« PR会社の時代―メディア活用のプロフェッショナル | トップページ | こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから »

2006年11月14日 (火)

使い捨てられる若者たち―アメリカのフリーターと学生アルバイト

■ 書籍情報

使い捨てられる若者たち―アメリカのフリーターと学生アルバイト   【使い捨てられる若者たち―アメリカのフリーターと学生アルバイト】

  スチュアート タノック (著), 大石 徹 (翻訳)
  価格: ¥2730 (税込)
  岩波書店(2006/03)

 本書は、「米国とカナダのサービス部門の若い組織労働者からなる2つの小集団が仕事と組合を通して経験することを記述することによって、サービス及び販売の労働に従事する若者にとって腰かけ仕事と労働組合がどのような意味を持つのか」を探ったものです。著者は、米国の大都市である「ボックスヒル」の「流通市場を席巻した地域に展開する3つの大きなスーパーマーケット・チェーン」と、カナダの大都市「グレンウッド」にある「『フライハウス』(仮名)というファストフードの多国籍企業」のある系列店を調査対象に選び、これらを選んだ理由として、
(1)スーパーとファストフード点が、腰かけ仕事での若年雇用のひな型となる職場だから。
(2)この2つの地域を調査すれば、サービス部門の腰かけ仕事に携わる若年労働者が労働組合を通して味わう2つの異質の経験をおそらく研究できるから。
の2点を挙げています。
 第1章「サービス部門の現場では」では、ボックスヒルとグレンウッドの底辺のサービス部門では、「若年労働人口に見られる学業成績と学歴はさまざま」であり、「ほとんどすべてのカテゴリーの若者がこれらの職場には見られる」ことが述べられています。また、彼らが、「高ストレス、低い地位、低賃金」の労働環境におかれ、「事故と負傷と襲撃」が、「ファストフード産業と食料雑貨販売業の若年労働者の生活ではありふれた事柄」であることが解説されています。
 著者は、スーパーとファストフード店の「劣悪でしんどい労働環境を重要視する」理由として、
(1)これらの仕事が大人には魅力のない職業だと見なされているのに、若者の労働者のことを考慮する段になると、こうした仕事が申し分なく満足の行くものであると論じる人も多い。
(2)こうした労働環境が、スーパーとファストフード店の若年労働者が職場で抱くアイデンティティや、職場で自分たちを位置づけるありように精通する上で無視できない。
の2点を挙げ、「サービス部門の若年労働者のもっとも明瞭な特徴になっている、ほぼあらゆる職場における腰かけ仕事という位置づけは、劣悪な労働環境を助長する決め手となっている」と指摘しています。
 第2章「職場の若者」では、グレンウッドのフライハウスの若年労働者が、「自分たちが働いている店舗のユニークさをほとんど決まって主張する」ことを挙げ、「店舗ごとに異なるような独特の『やり方』を具現化しているのはむしろ労働者自身である」と語っていることに着目しています。そして、グレンウッドの特徴的なフライハウスの店舗として、
(1)「姉妹たちの店」:従業員ほぼ全員が女性であり、同僚だけでなく顧客とも固い絆で結ばれている人々が少なくない。
(2)「緑シャツの店」:はっきりとシャツの色(マネージャー:白、スーパーバイザー:赤、調理係・接客係:緑)で連帯が区別され、「われわれとやつら」という態度を極めて強く示す。
(3)「競技者たちの店」:フライハウスが開催している数多くの販売促進や売上のコンテストで勝利を収め、自分たちがしっかり団結した「チーム」に属しているという感覚を重視している。
の3つの店舗を紹介しています。
 著者は、店舗レベル単位で団結した労働コミュニティを根強くしている特徴として、
(1)1店舗につき従業員が10人未満から30人強と小さいこと。
(2)調査期間中の若者の失業率が高く、平均より長い期間、若年労働者がフライハウスの仕事に従事していたこと。
(3)労働組合が組織化されていたこと。
の3点を挙げています。
 第3章「スーパーマーケットにおける年齢」では、「さまざまな年齢の従業員が働いているスーパーでは『複数の世代が混じっている』ため、若年労働者は、多様に開かれた新しい人間関係をつくることができるだけでなく、貴重なことを経験から学ぶ」ことを述べています。そして、高校生世代が就く「袋詰め係」が、「スーパーの職務の中でも地位と賃金が最低で、他の部門にもっとも依存する仕事であり、ともかく要求されることがもっとも少なく、一番退屈なもの」であることを指摘し、「職場というコミュニティでは正式のメンバーになれず、あまり関与もできない」ことを述べています。
 第4章「腰かけ仕事の文化」では、若年労働者が、「さまざまなやり方で、スーパーやファストフード店で働く期間の長さを決めている」ことを紹介し、腰かけ仕事には、
・表の面:若い時や在学中に短期間だけ働くには好都合な仕事
・裏の面:この仕事を悲惨な仕事と見なし、大人になった際のキャリアに決してしたくない。
という2つの面があることを指摘しています。そして、彼らが一番恐れることの一つとして、「一時的に働く初級職としか思えないような仕事に『はまりこむ』あるいは『閉じ込められる』危険性」を挙げています。
 第5章「組合活動のアウトサイダーたち」では、ボックスヒルの食料雑貨販売業労働組合第7支部が、「若い組合員たちの大部分の『人心を掌握して』いない」と述べ、「ボックスヒルのスーパーで働く若い従業員には、組合とは何なのか、組合がどんなことをしているのか、ほとんどわかっていない場合も少なくない」として、「第7支部が組合費徴収マシーン、ルール制定機関、慈悲深い保険会社になっている」と指摘しています。
 また、第7支部が若い組合員を、
(1)臨時雇いのパートタイム労働者の都合よりも、長期勤続のフルタイム労働者の都合を考慮して協約の条項を定めている。
(2)品出し係と袋詰め係を「若者向け」の職種と定める。
の2つの方法によって差別していることを指摘しています。
 第6章「若者の労働組合」では、グレンウッドのファストフード産業労働組合C支部とフライハウスの若い組合員のあいだに見られる結びつきに焦点を当て、「C支部が若い組合員を手助けしてきた点を強調しながら、北米の他地域の労働市場に見られる状況を労働組合が改善できる可能性」について述べています。著者は、「腰かけ仕事の若年労働者が組合活動から得る利益」が、ボックスヒルとグレンウッドの間で大いに異なり理由として、「フライハウスの交渉単位において」、C支部が「短期勤続者と長期勤続者との格差や、若者と年配者との格差を最小にしようと横断的に取り組んできた」ことを挙げています。
 第7章「サービス残業を堂解決するか」では、「サービスや小売に携わる若年労働者にとって、時間にどう対処するかは、職場に関する問題の中では極めて重要なものになっている」として、「この2地域で最も重要なもの」である、「勤務スケジュールとサービス残業」に、労働組合の組織化がどのように影響したかに焦点を合わせています。著者はこの目的として、
(1)今日の若者が働く職場では、腰かけ仕事の若年労働者にとって時間管理こそが関心と紛争のテーマになっている状態を明らかにする。
(2)職場での時間管理を改善することに向けられる組合の戦略が、腰かけ仕事の若年労働者の状況に大きく影響することを強調する。
(3)サービス残業という現象を描くことを通して、組合の制度が職場の若者文化に結びつくことに失敗し、それを支援できない場合に生じる問題の事例を示す。
の3点を挙げています。
 著者は、サービス残業(従業員が休憩を取れないこと、シフト開始前に働き始めること、残業手当なしに遅くまで働くこと)が、「従業員が雇用主に対して述べる最大の不満の一つ」であるとして、これを助長する職場環境が生まれる理由を、雇用主が、「生産関係の予算から可能な限り『超過』労働コストを削ることによって、たえず利潤を最大化しようと試みる」からであると述べています。
 この他、終章では、1998年に、メディアに大きく取り上げられた「マック・ストライキ」を起こした19歳のブライアン・ドラップを紹介しています。
 著者は、本書を、「研究者や政策立案者があまりにも見逃してきた若者に対する年齢差別や若年労働者と大人の労働者の間の年齢による階層化が、労働市場や職場において無視できない現象であることを論じている」ものであると位置づけ、「生涯にわたるキャリア雇用が崩壊しつつある中、年齢と年齢差別は、労働市場が階層化されるにあたって主たる領域及び要因としてますます重大になるばかりであろう」と述べています。


■ 個人的な視点から

 本書に登場するファストフード店「フライハウス」は仮名ということですが、実際のチェーンはどこなのでしょうか。
 他のファストフードよりも割高らしいことと、揚げ物ということから考えると、ケンタッキーじゃないかと予想してるんですが。


■ どんな人にオススメ?

・アメリカのフリーター事情と労働組合に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 熊沢 誠 『若者が働くとき―「使い捨てられ」も「燃えつき」もせず』
 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在 中公文庫』 2005年07月20日
 矢幡 洋 『働こうとしない人たち - 拒絶性と自己愛性』 2005年10月23日
 本田 由紀 『若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて』 2006年03月02日
 宮本 みち子 『若者が『社会的弱者』に転落する』 2005年05月04日
 小杉 礼子 『フリーターという生き方』 2006年04月04日


■ 百夜百マンガ

ワタナベ【ワタナベ 】

 地球人を観察に来た宇宙人、でも見た目は・・・という設定自体は、缶コーヒーBOSSのCMの「宇宙人ジョーンズ」みたいです。
http://www.suntory.co.jp/softdrink/boss/cm_press/index3.html

« PR会社の時代―メディア活用のプロフェッショナル | トップページ | こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから »

キャリアデザイン」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1244312/30598385

この記事へのトラックバック一覧です: 使い捨てられる若者たち―アメリカのフリーターと学生アルバイト:

« PR会社の時代―メディア活用のプロフェッショナル | トップページ | こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから »

2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ