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2006年10月 6日 (金)

人事制度イノベーション

■ 書籍情報

人事制度イノベーション   【人事制度イノベーション】

  滝田 誠一郎
  価格: ¥756 (税込)
  講談社(2006/6/21)

 本書は、"企業における組織と人との関係"をテーマに400社を超える企業を取材し、専門誌である『賃金実務』(『人事実務』)や『労務事情』で企業レポートを数多く手がけている著者が、その経験を踏まえ、「成果主義が抱える問題の『解答』を導き出すための方策について考えたもの」です。著者は取材を通じて、
(1)経営環境を取り巻く変化が激しくなる中、人事制度の耐用年数がかなり短くなっていること。
(2)成果主義の人事制度を入れてはみたものの、それ制度として定着していない企業、制度として機能していない企業が多いということ。
に気づいたと述べています。
 第1章「幸せな成果主義・不幸な成果主義」では、日本企業が導入している年俸制を、
(1)賞与を12等分し、月々の給与に上乗せして支払うタイプ。
(2)目標管理制度による業績評価の結果を賞与のみに反映させるタイプ。
(3)目標管理制度による業績評価の結果を賞与と給与に反映させるタイプ。
の3つのタイプがあることを述べるとともに、年俸制に代表される成果主義型の賃金体系の導入が急速にすすんだ1995年を"成果主義元年"と呼び、同時に「リストラ元年」でもあったと述べています。そして、成果に応じて支払う成果給が賃金リストラの決め手となった理由として、
(1)総人件費の伸び率をいかようにもコントロールできること。
(2)総額人件費の伸び率を限りなくゼロに近く抑え込んでも、成果に応じて報酬にメリハリをつけることで社員のモラールアップを図ることができる(?!)という理屈が成り立つこと。
の2点を挙げ、成果主義の本質を、「ひたすら走り続け、勝ち続けなければならないサバイバルレース」であると指摘しています。
 第2章「いい成果主義・悪い成果主義」では、多くの日本企業が導入している成果主義が、「成果に応じた報酬を払いますよといいながら、実は成果に応じた報酬格差がきちんとつかない制度上、運用上の矛盾を抱えている」ことを指摘し、その理由として、
(1)制度上は可能でも、目標を150%、200%達成して再考評価を取り続けることは至難の業であること。
(2)"これでパーフェクト!"といえる評価システムが確立されていないこと。
の2点を挙げています。そして、目標管理制度をベースにした評価制度の問題点として、
(1)あいまいな絶対評価の基準
(2)「目標」の貢献度の違い・難易度の違い
(3)成果を水割りする「相対評価」
の3点を挙げ、中途半端な成果主義の下で一番戸惑っているのは、自らが評価され、部下を評価しなければならない中間管理職ではないかと述べています。
 また、成果主義の問題点に関する労使の考え方について、
(1)『成果主義人事制度の導入効果と問題点』財団法人労務行政研究所、2005年3月実施
(2)「『成果主義』をテーマに実施したwebアンケート」日経BP社、2004年実施
(3)「『こころの健康』をテーマに実施したwebアンケート」日経BP社、2004年実施
の3つのアンケートを紹介し、「成果主義がもたらす弊害を解消・回避するための工夫」が評価制度と目標管理制度に集中していることを指摘しています。
 第3章「人を活かす人事・賃金制度のヒント」では、
・ジェネレーション・ギャップ賃金制度:経済的に気楽であり貪欲な若い世代にのみ成果主義の色合いの強い賃金制度にする。
・フリンジ・ベネフィット制度:プロセス評価の結果を給与以外のもので処遇する。
・中高年コーチ制度:実務、実技面における理論的・実践的指導者としてスタッフの管理職層を活用する。
・社内ダブルワーク制度:社内での副業(拘束勤務/非拘束勤務)を認める。
・社内人材公募制度
・フリーエージェント制度
等が解説されています。中でもFA制度の関しては、2002年に、「一定の経験年数を有する職員が人事当局に申し出をすると、異動希望の優先権が得られる」という制度を自治体として初めて導入した群馬県太田市の事例が紹介されています。
 第4章「成果主義とITで変わるキャリア設計」では、本来成果主義に馴染みにくい間接部門のワークスタイルを、「より進化したITの活用によってシステム化、データベース化」し、「それに合わせて定量化ができるように再構築」するならば、「間接部門においても成果主義がきちんと機能するようになるはず」であると述べています。
 著者は、本書を、「会社が置かれた状況に合った人事制度を取り入れ、状況の変化に応じて見直すこと。特定の層にフォーカスし、そこに対してはっきりとしたメッセージを送ること。そうすれば、少なくともフォーカスした層の人材は活性化する。残念ながらそこからはずれた人材の活性化は望めないが、全体としてみれば会社の業績を下支えする要因の一つにはなる。それこそが考える最良の人事制度だ」とまとめています。
 本書は、数多くの丹念な事例に支えられ、理論ではなく事実による説得力を持った一冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 現在「2007年問題」として、世間の人事担当者を悩ましている団塊の世代問題ですが、この問題が危機感を持って受け止められ始めたのは、80年代の円高不況で、本書では、
・「つなぎ年金制度」(三井物産、86年4月導入):早期退職して関係ない会社に再就職すると、三井物産にいたらもらえたはずの年収と再就職先の年収の差額の半分が定年時まで支給される。
・「準定年年金制度」(三菱商事、86年4月導入):早期退職時の年収の約3割が支給される。
という「そこまでやるか!」という制度が紹介されています。


■ どんな人にオススメ?

・成果主義の実際を目にしたい人。


■ 関連しそうな本

 溝上 憲文 『隣りの成果主義』 2006年01月20日
 高橋 伸夫 『虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ』 2005年3月30日
 高橋 伸夫 『〈育てる経営〉の戦略―ポスト成果主義への道』 2005年06月16日
 城 繁幸 『日本型「成果主義」の可能性』 2005年12月08日
 松繁 寿和, 中嶋 哲夫, 梅崎 修 『人事の経済分析―人事制度改革と人材マネジメント』 2006年01月10日
 サンフォード・M. ジャコービィ (著), 鈴木 良始, 堀 龍二, 伊藤 健市 (翻訳) 『日本の人事部・アメリカの人事部―日本企業のコーポレート・ガバナンスと雇用関係』 2006年06月02日


■ 百夜百マンガ

リストラマン太郎【リストラマン太郎 】

 大ヒット作はなかったですが、『代打屋トーゴー』などの渋くていい作品を書いていたことで知られています。もっとたくさん名作を生んで欲しかったです。

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