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2007年4月14日 (土)

言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか

■ 書籍情報

言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか   【言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか】(#814)

  酒井 邦嘉
  価格: ¥945 (税込)
  中央公論新社(2002/07)

 本書は、「言語に規則があるのは、人間が規則的に言語を作ったためではなく、言語が自然法則に従っているため」であるという問題提起によって「言語を持つ心」のユニークな本質を明らかにし、サイエンスに人間の復権を促そうとするものです。
 著者は、「脳はどのように言葉を生み出すか」という問題は、サイエンスの最期のフロンティアの一つであるとして、その理由を、
(1)言語は脳の小路機能の頂点にあるので、ブラックボックスの究極にある。
(2)言語は人間にのみ備わった能力であり、言語の研究は人間でしかできない。
(3)言語は他のさまざまな認知機能と密接に結びついているので、言語の機能だけを取り出して研究するのが難しい。
の3点挙げています。
 また、著者は、学問の目指すべき具体的な方向として、
・問題1:人間にしかない言語機能は、文法を使う能力だと考える。文法は脳のどこにあり、他の認知機能とどのように分かれているのか。
・問題2:文法はどのようにして脳に作られるのか。その基本メカニズムが、言語の違いや個人差に依存しない普遍的なものであるのはなぜか。
・問題3:言語はそれ以外の認知機能とどうして違うのか。その違いを支える神経メカニズムあるいは分子メカニズムは何か。
の3つを挙げ、中でも「特に文法の法則性と、それを支える原理を知りたい」と述べています。
 著者は、本書の分析対象である「言語」を、
「言語とは、心の一部として人間に備わった生得的な能力であって、文法規則の一定の順序に従って言語要素(音声・手話・文字など)をならべることで意味を表現し伝達できるシステムである」
と定義しています。
 第2章では、言語獲得の3つの謎として、
(1)決定不能の謎:与えられる言語データだけから、幼児が言語知識のすべてを決定するのは不可能。
(2)不完全性の謎:幼児に与えられる言語データは不完全であり、不完全なデータから、なぜ完全な文法能力が生まれるのか。
(3)否定証拠の謎:なぜ文法的に間違った分が間違っていると分かるようになるのか。
の3点に整理しています。そして、この3つの謎を一気に解決してしまう回答として、「幼児の脳には初めから文法の知識がある」と考えればいいと述べています。
 本書はこの他、チョムスキーによって提唱された脳の「言語獲得装置」や、言語の脳科学に必要な4つの柱(言語学、工学的アプローチ、解剖学と生理学、遺伝学)等が解説されています。
 本書は、言語に対する脳科学的なアプローチに関心がある人なら読んでみてもいい一冊かもしれません。


■ 個人的な視点から

 本書には、「ジャバウォッキー文」という文が紹介されています。ジャバウォッキーとは、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』に出てくる詩の題名で、ジャバウォック怪物に関するものです。ジャバウォッキー文は、「辞書を引いても載っていない非単語を使った文」で、作品中では詩の始めと終わりにジャバウォッキー文が使われているそうです。


■ どんな人にオススメ?

・ジャバウォッキーに関心がある人。


■ 関連しそうな本

 ジュリアン ジェインズ (著), 柴田 裕之 (翻訳) 『神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡』 2006年06月04日
 ピーター アトキンス (著), 斉藤 隆央 (翻訳) 『ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論』 2006年5月5日
 けいはんな社会的知能発生学研究会 (著), 瀬名 秀明, 浅田 稔, 銅谷 賢治, 谷 淳, 茂木 健一郎, 開 一夫, 中島 秀之, 石黒 浩, 國吉 康夫, 柴田 智広 『知能の謎 認知発達ロボティクスの挑戦』 2006年04月09日
 ジェフ・ホーキンス, サンドラ・ブレイクスリー (著), 伊藤 文英 (翻訳) 『考える脳 考えるコンピューター』 2005年12月17日
 スーザン シャラー 『言葉のない世界に生きた男』 2007年03月24日
 V.S. ラマチャンドラン, サンドラ ブレイクスリー (著), 山下 篤子 (翻訳) 『脳のなかの幽霊』 2006年09月03日


■ 百夜百音

COMPLETE COLLECTION【COMPLETE COLLECTION】 ザ・キング・トーンズ オリジナル盤発売: 2001

 十分昔の曲なのですが、今聴いてもそれなりに聴ける日本のスタンダードな一曲です。

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