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2007年4月20日 (金)

町内会と地域集団

■ 書籍情報

町内会と地域集団   【町内会と地域集団】(#820)

  倉沢 進, 秋元 律郎
  価格: ¥3600 (税込)
  ミネルヴァ書房(1990/09)

 本書は、「西欧の先進国に類例のない」、「地域集団であって、日本の都市社会をとくための最も重要なキーワードのひとつ」である町内会について、日本都市社会学会の第3回、第4回の大会シンポジウムの報告者や討論者による、「この日本社会をとく鍵ともいうべき集団の構造とその変容」についてまとめられたものです。
 第1章「町内会と日本の地域社会」では、一般的に町内会の組織上の特性として挙げられるものとして、
(1)加入単位が個人でなく世帯であること。
(2)全戸の自動または強制的な加入であること。
(3)活動目的が多岐にわたり包括的な機能を持つこと。
(4)業税の末端保管機能を果たすこと。
の4点について解説した上で、さらに、「ごく自明のこととされて多くの研究者が見落としている点」として、
(5)ひとつの地域にはひとつの町内会しかない。
を挙げ、「この排他的地域独占は所与のこととなっているが、他の集団と比べたとき町内会の性格を解く鍵になる非常に重要な点ではないか」と指摘しています。
 また、著者が岡山県の津山で調査を行った出火に対する町内会の対応の例を取り上げ、注意すべき点として、
(1)庁内が単位となって火事に対処する。それも役割分担が非常にはっきりして組織化されている、つまり制度化されていること。
(2)火事が起きたとき、見舞いに人々が駆けつけるのは、火災を受けた家というよりは町内である、ということ。
の2点を指摘しています。
 さらに、商店街のアーケードの修理費を巡る通沿いの商店と路地裏の住民との利害の対立の例を挙げ、歴史的な背景としては、「江戸でもどこでも本来明治以前から引き続いていた町内のルールというのは、表通りに、間口3間なら3間、5間なら5県の店と土地を持っている、そういう人たちの集団として町内というものはあった」ことを挙げ、裏店に住む、「浪人者やあんまや職人」、「後には勤め人たち」は、「本来町内のフルメンバーでなかった」ことを述べ、「町内を構成していたのは、土地持ち・家持ち層だけでなく、裏店の人々も含むが、今日の町内会に当たる町内の寄りあいに出席し、町内の意思決定に参加しうるのは、すなわち町内の正式の構成員としての権利と義務を持つのは、前者だけであった」と解説しています。
 第2章「町内会の歴史と分析視角」では、近代都市・東京の町内会の歴史を、
・第1期:明治地方制度が成立する明治20年代前半期までで、江戸時代の五人組制度を中心とした「町内自治制度」の解体期。
・第2期:大正中頃までの時期で、大都市行政制度が整備・成立していく一方、町内社会の担い手が伝統的産業の自営業者から新たな社会層へと交代して行く時期。
・第3期:町内会の地方的整備の時期で、社会的条件と行政的条件、政治的条件の三つの条件が絡まりあいながら、地方行政を中心とした町内会の整備が進行した時期。
・第4期:中央政府による町内会の整備期で、敗戦まで続き、町内会が官僚制機構の一部に組み込まれていった。
・第5期:占領軍政策下に町内会が「禁止」されていた期間。
・第6期:日米講和条約締結により、町内会禁止の命令が解かれて以降の時期で、伝統的な公私未分化の行政理念が次第に『復活』するとともに、町内会が、これまでとは比較にならないくらい「自主的に」自らの在り方を決めることができるようになった。
の6期に分けて解説しています。
 このうち、第2期については、
(1)明治33年(1900)から組織されていく衛生組合の動向
(2)町内会の結成母体となる町内の「有志団体」の叢生
という二つの注目すべき動きについて解説しています。
 また、第3期については、「町内会形成の前期と、形成された町内会が地方行政の中に確たる位置を獲得していく後期」とに分けることができ、前期については、「町内会の成立とは多くの場合、町内有志団体の全戸加入団体化」であり、「それまでの有志団体が、組織編制原理の変革を行い、町内居住のすべての世帯に門戸を開き、参加を呼びかけた」と述べています。そして、後期については、「社会教育のためだけでなく、総合的な地方行政との関連性を深め」、町内会のあり方を水路づけた要因として、
(1)震災後の区画整理と町名整理が、東京に住む人々を否が応でも、その居住地の町を単位とする問題に関わることを余儀なくした。
(2)大阪で開始され、現在の民生委員の前身に当たる「方面委員制度」の導入という社会福祉政策。
の2点を指摘しています。
 第5期に関しては、昭和22年の内務省発地第39号により、「現在町内会長、部落会長及び同連合会長が行っている行政事務は、本年四月一日までにすべて市、区、町村に移管すること」が決められ、「町内会が行政的な領域から切り離され」、「行政的領域に町内会を関与・動員させることを禁止した」ことが述べられています。これによって、「官」と「私」の関係は、強権的なものから「民主的」なものに少しずつ変わり、占領軍による町内会禁止にもかかわらず、都市に町内会が存続してきた理由として、
(1)占領軍と政府―地方団体との関係:行政の担当者は、町内会を存続させる必要を主張し、「形式的に」従えばいいと考えていた。
(2)地方行政能力の低下:「行政の貧困」が町内会を必要としていった。
(3)生活上の必要性:町内会が、生活物資の配給、地域的な秩序の維持などのために必要であった。
(4)敗戦が地域生活に与えた影響:交通や通信手段が十分でなかったため、人びとの日常生活は、町内を中心とした生活にならざるをえず、人びとの生活上の「地域」を狭域化し、私的な「生活の貧しさ」が生活上近隣の相互扶助を必要とし、そのことが間接的に、町内会を必要とさせていった。
(5)町内レベルのリーダー層の健在性:町内リーダーは多くの場合、町内社会内においては、打撃を受けることがなかった。
(6)大正末から昭和20年までの間に、町内会が自らの存在の「正当性」を都市社会において獲得した。
の6点を挙げています。
 第3章「文化型としての町内会」では、町内会の歴史について批判する側の指摘として、
(1)前近代的集団、あるいは封建的組織であり、五人組を継承するものである。
(2)住民の自主性とは無関係に上から作られた組織、つまり官制団体である。
(3)常に軍国主義やファシズムと結びつく体質を持ち、戦時中の戦争協力のことからもこれは明らかである。
の3点を挙げ、それぞれについて、
(1)町内会は一応五人組とは断絶していると考えねばならない。江戸時代の五人組は、一町内の家主(大家、家守とも言われ借家の所有者ではなく、所有者である地主に委託されて当時店借といわれていた借家人の管理にあたっていたもの)が構成していた組であり、現在であれば、区役所の派出所に当たり、構成員が限定されていた。
(2)町内組織は自然発生的に形成された。
(3)町内会は住民の意識が向かっている方向に動くのであり、日本人の意識の大勢が協力を是としたところから、社会の一部でありそのような意識を持つ人びとの構成する町内会も協力に応じた。
と反論しています。
 第4章「高齢者の都市地域集団関係」では、「町内会をはじめとして高齢者が持つフォーマルな集団加入と参加活動の実態」について分析し、「インフォーマルな諸関係、総合生活満足度との関連を比較都市論的に検討」した結果、
(1)都市高齢者の二類型――久留米型(九州・中都市)と札幌型(北海道・大都市)――が対照的に確認された。
(2)久留米型(九州・中都市)は多様な集団ネットワークを持ち、多方面への展開を通して、生活構造の幅を拡張している。
(3)札幌型(北海道・大都市)は町内会という地域集団に個人のネットワークが収束し、インフォーマルとフォーマルの両生活構造とも縮小ぎみである。
(4)集団参加活動でも「老人クラブ活動」、「学習活動」、「宗教活動」においては、久留米型(九州・中都市)が札幌型(北海道・大都市)よりも積極的であった。
(5)ソフトな都市づくりの主内容を表すコミュニティ形成の観点からは、インフォーマルな生活構造の豊かさに加え、フォーマルな集団加入の多方向性と参加活動の積極性から、久留米型(九州・中都市)に展望がある。
(6)札幌型(北海道・大都市)の高齢化政策課題は、ソフト面の展開にある。
の6点の結果を導いています。
 第7章「コミュニティと地域の共同管理」では、「コミュニティの場に見られる多くの活動(その担い手としての集団)の構成」について、
(1)全戸参加・問題解決型:コミュニティ施設整備、防災、交通安全、ゴミ処理など。世帯単位での協力が求められる。
(2)全戸参加・生活充実型:文化祭、運動会などの親睦、交流。
(3)有志参加・問題解決型:個人ボランティアだけでなく、老人会による独居老人訪問活動、婦人会によるファミリーサービス活動、老人給食など。
(4)有志参加・生活充実型:文化・スポーツクラブなど、個人をメンバーとする活動。
の4つの類型を見いだしています。
 第8章「町内会の機能」では、行政機関との関係で見た町内会機能として、従来から問題とされてきた、
(1)行政補間機能:町内会の行う行政連絡の伝達・募金・調査の取りまとめ、各種委員の推薦などの活動。
(2)圧力集団機能:住民共通の生活要求を取りまとめ、それを行政に伝達し、実現のための圧力行動を行う。
に加え、両機能の中間領域に自立してきた
(3)住民参加機能:行政施策への参加活動を指し、とりわけ行政とのコミュニティ事業における白書の作成、地域の診断、事業計画の作成と実施、施設の建設と運営などに町内会が参加する活動。
を追加しています。
 本書は、すでに出版から20年近くが経過し、必ずしも現在の町内会の実態を表すものではありませんが、町内会についての体系的な理解を得るためのまとまった一冊です。


■ 個人的な視点から

 「隣組」といえば思い出すのは、「トントン トンカラリンと隣組、障子をあければ顔なじみ、まわしてちょうだい回覧板、知らせられたり、知らせたり」という曲です。個人的には、小学生の頃に読んだ「マンガ 日本の歴史」とかいう本の中で歌詞を初めて見た気がしますが、当時はこの曲のメロディは知りませんでした
 この曲が「ド、ド、ドリフの大爆笑」と同じメロディだと気づいたのは30を過ぎてからでしょうか。
 そう考えると、社会的なキャンペーンソングとして、秀逸な例の一つなのかもしれません。
 さらに驚いたのは、この曲がNHKの「みんなのうた」(の前身に当たる「國民歌謠」)から出てきた曲だということです。


■ どんな人にオススメ?

・町内会のルーツをたどりたい人。


■ 関連しそうな本

 金子 郁容, 藤沢市市民電子会議室運営委員会 『eデモクラシーへの挑戦―藤沢市市民電子会議室の歩み』 2005年10月21日
 D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳) 『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』 2005年03月15日
 D.ヘントン (著), J.メルビル (著), K.ウォレシュ (著), 小門 裕幸 (翻訳), 榎並 利博, 今井 路子 『社会変革する地域市民―スチュワードシップとリージョナル・ガバナンス』 2005年10月03日
 金子 郁容, 渋谷 恭子, 鈴木 寛 『コミュニティ・スクール構想』 2006年04月06日
 鵜浦 裕 『チャーター・スクール―アメリカ公教育における独立運動』 2006年03月31日


■ 百夜百マンガ

愛がいそがしい【愛がいそがしい 】

 『神童』の映画化のせいか、長らく忘れ去られていた旧作も文庫化されるようです。帯を見てはいませんが、「大ヒット、映画化された『神童』の原点がここにある」とか書かれているんでしょうか。

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