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2006年12月12日 (火)

キャリアデザイン入門〈2〉専門力編

■ 書籍情報

キャリアデザイン入門〈2〉専門力編   【キャリアデザイン入門〈2〉専門力編】

  大久保 幸夫
  価格: ¥872 (税込)
  日本経済新聞社(2006/03)

 本書は、同じ著者による『キャリアデザイン入門〈1〉基礎力編』の続編にあたるもので、「基礎力編」では、30代までのキャリアについて書かれていたのに対し、本書は40代以降から老年期のキャリアデザインについて書かれています。著者は、「若者のキャリアについて書かれた本は数多くあるが、ミドル以降のキャリアについて書かれた本は驚くほど少ない」理由として、「若年期には大半の人々に共通するキャリア課題があるのに対して、ミドル以降になると個人差が激しく、共通して語れることが少ないことに起因する」ことを挙げています。そして、本書執筆に当り、「『成長するミドル』『充実するシニア』が仕事の現場にあふれている――そんな社会をつくりたい」という問題意識を持っていたことを語っています。
 第1部「プロフェッショナル・キャリア」では、「プロとは何か?」との問いに対し、
(1)その仕事で生計を立てているということ。
(2)仕事に向き合う真摯な姿勢のこと。
(3)独占的権限を持って仕事にあたる人々の集団のこと。
(4)熟練した職人ということ。
のような意味合いで使われている言葉とした上で、著者が本書で語るプロの定義は、しいて言えば(2)(3)(4)を合わせたものであり、「企業組織の中にいるプロフェッショナル」を意図していることを述べています。
 そして、企業組織におけるプロを考える上で、
・例1:経験30年のベテラン経理マン。正確さはピカイチで、どんな些細なミスも見逃さない。
・例2:店頭で顧客の相談に乗りながら、保険商品を販売している人。自分の顧客から評判を聞いて、指名で来る人も多く、結果、多くの顧客を抱えている。
・例3:優秀な営業成績をあげ続けて、ついに取締役に昇進した人。
・例4:新薬の開発に取り組んでいる研究者。昨年実験の成果から新薬につながる発見をしたところ。
・例5:コンサルティング・ファームに入社し、10年を経た経営コンサルタント。まだ将来もコンサルタントとしてやっていくべきかどうか決めかねている。
・例6:粉飾決算を見てみぬふりをしていた監査法人に所属する会計士。
・例7:新規事業開発に実績を持ち、新しいビジネスモデルを作ることに使命感を感じている人。
・例8:事業再生の段階にある企業に経営者として乗り込んで事業を再生させる人。ある程度軌道に乗るとまた、次の企業の再生に挑む。
の8つの例を挙げ、この中からビジネス・プロフェッショナルを挙げさせています。そして、「企業組織で働くプロの特徴」として、
・安定的に業績をあげられて、常に合格点以上の成果をあげられること。
・「職業倫理」を持つこと。
・その道の専門家としてやっていくという「腹決め」ができていること。
等を挙げています。
 また、「プロは職業を問わず、高度な専門技術や知識を求められる領域であれば、どの領域にも存在しうる」とした上で、プロの3つのコースとして、
(1)エキスパート型プロフェッショナル:1つの特定の技術領域を担い、専門職の概念に近い。
(2)ビジネスリーダー型プロフェッショナル:経営者こそ最高のプロフェッショナルでなければならない。
(3)プロデューサー型プロフェッショナル:新しい価値を生み出すリーダー型の人材であり、音楽や映画などの制作現場では古くから代表的な職業として注目されていた。
の3点を挙げています。
 著者は、「プロであるという意識は、大きく3つの意識に分解できる」として、
(1)自己概念:自分自身のイメージ、自分のあり方に関する意識。
(2)専門技術・技術認知:自分は何ができて、何ができていないのか、獲得しなければならない技術は何かということに関する意識。
(3)他者認知:自分が他人からどのように見られているか、チームの中で自分はどのような存在であるか、またはどう在るべきかという意識。
の3つを解説しています。そして、トップ・プロになった人が経てきた道筋を見ることから、プロ意識を向上させる経験として、
(1)退路を断つ、もしくは断たれる
(2)ささやかな成功体験
(3)視界の変化
(4)一流のものとの接触
等の重要なきっかけがプロ意識の向上を加速させると述べています。
 また、人が徐々にプロとしての道を歩むには、「あたかも階段を一段一段昇っていくかのように歩みを進め、最終的には社会的評価を得て、プロとしての使命を背負い、エキスパートとしてその技術を広く知られる段階に至る」として、
(1)仮決め:大まかに方向感覚を持って、行動を始めるという段階。
(2)見習い:プロになるということが一体どういうことなのか、そしてそのため身につけなければならない技術や知識について理解できるようになる段階。
(3)本決め:一通りの型を習得して、プロになる段階。
(4)開花:プロとしての円熟した時期にあたり、トップ・プロと呼ばれる段階。
(5)無心:自分が取り組んでいる仕事が社会的にどのような意味があるものなのかについてリアリティを持っている段階。
の5つの段階を示しています。そして、これらが、日本古来からの修行の段階を示す「守・破・離」に対応していると解説しています。
 第2部「専門力の磨き方」では、「自ら計画して専門力の一部をなす知識の習得」をするための、
(1)良質の入門書を読む:「やさしく描いてある」「全体的・網羅的に描いてある」「さらに学習したいときの方法や参考文献がていねいに示してある」という条件を満たすもの。
(2)入門書を読んで関心を持った領域の参考文献に挙げられているものを読むことと、現在の業務に密着している実用的な本で、書店で売れ筋としておいてある本を読んでみること。
(3)ある程度の基盤ができたら、その基盤を繰り返し使いつつ、さらに枝葉を付けてゆくように、「調べながら読む」「一度に集中的に読む」。
という手順を示しています。そして、アウトプットを前提とした読書を継続することで、知識がかなり豊富になると述べています。
 また、「人それぞれに、自分の考える行為と相性がよい行為がそれぞれにある」と述べ、「じっくり考えたいことがあるときにどのような方法を用いるか」という「考えるスタイル」として、
(1)読む:著者との会話を楽しむタイプ
(2)書く:文章を書くことで自分の考えを整理するスタイル
(3)話す:人に自分の意見を話すことで考えをまとめていく
(4)描く:図表に書きながら考えを整理する
(5)歩く:深い内省を必要とするときに適した方法
の5つのスタイルを示しています。
 第3部「年齢段階別キャリアデザインの方法(40歳前後から)では、「年齢段階別に専門力の要素である『専門知識』と『専門技術』について、高い水準のものを持っていると回答した人の比率をグラフ化」した「成長曲線」と名づけたグラフを示し、「30代半ばまではほぼ一直線に『専門知識』も『技術・ノウハウ』も向上していく。しかし、その後50歳頃までは必ずしも向上しているとは言えない状態、つまり『成長の停滞』の状態になっている」と解説しています。
 また、40代を「ビジネスパーソンとして最高の時」として、シモントンによる、「ある仕事をやり始めてからどのくらいの年数で創造的生産物を世に送り出すかという研究」を紹介し、「開始から約20年でピークがくることがわかる」と述べています。
 そして、「人生の中で最も忙しい」40代で高い業績をあげられるか否かのポイントは、「山登りの成功と『時間管理の上手さ』にかかっている」と述べています。そのため、
・無駄なことをしない。
・自分でなくてもできることは人に任せる(→自分専用のアシスタントを持つ)。
・時間を小刻み(基本的に15分、長くて30分)に有効活用する。
などの、「忙しい40台がきちんと成果をあげる時間を確保するためのテクニック」を解説しています。
 さらに40代での独立・開業を成功に導く方法として、
(1)現在の会社を退社する前にお試し起業してみる
(2)取引先は開業前に最低限は確保する
(3)開業および当面の事業運営資金に全財産を投入しない
(4)キャッシュ・フローを厳密に計算する
(5)営業力を冷静に評価する
の5点を挙げるとともに、法人か個人かなどの問題を解説しています。
 著者は50代のキャリアデザインに関して、
(1)一帯の山を制覇する:トッププレーヤーとして生涯現役を貫こうとする道
(2)ゆっくり楽しみながら山を下る:その職業の環境を整備する仕事や、次の世代を育てる仕事につく
(3)まったく異なる第二の山に登る:山を登るというノウハウ(方法記憶)を生かして2つ目の山はもっと早く登れる。
(4)湯治で疲れを癒す:リタイアもしくはハーフリタイアの道
の4種類の「山登り後の選択」を示しています。
 さらに60代以降のキャリアの最終ステージについては、「さまざまなものを結び付けて一つの具体的な形を描き出す」という「統合」という言葉がふさわしいと述べ、「能力の崩壊から来る絶望や親しい友人や家族の他界という絶望」や嫌悪を受け入れて超えたところに「老人的超越性(gerotranscendence)」があると述べています。


■ 個人的な視点から

 本書は、40代以降のキャリアデザインについて論じているため、「自分には関係ない」と思う若い人もいるかもしれませんが、自らのキャリアの全体像をつかむ上でも、ぜひ2冊まとめて読んでいただきたいと思います。


■ どんな人にオススメ?

・自分のキャリアを考えたい40~50代の人。


■ 関連しそうな本

 小河原 直樹 『新しい社会契約』 2006年11月30日
 金井 壽宏 『変革型ミドルの探求―戦略・革新指向の管理者行動』 2005年03月12日
 金井 寿宏 『ハッピー社員―仕事の世界の幸福論 解決!組織で働く悩み』 2005年05月09日
 キャメルヤマモト 『稼ぐ人、安い人、余る人―仕事で幸せになる』 2005年05月24日
 村山 昇 『「ピカソ」のキャリア「ゆでガエル」のキャリア』 2005年07月19日
 山本 寛 『昇進の研究―キャリア・プラトー現象の観点から』 2005年09月01日


■ 百夜百マンガ

男組【男組 】

 黄金コンビによる野望モノ。劇画の真骨頂とも言えるストーリーと絵柄は多くのにわか中国拳法マニアを生み出しました。
「大衆はブタだ。大衆は人間に養われなければならない!養われなければ…ごはんが食べられないじゃないか」

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