ソーシャル・ガバナンス 新しい分権・市民社会の構図
■ 書籍情報
【ソーシャル・ガバナンス 新しい分権・市民社会の構図】(#923)
神野 直彦, 澤井 安勇 (著)
価格: ¥2730 (税込)
東洋経済新報社(2004/1/30)
本書は、「自立的な市民層の社会的活動を中心にすえて、近未来のわが国社会の構図を描いてみよう」ということをテーマとしたものです。著者は、今後、「これまで相対的に弱体だった市民セクターの強化に社会を挙げて取り組むことが緊要の課題で」あり、「まだ未成熟な市民社会組織や弱体化の著しい地域コミュニティの強化・再生などを通じて、ようやく兆候の見えてきた自立的市民社会への狭い道を広げていくことが必要であり、それが実現した政治・社会状況こそ、本書で言う『ソーシャル・ガバナンス』の世界である」と述べています。
第1章「ソーシャル・ガバナンス」では、「市場の失敗」と「政府の失敗」を克服する道こそが、ソーシャル・ガバナンスの道であり、「ソーシャル・ガバナンスとは『政府の失敗』を再市場化によって克服しようとする新自由主義への対抗戦略と言うことができ」、「市民社会を強化することによって克服しようとする戦略」であると述べています。
そして、「社会システムが社会の構成員の自発的協力によって実施する機能」として、
(1)社会の構成員が相互に助け合う相互扶助機能
(2)社会の構成員が共同の困難を解決するために実施する共同事業
の2点を挙げ、「相互扶助を目的とする機能集団」である「自助組織」について解説しています。
また、「ソーシャル・ガバナンス」を、「社会システムが新しい開かれた共同体として、自発的に再組織化されること」であり、「国民が広く参加する国民運動として、ボランタリー・セクターが活性化していくことを基盤としている」と述べています。
さらに、「アソシエーション」を、「市民社会を構成するための不可欠な要素」であるとした上で、「デモクラシーが再生するには、表決型から対話型へとそのあり方が変らなければ」ならず、「対話型デモクラシーを支えるには、『公』を担う社会アクターとしてのアソシエーションが豊富に存在することが重要である」と述べています。
著者は、「現代のガバナンス概念」を、「全体社会を構成するさまざまな社会的アクターの相関構造・相互作用関係によって形成される秩序関係または統治システムの発現パターン」という「相対的関係論として語られることが多くなった」と紹介しています。
第2章「欧米諸国における市民社会組織の機能と役割」では、スウェーデンにおける非営利活動の主体である「フォレーニング」と財団、フランスにおいて、100年以上も前から活動している「アソシアシオン」、アメリカを中心とした諸外国における市民組織の活動状況などについて紹介した上で、サラモンとアンハイアーによる非営利セクターの類型として、
(1)コーポラティスト型:政府支出も非営利セクターも大きい。
(2)社会民主主義型:政府支出は大きいが非営利セクターは小さい。
(3)リベラル型:政府支出は小さいが非営利セクターは大きい。
(4)ステイティスト型:両者とも小さい。
の4つを紹介しています。
そして、「国家・市場・コミュニティの3領域にまたがる第3セクターの一部として位置づけられる」「ソーシャル・エコノミー」について、その特質として、
(1)社会的目的を有するため利潤最大化を行動原理とせず、民主的経営参加を行うため経営参加が資本の所有に基づかない点において、市場領域のアクターと異なる。
(2)強制性より自発性、全体性より個別性が強調され、かつ民主的な意思決定を行いやすい点において国家領域と異なる。
(3)地縁・血縁に基づく継続的関係によらずに財・サービスの提供を行う点においてコミュニティと異なる。
の3点を挙げ、その課題として、
(1)現実には常に市場領域や国家領域との緊張関係や依存関係をはらんで存在している。
(2)過度の外在的期待が存在する場合には、その自立性・自発性が損なわれやすい。
の2点を挙げています。
第3章「わが国における市民社会組織の現状と課題」では、「任意参加型市民社会組織のイメージ」として、
(1)市民社会に貢献する活動を行う、政府および関係行政機関でも企業法人でもない組織であること。
(2)市民の自由意志による参加で結成された組織で、かつ、民主的な運営が確保されたものでなければならない。
(3)最小限必要な社会的責任を担えるだけの組織実態と運営ルールを備えている。
の3点を挙げています。
また、「市民自治や市民活動の単位としての公共圏域」という視点が重要になった理由として、
(1)公共政策の担い手として、個々の市民や市民組織、法人市民としての企業など多種多様なアクターが参加することが要請され、現実にそのような状況が急速に進展しつつある。
(2)経済活動などに対する規制の廃止・緩和などの政府規制改革の課題。
(3)市民組織、なかでもNPOやボランティア組織などの市民活動組織が、自治体の行政区域や国家の領域を超越して、自由に活動領域を展開しうることをその本質とする。
さらに、「市民活動団体が地域社会のソーシャル・ガバナンスにおいて果たす主な役割」として、
(1)社会的課題の発見
(2)社会的課題の解決に向けての他者への働きかけ
(3)社会的課題の解決に向けての自主的取組み
(4)社会的課題の解決に向けての関係者調整
の4点を挙げています。
本書は、新しい社会の構図として、著者らが思い描く姿を、多くの執筆者が思い思いに自由に伸び伸びと語っている一冊です。
■ 個人的な視点から
「ソーシャル・ガバナンス」という理念がちょっと広すぎるのか、まとまりがなくなってしまったというか、1冊の本にするには収まらないような印象を受けました。
もう少し、執筆者数を絞り込んで、個々の分量を増やした方がインパクトがあったかもしれません。
■ どんな人にオススメ?
・新しい市民社会の姿を模索している人。
■ 関連しそうな本
神野 直彦 『三位一体改革と地方税財政―到達点と今後の課題』 2007年04月16日
神野 直彦, 井手 英策 『希望の構想―分権・社会保障・財政改革のトータルプラン』
神野 直彦 『地域再生の経済学―豊かさを問い直す』
神野 直彦, 池上 岳彦 『地方交付税 何が問題か―財政調整制度の歴史と国際比較』 2007年06月01日
上山 信一 『「政策連携」の時代―地域・自治体・NPOのパートナーシップ』 2005年03月28日
D. ヘントン, K. ウォレシュ, J. メルビル (著), 加藤 敏春 (翻訳) 『市民起業家―新しい経済コミュニティの構築』 2005年03月15日
■ 百夜百マンガ
テレビドラマになった『夏子の酒』の続編です。時代を遡った続編というのは、時代設定はしやすいかもしれませんが、元の作品と辻褄をつけるのが難しいかもしれません。『北斗の拳』と『蒼天の拳』とか。
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