« 「できない」を「できる!」に変える | トップページ | 生き物をめぐる4つの「なぜ」 »

2010年1月10日 (日)

タリバン

■ 書籍情報

タリバン   【タリバン】(#1816)

  田中 宇
  価格: ¥714 (税込)
  光文社(2001/10)

 本書は、「アフガニスタンでの現地取材を元に、タリバン、オサマ・ビンラディン、アメリカの抜き差しならなくなった『三角関係』を描き出」したものです。
 第1章「タリバンとオサマ・ビンラディンとアメリカ」では、「タリバンがアフガニスタンを安定させ、中央アジアへの道が開けることは、まさにアメリカが求めていたことだった」ため、今であればタリバンを「人権侵害だ」と強く非難して当然のアメリカ政府は、「タリバンをほとんど何も批判しなかった」と述べています。
 また、タリバンがビンラディンを受け入れたのは「反米」目的ではなく、「かつてビンラディンがソ連軍と戦うアフガンゲリラを支援してくれたという、国家レベルで受けた過去の恩義を無視するわけには行かなかったし、見方によっては、ビンラディンはイスラム教の歴史上、重要な人物になるかもしれないと考えられた」からだと述べています。
 第2章「イスラム原理主義とテロリズム」では、「日本人にとってイスラム世界の情勢を考える際に役に立つと思われる日本自身の歴史的な出来事」として「明治維新」を挙げ、「日本は中国文明の『縛り』を受けにくい自由な存在だった」ことが、「19世紀末に日本だけが明治維新という欧米化に成功した理由の一つだった」と述べています。
 また、「多くの日本人自身にとって、日本赤軍はもはや嫌悪すべき犯罪者でしかないかもしれないが、中東では日本赤軍が放った『世界革命』の神話は今も生きている」と述べています。
 第3章「サムライの国・アフガニスタン」では、「アフガニスタンは、日本陣にはなじみの薄い『イスラム教』の国で、しかも『テロリストをかくまう国』『狂信的なイスラム原理主義の国』というイメージを持たれているが、実際に行ってみると、彼らなりの価値観に基づいた正義感があり、黒沢明の映画『七人の侍』に出てくるような人々がいることがわかった」と述べた上で、アフガニスタンの男性が、「パキスタン人などよりも強い存在感を持っていた」理由として、
(1)男性が泣いたり叫んだりして喜怒哀楽の情を表すことが、恥ずかしいことと考えられている。
(2)「家系」「一族」へのこだわり
の2点を挙げています。
 第5章「パキスタンの事情」では、ソ連がアフガニスタンに侵攻したことで、「パキスタンは東西連戦の最前線に立たされることになった」として、「欧米諸国にとって、パキスタンを通じてアフガンゲリラを支援することが重要なこと」になったとした上で、「冷戦の終結とともに、ハクもムジャヘディンも『用済み』にされた」と述べています。
 第6章「仕事は難民と傭兵」では、「アフガン人にとっては、難民と出稼ぎは、今やあまり大きな違いがなくなっているように見える。特にイランへの出稼ぎはそうだ」と述べた上で、「アフガン人の出稼ぎで、もう一つ得意な分野は『兵士』である」として、ソマリアの内戦に米軍が介入したときには、参戦した元ムジャヘディンが、「86~87年にアメリカから供給されたスティンガーミサイルを、今度は米軍のヘリコプターめがけて発射した」と述べています。
 第7章「膨張する密輸マーケット」では、「ペシャワールの西からカイバル峠を超えてアフガン国境までの区間は『カイバル・エージェンシー』と呼ばれ、『部族地域』の7つの自治区の一つで、パキスタン政府の行政権や司法権が及ぶのは国道とその両側数メートルだけだ」と述べ、「部族地域の無法性は、パキスタンにとって国家の秩序を混乱させる要因となっている」と述べています。
 第8章「新しい戦争」では、同時多発テロ以降、「アメリカはイスラエルのような国になった」と感じていると述べています。
 本書は、多くの日本人に得体の知れない狂信的集団と思われているタリバンを理解するための一冊です。


■ 個人的な視点から

 日本では、イスラム教に限らず原理主義的に原理原則に拘る人を「タリバン」扱いすることがありましたが、よく理解せずにレッテルづけすることはかなり危険なのではないかと感じます。


■ どんな人にオススメ?

・アフガニスタンを知りたい人。

« 「できない」を「できる!」に変える | トップページ | 生き物をめぐる4つの「なぜ」 »

日本人」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1244312/33624290

この記事へのトラックバック一覧です: タリバン:

« 「できない」を「できる!」に変える | トップページ | 生き物をめぐる4つの「なぜ」 »

2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ