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2006年9月20日 (水)

できれば幸せに働きたい―働く女(ひと)の身の振り方

■ 書籍情報

できれば幸せに働きたい―働く女(ひと)の身の振り方   【できれば幸せに働きたい―働く女(ひと)の身の振り方】

  日本経済新聞生活情報部
  価格: ¥1470 (税込)
  日本経済新聞社(2003/08)

 本書は、日経の生活面で2002年9月から毎週月曜日に連載された「仕事と生きる」を元に、「働く女性の現状はどうなっているのか。彼女たちは、どんな課題を抱え、それにどう立ち向かおうとしているのか」をまとめたものです。
 第1章「働き続けては見たけれど」では、「能力主義で男女差がなく、高収入でおしゃれ」な、女性の理想の職場とされてきた外資系企業で、日本企業以上に大胆な人員削減にほんろうされる女性が増え、「能力主義ではなく、能力"アピール"主義」という外資企業の実態に対する幻滅も紹介されています。
 また、女性技術者の前に立ちはだかる壁として、中間管理職が女性を使いこなせず、「『君はいいから』と実務に携われないこともしばしば。これではキャリアが身につかない」と長期的なキャリア形成が困難なこと、昇進・昇格面で男性が実力以上の評価を与えられることもあることなどが挙げられています。
 第2章「"お手本"がいないとまどい」では、女性社員の専門職志向に関して、「女性の多くはスペシャリスト(専門職)と、庶務など一定の職場での習熟が重視されるエキスパート(専任職)を今度している」という人事関係者の批判を紹介する一方、女性を専門職志向に向けた一因として、男女雇用機会均等法施行後、多くの企業が社歴の浅い女性を専門職能が重視される中枢部門(マーケティング、企画、人事など)に配置し、営業などの現場から離したことが問題だとする指摘を挙げています。そして、現在の女性のキャリアモデルが、「仕事に全身全霊を傾ける男性型のキャリア志向のものに限られ、しかも男女の待遇格差も残る不完全なものでしかない」という指摘を紹介しています。
 第3章「"ワーキングマザー"の現実」では、育児休業明けの女性社員が直面する企業からの冷遇に、「出産前に高い評価を受けていた女性ほど悩みは大きく、落差に打ちのめされる」ことを紹介しています。また、仕事と育児の間で板ばさみになる悲哀を、なかなかご飯を食べない4歳の長女に「まま忙しいんだから、早く食べてよっ」と叱った母親に対して娘が発した「ママ、怖い」という言葉で表しています。共働き夫婦の家事時間に関しては、2001年の社会生活基本調査の結果として、妻の4時間8分に対し夫は28分にしか過ぎず、大きな時間差があることが示されています。
 転勤もワーキングマザーの前に立ちふさがる大きな壁です。「辞令一つで、全国どこにでも赴任せよ、というのは日本の企業社会だけの慣行」であるという指摘とともに、転勤を回避するため、転勤のない職種へ転換し昇格を諦めた例や、夫の転勤を機に退職する人も少なくないことが紹介されています。
 第4章「犠牲になる私生活」では、苛酷な労働環境に「このままでは体を壊してしまう」という不安を抱えて働く女性が増えていることが述べられています。一つには、「働く女性にとって、過労死が身近な問題になりつつある」ことで、働く女性は平均年齢が低いため脳・心臓疾患は少ない代わりに、業務上のストレスに起因する精神疾患の相談が多いことが紹介されています。もう一つには、仕事のストレスが引き金になったアルコール依存症が増加していることで、「女性は男性よりアルコールへの耐性が低く、少量の飲酒でも依存状態に」なりやすく、「男性中心の企業や組織で、それまで体験しなかった挫折を味わい、酒に逃避するケースが増えている」ことが指摘されています。また、働く女性の勤続期間の長期化や、経済的に自立したことや、多忙な自分を支えられる役割を夫に期待するなど結婚観が多様化したことで、男性側とのミスマッチが生じ、結婚相手が見つからないことが述べられ、総合職の中には、仕事と転勤に追われて結婚相手を見つける時間がないがないというケースも紹介されています。さらに、転勤にともなうストレスに関して、「男性なら夜のつきあいや休日のゴルフ、釣りなどを転勤先で楽しむことが多いが、女性は一般的にストレスを発散できる場が限られる」ことが指摘されています。
 第5章「"不安定な立場"の悩み」では、これまで「仕事と家庭を両立しやすい」と考えられてきたパートタイマーや派遣社員が、不況による労働条件の悪化で残業が増え、残業もいとわず臨機応変に働ける人が求められていることが紹介され、「派遣は今や両立が最も難しい働き方」になっていることが指摘されています。また、全国の地方自治体で約30万人が働き、そのほとんどが女性といわれている非常勤・臨時職員に関して、正規職員と賃金や有給休暇制度などの待遇格差が大きく、なかでも雇用期間に制限があり、一年や半年といった雇用契約の更新を繰り返しながら働き続けている点が指摘されています。
 第6章「"壁"は自分で乗り越える」では、「11人の部下を持ち、ほぼ月1回のペースで海外にも出張する管理職」と2人の子どもの母親を、多ければ週4回の夜間ベビーシッターを頼み、自宅からの国際電話やメールで仕事をこなしながら両立しているケースを紹介しています。「管理職は自ら動くより人や仕事のやりくりを手配するコーディネーター的な仕事が多い」ため、「子育てとの時間配分がしやすい面も」あるという言葉が紹介されています。また、正社員で勤めながら、小学6年から2歳児までの4男2女の6人を育てる子だくさんママも紹介されています。夫婦2人だけの育児は2人目は大変だったものの、「夫も料理などの家事がどんどんうまくなったうえ、長男が二男を見てくれたから、赤ちゃん一人の世話だけでよかった。2人目を乗り切れば、何人でも大丈夫」と、3人目からは育児が楽になったことが紹介されています。子だくさんのワーキングマザーは、「経済的にも仕事を続けていないと、多くの子どもを育てるのは難しい」反面、夫婦2人分の収入のある共働きの世帯の方が、経済的にはたくさんの子どもを持つことが可能な環境にあることが述べられています。
 第7章「突破口を求めて」では、女性向けの社内組織・社内活動など、企業側が女性を積極的に活用するための支援策を打ち出していること、社外のネットワークで交換した知識や人脈を仕事やキャリア形成に活かし、仕事の悩みも相談しあっていること、社内ベンチャーや公募に挑戦する女性が増えていること、「性別に関する先入観が評価に入る余地がなく、職務や目標が明確なので働きがいを感じる」ことができる成果主義が女性に歓迎されている反面、「家庭責任の重さが違うまま、同一尺度で男女の働き方を比べれば女性が不利になる」ことなどが紹介されています。
 本書は、元が新聞の連載であったため、一つ一つのトピックが短く読みやすいので、仕事と家庭に追われて本を読むまとまった時間をとることが難しい人にもお奨めできる一冊です。


■ 個人的な視点から

 女性はアルコール依存症になるリスクが高いそうです。
 本書では、アルコール治療専門病棟を備える国立療養所久里浜病院の樋口医師の言葉として、
・女性は一般的に男性に比べて小柄で、肝臓も小さいためアルコール分解能力が低い。
・アルコールを吸収しにくい体脂肪が多いこともあり、一般に男性が20年程度で依存症になるのに比べ、女性はその半分程度の期間で依存状態になる。
ことが紹介され、女性は比較的飲酒期間が短くても、男性以上に危険性が高いと述べられています。
 アル中と言えば、吾妻ひでおの『失踪日記』にも三鷹のアルコール依存症治療病棟の逸話が紹介されていますが、その中で、アルコール依存症は、
「不治の病気です」
「一生治りません」
「ぬか漬けのきゅうりが生のきゅうりに戻れないのと同じです」
という恐ろしいセリフが出てきます。


■ どんな人にオススメ?

・幸せに働きたい人。


■ 関連しそうな本

 ロザベス・モス カンター (著), 高井 葉子 (翻訳) 『企業のなかの男と女―女性が増えれば職場が変わる』 2005年10月11日
 佐野 陽子, 志野 澄人, 嶋根 政充 (編著) 『ジェンダー・マネジメント―21世紀型男女共創企業に向けて』 2005年12月06日
 樋口 美雄, 太田 清, 家計経済研究所 (編集) 『女性たちの平成不況―デフレで働き方・暮らしはどう変わったか』 2006年03月30日
 熊沢 誠 『女性労働と企業社会』 2006年07月25日
 赤岡 功, 長坂 寛, 渡辺 峻, 筒井 清子, 山岡 煕子 『男女共同参画と女性労働―新しい働き方の実現をめざして』 2005年09月08日
 白波瀬 佐和子 『少子高齢社会のみえない格差―ジェンダー・世代・階層のゆくえ』 2006年03月10日


■ 百夜百マンガ

それはエノキダ【それはエノキダ 】

 コダワリの主人公「榎田保」のモデルは、作者と親交のある漫画家の岩明均氏(『寄生獣』など)と言われています。
 コダワリの性格のせいか、月刊誌の連載も実質隔月刊状態(+白い状態)でしか読めないのが残念なところです。

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