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2007年4月24日 (火)

政府会計の改革―国・自治体・独立行政法人会計のゆくえ

■ 書籍情報

政府会計の改革―国・自治体・独立行政法人会計のゆくえ   【政府会計の改革―国・自治体・独立行政法人会計のゆくえ】(#824)

  山本 清
  価格: ¥4725 (税込)
  中央経済社(2001/07)

 本書は、「政府会計を政府の経営システム改革の中に位置付け、どのような論理から会計システムの改革が国際的に進行しており、わが国の改革に欠けているのは何かを明らかにする」ことを目的としているものです。
 序章「政府会計の改革に向けて」では、「アカウンタビリティ(Accountability)と会計(Accounting)は、そのスペルに明確に現れているように密接な関係にあるというより、むしろ会計はアカウンタビリティを担保するシステムとして表裏一体のもの」であり、「結果について合理的に説明するには、記述的・定性的な情報より体系的・客観的に要約された情報と結果に関する関与について明らかにすること」が要求されていると述べています。
 そして、「アカウンタビリティと効率向上に対して、会計が何を果たさねばならないか、どのように機能するのかと同時に、第三の機能として利害調整や協調関係の確立・維持に何ができるかを明らかにしようとする」ことが本書の目的であると述べています。
 第1章「政府会計の発展の多様性と共通性」では、政府会計の目的・機能を、
(1)民主的統制とアカウンタビリティの確保
(2)資源管理の改善
(3)マクロ政策に資する情報提供
の3点に要約しています。
 第2章「会計システムの変革モデル」では、三重県の改革の事例を取り上げ、外部圧力として、北海道庁のカラ出張等による不正経理事件と、地方債の償還費が年々財政を圧迫しVFMを求める業績圧力が高まってきた(ただし、他の都道府県に比べるとむしろ健全であった)ことを挙げ、内部圧力として、民間の経営手法の導入と県庁組織の分権化を目指した北川前知事による経営システム改革を挙げています。
 また、今後の課題として、
(1)わが国の地方政府改革はいまだに進展中であり、特に会計システム改革は評価システム導入の次の政策として提案されているため、その効果について継続的に観察していく必要がある。
(2)本章で提示したモデルをわが国以外の他の諸国に適用して、その頑健性を検証すること。
(3)NPMと会計の関係を、サブシステム段階で詳細に検討すること。
の3点を挙げています。
 第3章「会計システム改革の国際的動向」では、会計システム変革の国際的動向について検討し、「現金主義から発生主義会計への以降は、単に会計技術の問題でなく政府の経営や改革で重視する内容により、アカウンタビリティ志向、マネジアリズム志向及び統合志向があること」を明らかにしています。
 第4章「財政制度改革と政府会計」では、各国の財政制度について、「米国にみられるように欧米諸国には、わが国のように歳入と歳出を同時に均衡させた形式で承認して予算とする方式でなく、歳出についてのみ歳出承認額(限度額)を与える方式があり、発生主義予算も歳入予算を除いた歳出予算のみに適用されることがあることに留意」すべきことが述べられています。
 またニュージーランドの予算制度について、「アウトプットコストを財源措置する点でアウトプットを供給する側の裁量性を認め、効率性を向上させるとともにアカウンタビリティも確保しようとする契約構造として評価できる」としています。
 著者は、各国の公会計制度の改革概要及びニュージーランド政府の財務改革から得られる教訓として、「会計制度の改革を決して独立の制度改革と位置づけるべきでないこと」すなわち、「予算制度、政府の経営システム及びアカウンタビリティ構造の改革の視点から、会計システムに何が必要かを明らかにし、会計制度の会アックと他の関係システムとの整合性・相互補完性が維持されねばならない」と述べています。
 第5章「ストックの管理と政府会計」では、政府の貸借対照表の機能を、
(1)アカウンタビリティの向上
(2)資源管理の改善
(3)財政・経済政策への活用
(4)議会統制の向上
(5)情報開示の改善
の5点に要約しています。
 また、わが国の貸借対照表の位置付けと利用については、「大統領制で三権分立が徹底している米国と議院内閣制で与党と内閣が一体となる行政優位のわが国で、同じモデルを採用することは政府経営に関して慎重な検討が必要である」と述べています。
 さらに、政府会計改革の課題として、
(1)リスク分析やVFM評価の技能と標準化
(2)予算統制の確保方策
(3)予算・会計制度の改革
の3点を指摘しています。
 第6章「政策評価と予算・会計」では、予算の目的・機能として、
(1)政府活動の経済的成果の事前測定
(2)財務資源の調達・統制
(3)アカウンタビリティの確保
(4)資源の効率的配分と利用
(5)利害調整
の5点を挙げています。
 そして、現在の行政改革の主流になりつつあるNPMにおける予算と評価のリンケージに関して、
(1)政策階層のレベルに応じた3つのマネジメント・サイクルに関して、予算と評価の連動を考慮する必要があること
(2)成果志向の行政を実現するには、内閣レベルのサイクルにおいては予算編成は施策のアウトプットの量と質に焦点を当てること、このためには発生主義による予算編成と会計報告が必要なこと
(3)施策と事務事業の整合性を確保しつつ、予算で認められた額と目的の範囲内で施策の実施方策である事務事業の権限と責任は各省庁に委ねること。
(4)予算編成の政治的過程の特性を踏まえ、評価の経済的合理性を過度に追求せず、アウトプットにかかるサービスの質に関し満足度調査等のソフトな評価手法も活用して利害関係者の調整や合意形成に活用すること
(5)単年度の予算編成におけるモニタリング的評価の活用と戦略的計画に合わせたプログラム評価を併用すること、後者ではアウトプットだけでなくアウトカムの評価も行うこと
5点に要約しています。
 第7章「政府の経営と管理会計」では、ABC(活動基準原価計算)について、「単に適正な原価の算定」という機能にとどまらず、「財・サービスの供給と顧客を供給側の活動を通じて結びつけるシステムであるため、原価がどのような活動により発生しているか及びサービスの質と原価の関係を明らかにすることができ、いわゆるWhat If分析を可能にする」と述べています。
 また、海外の事例の導入について、「集権的で投入志向の行政管理が行政改革を通じて変革されれば、自主的・内発的にコストや質を比較する必要性が生じてくるからABCやBCSあるいはその基盤としてベンチマーキングが活用されることは自然な展開である」と述べています。
 第8章「独立行政法人の経営と会計」では、独立法人制度について、「財務面に限定しても自立性、自発性を備えた法人として制度設計がなされているとは必ずしも言えない」と指摘した上で、
(1)中期目標は独立行政法人でなく主務大臣が設定することになっているから、法人はこれを受け入れるほかない。
(2)運営交付金については自律的な財源措置及び使用が認められているが、施設費等については公債発行対象経費に含まれる限り、財源措置は主務大臣及び財務大臣の裁量にゆだねられる。
の2点を挙げ、「独立行政法人の行う業務には一部について自立性を認めただけで、府省は企画立案と同時に当該法人の行う業務についても自ら主体的に行うことになる」と指摘しています。
 著者は、「成果の測定が比較的容易な行政サービスにおいても、業務運営の自律性は独立行政法人の第一次目的とされた組織的独立性だけでは不十分であり、経常的原資である運営費交付金についてのみ自立性と主体的な意思決定が認められているにすぎない」ため、「業務運営の成果及び計画自体に当該法人で管理不可能な要素が影響し、本来の自律的な活動保障を通じた効率と質の向上やアカウンタビリティの強化も不完全なものになる危険性が高い」と述べています。
 第9章「財務情報の公開と政府会計」では、「行政の効率化と同時に受益と負担の関係から行政サービスを見直すこと」が必要であり、「特に地方政府のサービスは費用と便益が地域内で尾ほぼ完結するため、財政情報を公開することにより、住民がサービスの質と量を選択するシステムを構築することが可能である」と述べています。
 第10章「政府監査の機能と効果」では、民主的統制にとって、「政府全体にマネジメント・サイクルの視点」が必要であると述べ、各国のSAI(Supreme Audit Institution, 最高会計検査機関)の組織的性格について、
(1)議会付属型:米国GAO
(2)司法型:フランスCDC
(3)独立型:日本BOA
(4)独立型に近いが司法官的組織:ドイツBRH
(5)議会と緊密な関係ながら議会から独立して監査活動を実施:英国NAO
などのように類型化しています。
 第11章「政策評価と会計検査」では、ニュージーランド以外のNPMを推進している諸国のSAIが、「いずれも政策・施策評価への拡充を図っている」ことについて、
(1)MPMの理論的前提を所与としても、供給者(政策の執行・実施者)の設定する計画目標及び業績指標が適正でない場合があり、このときには、行政府から独立した外部機関が妥当性を検証するとともに修正を勧告することが必要である。
(2)NPMでは、供給者はその実施する政策の枠組みに制約されて裁量性を有し、業績向上を図る構造をもっており、政策の枠組みの検討は、行政府から独立した機関が実施する以外ない。
(3)NPMの前提である市場原理や顧客志向が機能しなかったり、不適切なサービス部門がある。
の3つの側面から妥当であると述べています。
 第12章「政府監査と行政改革――米国のGAOを例にして」では、1993年8月に成立したGPRAについて、「政府の政策が何を行っているか、目的を達成しているかを測定し効率性・友好性を向上し、アカウンタビリティの改善を目指す」ことを目的にしたものであることが解説されています。
 著者は、その供給と課題として、「GAOのGPRAをめぐる活動はGPRAに規定された責務を超えて行政改革を推進するため大きな精力を割いている」ことを挙げ、わが国の会計検査院の活動の見直しを提言しています。
 第13章「政府監査の将来展望」では、会計検査のインパクトが小さい理由を、
(1)内部的要因:会計監査の伝統的アプローチに起因し、「明らかに無駄が発生していると検証できるものを探し出すことに重点が置」かれている。
(2)外部的要因:議会の側で利益供与型政治を志向する議員が多くなる場合に、評価の検査結果の高需要の委員会は中位需要の議会より生産を非効率に統制しても算出水準を高めようとするため、モニタリングや非効率を指摘する監査、評価の限界価値を議会全体より低くする。
の2点から分析しています。
 本書は、政府の会計制度や監査制度の新しい潮流を押さえておきたい人にはお奨めの一冊です。


■ 個人的な視点から

 公会計改革の本ということで、テクニカルな記述を中心としたもの、という先入観を抱きがちですが、本書は、行政学や政治学の視点から公会計改革の意味を追っているという点で、「公会計改革ってバランスシートのことだろ? あんなの手間だけかかって意味ないよ」という単細胞の方にも分かりやすい一冊ではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・「公会計改革=バランスシート」と思っている人。


■ 関連しそうな本

 桜内 文城 『公会計革命―「国ナビ」が変える日本の財政戦略』 2005年02月28日
 石原 俊彦 『地方自治体の事業評価と発生主義会計―行政評価の新潮流』 
 山田 真哉 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』 2005年08月19日
 石原 俊彦, INPMバランススコアカード研究会 『自治体バランス・スコアカード』 2005年11月01日
 ポール・R. ニーヴン 『行政・非営利組織のバランス・スコアカード―卓越した組織へのロードマップ』 2006年07月12日
 ロバート・S. キャプラン, デビッド・P. ノートン (著), 吉川 武男 (翻訳) 『バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革』 


■ 百夜百マンガ

G-HARD【G-HARD 】

 「ヤンキーもの学園漫画家」からのイメージ脱皮を図りつつ、ハード路線に転じるも、どうしてもこの絵だと、いざというときには「友情」で大逆転しちゃいそうな気がしてしまってハラハラしません。

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