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2006年4月20日 (木)

国家公務員の昇進・キャリア形成

■ 書籍情報

国家公務員の昇進・キャリア形成   【国家公務員の昇進・キャリア形成】

  早川 征一郎
  価格: ¥4,935 (税込)
  日本評論社(1997/03)

 本書は、「国家公務員の昇進・キャリア形成は、どのように行われているか、これを一般公務員と高級公務員(高級官僚)の場合に分けて、主として、その違いを解明しようとする」ことを目的としたものです。
 第1章では、国家公務員の数や種類など、マクロ的な視点からの分析となっています。特徴としては、国家公務員における女性職員の比率は、1965年から1994年までの間に、19.3%から21.8%に増加したとはいえ、3分の1以上を女性が占める地方公務員に比べ、さらに諸外国と比べれば著しく少ないことが述べられています。特に幹部クラスでの女性比率が著しい理由としては、「戦前からの旧態依然たる勤務体制、仕事のやり方を今に至るも変えることができない」点にあるとし、特に「恒常的な長時間勤務体制が、女性の進出を阻むもっとも具体的な事由」であることを指摘しています。
 第2章では、一般公務員の昇進システムに関して、人事院規則が本来予定していた職階制の実施が、1952年に交付されたにもかかわらず、職階制を適用する「指定日」までの経過的な措置が現在まで続いている、半世紀近い「暫定的性格」を現在の任用制度が持っていることを指摘しています。
 また、査定がほとんど機能しない公務員に昇進のばらつきが生じる理由として、
(1)省庁の組織機関構成の違い(地方出先機関の多少)
(2)各省庁の性別構成
(3)各省庁の昇格基準とその活用の違い
(4)級別定数の配分の不均衡
(5)勤務評定、心象、上司の推薦の有無などパーソナルな要素
(6)本人自身の個別事情(配置転換を希望しないなど)
の6点を挙げています。
 さらに、高級公務員の「天下り」とは、一般公務員の早期退職と再就職は本質的な意味が異なるとしています。「天下り」が、あくまで見返り(利益)を担保しているのに対し、一般公務員の再就職は、辞めた後での生活保障的意味合いを持つとしています。このノンキャリア組の再就職斡旋については、省庁別にかなりの違いがあり、ノンキャリア組への依存度が絶大だといわれている大蔵省本省の場合は、「長年の労苦に報いるためにも、再就職の斡旋をかなり面倒よく世話しているケースも多いようである」としています。
 第3章では、キャリア組の昇進システムに関して、
(1)まずスタート(公務員試験種類)=「入口」が、あくまで重視されるべき
(2)キャリア組の全てが「幹部要員」、「高級官僚」に到達するとは限らない
(3)ただし、そこまで到達するのは例外なくキャリア組からである
(4)その意味で、キャリア組と高級公務員はイコールではなく相対的に区別して考えるべき
としています。
 また、高級公務員の昇進に関して、1950年に一度だけ実施された「S-1試験」についても言及されています。それによれば、「試験の対象となった官職は、各省庁の事務次官、長官、局長、局次長、部長、課長等、計2,621官職であった。この試験の合格者は述べ8,489名で、うち民間人が247名であった。」となっています。
 さらに、キャリア組の昇進の早さの理由として、「『必要経験年数または必要在級年数』について、『勤務成績が特に良好である職員』であるとして、それぞれの年数を8割計算で昇格させる」という「8割昇格」が行われていることを述べています。
 第4章では、高級公務員の昇進の実態の分析を行っています。大蔵省、通産省、建設省などの歴代事務次官のリストを見ると、大蔵と通産では最終学歴として東大法学部の圧倒的な強さが目につきます。その中で、昭和22年に大蔵事務次官となった池田勇人の京大法卒が目立ちますが、これに関しては、それまで冷や飯を食わされてきた東大以外の学閥が、上のポストに公職追放で空きができたことで、主税局長という傍系から事務次官に就任できたことなどが述べられています。また、建設省では、初代事務次官に技術系の技官から就任していますが、「戦前の内務省土木局では技術畑出身者は絶対に本省の課長にはなれなかった」のに対し、戦後の官庁民主化によって、「行政には技術官もタッチさせろ」という「水平運動」の成果であったことが紹介されています。
 また、大蔵官僚の閨閥づくりの世話役を担っているのが、「天下り」人事を担当している大臣官房の秘書課長の役目だと言われていることも紹介し、「秘書課には、大蔵エリートに嫁がせたいと思っている財閥の娘の見合い写真が積んである」というエピソードを、かなり昔の話としながらも紹介しています。紹介されている「大蔵官僚閨閥リスト」を見ると、1996年頃までのこのリストの登場人物の中に、10年後の政治の中核となっている人たちがたくさん登場していることがわかります。
 第5章では、「天下り」の問題に関して、『人事小六法』平成9年版の中に、1975年1月の『人事院月報』に掲載された「営利企業への就職の制限について」と題した人事院職員局職員課の論文が【参考】として、異例な扱いで収録されていることが紹介されています。また、「天下り」の法制度的な面としては、
(1)就職に制限の付くのは、営利を目的とした私企業に限られる。
(2)離職後2年以上であれば、たとえ、営利を目的とした私企業であっても、在職した省庁と「密接な関係」にあるかどうかを問わず、なんら就職の上での制約を受けない。
(3)営利を目的とした私企業であっても、在職した省庁と「密接な関係」にない営利企業への就職は、制約の対象とはならない。
(4)「事務次官、局長といった上位の官職」については、「よりきびしいチェックを受ける」。
(5)人事院の審査は、離職前5年間に遡り、さらに将来を考えて行われる。
の5つの点に要約されるとしています。
 さらに、「天下り」の類型を、
・第1類型:2年のインターバルを置いて私企業に天下るケース。
・第2類型:いったん「密接な関係」にない営利企業に就職後、「本命」に就職するケース。
・第3類型:特殊法人や公益法人を「迂回」して民間企業に天下るケース。
・第4類型:特殊法人や外郭団体に天下り、それで終わるケース。
・第5類型:民間企業や特殊法人、外郭団体を「わたり鳥」、「たらい回し」されるケース。
・第6類型:弁護士などの自由業、その他のケース。
の6つを紹介しています。このうち、公益法人は、人事院の「天下り」規制の対象外であることを利用して、特定官庁の「天下り」先と化したり、特定業界の互助団体化していることが指摘されています。
 著者は、「天下り」問題に関して、理念的には否定されてしかるべき、としながらも、「もっとも肝要なことは、公務員は公務員としての「職業上の生涯」を全うできるように保障して、自律的な世界を形成すること、さらに別に、産業界は産業界として、その人材を一部の特権的な公務員に依存し、そこから補充するのではなく、産業界としての自律的世界を形成すること」であるとしています。
 さらに、「天下り」の歴史的経緯として、戦時統制経済期に、国策としての経済統制機関、金融統制機関に、「天下り」というよりも、「国策に沿った官界からの人材派遣」として送り込まれたことがあることを指摘しています。
 本書は、公務員の人事制度の実態についてのまとまった文献の少ない中で、十分な読み応えのある文献なのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書は、何やらプレミアがついているようで、Amazonのマーケットプレイスでは3~4万円以上の値が付いています。おそらく個人ではなく、研究者向けの値付けなのだと思いますが、ちょっと手が出ない値段です。


■ どんな人にオススメ?

・国家公務員の仕事人生に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 川手 摂 『戦後日本の公務員制度史 「キャリア」システムの成立と展開』 2005年12月29日
 稲継 裕昭 『人事・給与と地方自治』 2005年12月09日
 稲継 裕昭 『日本の官僚人事システム』 2005年02月10日
 稲継 裕昭 『公務員給与序説―給与体系の歴史的変遷』
 西村 健 『霞が関残酷物語―さまよえる官僚たち』
 新しい霞ヶ関を創る若手の会 (編集) 『霞ヶ関構造改革・プロジェクトK』 2005年12月22日


■ 百夜百マンガ

mahjongまんが大王【mahjongまんが大王 】

 麻雀マンガの凄いところは、麻雀が出てくるという基本ルールさえ守っていれば、どんな表現やストーリーも認められてしまうところです。
 ロマンポルノやビニ本マンガから新しい才能が発掘されたように、麻雀マンガ出身の漫画家も多いです。

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