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2007年10月31日 (水)

グローバル時代のシティズンシップ―新しい社会理論の地平

■ 書籍情報

グローバル時代のシティズンシップ―新しい社会理論の地平   【グローバル時代のシティズンシップ―新しい社会理論の地平】(#1014)

  ジェラード デランティ (著),佐藤 康行 (翻訳)
  価格: ¥3150 (税込)
  日本経済評論社(2004/10)

 本書は、「とりわけグローバリゼーションと新しいコスモポリタンによる挑戦の台頭を受け、シティズンシップと国籍とのあいだのズレが大きくなっている事態を探求したもの」です。著者は、「こんにちシティズンシップと国籍との違いは、いくつかの理由から曖昧になった」として、
(1)出生より居住の方がシティズンシップの権利を決定する重要な要因にますますなりつつある。
(2)シティズンシップと国籍とが曖昧になってきたことに加え、シティズンシップの権利と人権のあいだのかつての区別もますます曖昧になってきている。
(3)テクノロジーが生み出す新しい種類の権利がより重要になりつつある。
(4)伝統的なシティズンシップの前提の一つであった、公的なものから私的なものを切り離す事態が侵食されてきた。
(5)集団的権利や文化的権利の台頭がかつての個人的権利の関心に置き換わりつつある。
の5点を挙げています。
 著者は、本書の目的として、
(1)シティズンシップの政治理論と社会学のあいだを架橋すること。
(2)コスモポリタンなシティズンシップが何から構成されているのか、そしてこの間の発展が古典的なシティズンシップ理論との関係でどのように位置付けられるのかということを、関心を抱いている人々にできるだけ完結に説明すること。
(3)シティズンシップの理論家に関心を持ってもらうこと。
の3点を挙げています。
 第1章「シティズンシップのリベラルな理論」では、近代的なシティズンシップ理解が、「社会の成員資格が形式的平等原理に基づいていなければならないという考えにあった」と述べ、この原理が、「権利の特別な理解によってて意義付けられていると一般的に理解されてきた。義務もまた同様である」と述べています。
 また、マーシャルのシティズンシップ理論における中心的問題として、
(1)文化的権利からの挑戦。
(2)グローバリゼーションと多元的モダニティからの挑戦。
(3)形式上のシティズンシップに対する実質的シティズンシップからの挑戦。
(4)シティズンシップと国籍との分離の問題。
(5)ネオリベラリズムの登場つまりアメリカの慣習でいう「新保守主義」の出現から、シティズンシップの運命を論じることができる。
の5点を挙げて論評しています。
 第2章「コミュニタリアンのシティズンシップ理論」では、近代的シティズンシップの古典理論が、「シティズンシップを位置づける場所として公共圏をとらえそこなった」と述べています。
 著者は、「権利に基づくシティズンシップの構想について、リベラルと保守的、市民的の三つの主要なコミュニタリアニズムを批判的に議論」し、「これら三つともシティズンシップを政治化するということでは関心を共有し、リベラリズムと社会民主主義に結びついた国家中心の伝統に欠けている実質的次元をシティズンシップに持ち込んだ」と述べています。
 第3章「政治のラディカルな理論」では、「ラディカル・デモクラシーのシティズンシップにはさまざまな立場がある。それらは声、差異、正義の政治を行う三重のシティズンシップモデルである」と述べています。
 第4章「コスモポリタンなシティズンシップ」では、「シティズンシップと国籍がこんにち切断され、国家がもはや主権の独占的な参照点ではない」と述べ、「これはコスモポリタニズムの消極的定義」であり、「積極的な意味でのコスモポリタンなシティズンシップは、国家の内外における参加と権利の新しい可能性に関係する」と述べています。
 著者は、「主権国家はもはや唯一のナショナルな国家ではない。ナショナルな国家は、トランスナショナルなコミュニティとますます重要になる国際法によって変質させられている」と述べ、「コスモポリタンなシティズンにシップにとっては、シティズンシップの基礎的基準は、ナショナル・アイデンティティのばあいと同様にもはや出自ではなく居住であり、アイデンティティを多元的にとらえる批判的言説の質を洗練すること」であると結論づけています。
 第5章「人権とシティズンシップ」では、啓蒙主義の登場以来、個人が、「市民と人間」という二つの合法的に定義された立場を占めてきたと述べたうえで、「シティズンシップの権利は人権とは異なる。シティズンシップの権利は特定のものであり、国籍原理によってほとんど形成されてきた」と述べています。
 また、ポストモダンの時代において、「現在の状況は人権とシティズンシップの権利が曖昧になっていることを示唆する多くの経験的、理論的証拠がある」と述べています。
 著者は、「人権が国民主権に挑戦することができると考えることには十分な根拠がある」と述べ、「いまや人権レジームが他の国々の出来事に介入することがありうる」としています。
 第6章「グローバリゼーションと空間の脱領土化」では、「コスモポリタンなシティズンシップの規範的説明にとどまることなくさらに踏み込み、コスモポリタニズムに対するグローバリゼーションの含意を評価する観点からグローバリゼーションを検討したい」としています。
 そして、グローバリゼーションを、「実際に世界で起こっていることの説明というよりも、その認識であると理解するのが最もふさわしい」と述べ、「グローバリゼーションは構造や作用のどちらをもってしても説明できない」、「グローバリゼーションは新しい構造ではなく、また特定の行為主体の働きでもない」と解説しています。
 また、「グローバリゼーションのほとんどの理論は二つのグループに分けられる」として、政治経済的転換の理論と社会文化的転換の理論の2つを挙げ、これらについて、
(1)それぞれの理論グループ内でつよい議論と弱い議論とがある。
(2)グローバリゼーションの積極的効果と消極的効果に関して規範的視角から明らかにしたい。
の2つについて説明を行っています。
 さらに、「資本主義と民主主義という二つのダイナミクスがグローバリゼーションを推し進めている」ことを強調しています。
 第7章「国民国家の転換」では、「国民国家の国内の転換に関して、グローバルな転換が及ぼす側面を吟味する」として、「国民国家における国籍とシティズンシップとのあいだのズレが増大しつつあること」を問題視しています。
 そして、「こんにちのナショナリズムはもはやイデオロギーに訴えることなく、アイデンティティと物的利害に訴える。新しいナショナリズムにおいては、イデオロギーはアイデンティティというプリズムを通して屈折する。そして、イデオロギーのほとんどが法律以外の力に基づいている」と述べています。
 著者は、「国民国家がグローバリゼーションの圧力によって、いかに国内的に断片化されつつあるかということがわかった」と述べています。
 第8章「欧州統合とポストナショナルなシティズンシップ」では、「コスモポリタンなシティズンシップすなわちポストナショナルなシティズンシップはシティズンシップに有意味な内容を提供するそれ自体特別な市民文化――市民的コスモポリタニズム――を要求する」と述べています。
 そして、「シティズンシップにとって有意味な統治を行うさまざまな秩序を議論する上で、コミュニティの4つのレベルを区別することが有意義である」として、
(1)政治共同体
(2)文化共同体
(3)市民共同体
(4)コスモポリタンなコミュニティ
の4点を挙げています。
 著者は、「ヨーロッパのシティズンシップを定義するにあたって、極めて重要な現実的争点」として、「シティズンシップの概念は出自よりも居住に基づいているということ」であると述べています。
 第9章「シティズンシップの再構成」では、シティズンシップは4つの構成要素を含んでいるとして、
(1)権利
(2)責任
(3)参加
(4)アイデンティティ
の4点を挙げ、「ナショナルなシティズンシップの古典的モデルでは、これらは機能的な統一を有していた」が、「多くはグローバリゼーションの結果、こんにちもたらされたのはこれらの構成要素の分離」であり、「これらの要素が一貫した国家の枠組みではもはや統一されていない事態に陥った」と述べています。
 著者は、「シティズンシップの議論は民主主義の広範囲にわたる転換に取り組むものでなければならない」と結論づけています。
 第10章「結論」では、「コスモポリタンなシティズンシップは、コミュニティとの関係が再び確立さえすれば可能である」と述べ、「コミュニティとコスモポリタニズムとの関係を再考しなければならない」と主張しています。
 そして、「わたしが議論している市民的なコスモポリタニズムという概念は、自己限定的な類のコスモポリタニズムであると理解することができる。それは『薄い』コスモポリタニズムであり、グローバルな市民社会の『厚い』コスモポリタニズムと対照的かもしれない」と述べています。
 本書は、アイデンティティが、自ら出生した国だけに求められなくなった時代のシティズンシップのあり方を考えさせてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 ヨーロッパの人は、他のヨーロッパの国で暮らすことにどんな感覚を持つのでしょうか。千葉県に生まれ、千葉県から出たことのない自分にはなかなか想像がつきませんが、日本でいえば他の県に引っ越すような感覚なのでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・「シティズンシップ」に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 ジェラード・デランティ (著), 山之内 靖, 伊藤 茂 (翻訳) 『コミュニティ グローバル化と社会理論の変容』 2007年07月24日
 ロバート・D. パットナム (著), 河田 潤一 (翻訳) 『哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造』 2005年03月03日
 ロバート・D. パットナム 『孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生』 2006年08月28日
 ジェームズ・A. バンクス (著), 平沢 安政 (翻訳) 『民主主義と多文化教育―グローバル化時代における市民性教育のための原則と概念』
 宮島 喬 『ヨーロッパ市民の誕生―開かれたシティズンシップへ』
 クリスティーヌ ロラン‐レヴィ, アリステア ロス (著), 中里 亜夫, 竹島 博之 (翻訳) 『欧州統合とシティズンシップ教育―新しい政治学習の試み』


■ 百夜百マンガ

モンモンモン【モンモンモン 】

 大ヒットした「マキバオー」の前に連載していた動物ギャグです。個人的にはこっちの方が好きだったですが、一般受けするのはやっぱり「マキバオー」かしら。

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