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2006年6月26日 (月)

働く過剰 大人のための若者読本

■ 書籍情報

働く過剰 大人のための若者読本   【働く過剰 大人のための若者読本】

  玄田 有史
  価格: ¥2415 (税込)
  NTT出版(2005/10/25)

 本書は、『仕事のなかの曖昧な不安』や『ニート』など若者と仕事の問題に関する第一人者である著者が、「私なりの現代若者仕事論の集大成」と位置づけ、「大人たちが、若者たちを、理解不能な存在、弱い存在、ダメな存在と排除することなく、若者の就業と自立のためにすべきことは何なのか」をデータによって示し、若手社員の育成に取り組んでいる企業や、若者の支援活動をしている人たちからのお話を紹介しているものです。
 著者はまず、「即戦力志向」という言葉が、「育成軽視の別表現」に過ぎない幻想であることを指摘しています。著者はあとがきでも、「まともな企業は大学を卒業したばかりの学生に即戦力など、まったく期待していない。」と断言し、「即戦力」という言葉を口にしだした企業には衰退が待っていること、「『即戦力がいる、けれどもお金は払えない』という企業に良い人材が集まるわけがない」と述べています。
 また、「七・五・三」転職と言われ、若者の転職の増加が指摘される中で、「勤続年数(同一企業へ継続就業している年数)」は1994年に比べ2003年は長くなっていて、正社員の若者の会社にとどまる傾向は強まっていることを指摘するとともに、リストラによる人員整理で中高年の離職増加が言われてきたが、「中高年のすべてが離職をしているわけではなく、再就職のむずかしさを知る大部分の中高年正社員は、むしろなんとかして会社にとどまり続けようとしてきた」のであり、中高年の勤続年数も長くなっていることが指摘されています。
 本書のタイトルでもある「過剰」が最も現している問題は、正社員の長時間労働の増加です。(主に正社員のうち)週60時間以上働く人の割合が、男性全体では1990年代までには2割強であったものが2002年には27.6%にまで増加していること、中でも30代の男性の3人に1人は60時間以上働いていることが指摘されています。この60時間以上の労働時間とは、週休2日の会社の場合、「平日朝9時に出勤して、1時間の休憩を挟んで毎晩10時以降まで仕事をしている」という状態を指します。特に、若い世代に特有な状況として、「大量の人員削減や採用抑制のため、残された社員の業務量は圧倒的に増えている」ことが指摘され、下記のような「悪循環」を生んでいることが述べられています。
 
<悪循環>
 業績悪化  →   採用抑制・早期退職
   ↑              ↓
 雑な仕事・暗い職場  ←  業務負担増
 
 また、長時間労働と家族の関係に関しては、週50時間以上労働している男性ホワイトカラーの既婚率が高いこと、また、既婚の長時間労働者の配偶者が無業である割合が高いことから、「夫である男性の長時間労働を、多くの妻が専業主婦化することで支えている」実態を指摘しています。さらに、サービス残業を多くしているホワイトカラーが、ボーナスなどを通じて平均的には高い年収を獲得しているという調査を紹介する一方で、長時間労働者の仕事への満足度の低さから、「長時間働いているのは好きで働いているだけだ」という見方に疑問を呈しています。
 この長時間労働が生まれた原因としては、人件費の削減と併せた事業の再編や再構築という企業の選択によって、30代男性ホワイトカラーの多くに長時間労働というしわ寄せがもたらされていることを指摘しています。
 この他本書では、ニート、フリーターの問題に関して、21世紀になってニートが増えた直接的なきっかけを、「若年にとっての就業機会が社会の中から奪われてきたこと」とした上で、「学卒・独身・無職(NEETM)」の増加の問題や、「家事手伝い」をニートから排除することの危険性、家計の豊かさがニートを生んでいるという状況がすでに過去のものであること等について述べてられています。
 テレビや新聞では断片的にしか伝えられていない、現代の若者像を、データをベースに分かりやすくまとめている一冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書で週に60時間働く生活を、朝9時に出勤して毎晩夜10時以降まで仕事をしている、と解説していますが、首都圏の場合は、この上さらに長い通勤時間がプラスされます。ドア・ツー・ドアで1時間30分だとすると、朝7時30分に家を出て、夜は11時30に帰宅することになります。このパターンだと、家にいる時間は正味8時間です。
 出かけるとき、子供から「パパまたあした」と言われてしまう生活が、働いている人自身と、将来の働き手である子供の両方を蝕んでいることを本書は教えてくれます。


■ どんな人にオススメ?

・長時間労働とニートという極端な姿を持つ若者像の全容を押さえておきたい人。


■ 関連しそうな本

 玄田 有史 『ジョブ・クリエイション』 2005年11月9日
 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在 中公文庫』 2005年07月20日
 玄田 有史, 曲沼 美恵 『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』
 玄田 有史, 中田 喜文 (編集) 『リストラと転職のメカニズム―労働移動の経済学』 2006年04月27日
 玄田 有史 『14歳からの仕事道』 2006年04月25日
 本田 由紀 『若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて』 2006年03月02日


■ 百夜百マンガ

ドーベルマン刑事(デカ)【ドーベルマン刑事(デカ) 】

 大人になった今では『ダーティ・ハリー』のパクリだとわかるのですが、当時は刑事は44マグナムを撃ちまくるものだと思ってました。コロコロで『ザ・ゴリラ』とか読んでましたし。
 なお、44マグナムと言えばヘビメタのバンドを連想する人は相当年行ってます。

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