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2007年10月20日 (土)

エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために

■ 書籍情報

エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために   【エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために】(#1003)

  ドナルド・A. ノーマン (著), 岡本 明, 伊賀 聡一郎, 安村 通晃, 上野 晶子 (翻訳)
  価格: ¥3045 (税込)
  新曜社(2004/10)

 本書は、「人間の認知と情動を科学的に理解することが製品のデザインにどのような影響を与えるか」という著者の研究成果について描かれた紋です。
 プロローグ「三つの紅茶ポット」では、著者のお気に入りの紅茶ポットの紹介をした上で、
(1)本能レベル:見かけに関わっている。
(2)行動レベル:使うときの喜びと効率に関係がある。
(3)内省レベル:製品を合理的なもの、治背的なものにすることに関わる。
の3つのレベルの異なるデザイン上の側面について述べています。
 そして、認知科学者が、「情動が人生から切り離せないものであり、人がどう感じるか、どう行動するか、どう考えるかに影響を与えるということを理解している」と述べ、「実際、情動は人を賢くする」として、「情動が働く方法のひとつは、特定の脳の中心を浸していて知覚、意思決定、行動を制御する神経伝達物質を通してである。これら神経伝達物質が思考のパラメータを変化させるのである」として、「驚くべきことに、今や、美的に魅力的なものだと仕事がうまくできる、という証拠が得られている」と述べています。
 著者は、「認知は人を取り囲む世界を解釈し、理解する。一方、情動はそれについての迅速な判断ができるようにする」と述べています。
 第1章「魅力的なものの方がうまくゆく」では、人間の脳の複雑な特性が、「脳機能の3つの異なるレベルに起因する」として、
(1)本能レベル:自動的で生来的な層
(2)行動レベル:日常の行動を制御する脳の機能を含む部分
(3)内省レベル:脳の熟慮する部分
の3つのレベルを示し、「三つのレベルは、最も原始的な単細胞生物から始まって次第に複雑な動物へ、脊椎動物、哺乳類、最後に類人猿と人類へとゆっくり進化したという、脳の生物学的起源を部分的には反映している」と述べています。
 また、本能レベルが、「脳の中で最も単純で最も原始的な部分であるが、非常に広範囲の状況に対して敏感である」と述べ、「本能レベルは推論できない」ことなどを解説しています。
 第2章「情動とデザインの多面性」では、「それぞれのレベルに対するデザインは大きく異なっている」として、
(1)本能レベル:製品が最初に与える効果、概観、手触り、雰囲気に関わる。
(2)行動レベル:製品の使用、経験に関わり、機能面、性能面、使い勝手の面がある。
(3)内省レベル:意識と、最高次レベルの感情、情動、認知が存在し、解釈、理解、推論がもたらされる。
の3つのレベルについて解説しています。
 著者は、「魅力的なモノはよりうまく働く。その魅力が心のプロセスをより創造的にし、ちょっとした困難により耐えるようにして、ポジティブな情動を生み出す。三つのレベルの処理は対応する三つの形のデザインにつながる。本能的、行動的、内省的デザインである。それぞれが人の行動に重要な役割を果たし、デザイン、販売、および製品の使い勝手に均しく重要である」と述べています。
 第3章「デザインの三レベル――本能、行動、内省」では、「本能、行動、内省というデザインにおける3つのレベルのそれぞれが、経験を形作るときに役割を果たしている」として
(1)本能的デザイン:我々は環境から強力な情動信号を受け取るように高度に調整されており、それは本能レベルで、無意識のうちに自動的に判断される。
(2)行動的デザイン:第一に使用の面にかかっていて、外観はあまり関係ない。理屈も問題ではない。性能が問題である。
(3)内省的デザイン:カバーする領域は広く、メッセージ、文化、製品の意味やその使われ方までも関係してくる。
のそれぞれについて解説しています。
 そして、「魅了されるのは、本能レベルの現象である」のに対し、「美は内省レベルからくる」と述べ、「「美は、見かけの内側を見る。美は意識的な内省と経験からもたらされる。それは知識、学習したこと、文化に影響される。見かけは人と惹きつけないものでも喜びを与えうる」と語っています。
 第4章「娯楽とゲーム」では、「テクノロジーは、単に仕事の効率を改善するだけではなく、それ以上のものを我々の生活にもたらすべきだ。豊かさを喜びをもたらすべきだ」と述べ、その方法として、「アーティストの手腕を信頼すること」を挙げ、日本の幕の内弁当やグーグルの例を紹介しています。
 そして、本書の表紙にもなっているフィリップ・スタルクの「ジューシー・サリフ」について、「イカ料理を食べていて、レモンをその上にしぼったとき、彼はひらめいた」ことを紹介し、このジューサーが「実に奇妙だが、愉快でもある」理由として、
・注意を向けさせることによる誘惑
・驚くような新しさを感じさせる
・自明なニーズや期待を超えている
・本能的な反応をもたらす
・個人的なゴールの価値やつながりを共有する
・それらのゴールを満たすという約束
・何気なく見た人に対してジュースを絞る経験について何か深いものを発見させる
・これらの約束を果たす
などを挙げ、この他に重要な要素として、「説明するという内省的な喜び」を挙げています。著者が持っているジューサーは金メッキされた「特別記念版」であり、「これはジュースを絞るためのものではありません。会話を始めるためのものなんです」と言われていると述べています。
 第5章「人、場所、もの」では、「現代のコミュニケーションの本当の問題は、人間の注意力の制限からくる」として、車を運転している最中に携帯電話で話をすることについて、「意識的な注意を危険なやり方で分散していることになるので、計画し予想する能力は減少する」として、「本能レベル、行動レベルは依然としてうまく機能し続けているが、計画と予想の本拠地である内省レベルはそうはいかない。したがって、運転は依然可能ではあるが、それは基本的に機械的で、潜在意識下の本能レベルと行動レベルのメカニズムによる」と述べ、「携帯電話をかけながらでも普通に運転しているように見えることから、いつもより運転が経ただとか、予期しない状況にうまく対処もできないとかの事実が分からなくなってくる。したがって、運転は危険なものになる」と解説しています。同様に、「車の運転をしているとき、同乗者とする会話も、同じ湯尾にある程度注意の散漫が起こる」が、「同乗者との会話は遠く離れた人に比べてそれほどは危険でないことが証明されると思う。同乗者に対して作り出すメンタルスペースには、自動車とその周囲が含まれている。これに対して携帯電話のメンタルスペースは、車から我々を遠ざける」と解説しています。
 第6章「情動をもつ機械」では、「私は家庭は多数の専用ロボットをもつようになると考えている」と述べ、」これらのロボットが発達するにつれ、ロボットの仕事を簡単にするために家の中をデザインするようになり、ロボットと家は一緒にうまく働けるように働けるように共進化していくだろう」と語っています。
 また、「機械の情動も人間の情動と同じくらい自然で普通のものに見える必要がある」理由として、「我々が機械ともっとよくインタラクションできるようにするためには、確かに機械も情動をもち、そしてそれを表すべき」であると主張しています。
 第7章「ロボットの未来」では、「今あるロボットのうち最も協力で最も高機能なものでも、アシモフの段階には遠く及ばない」が、「ロボットと人間のインタラクションの仕方を考える上で、この原則は素晴らしいツールである」として、「アシモフのロボット工学4原則」を紹介しています。
 エピローグ「誰もが皆デザイナー」では、「我々は皆デザイナーだ。自らのニーズに役立つように環境を操作する。どんなものをもつか、どれを身のまわりに置くかを選択する。組み立てたり、購入したり、配置したり、改造したりする。これらはどれもデザインのひとつの形式だ」と語っています。
 本書は、モノに囲まれて生きる我々にとって、不可欠な「デザイン」をより深く理解する上で有用な一冊です。


■ 個人的な視点から

 アレッシの製品はどれもクスリとさせるものです。イタリアに行ったときに有名なワインオープナーを買って来ようかと悩みましたが、結局買わず、今家にあるのは樹脂製のボトルキャップです。食事や酒などのテーブルの上や厨房にあるデザインにはアレッシのデザインは嬉しい感じがします。


■ どんな人にオススメ?

・デザインは一部の人のものだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 ドナルド・A. ノーマン (著), 野島 久雄 (翻訳) 『誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論』
 ドナルド・A. ノーマン, 安村 通晃, 岡本 明, 伊賀 聡一郎 (著) 『パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう!―複雑さに別れを告げ、"情報アプライアンス"へ』
 D.A. ノーマン (著), 佐伯 胖, 八木 大彦, 嶋田 敦夫, 岡本 明, 藤田 克彦 (翻訳) 『人を賢くする道具―ソフト・テクノロジーの心理学』
 後藤 武, 佐々木 正, 深澤 直人 『デザインの生態学―新しいデザインの教科書』
 Jenifer Tidwell (著), ソシオメディア株式会社 (監修), 浅野 紀予 (翻訳) 『デザイニング・インターフェース ―パターンによる実践的インタラクションデザイン』


■ 百夜百音

魔女の宅急便【魔女の宅急便】 サントラ音楽集 オリジナル盤発売: 2004

 とくに90年代は過剰なダブリングによって人工的な声を強調していたユーミンだけに初音ミクには合ってるんじゃないかと思いますが、心配なのは死後に「荒井由実」がソフトで商品化されてしまうのではないかということです。

『Yumi Arai 1972-1976』Yumi Arai 1972-1976

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