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2007年1月12日 (金)

上司に「仕事させる」技術―そうか!ボス・マネジメント

■ 書籍情報

上司に「仕事させる」技術―そうか!ボス・マネジメント!   【上司に「仕事させる」技術―そうか!ボス・マネジメント!】

  大久保 幸夫
  価格: ¥1260 (税込)
  PHP研究所(2006/03)

 本書は、リクルートのワークス研究所の所長が書いたボス・マネジメントの入門書です。著者は、タイトルの「上司に『仕事させる』」とは、「上司に仕事を押しつけるということ」ではなく、「部下が上司を戦略的に動かして、自分の仕事やチームの仕事の成果を最大化する」ことであると述べています。すなわち、「自分の業績と上司の業績はダブル・カウント、つまり個人の業績ではなくトータルの業績で評価される」ものであり、「上司と部下は業績をシェアし合える関係」であるからです。著者は、上司とは、部下にとって"フリーウェア"であり、「どれだけ使っても構わない」にもかかわらず、「多くの人はこうした認識をもって」いないことを指摘し、「上司との良好な関係が築けない限り、会社の中で最大限のパフォーマンスを発揮し、自分の思い描くキャリア・プランを実現すること」はできない、「上司は、決して対峙する敵」ではなく、「同じ目標に向かって進む仲間」なのだという意識改革こそが、ボス・マネジメントの第一歩であると述べています。
 著者は、「上司」には2つのタイプ、すなわち、
(1)とても部下に指示されているが、自分の上司に対して影響力のないタイプ
(2)部下には嫌われているが、自分の上司には影響力のあるタイプ
の2つがあり、日本では、「圧倒的に後者が悪く評価」され、「上司の顔色」ばかり伺う「コバンザメ」と酷評されるが、現実には、後者の「上司に対して影響力のある人」(ミシガン大学のドナルド・ペルツは「上方影響力」と呼んでいます)のほうが、圧倒的に仕事ができることが述べられ、「上司との関係は、『仕事の本質』」であり、「できる人」は、「うまく自分の仕事のペースに上司を巻き込んで、どんどん自分のやりたい仕事を進め、昇進もして」いると述べています。
 第1章「上司は便利なフリーウエア」では、日本が、「他国と比べて、"極めて上司を嫌う国"」であるという調査結果を示し、日本で成果主義が機能しない理由の一つとして、「あんな上司に評価されるのは嫌だ」と感じる人が多いことを挙げ、アメリカでは、「上司は顧客だと思え」という考え方が浸透し、「部下が上司を動かす」という考え方があるから成果主義がうまくいくと述べています。
 著者は、上司とは、自分の目標を達成する上での最高のパートナーであり、そのための必要な機能を持ち合わせているとして、
(1)キャリア・コーチ:「こうなりたい!」を実現するための相談相手
(2)アセッサー:仕事の成果や部下の能力の評価者――「一生懸命やっていれば、ちゃんと見ていてくれている」という奇特な上司は「存在しない」。
(3)トラブルシューター:トラブルの処理役・謝罪役
(4)スタンパー:GOサインを出してくれる承認者
(5)ハイパー・プロフェッショナル:無料でノウハウを教えてくれる師匠――職務上、無料で自分にない「ワザ」を部下に伝授するよう、義務づけられている。
(6)コ・ワーカー:できない仕事を代わりにやってくれるパートナー
(7)ネットワーカー:仕事上必要な人脈の紹介者――社歴も長く豊かな人脈を持っている。
の7つの「便利な機能」を挙げています。一方、上司の「悪い機能」としては、
(1)企画を握りつぶす機能
(2)仕事のいいとこどりをする機能
(3)思いつきで部下に指示を出す機能
(4)部下を叱りとばす機能
(5)大事なところで責任を転嫁する機能
(6)行きたくないのに飲みに誘う機能
(7)長々と自慢話を語る機能
の7つを挙げ、これらは「良いか悪いかは微妙」で、これらを「7つのリスク」ととらえがちだが、「自分が考えている仕事の方向性が、他者の視点からも正しく見えるかどうかを確認する」ことは、とても大事なプロセスであると述べています。
 そして、上司に対する態度は、
(1)徹底的にこびる:常に上司のご機嫌を伺い、上司の言うことには絶対服従するタイプ
(2)徹底的に嫌う:上司を常に敵視し、自分からまったく近づこうとしないタイプ
の2つに分けることができ、ボス・マネジメントを成功させるためには、「理想の上司ランキング」に象徴される「誤った上司観」を正す必要があると述べています。
 第2章「戦略的に上司と"良い関係"を築く」では、「上司は、友だちではなく、『ビジネス上のパートナー』」であるとして、まずは、「上司が会社から何を求められているか」という「上司のミッション」(業績目標、課題、評価基準)を知り、上司の「個性」を知ることが必要であると述べています。具体的には、「上司への報告スタイル」を把握し、「報告だけは、上司が長く仕事をしてきた中で経験上身につけた上司独自のスタイル」であるため、上司に合わせたほうがよく、「上司のプレゼンテーション・シートやレジュメ、メモのフォーマットを真似るのも効果的」だと述べています。
 また、アメリカのボス・マネジメント関連書籍の構成の多くは、
・上司を知り
・己を知らせ
・信頼関係を築こう
というものであるが、日本企業ならではの要素としては、これに、
・上司に慣れる
が必要であると述べています。このうち、「上司の信頼を得る」ために、「安心感を抱いてもらう」ことが必要であるとして、
(1)「相(談)・連(絡)・報(告)ができること」
(2)上司の顔をつぶさないこと:典型例は「大事な情報を上司の耳に入れておかなかった」
の2つのポイントを解説しています。
 さらに、カーネギー・メロン大学のケリー教授による「部下の上司に対する関係性」として、
(1)模範的
(2)孤立的:
(3)実務型:「言われたことはきちんとやるが(それ以上のことはしない)」タイプ
(4)消極的:「受身でいても上司は自分のことを評価してくれるはずだ」という幻想を持つ。
(5)順応型:あまり親密になりすぎると、精神的な依存度が高まり、「イエスマン」になってしまう。
の5点を挙げ、「模範的」を除く4つの問題ある関係について解説しています。
 第3章「『good relation』をベースとしたボス・マネ7つの戦略」では、「ボス・マネジメントがうまい人は、強いリーダーシップも発揮できる人」である理由として、
(1)上司の先手をとらなければ、意見が通りにくい
(2)部下への影響力が上司にも影響する
の2つの理由について解説しています。
 また、先述の「上司の機能の使い方」の応用として、
・「上司の技術を盗む」最も効果的な方法は、上司の仕事の作法や流儀を自分の目で見て、真似をすること。
・事前相談で主導権を握ることにより、上司の威を借りて自由にやる。
・クレーム処理は、上司にとっては腕の見せ所でもある。
・上司から高い評価を得るために、良い評判が顧客の口から上司の耳に入るよう仕掛ける。
・キャリア・プラン実現を手伝ってもらい、元上司とも良い関係を維持し続ける。
等を挙げています。
 さらに、会社が社員にボス・マネジメント力を高めてもらいたい理由として、
(1)顧客サービスの強化:現場の社員のボス・マネジメント力が高ければ、かなり幅広い顧客のニーズに答えることができる。
(2)知識創造:一般社員と上司の両方のボス・マネジメント力がそろって、初めて知識創造が進む。→「ミドル・アップ・ダウン型マネジメント」
(3)プロ育成:上司の姿を真似することで、その型を習得し一人前に育っていく。
(4)次世代リーダー選抜:将来のトップ人材の非常に重要な選抜条件になり得る。
の4点を挙げる一方、これまで日本企業でボス・マネジメントが注目されてこなかった理由として、
・トップ・ダウンの経営で高い業績をあげることができた。
・「会社はファミリーである」という根強い考えがあった。
ことなどを挙げています。
 第4章「究極の上司、『社長』を動かす技術」では、「社長デビュー」、すなわち「組織の頂点に立つ社長に自分の顔と名前を覚えてもらい、社長とコミュニケーションを取れるようになる」ことが、「会社で成功を収めるため」の重要なポイントであるとして、「取締役会デビュー」を早めにすべき一方、会社の経営を理解するには、「小さな組織に入り、役職を挙げることで、経営がより間近に感じられるケースもある」として、「転勤・出向するのも有効な手段」であると述べています。
 本書は、組織で働く多くの「部下」、そして、部下を持つ多くの「上司」の両方にぜひ一読してほしい一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書を読んだ後に、これまでに接した「できる人」や「できる上司」を思い浮かべてみると、どの人もボス・マネジメント力に長けていることに気づかされます。日本では、どうしても、成果さえ挙げていれば見る人はきちんとは見ていてくれる、という考え方が根強いせいか、上司との良い関係を構築することは、きちんと成果を挙げることのおまけ、人によっては、トレード・オフの関係(「上司にゴマすってる暇があったら仕事しろ!」)にあるくらいに思っている人もいますが、下っ端の身の丈(権限)の範囲で挙げられる成果には限界があり、より多くの資源を導入し、人を巻き込んでいくためには「上方影響力」は不可欠であり、自分一人では実現できないことを実現するために上司は存在すると考えるべきであることを本書は教えてくれています(こういう発想を「マキャベリスト」と批判する「縮こまったプロ意識」もまだまだ根強いです)。


■ どんな人にオススメ?

・上司と業績をシェアしあいたい人。


■ 関連しそうな本

 村山 昇 『上司をマネジメント』
 大久保 幸夫 『キャリアデザイン入門〈1〉基礎力編』 2006年12月11日
 大久保 幸夫 『キャリアデザイン入門〈2〉専門力編』 2006年12月12日
 大久保 幸夫 『ビジネス・プロフェッショナル―「プロ」として生きるための10話』
 マンフレッド・ケッツ ド・ブリース (著), 金井 壽宏, 岩坂 彰 (翻訳) 『会社の中の「困った人たち」―上司と部下の精神分析』 2005年11月14日
 マンフレッド・ケッツ・ド ブリース (著), 金井 壽宏 (翻訳) 『会社の中の権力者、道化師、詐欺師―リーダーシップの精神分析』 2005年11月24日


■ 百夜百マンガ

鉄腕バーディー【鉄腕バーディー 】

 初期ゆうきまさみ作品の同名の作品しか読んでなかったのですが、ついに我慢しきれずに読み始めてしまいました。最新刊は14巻・・・まとめ買いしてしまいそうな予感。
 1話完結的だった最初のシリーズと比べて、じっくりとストーリーが展開する感じは連載よりもまとめ読み向きです。

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