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2010年1月 5日 (火)

スクープ 記者と企業の攻防戦

■ 書籍情報

スクープ 記者と企業の攻防戦   【スクープ 記者と企業の攻防戦】(#1811)

  大塚 将司
  価格: ¥725 (税込)
  文藝春秋(2004/1/21)

 本書は、「刑事コロンボ」の捜査手法を、新聞記者の取材になぞらえて、「スクープを巡る経済記者と企業経営者たちの攻防」を描いたものです。
 第1章「刑事コロンボが手本」では、「コロンボの捜査手法は新聞記者がスクープをものにすべく取材する際に見習うべきところが多々あるのではないか」と思い、1984年の三光汽船の破綻劇の取材の際に試してみたとして、「『刑事コロンボ』に置き換えれば、『殺人事件』が三光汽船の倒産であり、コロンボのようにその『犯人』、つまり仕掛け人に目星を付け、三光汽船の倒産の引き金を引く言質を取ろうと、取材を開始した」と述べています。
 また、「倒産関連の記事ではスクープはスクープでも、倒産する会社の社員のことを考えると、後ろめたさも付きまとう」として、「私の心の中には、三光汽船を倒産に追い込むのは大和銀行など3行なのに、記事を書けばコロンボのはずの私が犯人になってしまうという気持ちがあった」と述べています。
 第2章「基本が大事」では、東証2部上場の黒田精工を取材するために第一勧銀の丸の内支店に取材に行った著者が、支店長から「うちの支店じゃ、業績が悪いから"ぼろ工"って呼んでいるんだ」と教えられた上で、経済記者として必要な財務諸表の見方を叩き込まれたことを述べ、「私にとって深津健一支店長は経済記者としての基本を教えてくれた、一生忘れられない存在である」と述べています。
 また、1984年のリッカーの倒産報道を通じて、「企業会計の知識を持っていることが経済記者にとって以下に大事か痛感したのである。その知識があれば、企業が現在、どんな状況にあるのかわかるし、仮にリッカーのように不正をして損失を隠蔽していても、その端緒をつかむことができる。貸借対照表と損益計算書は企業の通信簿のようなものであり、企業会計の知識を持ってそれをじっと見つめれば見えないものも見えてくる」と述べています。
 第3章「森を見よ」では、「スクープをものにするためには、丹念に集めた情報を取捨選択して、大きな絵を描き、それに基づき取材を進めることが必要になる」とした上で、25年前の佐世保重工業救済劇の立役者であった来島どっくの坪内社長への取材について、「佐世保重工業の経営権を一番有利な形で引き受けたい」という本音を持っていた坪内社長に「感情移入までして、その駆け引きの片棒を担いだ。木しか見ずに森を見ない記者はジャーナリスト失格である」と述べています。
 第4章「石の上にも3年」では、「しつこさだけではどうにもならない」として、「最も大事なのはきちっとしたシナリオ、絵を描くことだ。それができなければどうにもならない。それが描ければ、目標に向かってしつこく、執念深く、取材することだ」と述べています。
 第5章「臨機応変」では、「経済犯罪が関係している案件では、その犯罪を暴くことが最も大きなニュース、つまり価値の高いニュース」だとして、「経済犯罪が暴かれたためにその会社がどう処理されるのかのほうは、ニュースとしての価値が落ちる」と述べたうえで、「仮に不正の端緒を?んでも、それを記事にするタイミングは重要だ」と述べています。
 そして、1990年5月に表ざたになったイトマン事件に関して、大阪地裁で開かれた初公判の中で、「イトマン側が日経関係者に1000万円を渡して私の情報を収集していたことが明らかになった」と述べ、「1000万円を受け取った人間が誰なのか、今もって藪の中であるが、私は、存在したと思っている」と述べています。
 エピローグ「リスクをとれ」では、「経済記者にとって最も重要なニュースは企業倒産であり、そこで、修行を積むことが大事だ」としたうえで、「日本の経済ジャーナリズムの現状を点検すると、さびしい現実が浮かび上がる」と述べています。
 そして、「ジャーナリストは常にスクープを目指さなければならない。しかし、いわゆるリークを期待してはいけないのである。スクープは自分でシナリオを書き、それを検証し、ものにしなければならない。そういう努力を続ける中でしか、日本経済の健全な発展に寄与する論説も生まれない」と述べています。
 本書は、日本の経済社会に欠かせない役割を持った経済記者の仕事を描いた一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書で「ぼろ工」と紹介されている黒田精工は千葉県内各地に工場があったりで馴染み深いのですが、「ぼろ」はあんまりだとも思いながらも確かにぼろいかも……。


■ どんな人にオススメ?

・経済紙のスクープがどのように生まれるのかを知りたい人。

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