« 分権化と地域経済 | トップページ | 日本人の行動パターン »

2007年4月27日 (金)

ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力

■ 書籍情報

ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力   【ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力】(#827)

  ジョセフ・S・ナイ (著), 山岡 洋一 (翻訳)
  価格: ¥2100 (税込)
  日本経済新聞社(2004/9/14)

 本書は、「強制や報酬ではなく、魅力によって望む結果を得る能力」である「ソフト・パワー」について、その提唱者である著者自身が解説しているものです。著者は、「ソフト・パワーは国の文化、政治的な理想、政策の魅力によって生まれる。アメリカの政策が他国から見て正当性のあるものであれば、ソフト・パワーは強まる」と述べています。
 第1章「力の性格の変化」では、マキャベリーが4世紀以上前に説いた「愛されることより恐れられることの方が重要」という言葉に関して、「今日の世界では、この2つを兼ね備えているのが最善である」と述べ、「力を行使する際の戦略に、ソフト・パワーの側面をどのように組み入れるのか」が重要であると述べています。
 そして、ソフト・パワーが、「人々の好みを形作る能力」に基づき、個人の水準では、魅力と魅惑の力は誰でも知っているように、「民主主義の国の指導者は誘導と魅力の組合せを重視する必要に迫られる」と述べ、「人々の好みを形作る能力は、人格、文化、政治的価値観、政治制度の魅力や、正当性があり倫理的に正しいとされる政策など、無形のものに関連すること」が多く、「他人が従いたくなる価値観を指導者が代表していれば、指導に必要なコストは低くなる」と述べています。
 著者は、国のソフト・パワーの源泉を、
(1)文化:他国がその国の文化に魅力を感じることが条件
(2)政治的な価値観:国内と国外でその価値観に恥じない行動をとっていることが条件
(3)外交政策:正当で敬意をはらわれるべきものと見られていることが条件
の3つ挙げ、それぞれ解説しています。
 また、技術と社会の変化によって、「現代の民主主義国で戦争のコストが上昇している」一方で、「技術の民主化によって過激派の集団と個人が破壊の新たな手段を手に入れるようになった」ことを指摘し、「技術の進化は両刃の刃なのだ」と述べて意います。そして、「技術とイデオロギーの2つのトレンドによって、今日ではテロリズムの破壊力が強くなったと同時に、押さえ込むのが難しくなった」ことを指摘しています。
 著者はこれらの醸成を踏まえ、「力の他の源泉と比較したときにソフト・パワーの重要性が高まっていく」として、情報時代に魅力を高め、ソフト・パワーを獲得する国は、
・情報伝達のチャンネルを多数もち、問題の捉え方を規定できる国
・主流になっている文化と考え方(現代では、自由主義、多元主義、自治)がその時点で世界の規範になっているものに近い国
・国内的、国際的な価値観と政策によって信頼性が強化されている国
であると述べています。
 第2章「アメリカのソフト・パワーの源泉」では、社会に関する統計からアメリカの強さを示すものとして、
・外国からの移住者数
・映画とテレビの輸出額
・世界全体の留学生の約30パーセントをひきつけている
・8万6千人を上回る外国人研究者がアメリカの教育機関に在籍している
ことなどを示しています。
 一方で、最近の世論調査でアメリカの人気が下がっている点を指摘し、「ソフト・パワーの場合煮が送られ、誰がどのような状況で受け取り、それが望む結果を得るアメリカの能力にどのように影響を与えるか」が問題であると指摘しています。
 また、アメリカのソフト・パワーに打撃を与える点として、死刑制度や銃規制の問題を取り上げています。
 著者は、アメリカのイメージとその魅力は、
(1)文化
(2)国内の政策と価値観
(3)外交政策のないよう、戦術、スタイル
の3つの源泉が長期的に見てソフト・パワーを生み出すことが多いと述べています。
 第3章「他の国の組織のソフト・パワー」では、ソ連やヨーロッパ、アジアの幾つかの国のソフト・パワーについて解説しています。
 ソ連に関しては、「科学技術、クラシック音楽、バレエ、スポーツの分野ではソ連文化は魅力的だったが、大衆文化のえ輸出がなかったことから、影響が限られていた」とした上で、それ以上に、「ソ連の宣伝が実際の政策と矛盾していたこと」を指摘し、中央計画経済が市場経済に追いついていけなくなったこと、ハンガリー動乱やチェコ、ポーランドへの軍事介入など、「体制が閉鎖的で、大衆文化に魅力がなく、外交政策で強圧的な姿勢をとった」ためにソフト・パワーでアメリカに対抗することができなかったと述べています。
 ヨーロッパに関しては、文化と国内政策の魅力に加え、外交政策でしばしば世界の公共財に貢献している点から、ソフト・パワーを生み出していることを挙げ、政府開発援助や平和維持活動への貢献を指摘しています。
 日本に関しては、「アジア各国の中で、ソフト・パワーの源泉になりうるものをとくに大量に持っている」として、「欧米以外で初めて完全な近代化を達成し、所得と技術で欧米と同等になる一方、独自の文化を維持できることを示した」ことを指摘しています。
 さらに、インターネットを用いてソフト・パワーを生み出している例として、「国外に離散した民族の組織化」を挙げ、「インターネットはこうした民族にとって格好の手段になっている。歴史を共有しながら各地に分散している人たちを組織化して、大きな仮想社会を作り上げることができるからだ」というデービッド・ボリアの言葉を紹介しています。
 一方で、ソフト・パワーが「悪意のある組織やネットワークももちうるものである」として、「それを受け入れる支持者に依存し、受け入れる側が悪意のある人物であっても、この点に変わりはない」ことを指摘しています。
 第4章「ソフト・パワーの活用」では、広報外交が持つ、
(1)直接的な日々の情報提供:国内政策と外交政策の決定の背景を説明する活動。
(2)戦略的情報提供:イ繰るかの単純なテーマを設定し、象徴的なイベントや情報提供を計画し、中心的なテーマを印象付けるか、政府の具体的な政策を推進する。
(3)外国の主要な人物との永続的な関係を長い年月をかけて気づいていく:奨学金、交換留学、研修、セミナー、会議、メディアに登場する機会の提供など。
の3つの側面について、「どれも重要であり、直接の政府情報と長期的な文化交流の比率がそれぞれ違っている」と述べ、それぞれ、「時刻に関する魅力的なイメージを生み出す点で重要な役割を果たしており、それによって望む結果を獲得できる可能性を高めることができる」と師ながらも、「狭い国益を追求するものだと見えるか、傲慢に表明された政策では、ソフト・パワーを生み出すどころか、破壊する可能性が高い」と述べています。
 第5章「ソフト・パワーとアメリカの外交政策」では、減z内を、「アメリカの伝統を違った方法で利用し組み合わせる時期である」として、
(1)ジェファーソン主義をもっと強調し、
(2)ジャクソン主義をおさえるべきであり、
(3)ウィルソン主義者は長期的に政治の世界を民主主義的に変革していくことが重要だとしている点では正しいが、国際機関と同盟の役割を思い起こす必要があり、
(4)ハミルトンの現実主義を組み合わせて、短気を抑える必要もある、
として、「アメリカが成功を収めるためにはソフト・パワーの役割をもっと深く理解し、外交政策でハード・パワーのバランスを改善しなければ」ならず、それによって、「スマート・パワーになれる」と述べています。
 本書は、国家レベルのソフト・パワーについて論じているものですが、より小さな単位、例えば自治体レベルにおいても示唆に富んだ一冊です。


■ 個人的な視点から

 アメリカはもちろん「ハード」なパワーにおいても飛びぬけてますが、本書を読むと、実は「ソフト」なパワーこそが本当は恐いことがよく分かります。
 第2次大戦後の日本の占領期の記録や、朝鮮半島や台湾、満州などの外地政策を、本書の視点で読んでいくと、日本がいかに「ハード」なパワーに頼りすぎ、ソフトパワーを活用できなかったかがよく分かります。


■ どんな人にオススメ?

・アメリカがなぜ強いのかを知りたい人。


■ 関連しそうな本

 中村 伊知哉, 小野打 恵 『日本のポップパワー―世界を変えるコンテンツの実像』 2006年11月29日
 堀淵 清治 『萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか』 2007年04月15日
 フレデリック・L. ショット (著), 樋口 あやこ (翻訳) 『ニッポンマンガ論―日本マンガにはまったアメリカ人の熱血マンガ論』 2006年04月29日
 杉山 知之 『クール・ジャパン 世界が買いたがる日本』 
 北 康利 『白洲次郎 占領を背負った男』 2007年04月23日
 春名 幹男 『秘密のファイル(上) CIAの対日工作』 2006年08月24日


■ 百夜百マンガ

3×3(サザン)EYES【3×3(サザン)EYES 】

 伝奇モノ×ラブコメでコアな人気を築いた作品。結局のところ、現在連載している作品もコンセプトとしては同じようなものです。

« 分権化と地域経済 | トップページ | 日本人の行動パターン »

行政その他」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1244312/30598122

この記事へのトラックバック一覧です: ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力:

« 分権化と地域経済 | トップページ | 日本人の行動パターン »

2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ