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2010年1月19日 (火)

群衆―モンスターの誕生

■ 書籍情報

群衆―モンスターの誕生   【群衆―モンスターの誕生】(#1825)

  今村 仁司
  価格: ¥693 (税込)
  筑摩書房(1996/01)

 本書は、「近代社会の根源としての群集」を主題としたもので、「近代史の中での群集のあり方を特徴付けること」は、「それがひとつの決定的な社会的勢力(puissance sociale)として、また社会と歴史の原動力(mouter sociale)として、大きく登場したことにある」と述べ、「根地図無もスターリニズムも、群集社会が作る全体主義であるが、ドイツの哲学もレーニン以降のマルクス主義も群集の精神に転落し、変質してしまった」としています。
 第1部「群集の本質」では、モスコヴィッシが、「皮相ではあるが広く分布した3つの群集論がある」として、
(1)群集は、制度あるいは秩序から外れて、制度や秩序に反抗して集まる、一時的集合体である。
(2)群集は気違いである。
(3)群集は、本質的に、犯罪者集団である。
の3点を挙げたうえで、「要するに、いっぽうに、決して群集ではない、群集にはならない上流・中流の市民層があり、他方に下層民や屑が作る群集がある、という考え方は『皮相で通俗的』である。むしろ反対に階級・階層の区別なく万人が群集化し、群衆の中で『個性を喪失する』ことが群衆の性格である」と考える点で、「モスコヴィッシの見解は正当である」と述べています。
 また、カネッティが、群集の特質として、
(1)群衆は常に増大することを望む
(2)群集の内部には平等が存在する
(3)群衆は緊密さを愛する
(4)群集はある方向を必要とする
の4点を挙げた上で、群集を、
(1)迫害群集
(2)逃走群集
(3)禁止群集
(4)顛覆群集
(5)祝祭群集
の5つに類型化していることを紹介しています。
 そして、「群集は何らかの社会的危機から生ずるもの」であり、「群衆はその身体の中の隅々に至るまで危機を刻み込んで」いるため、「群集は危機を拡大し激化することができるし、危機の解消になることも」できると述べています。
 さらに、「超人ないしツァラトゥストラ、他方での群集を脱したプロレタリアート」という19世紀の二つの思想像は、「突如として地下から魔術によって呼び出された妖怪としての群衆に対峙する企てであった」と述べ、「複数の存在、多数の存在としての『われわれ』は、群集としての『われわれ』とは根本的に違うのだということを、確認しなくてはなりません」としています。
 第2部「群衆の分析」では、『フランケンシュタイン』を、「アメリカ映画のように、やたらと怪奇物語に仕立て上げるのは間違い」であり、「重要なことは、フランケンシュタインとモンスターというキャラクターの中に、どういう社会的歴史的寓意がこめられているかを読み取ること」だとした上で、「この小説には、これまでには見られなかった、新しいが極度に不安を掻き立てる人間の集まりの最初の形象がモンスターという『名前』をもって描かれているのです。そして、この人間でありながら人間を超えるものとしての群集への、一定の魅惑をないまぜにした恐怖が的確に描かれているのです」と述べています。
 そして、「最初に群衆の形成や動きに心理学のメスを入れた」として、ルボンを挙げ、その「実践的関心」は、「群集の突出を抑制しコントロールして、野蛮を回避し文明を救わなくてはならない。もし首尾よく群集心理の法則を逆用できるならば、群衆を飼いならすこともできよう」というものであり、「ここに群集操作の技術的可能性の道が開かれた」として、後に、「一方では軍事的政治的プロパガンダの技術として、他方では広告宣伝の技術として、開花することになる」と述べています。
 また、「群集は状況によって野蛮にも英雄的にもなること」ができるとして、「それは超歴史的な集団に還元されるような人間集団ではなくて、たえず同一化願望に突き動かされて、自然発生的に大小の『指導者』を内部から算出して、個人はもとより、階級や身分をすら溶解させて、ついには等質的な群集国家を建設するほどの巨大な勢力なの」だと述べたうえで、「ついに新しい人間類型が登場した」、「近代的人間は、群集的人間になった」としています。
 エピローグ「批判と抵抗」では、「群集があまたある集団のひとつではない」ことを強調し、「群衆は集団や組織の位置類型であるのではなく、むしろそれらを横断し包摂していくような一つの傾向なの」だと述べています。
 そして、「群集はあらゆる人間の個別的際がすべて解けて消える場所である」とした上で、「群集になること、それは人間が人間(理性的に思考する存在)でなくなること」だと述べています。
 本書は、実態がつかみづらい「群集」の姿かたちに光を当てた一冊です。


■ 個人的な視点から

 世代的に『フランケンシュタイン』と言えば「ウオーでがんす」を思い出してしまう(これは狼男か)のですが、まさかフランケンにこんな寓意があろうとは。深読みしすぎなのかどうかは本書だけではわかりませんでした。


■ どんな人にオススメ?

・「群集」はただの人の集まりだと思う人。

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