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2007年4月12日 (木)

テレビ政治―国会報道からTVタックルまで

■ 書籍情報

テレビ政治―国会報道からTVタックルまで   【テレビ政治―国会報道からTVタックルまで】(#812)

  星 浩, 逢坂 巌
  価格: ¥1260 (税込)
  朝日新聞社(2006/06)

 本書は、「小泉とテレビとの関係をきっかけに、テレビと政治との現在・過去・未来を考えてみよう」というねらいを持ったものです。著者は小泉の手法を、「ひと言でいえば、自民党や国会、そして永田町の政治メディアを飛び越えて世論に渦を巻き起こし、その力を使って政治を動かす」ものであると評しています。
 第1章「郵政総選挙とテレビ政治」では、2005年総選挙時に、「小泉自民党が提起した『郵政民営化一本やり』の争点設定と『刺客』ブームに対してテレビ側に戸惑いはあったが、結局は小泉自民党のペースを崩すことはできなかった」というメディア側の反省点があったことを述べています。
 また、現代の政治メディアの構成員を、
(1)大手新聞社や共同、時事の両通信社、NHK・民放などの政治部記者:オーソドックスな政治メディアであり、ほとんどが記者クラブに所属して記者会見や記者懇談に出席。
(2)『文芸春秋』、『週刊文春』、『週刊新潮』などの硬派月刊誌・週刊誌、テレビでも討論番組、特集番組などのスタッフ
(3)スポーツ紙、芸能週刊誌、テレビのワイドショーのスタッフ
の3列に類型化し、2001年の小泉政権誕生以来、それまで第1列が中心だった政治報道が大きく変わり、小泉首相や当時の田中真紀子外相がワイドショーに連日取り上げられることで、第3列についた火が、第1,第2列に及んできたと分析しています。
 第2章「政治とテレビの変遷 1」では、1972年6月17日の佐藤首相退任時の記者会見において、「僕は国民に直接話したいんだ。新聞になると、文字になると違うからね。偏向的な新聞は嫌いなんだ、大嫌いなんだ。テレビは真実を伝えてくれる。私の心境もそのまま伝えてくれる」と語り、「新聞記者が退席した会見場でテレビカメラに向かって退任の弁を述べるという異例な形をとった」ことが紹介されています。
 また、自民党の歴代政権を中心にメディアとの関わりを概観し、「自民党内の『傍流』から誕生した政権は、メディア、とりわけテレビ対策に心を砕き、政権のパワーとしてテレビを活用した」という法則を見いだしています。
 第3章「政治とテレビの変遷 2」では、国会でのテレビの取り上げられ方に、「1950年代と60年代の上昇期、70年代と80年代の停滞期、80年代末から現在までの再上昇期という、3つの時期」があることを示し、「90年代に入りテレビが政治的な影響力を増大させた」という言説に親和的であると述べています。
 また、1980年代末からの第3次テレビ政治が、「派閥争いの『キャンペーンの場』『宣伝のアリーナ』としてのテレビが、徐々に『説明の場』『説得のアリーナ』へと変化していき、ついには政治本体の変容を導き出していくプロセス」として理解できることを示しています。
 また、80年代後半以降に拡大したニュース番組や討論生番組が、「激動する政局に寄り添いながら、政局そのものを活性化させる役割を果たした」が、この時期の政治家のほとんどは、「ほとんどが、政界話に終始し」ていたという指摘を紹介しています。
 さらに、「政治家の宣伝的テレビ利用と、テレビ局の政治を『絵』に使用とする傾向がもたらした、テレビに大きく左右され、影響を受けやすくなった政治」という定義のテレビ政治はテレビの誕生当初から存在していたと述べています。
 そして、小泉について、「テレビ露出に関しては、これほどカメラの前に身を晒しフレーズとイメージの露出量を保ち続けてきた首相はテレビ政治史上存在しない」として、「この徹底した露出を支えているものが、小泉が官邸で平日毎日行っているテレビ記者会見である」と述べています。
 また、小泉のテレビ政治を、「明確なメッセージをテレビによって伝えることで、国民の関心と期待を調達しながら、テレビを武器にそのメッセージを具現化することでリアリティーを与え、それによって指示を維持・拡大していくという循環に特徴付けられる」と評しています。
 第4章「テレビ政治の社会学」では、新聞の発行部数を都道府県別に比較し、
・全国紙といわれている新聞は関東圏と大阪圏に部数が集中している
・地方紙が6割以上の普及率を誇っているのは13もの県にのぼる。
として、「地域というメガネをかけてみると、日本は、関東圏と大阪圏を除いて、地方紙の王国であり、その点で実は日本において(も)新聞はサーキュレーションという点で県を単位とした『分権的』(分県的)な配置になっている」ことを指摘しています。
 一方でテレビは、
・「配置」においては中央集権的である。
・「量」においては膨大である。
として、「東京にある『キー局』は、日本全国のほとんどすべてのテレビ受像器に音と映像を同時に伝えることが可能な『配置』となっている」と述べています。
 また、テレビカメラの変化がもたらしたテレビ政治への影響について、
ENG(Electonic News Gathering)と呼ばれる、ハンディ・カメラと小型VTRによる収録システムが政治報道に導入されたことで、「従来の政治情報の流れと質を徐々に変化させ」、「敵のみならず味方に関する精度の高い情報の保有こそが、権力闘争に勝ち抜く際の必須の条件であり、適切な時期に適切な情報を流通させることで、状況をコントロールすることも可能である」と述べています。
 そして、「テレビを用いることで政治家は『正確なニュアンス』を伝える可能性を上昇させうるが、自身の発言が膨大な人間に瞬時に伝わってしまう性質は、政治家に発言の『速度』や『うまさ』を要求することになり、逆に政治家を追い込むものでもあった」と述べています。
 さらに、小泉政権下のワイドショー政治が、「放送され続けてきた政治的な話題が、途切れなき様々な『闘い』のエピソード群であった」ことを指摘しています。
 本書の副題にもなっているTVタックルについては、この「闘い」を「リアルにわかりやすく表現し、それによって視聴者に受容されてきた」と紹介し、その魅力が、「わかりやすさと本音」にあり、政治がわかりやすく表現され、国民の理解が進むこと自体は日本政治に対して大きな貢献をしているが、一方で「小泉時代のテレビ政治が陥った隘路」に直面しているとして、
(1)小泉への徹底した風刺や批判が難しかった。
(2)ごまかしのないスリリングな議論の場を設定しようとすればするほど、政権が設定した政治的争点に議論の「ネタ」がはまりこんでしまう。
の2点を指摘しています。
 第5章「テレビ政治の将来」では、テレビの政治報道に関して、
(1)中身の充実
(2)討論性の重視
(3)自己検証の強化
(4)国際性
の4点を提言しています。
 本書は、90年代以降の、日本の政治の変化をテレビを軸に検証した、わかりやすい一冊です。


■ 個人的な視点から

 『TVタックル』は、もともとあんなに政治家が出てくる番組ではなかったのですが、いつの間にか土日朝の討論番組のライト版みたいな位置づけになってしまいました。
 月曜の夜9時からという時間も、土日の朝っぱらから政治家の顔なんか見たくねーよ、という層に受け容れられやすかったのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・最近、テレビで政治家を見かけることが多くなったと感じている人。


■ 関連しそうな本

 G.E. ラング, K.ラング(著), 荒木 功, 小笠原 博毅, 黒田 勇, 大石 裕, 神松 一三 (翻訳) 『政治とテレビ』 2007年04月04日
 菅谷 明子 『メディア・リテラシー―世界の現場から』 2005年9月7日
 横江 公美 『判断力はどうすれば身につくのか―アメリカの有権者教育レポート』 2005年7月13日
 高瀬 淳一 『武器としての「言葉政治」―不利益分配時代の政治手法』 2006年8月10日
 高瀬 淳一 『情報と政治』 2005年6月23日
 ドナルド・R. キンダー (著), 加藤 秀治郎, 加藤 祐子 (翻訳) 『世論の政治心理学―政治領域における意見と行動』 38887


■ 百夜百マンガ

オッス少林寺【オッス少林寺 】

 Wikipediaによれば、
> 少林寺拳法では本来、空手独特の押忍(オッス)という挨拶を禁じている。
> これは開祖である宗道臣が「おはようございます」を省略した悪習であるとして、
> 一般に広く使われている挨拶を使用するよう講習会等で強く禁じていた。
とのことです。タイトルの中にすでに矛盾をはらんでいる作品。

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