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2010年1月24日 (日)

スポーツマンガの身体

■ 書籍情報

スポーツマンガの身体   【スポーツマンガの身体】(#1830)

  齋藤 孝
  価格: ¥735 (税込)
  文藝春秋(2003/6/21)

 本書は、「身体論」的にマンガを読み解いたものです。著者は、「日本の子どもは、スポーツマンガを通して自己形成のモデルを獲得していったケースが少なくない」とするとともに、「スポーツの上達のプロセスには、勉強や仕事の上達に直接つながる理論が含まれている」と述べています。
 第1章「巨人の星」では、「時代の身体性がよくにじんでいる」として、
(1)ぶっ倒れる身体
(2)汁の多い身体
(3)父が過剰にからだを張る
の3点を挙げています。
 また、印象的だったシーンとして、「青雲高校が甲子園に出発する新幹線の駅のホームで、一徹が柱の陰からすっと現れ、飛雄馬にだけわかるように力強く勝利のVサインをしてみせるシーン」を上げ、「Vサインが現在まで流行り続けているのは、あのシーンによるところが大きいのではないだろうか」と述べています。
 第2章「あしたのジョー」では、『巨人の星』と『あしたのジョー』について、「同時代に『少年マガジン』に連載され」ていたが、「ファン層は微妙に異なる」として、「『あしたのジョー』の方が大人っぽい雰囲気があり、大人を含めた幅広い層に人気があった」と述べています。
 また、「無意味なまで吠えまくり、誰にでも突っかかっていくのが初期のジョーの特徴」だが、ストーリーの中で成長し、「余計なことはしゃべらない。吠える身体から黙る身体へと大きな変貌を遂げている」と述べています。
 そして、「『あしたのジョー』で減量といえば、何といっても力石徹の二階級減量だ」とした、「ジョーのテーマは、燃え尽きて真っ白な灰になることだった」と述べています。
 第3章「スラムダンク」では、「身体感覚は内側から感じられるものだ。これを描写できれば、その作品にはリアリティが出る」として、「繊細に身体感覚が描写されると、読者は自分の身体感覚をそこに重ねて実感しつつ読むことができる。私はそうしたスポーツマンガが好きだ」と述べ、「スポーツマンガのよさは、呼んでいるうちに自分の身体感覚までもが呼び起こされ、むずむずしてくるというところだ」としています。
 第4章「バガボンド」では、「描かれる身体の荒々しさ」を挙げ、「身体がただぶつかり合うのではなく、血しぶきを上げる残酷さで描かれる」と述べています。
 また、「『バガボンド』は、肚という、死語と化していた身体文化を復活させた」として、「足の長い、重心の高い身体が格好いいとされる現代において、帯を締め重心を低くした身体で格好よさを表せる作画力は、日本の伝統的な身体感を改めて見直させ、読者に新たな魅力を発見させている」と述べています。
 第5章「バタアシ金魚」では、主人公カオルの「魅力の中心は、過剰なエネルギーの的外れな使い方にある」と述べています。
 第6章「奈緒子」では、「このマンガの場合は、細かな感覚を表現するために言葉がうまく使われている」として、「ここでは明晰な認識力が、繊細な身体感覚を研ぎ澄ます砥石になっている」と述べています。
 第7章「ピンポン」では、「松本大洋は、その独特な画風と、ストイックかつ切れ味のいいせりふで、コアなファンを持っている漫画家だ」として、「タイプの違う男二人が絡み合い、成長していくモチーフ」が、『ピンポン』、『花男』、『鉄コン筋クリート』に共通すると述べています。
 また、『ピンポン』の功績として、「卓球という地味に見られがちなスポーツを、本格的に描いた点」を挙げ、「肉体派のスポーツではないように見られがち」な「ネガティブなイメージを一変させた」と述べています。
 そして、「瞬間的に高速で反射する身体は、卓球というスポーツが求める身体の特性だ」として、マンガの帯に、「274cmをとびかう140km/h」と謳われていると述べています。
 さらに、「反射神経を生かした攻撃的なスタイル」の前陣速攻型のペコと、「台から離れてカット」する「カットマン」のスマイルのスタイルの違いを挙げ、「スポーツの醍醐味の一つは、私の見るところ、スタイルを味わうところにある」と述べています。
 著者は、「『ピンポン』には、現在のマンガが到達しうる、身体感覚の描写と熱いストーリーの最高の結合が見られる」として、「『ピンポン』は身体感覚を呼び覚ますための必読書である」と述べています。
 本書は、スポーツマンガ本来の魅力をストレートに語った一冊です。


■ 個人的な視点から

 スポーツは苦手ですが、スポーツ漫画は大好きです(キリッ)。
 本書を読むと、実はスポーツ漫画の表現力というのは格段にアップしているのですが、その元になったのはゲームとかアニメとかの部分も大きいのかなと思ってしまいます。そういうの調べた研究ってないものでしょうか。それとも自分でやるのかな。


■ どんな人にオススメ?

・スポーツ漫画が好きな人。

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