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2006年6月16日 (金)

コンピテンシー面接マニュアル

■ 書籍情報

コンピテンシー面接マニュアル   【コンピテンシー面接マニュアル】

  川上 真史, 齋藤 亮三
  価格: ¥2415 (税込)
  弘文堂(2005/12)

 本書は、企業にとって最も重要な資産である人材を獲得する上で、これまで人事の若手スタッフに適当に任せられてきた人材採用、特に面接を、新規の設備投資やIT投資を行う場合と同じような重要な意思決定として位置づけ、そのための手法としてのコンピテンシー面接の具体的な方法を、ふんだんな事例とともに紹介しているものです。
 「コンピテンシー」とは、英和辞典では「能力」と訳される言葉ですが、あえてカタカナで表記する理由として、「能力を見る観点が、従来の能力観とは異な」り、「成果につながるかどうか」という観点から能力を見ることを意味していると述べられています。
 コンピテンシーは、元々は米国の政府機関における人材採用手法として開発されたもので、1990年代後半からは、日本でもコンピテンシー面接が注目を集め、2000年からは、東京海上日動火災保険をはじめとする多くの企業に採用されたことが述べられています。その理由としては、多くの日本企業の人事担当者が、「頭もよい、性格もよい人材を採用しているはずなのに、配属した部署から、人事は現場で役に立つ人材を採用していないと苦情が出て困っている」という悩みを抱えていたからです。
 従来型の面接とコンピテンシー面接の大きな違いは、「優秀かどうか」ではなく「成果を生み出す行動特性を持っているか」、「志望動機、将来の希望などの考え」ではなく「過去の行動事実」を見るという点で、客観的な評価基準を設け、面接手順が構造化・標準化されていること、そしてそのために、一夜漬けの面接対策が効き目を持たないことであると述べられています。
 この面接方法は、企業側だけではなく、採用に応募する側にとってもメリットのあるWin=Winの関係づくりにも効果を持ちます。それは、「とことん話を聞いてくれ、自分をよく理解してくれた上で客観的事実に基づき、公正に評価してくれたという満足感」を持ってもらえるからです。なぜなら、成果につながった過去の体験(行動事実)をたくさん聞き出してくれるコンピテンシー面接は、「自分はこんなふうに考え、行動し、こんな成果をあげてきたという手柄話をするようなもの」であるからです。逆に考えれば、一夜漬けで面接対策をしてきた応募者(採用されない応募者)にとっては、次々と自分の話の底の浅さを白状しなければならず、辛く苦しい面接になるのではないかと思いますが。
 本書の後半には、面接者と応募者との具体的な面接シーンを想定した事例が多数収められており、人事担当者にとっては、ウンウンとうなづけるものが多いのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 過去の面接対策の一つとして、「学生時代のユニークな体験を語る」というものがあります。本書では「自転車で日本中を旅行した」、「数十種類のアルバイトをこなした」などの面接官受けの良い「ユニークな体験」の例が挙げられています。
 著者は、そういう学生に対して面接官が、「どことなく見所がある」「個性的な」人材であるという気になりやすい、という落とし穴を指摘しています。「『他人と違う経験をした』というだけでは、『それがどうした』ということでしかありません」というのは手痛い指摘です。
 これは、数々の面接マニュアルによって「武装」した学生によって、面接官受けの良い「ユニークな体験」が乱発されてきたことへの反省でもあります。就職に役に立つから、という理由で「ユニークな体験」をしようという考え方は、揃いも揃って仲間内で同じような「個性的な服装」をしている中高生と全く変わらないような気がします。


■ どんな人にオススメ?

・面接の質を上げたい人事担当者


■ 関連しそうな本

 原井 新介 『キャリア・コンピテンシー・マネジメント―どうすれば人材のミスマッチは防げるのか』
 金井 寿宏, 守島 基博(編著), 原井 新介, 須東 朋広, 出馬 幹也(著) 
『CHO―最高人事責任者が会社を変える』 2005年08月23日
 キャメルヤマモト 『稼ぐ人、安い人、余る人―仕事で幸せになる』 2005年05月24日
 キャメルヤマモト 『コツコツ働いても年収300万、好きな事だけして年収1000万―シリコンバレーで学んだプロの仕事術』
 北村 士朗, 中原 淳 (編さん), 荒木 淳子, 松田 岳士, 浦嶋 憲明, 小松 秀圀 
『ここからはじまる人材育成―ワークプレイスラーニング・デザイン入門』 2005年11月16日
 加藤 昌男 『超・成果主義―個力を引き出し強い組織をつくる』 2006年02月06日


■ 百夜百マンガ

包丁人味平【包丁人味平 】

 後に味っ子などに引き継がれる「荒唐無稽な料理対決」の原型を作った作品です。
 今読んでもその無茶苦茶さには驚けると思います。

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