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2006年5月17日 (水)

能力主義と企業社会

■ 書籍情報

能力主義と企業社会   【能力主義と企業社会】

  熊沢 誠
  価格: ¥819 (税込)
  岩波書店(1997/02)

 本書は、1990年代後半の加速度的な人事・労務管理の変化の中で、
(1)ひろく終身雇用・年功序列とよばれる日本の人事・労務システムは、もともとそれほど能力主義に背反するものだったのか。
(2)日本企業の能力主義管理は本来どのような特徴を帯びていたのか。
(3)日本企業はなぜいま、その特徴ある能力主義を強化し改変しようとしているのか。
などの問いについて論じているものです。
 能力評価と賃金システムは、
(1)賃金を潜在能力と顕在能力のどちらに対して支払うのか。
(2)労働者個人に対する評価か、集団的属性(職種・勤続・年齢等)に対する評価か。
という2つの軸によって、4つにタイプ分けすることができます。
 本書は、日本の能力主義管理を歴史的に見ていくと、第1期(60年代半ばから70年代半ば)、第2期(70年代半ばから1992年頃)、第3期(それ以降)の3つの時期に分けることができることが述べられています。
 第1期の能力主義管理は、戦後初期に生み出された「年の功」賃金が持つ、賃金コストの高まりと労働者を働かせる誘因不足という2つの問題を解決するために、人事考課付きの定期昇給制を経て、職能資格給が導入されます。これに、「新社員制度」(職能資格をグレードをつけて区分し、それぞれの職務遂行能力を定義)、人事考課(査定)、小集団活動の展開の3つの制度を合わせた4点セットがこの時期の能力主義管理の特徴となっています。
 第2期には、人減らし、ME化、JIT方式との関連から、フレキシブルな働き方の要請が高度になり、労働者の職務割当ての内容と範囲の転変が強制されたことが述べられています。この時期には、正社員たる者は、「その生活の全側面を『仕事第一』『会社大事』で律する生きざまを求められるようになった」ことが述べられています。
 本書は、この時期までの日本の能力主義管理の特徴を、
(1)潜在能力の重視、その主内容をなす高度なフレキシビリティへの適応力と、その自然な惰力としての<生活態度としての能力>の要請。
(2)その要請を具体化するといくつかのレベル設定と、そのレベルを満たす個人のがんばりを年齢・勤続階級に仕切って評価する「年と効」システム。
(3)その帰結としての競争志向の大衆性と長期継続性。
の3点にまとめています。
 第3期には、「一人ひとりの能力や貢献の程度をはかる基準の曖昧さを何とか克服したい」という経営者の意向から、ホワイトカラーの目標管理制度(MBO)が本格的に導入されます。従業員の処遇の基準は、潜在能力の評価から顕在能力の評価にシフトし、「能力」より「業績」というキーワードが多用されることが述べられています。
 この他本書では、日本型能力主義の浸透によって、
(1)リストラと呼ばれる人べらしが日常化する。
(2)配点が広域化し、出向・転籍が頻繁になる。
(3)作業ノルマや労働密度が増大する。「働きすぎ」になる。
(4)賃金体系の変更によって個人間賃金格差が拡大する。
(5)企業活動の中核を支える周辺の作業の担い手として、非正社員を活用する。
の5つの負担が労働者によって引き受けなければならなくなることが述べられています。
 最後に著者は、「働き続けてゆける職場」に必要なものとして、「ゆとり、なかま、日常の仕事に関する労働者の一定の決定権」の3要素を提起しています。
 本書は、約10年前に書かれたものですが、その後の10年間に日本の職場で起こったことを説明することができる一冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書に紹介されているエピソードの中に、日立製作所水戸工場で、「事務部門もコスト意識をもたないとこの不況は乗り切れない」という理由で、工場事務部の椅子が撤去され、立ったままで事務作業ができるように事務机に下駄を履かせて高くした、という記事が紹介されています。
 「台所の主婦のように」効率的に働くようになることが期待されるということですが、考えてみれば工場では作業員が一日中立ったままで作業しているのは当たり前のことなので、発想としては自然に出てきたのかもしれません。
 とは言え、電器屋で経験するように、立ったままPCのキーボードを打つのは結構肩が凝りますので、せめてちょこっと腰掛けられるくらいの椅子は欲しいものです。


■ どんな人にオススメ?

・日本の能力主義管理の全容をつかみたい人。


■ 関連しそうな本

 小池 和男 『日本の雇用システム―その普遍性と強み』 2005年04月06日
 小池 和男, 猪木 武徳 (編著) 『ホワイトカラーの人材形成―日米英独の比較』 2005年11月04日
 小池 和男 『仕事の経済学』
 城 繁幸 『日本型「成果主義」の可能性』 2005年12月08日
 高橋 伸夫 『虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ』 2005年3月30日
 高橋 伸夫 『〈育てる経営〉の戦略―ポスト成果主義への道』 2005年06月16日


■ 百夜百マンガ

天然少女萬【天然少女萬 】

 なぜか格闘系美少女ものというジャンルをつくってしまった作品。
 映画かVシネマにもなったと思います。

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