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2008年2月25日 (月)

役員ネットワークからみる企業相関図

■ 書籍情報

役員ネットワークからみる企業相関図   【役員ネットワークからみる企業相関図】(#1131)

  菊地 浩之
  価格: ¥2100 (税込)
  日本経済評論社(2006/12)

 本書は、「日本企業の役員兼任を分析し、そこから日本企業の役員及びそのネットワークの特徴を明らかにしていく」ものです。
 第1章「役員兼任を分類する」では、委員会等設置会社で望まれる社外役員が「個人の資質」出選ばれるのに対し、従来型の社外役員は、「企業間関係」を背景にして送り込まれるものであると述べています。
 そして、役員兼任を、
(1)企業グループ型
(2)株式所有型
(3)非上場企業型
(4)金融機関 株式所有型
(5)法曹・税務型
(6)その他
の6つのタイプに分類しています。
 また、日本の役員兼任が、1999年から2005年の間で流れが一変し、それまでの85%が株式所有で説明でき、42%が親子会社間で成立したものだったのに対し、企業間関係重視型の役員兼任が減少し、個人的資質重視型の役員兼任が増加したと述べています。
 第2章「企業集団における役員兼任」では、「三菱・三井・住友・芙蓉・三和・一勧」の六大企業集団について、それぞれの役員兼任ネットワークを分析し、
・三菱:(1)金融機関、(2)有力事業会社、(3)その他の事業会社の3階層から構成され、ガチガチ堅固な序列主義。
・三井:企業集団化のメリット・デメリットを計算し、使える場合は使うといった感が強く、人的結合もソロバンをはじく。
・住友:結束力は強いが、普段はそれ以上に独立心が強く、身内で固まらない。
・芙蓉:生命保険会社の株式所有が鍵となり、付き合いはカネ次第。
・三和:関西財界に点在する断片的な人的結合。
・一勧:実は古河グループの役員兼任。
等の点を挙げています。
 そして、企業集団における役員兼任の特徴として、
(1)個々の企業間関係を基盤にしたものが多く、役員個人の資質に頼ったものは少ない。
(2)その多くが株式所有を基盤にしている。
(3)企業集団の社長会メンバーは表面上対等であるが、実際には序列がある。
(4)役員兼任の充実度は企業集団によってかなり異なる。
の4点を挙げています。
 第3章「地域財界における役員兼任」では、中部財界の役員兼任の多くが、株式所有を背景にしておらず、「役員兼任ネットワークは東海銀行・松坂屋・中部電力・東邦瓦斯・岡谷鋼機・名古屋鉄道の6社が中核を成している」が、その間にはほとんど株式所有も見られず、重要な商取引も想像できないことから、それ以外の動機によって形成されていると述べ、「中部財界の役員兼任ネットワークの実体は、地域巨大企業の連合体」であり、「東海銀行・松坂屋・中部電力・東邦瓦斯・名古屋鉄道」の5社は、「名古屋5社」または「五摂家」と呼ばれ別格視されていると述べています。
 そして、岡谷鋼機のトップが役員兼任を担っているのは、「岡谷家という家系が中部財界で特別な地位を保っているから」であることから、「地域財界の役員兼任ネットワークの実態は地域巨大企業の連合体が資産家層と連結したもの」であると解説しています。
 また、資産家層の子孫たちが、「かつて先祖が支配していた企業にごく普通に就職し、あたかも一般の社員から選ばれたように役員に昇進し」、「自家と無関係な企業でも、同様に役員に選任されている」ことについて、上流階級のインナー・サークルが持つ、
(1)文化的資本:個性的なスタイルや価値観や教育資格認定書
(2)社会的資本:家柄から生み出される社交場のつながりのネットワーク
(3)経済的資本:個人保有の金融資産
の3つの特質を強めると述べています。
 さらに中部財界で展開される血縁的役員兼任の特徴として、
(1)血縁的役員兼任は通常の役員兼任を補完している。
(2)血縁的役員兼任は地域的な枠組みに留まらず、全国的に展開されている。
(3)血縁的役員兼任は通常の役員兼任と違い、移転や断絶が多く、修復されない。
の3点を挙げています。
 第4章「血縁的兼任ネットワーク」では、「血縁的役員兼任」を、「2つの企業の役員同士に血縁関係があるとき、それら企業間には血縁を通じての役員兼任が存在する」と定義し、血縁的兼任ネットワークが、
・企業集団・企業グループという枠を超え、多くの業種の企業が包括されている。
・環状に連結しており、中心になるべき点がない。
という特徴を持ち、「特定の企業や特定の家系を基点として拡がるものではなく、『層』(=階層)なのだ」と述べ、「この『層』の実態こそ、血縁を媒介とした上流階層に他ならない」としています。
 そして、東京銀行で血縁的役員兼任を担う役員が、「ほとんどすべて上流階級の子弟である」と述べ、「父親が横浜正金銀行の経営者であるケースが多く、役員の二世化を印象づける」としています。
 第5章「出身階層による分析」では、「専門経営者の二世化」が、「地域社会に限定した特性ではなく、日本を代表する企業集団にも及んでいることを実証する」として、三菱グループ役員の出身階層を対象に、「役員の4割は上流階層出身者である」ことを明らかにしています。そして、
(1)専門経営者が決して広範な階層から選ばれたものではなく、特定の階層(上流階層)から選ばれたエリートである。
(2)かれらは世襲傾向を強め、独自の階層として再生産を行なっている。
の2点を指摘しています。
 また、いわゆる「業界入社」について、「総合商社の役員子弟が就職先として選ぶのは、あくまで総合商社であって、それよりランクの劣る専門商社ではない」こと、「都市銀行の役員子弟が就職するのは、あくまで都市銀行であって、地方銀行や相互銀行(現第二地銀)を含む銀行業全般ではない」ことを指摘しています。
 さらに、三菱グループ企業の役員子弟が、「父がエライほど出世しやすい」ことを実証的に指摘しています。
 エピローグ「日本の役員ネットワーク」では、終戦後まもない日本企業の役員兼任が、「個人的資質によるものが多かった」のに対し、高度経済成長期には、「役員兼任も株式所有を基盤とする企業間関係重視型」に変わり、「20世紀後半の役員兼任は『強者が弱者に役員を送り込む』かたちで実現した」と指摘しています。
 そして、「強者の知恵を借りる」役員兼任を「代替して余りあるインフォーマルな人的結合の存在」として、学閥や閨閥であり、その典型が血縁的兼任ネットワークであると述べています。
 本書は、日本の格差社会を象徴するもう一つの端である上流階層の実態を伝えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 多くの人が、「育ちが違う人たち」が世の中に入ることを実感しながらも、建前としての「平等」に反論できずにいたのですが、同じように大学を卒業し、大企業に就職した人同士でも、すんなり出世して役員に収まる人と、ある程度までで頭打ちになる人とでは、単に本人の能力や努力以上に、生まれと育ちの違いが大きいということがわかります。
 ある意味では救いになる一冊なのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・「平等」は建前だけだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 橘木 俊詔 『日本の経済格差―所得と資産から考える』 2006年02月10日
 苅谷 剛彦 『階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』 2006年02月14日
 B.エーレンライク (著), 曽田 和子 (翻訳) 『ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実』 2007年06月25日
 ポリー・トインビー (著), 椋田 直子 (翻訳) 『ハードワーク~低賃金で働くということ』 2006年03月08日
 三浦 展 『下流社会 新たな階層集団の出現』 2007年11月14日
 山田 昌弘 『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』 2006年01月11日


■ 百夜百マンガ

Hunter X Hunter【Hunter X Hunter 】

 「作者急病のため」という理由での休載が多かったり、鉛筆で描いた「白い」回が多かったりと、マンガ家の悪い例のように言われることが多い作品ですが、なんだかんだでもう10年も続いているかと思うと驚きです。

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