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2006年5月22日 (月)

変わる働き方とキャリア・デザイン

■ 書籍情報

変わる働き方とキャリア・デザイン   【変わる働き方とキャリア・デザイン】

  佐藤 博樹
  価格: ¥2730 (税込)
  勁草書房(2004/02)

 本書は、契約社員やパートタイム社員、派遣社員など、働き方が多様になり、その人数も増加する中で、「典型労働と非典型労働に従事する人々を対象にして就業間、キャリア志向、就業実態、就業満足度、生活設計などを調査する」ことにより、働き方の多様化を、(1)働く人々のみに負担を強いているという否定的な見方、(2)さまざまなライフスタイルや就業ニーズに対応した多様な働き方の出現という肯定的な見方、の2つの見方から実態に即して検討しようというものです。
 第1章では、働いている人自身による従事している働き方の評価を分析し、
(1)生活価値観と就業形態選択の間に一定の対応関係が見られる。
(2)働いている人々の多くは、現在の就業形態を他の形態よりも望ましいものと考えている。
(3)登録型の派遣社員の中で、民間企業の正社員や公務員を希望している者は、現在の就業形態では充足が難しい事柄を働き方に求めている。
(4)仕事や勤務先に関するパート・アルバイトの総合満足度は、民間企業の正社員の水準を上回る。
ことなどが指摘されています。
 また、第2章では、「ワークスタイルの多様化と生活設計の変化に関する調査」の結果から、
・派遣労働者の仕事への満足度は正社員と比較すれば低くないこと。
・現在正社員である人のうちの6割は他の働き方を希望していること。
等を指摘しています。
 第3章では、SOHOというスタイルの台頭の背景として、「経済構造の変化や情報化の所産であるだけでなく、人生を『企て(プロジェクト)』の対象とみなし、自分の可能性に挑戦する人々による『生活革命』の帰結でもある」と指摘しています。
 第4章では、大学卒・大学院卒者を対象に、「定着者像」と「転職者像」とを対比しています。
・価値観:家庭志向・安定志向⇔仕事志向・リスク志向
・仕事の状況:収入多い・大企業・60歳まで働きたい⇔収入少ない・中小企業・65歳まで働きたい
・家庭の状況:妻は専業主婦・社宅か持家・消費重視⇔共働き・賃貸住宅・貯蓄重視
 また、幸福な転職や独立志向の強さにつながるものとして、「職場以外に信頼できる友人や知人のいること」を挙げ、その理由を何点か指摘しています。
 第5章では、女性の再就職に関して、「再就職時の選択が、その後10年以上も変えることができないような硬直的な雇用制度化では、より安定した雇用・収入や企業福利、あるいは能力発揮を望む女性は、出産によって一時的に退職を選択しても、無業期間を短くするために、子どもの数を抑制する可能性がある」ことが指摘されています。
 本書は、働き方の多様化と働く人自身の満足という問題に関心がある人にお奨めの一冊です。


■ 個人的な視点から

 第7章では、自己啓発行動と今後の転職・独立志向との関連性に正の関係ががあることが示されています。特に、自己啓発に年間6万円以上を投資している層では、自己啓発未経験者に比べて転職・独立志向が相当高くなります。
 近年、社会人を対象とする大学院が増加し、働きながら大学院に通う人も増えています。企業や役所では、これを奨励するためにお金を出したり、勤務時間を短くするなどの支援策を導入しているところもありますが、気をつけないと、せっかくお金をかけて育てた社員に逃げられてしまう可能性が高いことが分かります。キャリア官僚が公費でアメリカに留学し、MBAを取った直後に外資系金融企業に転職する例などが非難されてきましたが、国内の夜間大学院でも同じような傾向があるのかもしれません。例えば、夜間開講のロースクールもありますが、行くならば職場に黙って行ったほうがいいかもしれません。そもそもロースクールに行く人は転職が前提なのかもしれませんが。


■ どんな人にオススメ?

・働き方と満足度の関係に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 佐藤 博樹, 佐藤 厚 (編集) 『仕事の社会学―変貌する働き方』 2005年12月01日
 ロザベス・モス カンター (著), 高井 葉子 (翻訳) 『企業のなかの男と女―女性が増えれば職場が変わる』 2005年10月11日
 赤岡 功, 長坂 寛, 渡辺 峻, 筒井 清子, 山岡 煕子 『男女共同参画と女性労働―新しい働き方の実現をめざして』 2005年09月08日
 佐野 陽子, 志野 澄人, 嶋根 政充 (編著) 『ジェンダー・マネジメント―21世紀型男女共創企業に向けて』 2005年12月06日
 玄田 有史, 中田 喜文 (編集) 『リストラと転職のメカニズム―労働移動の経済学』 2006年04月27日
 樋口 美雄, 阿部 正浩, 児玉 俊洋 『労働市場設計の経済分析―マッチング機能の強化に向けて』 2006年04月14日


■ 百夜百マンガ

電脳炎【電脳炎 】

 どこの職場にもいる(かも知れない)パソコンが苦手な課長を笑っているあなたは、もしかしたら「おしつけくん」になっているかもしれません。
 パソコンが絡むことで露わになってしまう、人の「変さ」を描いた名作です。

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