。


■ 個人的な視点から

 本書の巻末には、補論として、雑誌記事を収録したようなものが収められていますが、そこにはフリーターだけでなく、モラトリアム的な進学や留学への戒めが述べられています。フリーターになる理由とを考え合わせると、家計に余裕がない「貧しい若者」がフリーターを選択し、家計に余裕のある「富める若者」が安易な文系の大学院や趣味系の専門学校、遊びに行くような留学を選択できるとも言えます。
 ここには、このような若者を採用する企業の側の責任もあります。履歴書上は、フリーターをしていた期間は不利になりがちで、大学院への進学はパッと見では立派に見えますが、昔と違い、こと文系に関しては、大学院は金さえあれば誰でも入れるものになっています。優秀な学生、バイタリティのある学生は、学部を出てすぐに就職しているのに対し、厳しい就職活動に自信を持てない学生やすぐに諦めてしまった学生、もっと遊んでいたいから親のすねをかじり続けたい学生、大学院進学を機に「学歴ロンダリング」を図ろうという学生が、文系修士をぶら下げて面接にやってきているのです。
 最近は企業の方でも、「文系修士は学部卒で就職していった学生の絞りかす」という厳しい態度をとっているようですが、こういう「就職はしたくないけどペーパーテストは得意」な学生は、年齢が不利にならない公務員試験の方に流れてきます。採用を担当している皆さんには、ぜひ、「2年間余計に勉強してきた以上、学部卒にはない(住民にとっての)プラスアルファが当然あるんだろうね?」、「あなたが勉強してきたことに学部卒よりも割り増しの給料を払うだけの価値があるの?」という高いハードルを課すことで、金があること以外はフリーターと変わらない安易なモラトリアム学生の増加に歯止めをかけていただきたいところです。


■ どんな人にオススメ?

・「フリーターでもいいや」と思っている高校生。
・企業や官公庁の採用担当者


■ 関連しそうな本

 小杉 礼子 (編集) 『フリーターとニート』
 本田 由紀 『若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて』 2006年03月02日
 苅谷 剛彦 『階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』 2006年02月14日
 苅谷 剛彦, 石田 浩, 菅山 真次 (編集) 『学校・職安と労働市場―戦後新規学卒市場の制度化過程』 2006年03月03日
 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』 2005年07月20日
 大久保 幸夫 『新卒無業。―なぜ、彼らは就職しないのか』


■ 百夜百マンガ

エコエコアザラク【エコエコアザラク 】

 作者は怖いストーリーを考えると怖い夢を見てしまうそうです。しかもフルカラーで。
 ちなみに主人公のモデルはあの国民的スカイラーク大歌手だそうです。

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