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2006年10月10日 (火)

経産省の山田課長補佐、ただいま育休中

■ 書籍情報

経産省の山田課長補佐、ただいま育休中   【経産省の山田課長補佐、ただいま育休中】

  山田 正人
  価格: ¥1470 (税込)
  日本経済新聞社(2006/01)

 本書は、現職のキャリア官僚の男性が、1年間の育児休業を取得した体験記です。著者は、育児休業を取った理由を、同じ霞が関に勤める奥さんが、「2人前に育休を取得し、さらに、また1年間育休を取ることは、夫婦間で公平さに欠けるような気がした」ためと語っています。
 男性が育児休業を取得することに対する周囲の反応は様々で、著者は、「私のところで、男性が育休を取りたいなんて言いだしたら、常識的にももう『アウト!』でしょうなぁ。『やる気なし」という烙印を押されて一生復活できないでしょうね」と語った地方自治体の言葉が最終的な引き金となり、「自分の育休が、自分のみならず、他の組織の『常識』を覆すきっかけになるかもしれない」と考えたと語っています。また、世の中の男性がいかに子育てを甘く認識しているかが「いいリフレッシュになるね」という言葉に現れていると述べています。
 男性が育休を取ることへの世間の反応は、
・昼間にかかってきた「お母様いらっしゃいますか」というセールスの電話に「父親である私ならいますけど」と答えたらガチャ切り。
・職場の友人からは、「世の中では、男の育休は出世に悪影響、って思われている」「やっぱり自分が仕事をしているときに仕事をしていない奴がいると腹が立つもんね」と言われる。
・「育休をとるなんて、勤務先でよほどつらいことがあったのか、と思うと、いろいろ心配してしまって、夜も寝られなかったよ」と心配された。
等さまざま語られていますが、特に女性には好意的に受け取られているようです。
 また、父親の子育てに関しては、「子育てに関して、母親でなければどうしてもできない、ということはほとんどない。むしろ、子育ては結構腕力や体力を使う。父親の方が向いていることも多い」と述べ、子育ての喜びは、「親の前でしか見せないとびっきりのかわいらしさ」は、子どもからの特別のプレゼントだと語っています。育休前の自分への反省としては、奥さんにが帰ってくると、今日自分が発見したことを妻に話したくて仕方がないのに、「昔のあなたなら、私がそういう話をすると『うるさい』と言っていたわよ!」と笑顔で冷や水をかけられてしまったことが紹介されています。そして、左手首が腱鞘炎になり、保育士さんから「育児の勲章ですよ」と励まされたことや、霞ヶ関の同期の友人の、「いつも俺は家で疲れているし、子どもも家内の方になついているから、家内が面倒を見る方がみんなハッピーなんだよね」という言葉に、「子どもの面倒をお父さんが見ないから、奥さんの方になつくのだ」、「霞ヶ関では普通かもしれないけど、世の中から見れば、それは異常」とお説教してしまったことなど、子育てを通じて得ることができた気づきが語られています。
 さらに、保育園の送迎の時間帯を「一種の魚河岸のような状態」であるとして、
(1)子どもをベビーカーから降ろし、
(2)ベビーカーを置き場にしまい、
(3)子どもの靴を下駄箱にしまわせ、
(4)子どものコートを玄関の壁にかけ、
(5)手をつないで階段を上がり、
(6)体温・体調を台帳に記入し、
(7)オムツ入れの袋を壁にかけ、
(8)洋服の着替えを籠に入れ、
(9)脱いだ洋服を入れる袋を壁にかけ、
(10)お昼とおやつのエプロンをケースに入れ、
(11)使ったエプロンをしまう袋を壁にかけ、
(12)タオルを壁にかけて、
(13)連絡帳を箱に入れて、
(14)先生によろしくお願いします、と声をかける
の14種類のプロセスをテキパキにこなさなければならないと語っています。
 育児休業中の悩みとしては、一時、風邪の症状とあわせ、気分がすぐれず、すぐにベッドに潜り込むようになってしまった自分に気づき、「プチうつ」状態であったと語り、その原因を、
(1)疲れが蓄まっている。
(2)社会から隔絶されているという孤独。
(3)職場との関係。「男性の育休は出世に悪影響」という世の中の意識。
の3点挙げています。
 巻末には、官僚らしく政策提言も行っています。まずは、子育て支援策としては、政府の支出を拡充するよりも、「子育て控除」のような形で税を活用することを主張しています。その理由は、
(1)「大きな政府」を志向しない。
(2)確実に少子化対策に使われる→飲み代に化けない
(3)きちんと納税している人に恩恵が与えられる。
(4)DINKSや独身者にも理解が得やすい。
の4点を挙げています(ほとんど税金払ってない低所得者には恩恵がないですが)。
 また、首都圏では、住居の狭さが2人目、3人目のハードルになることを指摘しています。
 本書は、忙しくて長時間残業し家庭を顧みないことでは、人後に落ちない霞が関の官僚が育児休業をとってしまうことのインパクトはもちろんですが、間に挟まれる、やまもと妹子のイラストも楽しいので、気軽に読んでいただきたい一冊です。
「やまもと妹子のページ」
http://members.jcom.home.ne.jp/nes_imo/


■ 個人的な視点から

 著者が、育休復帰に当たり、子どもの保育園の迎えがあるので、定時退庁日(水曜・金曜)には定時退庁したい、と人事当局に申し入れたことが述べられていますが、人事当局のお墨付きをもらわないと退庁できないのは、「定時退庁日」とは言わないのでは?と思いました。
 また、ポリオの予防接種に3分遅れて締め切られてしまったときに、窓口で「お役所仕事だな。本当にお役所仕事ですなぁ」と厭味を言うエピソードが紹介されていますが、役所の窓口で一番手強いのは、(元)公務員や(元)教員だといわれています。窓口のない霞が関ではそんなことはないのでしょうが。
 そういえば、育休中の社員サポートで知られる(株)ワークライフバランスhttp://www.work-life-b.com/の小室社長の旦那さんも霞が関で働いているそうですが、こういう考え方の官僚が増えると日本企業の働き方も変わりはしないでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・官僚と育児休業というミスマッチに惹かれる人。


■ 関連しそうな本

 脇田 能宏, 中村 喜一郎, 太田 睦, 中島 通子, 土田 昇二, 小崎 恭弘, 中坂 達彦 (著), 朝日新聞社 (編集) 『「育休父さん」の成長日誌―育児休業を取った6人の男たち』
 石井 憲雄 『新米パパは育休さん ~仕事と育児の両立をめざして~』
 佐藤 博樹, 武石 恵美子 『男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット』 2005年04月07日
 藤原 和博 『父生術』 2005年06月12日


■ 百夜百マンガ

新ご出産!―まるごと体験コミック【新ご出産!―まるごと体験コミック 】

 育児マンガのおもしろさは動物マンガに通じるような気がします。親馬鹿全開でも許せてしまうのはマンガだからでしょうか。

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