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2007年4月16日 (月)

三位一体改革と地方税財政―到達点と今後の課題

■ 書籍情報

三位一体改革と地方税財政―到達点と今後の課題   【三位一体改革と地方税財政―到達点と今後の課題】(#816)

  神野 直彦
  価格: ¥2625 (税込)
  学陽書房(2006/11)

 本書は、「『三位一体改革』という歴史的出来事」に携わった「歴史の生き証人」である著者らが、「未来に真実を語り継ぐことが使命だという認識」のもと、編纂したものです。
 第1章「三位一体改革の意義と課題」では、「改革(reformation)」という言葉が、「再び(re)」と「形造る(form)」の合成語であることか亜r、「本来の形に戻すこと」であるとして、「三位一体改革」の意味を、「国税から地方税への税源移譲、補助金の改革、交付税の改革という国と地方自治体との財政関係を構成する三つの要素を、有機的に関連づけて、国と地方自治体との財政関係を『本来の形に戻すこと』である」と述べています。
 そして、日本において、「地方財政が地域住民の協働意思決定の基づいて運営されることを困難にしている」ルートとして、
(1)機関委任事務に象徴されるように、国の指令や命令によって「歳出の自治」を奪うというルート。
(2)補助金バラマキによって、「歳入の自治」を奪うというルート。
の2つのルートを挙げています。
 また、地方分権改革の次のステージの課題を、
(1)地方分権改革を国の関与を廃止・縮小する段階から地方自治体の役割を高める段階へと進めること。
(2)地方自治体の役割を増加させて自立させる「上から下へ」の改革だけでなく、「団体自治」から「住民自治」へと踏み込み、「下から上へ」の流れを作り出す改革に着手すること。
であると述べています。
 第2章「三位一体改革の経緯」では、2005年11月30日の政府・与党合意について、
・3兆円の大規模な税源移譲はこれまでにない画期的な改革であり、分権にとって大きな前進であること。
・個別の国庫補助負担金改革について、生活保護が盛り込まれなかったこと、施設費を対象に含めたことは評価、しかし、児童扶養手当、児童手当、義務教育費の国庫負担率の引き下げは地方分権改革に理念に沿わないものと批判。
・将来について、2007年度以降もさらなる改革を進めるべき。
と、地方六団体が声明を発表したことを解説しています。
 第3章「三位一体改革の到達点」第1節「国庫補助負担金の改革」では、「補助金改革、税源移譲というアウトプットとは別に、重要な副産物があった」として、「地方が国の求めに応じ、自ら国に対し税源移譲に結びつく補助金改革案を作り上げ、政府に提示したこと、そして、『国と地方の協議の場』が設定され、それを閣僚相手に同じテーブルでの交渉で実現に結びつけたこと」を挙げ、「このプロセスは歴史的にも貴重な経験となった」としています。
 また、三位一体の議論が、「霞が関にとって非常な脅威」となり、「三位一体と霞ヶ関の中で薦めたいと思っている組織」は、総務省の中の旧自治部局のみであり、「他の事業官庁、あるいは国の財政当局は、ただでさえ足りない国税を地方税に移管するという発想は、もともと不見識だと言い続け」、各省庁にとっては、「自分たちが予算要求して大事に守り育ててきた補助金を廃止して、それを地方税に振り替えて地方に渡すなどということは、尋常では考えられない発想」であり、事業官庁の立場では、「補助金があって組織が動き、地方との接点が出てくる。補助金がなくなると、自分達の仕事のツールがなくなることを意味」し、組織の存続に関わる問題であることが解説されています。
 第2節「地方税の改革」では、2004年の政府税調の答申で検討された、消費税から地方消費税への税源移譲の実現可能性について、
(1)消費に関連した基準により都道府県間で清算を行うことにより税収の偏在性が少なく、安定的である。
(2)地方においても福祉サービスの安定的な提供が求められているなか、役割は重要である。
(3)国の消費税の制度と一体のものとして仕組まれており、全国一律の税率が前提である。
(4)国が委託を受け、消費税と合わせて徴収を行っており、地方が直接に税を徴収するしくみとなっていない。
の4点のまとめを紹介しています。
 その上で、今回の税源移譲では、「所得税から個人住民税への税源移譲の優位性が勝った」ため、地方消費税の出番はなかったが、「今後の局面においては、地方消費税こそが最も充実させるべき基幹税であるといって差し支えない」と述べています。
 また、税源移譲の受け皿として、「最も可能性が高い」と考えられていた個人住民税についても、2004年度の政府税調答申から、
(1)税体系の中で個人住民税が応益性や自主性の要請に最も合致している。
(2)所得割の税率のフラット化、均等割りの充実といった改革を進めていくことが重要である。
の2点を紹介しています。
 さらに、個人住民税所得割の税率が10%比例税率かされることに伴う、「この10%の税率を都道府県民税と市町村民税にどう分けるか」という問題について、「マクロベースでおおむね今回の国庫補助負担金改革の影響を反映した税収が確保できる」という試算結果と、「市町村重視という観点」を踏まえ、「10%比例税率の内訳を、都道府県民税を4%、市町村民税を6%とする案が与党の税制調査会に示され、そのまま了承、決定されることとなった」ことが述べられています。
 著者は、「税源移譲の結果、おおむね9割近くの納税者にとっては、個人住民税(所得割)の税額が所得税額よりも大きくなる」という見込みについて、こうしたことは税源移譲前には、ごく一部の場合しか生じていなかったが、「税源移譲後は、納税者にとっての個人住民税の比重はかつてなく重要なもの移ること」になり、「行政に関して需要と負担の関係の明確化が求められているなか、まさに画期的な変化」であり、「住民が地方団体に向ける目もより厳しいものになると考えられ」、「地方団体全体として、負担に見合った行政サービスとは何か、住民と向き合った財政運営をいかに行うかが従来以上に大事になる」と述べています。
 さらに、課税自主権に関しては、法定外税の税収が増えたとしても、地方税収に占める割合はわずかであり、「今後も法定外税に税収面で大きな期待を寄せることはできない」が、「必ずしも税収そのものを目的としない税が現れている」として、典型的な例として、杉並区のレジ袋税や豊島区のワンルームマンション税などを紹介しています。
 第3節「地方交付税の改革」では、交付税改革の具体的な論点として、「財源保障機能と財源調整機能という交付税制度の有する機能を有効・適性に発揮していくため」、
(1)総額:交付税の総額をどのように設定すべき
(2)配分方法(算定方法):個別団体の配分方式はどのようにすべきか
という2つの論点があることを紹介しています。
 そして、財源保障機能と財源調整機能について、
(1)何らかの財政需要に着目して、その財源の保障をするために、国から地方に対して財政移転を行うと、移転された財源は、地方団体間の財源格差の調整機能を発揮する。
(2)何らかの財源調整を意図して、国から地方に対して行われる財政移転は、その前提として、何らかの財政需要についての財源を保障することを目的とするものである。
(3)両機能の相対的な主従関係は別として、(1)と(2)は同じことを言い替えたものである。すなわち、何らかの財源保障を行う際には、それがどの程度の財源調整機能を発揮するかを視野に入れつつ制度設計するものであり、何らかの財源調整を行う際には、それがどのような財政需要を保障するものなのかを視野に入れつつ制度設計を行うものである。
の3点により整理しています。
 また、三位一体改革が、「地方分権の推進を目的とすることはもちろんであるものの、同時に、国と地方を通じた財政健全化も目指しているものであり、地方歳出の見直し・抑制に取り組み、また地方税収の増加の結果として、財源不足額が減少し交付税総額の抑制が図られたものである」と述べています。
 著者は、今後の財政調整制度を考えていく上で、
(1)中長期的に持続可能な制度であること
(2)予見可能性の高い制度であること
という視点が必要であるとしています。
 第4章「地方財政の将来」では、日本が、「社会経済構造にあった財政に転換しようとしている」ことが、財政再建の社会的背景であると同時に、「再建ではなく、財政構造改革と呼ぶべき」であると述べています。
 また、地方税改革に関して、「交付税対象税目と地方税を入れ替えること」も議論されており、「地方税の法人課税を交付税財源の国税とし、同額の消費税(交付税財源分)を地方消費税とする」議論がなされ、地方六団体の「七つの提言」でも、「地方税は地域偏在性が比較的少ない税目構成とし、地方交付税の原資は地域偏在性の比較的大きな税目構成となるようにすること」を提言していることを紹介しています。
 本書は、三位一体改革について、分かりやすく、コンパクトに解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 地方税制の見直しについては、最近の報道では政府でも見直しの検討を進めているみたいですが、どこまで本気でやるつもりなのでしょうか。
 補助金や交付税の見直しに引っ張られて税源が移譲され、税制の見直しに引っ張られて国の仕事が見直され、という良い循環になればよいのですが、どこかで梯子を外されて財務省だけがほくそえむ、という結果に終わらないように注視したいと思います。


■ どんな人にオススメ?

・「三位一体改革」という歴史的事実を記憶しておきたい人。


■ 関連しそうな本

 赤井 伸郎, 山下 耕治, 佐藤 主光 『地方交付税の経済学―理論・実証に基づく改革』 2005年01月27日
 土居 丈朗(編著) 『地方分権改革の経済学―「三位一体」の改革から「四位一体」の改革へ』
 赤井 伸郎 『行政組織とガバナンスの経済学―官民分担と統合システムを考える』 2006年11月24日
 上村 敏之, 田中 宏樹 (編著) 『「小泉改革」とは何だったのか―政策イノベーションへの次なる指針』 2006年11月2日
 兵谷 芳康, 小宮 大一郎, 横山 忠弘 『地方交付税』 2007年03月22日
 平嶋 彰英, 植田 浩 『地方債』 2006年12月14日


■ 百夜百マンガ

電影少女―Video girl Ai【電影少女―Video girl Ai 】

 千葉県民としては見逃せない(を口実にしてしまう)作品。テレビから人が出てくるっていう、ギャグマンガ(2次元→3次元という逆平面ガエル)かホラー映画(貞子!)か、という設定でラブコメを読ませてしまうのはやっぱり画力でしょうか。

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