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2007年1月26日 (金)

仕事人間のバーンアウト

■ 書籍情報

仕事人間のバーンアウト   【仕事人間のバーンアウト】

  横山 敬子
  価格: ¥2625 (税込)
  白桃書房(2003/12)

 本書は、「リストラの後、企業に残った人々の中」に見ることができる、「バーンアウトを起こし、やる気をなくしてしまった人達」を、「活用することにこそ、企業成長の種が潜んでいるのかもしれない」という問題意識から書かれているものです。著者は、本書の読者対象を、「研究者や学生ばかり」ではなく、「むしろ企業の経営企画室(人事部も含む)などの会社全体の運営を考える人、管理職についている人にこそ読んでいただきたい」と述べています。
 第1章「バーンアウトの基礎的理論的研究」では、日本では、1980年代に「働きすぎからバーンアウト(燃え尽き症候群)になり、仕事への意欲をなくし、さまざまな精神・身体症状が発生し、自殺する人まで出てきた」ことから話題になったが、1990年代にはほとんど注目を浴びることはなくなり、その研究において主流を占めてきたのは、「主としてヒューマンサービス従業者(看護し、教師など)であり、その対象として、企業組織で働くヒューマンサービス以外の仕事についている人々(企業の従業員、管理者など)のバーンアウトは、特にわが国において、ほとんど注目されてきていない」ことが述べられています。
 また、バーンアウトという言葉は、精神科医のFreudenbergerによって広められ、「健康管理専門職に見られる情緒的な極度の疲労、肉体的疲労、職務熱中の不在、患者への人間性抹殺、低下した職務達成などの以前から気づかれている現象」にこの言葉が当てはめられたことが述べられています。そして、1970年代後半から1980年代初頭にかけての実証的研究の結果、バーンアウトの尺度として、「マスラックバーンアウト尺度(MBI)」、「バーンアウト指標尺度(BI)」が開発されたことが紹介されています。
 第2章「職務バーンアウトに関する文献研究」では、日本において職務バーンアウト研究がほとんど皆無であることを挙げ、アメリカにおける過去の職務バーンアウト研究の成果として、ストレサーとして、
(1)対人関係次元
(2)職務関連次元
(3)組織プロセス次元
(4)職歴開発次元
(5)状況認知次元
などが挙げられていることや、「ストレスある出来事の中で、または間で、経験により修正される継続的な処理上のプロセス」である「コーピング」などについて解説しています。
 また、職務態度から職務行動、職務行動から職務業績に行く研究がほとんど見当たらない理由として、
(1)調査上の難しさ
(2)調査における独立変数同士の関係を見た研究がわずかであること
の2点を挙げています。
 第3章「実証的研究」では、
・まず、対人関係、職務関連、組織プロセス、職歴開発、状況認知などのストレサーを知覚してバーンアウトを起こす。
・ほかに上司のサポートや性格などのモデレーター要因もバーンアウトに影響を及ぼす。
・その結果、職務満足や組織コミットメントが減るなどの職務態度に影響が起こる。
・さらにそれらの職務態度は、欠勤などを含めた職務行動に影響し、最終的に職務業績を落とす。
という因果関係のモデルを想定し、仮説の検証を行っています。サンプルとしては、「東京に本社を置く14社」に質問票調査を行い、587名の事務系の正社員・管理職から回答を得ています。
 第5章「結論」では、属性とバーンアウトの関係について判明したこととして、
(1)男性でかつ26-30歳、6-10年勤続、総合職のいずれか1要因を持つ人。
(2)女性でかつ25歳以下、31-35歳、1-5年勤続、未婚、一般職のいずれか1要因を持つ人。
(3)男女短大卒・高専卒・大学中退者。
の3グループの人たちが、「男性でかつ、中高年、既婚、管理職のいずれか1要因を持つ人に比べ消耗感、冷笑癖(あるいはどちらか)が強かった」と述べています。そして、「消耗感がバーンアウト過程において中心の役割を果たしていること」を明らかにするとともに、「日本的経営においては、権限のない有能な人に仕事が集まりやすく役割過重になる」ことが立証されたと述べ、役割過重は、「単に仕事量が多いというだけではなく、周囲からの過剰な期待、高い遂行基準、権限がないのに責任ばかり押付けられるということが、含まれ、よって疲れきって消耗感が起こる」と推察しています。
 さらに、終章「面接調査」では、調査を行った14社のうちから同意を得た7社の部長・役員を対象に、関連事項を含めた面接調査を行い、
・全員が有能な人に仕事が集まる傾向を認め、その人が持つ権限については、(1)最初は一人で注文をこなしているうちに後から金や人を使う権限がついてくる、(2)権限は与えられず作業として仕事だけやらされる、と意見が分かれた。
・日本では、有能な人に仕事が集まるのが普通で、役割過剰になるのは上司が認めている証拠でもあり、そのことに気づかない人が、消耗感を覚えるという指摘があった。
・上司が意見を汲み上げる手法としての飲み会は今は利用されず、昼食や出張時の車中での上役との会話は否定されず、その意味としては、(1)仕事が忙しく飲み会を利用している余裕はない、(2)上司は多忙なので突然言われても対応できないため、これらの機会に意見の概要を伝え、会議などの公式の場で詳しい説明をする、等が挙げられた。
・同期の中での違いが出てくるものは、給料、仕事の内容、地位、部下の数という選択肢以外に上司に恵まれることであることが挙げられた。
などの結果を述べています。そして、上司のタイプを、「責任をとる・とらない」の2タイプに、社風を「風通しの良い会社・悪い会社」の2タイプにそれぞれ分け、
(1)「責任をとる上司・風通しの良い会社」→職務バーンアウトが起こりにくい。
(2)「責任をとる上司・風通しの悪い会社」→職務バーンアウトが起こるかどうかは上司の力量にかかってくる。
(3)「責任をとらない上司・風通しの良い会社」→仕事に失敗すると、責任をとらされてバーンアウト状態に陥るか、解雇される場合もある。
(4)「責任をとらない上司・風通しの悪い会社」→職務バーンアウトではすまない。
の分析を行っています。
 著者は、本研究の目的が、
(1)リストラ(人員整理)後に企業に生き残った人たちにバーンアウト現象があるのか。
(2)バーンアウト現象があるとすればどのような特質を持った人が、どのような要因でバーンアウトに至るのか。
(3)バーンアウトの結果どのようになるのか。
を明らかにすることであることを述べた上で、
・職務バーンアウトを起こさないためには、組織目標がはっきりしていて、正確な業績評価、他人から意義ある仕事と認められること。
・従業員にやる気を出させ、活性化させるのにまず必要なことは、評価面の充実であること。
などの提言を行っています。
 本書は、医療や福祉の世界として知られてきたバーンアウトが、事務系の会社員にとっても他人事ではなくなっていることを教えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書は元々、バーンアウトに関して行った調査だったのですが、追加面接は、管理職や役員に対してインタビューしたせいか、いくらか人生訓めいたものが多くなったのではないかと想像します。それはそれで含蓄のあるものなのですが、本書の中ではやや唐突な感じが否めませんでした。


■ どんな人にオススメ?

・燃え尽きそうだと心配になった人。


■ 関連しそうな本

 田尾 雅夫, 久保 真人 『バーンアウトの理論と実際―心理学的アプローチ』
 久保 真人 『バーンアウトの心理学―燃え尽き症候群とは』
 清水 隆則 , 西尾 祐吾, 田辺 毅彦 『ソーシャルワーカーにおけるバーンアウト―その実態と対応策』
 水沢 都加佐, Be!編集部 『「もえつき」の処方箋―本当は助けてほしいあなたへ』


■ 百夜百マンガ

風魔の小次郎【風魔の小次郎 】

 「リンかけ」の最終回に向けての異様な盛り上がりとコマづかいの巨大化に慣れてしまった目には、ストーリー序盤の緩やかな展開や入り込めていない設定は物足りなかったようです。

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