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2010年1月26日 (火)

漫画の歴史

■ 書籍情報

漫画の歴史   【漫画の歴史】(#1832)

  清水 勲
  価格: ¥819 (税込)
  岩波書店(1991/05)

 本書は、「1830年代にパリで創刊された諷刺新聞『カリカチュール』と、同時期に江戸で大評判となった『北斎漫画』から説き起こし、今日の隆盛に至る漫画文化の軌跡」をたどったものです。
 第1章「諷刺画・権力・大衆」では、「近代漫画」は、「主として版画という複製美術として表現され、大衆に購入してもらうことを目的に生み出された」として、「ドーミエらがパリでルイ・フィリップ王に対してきわめて辛辣な諷刺画を描いていた1830年代に、江戸でも、芳虎や北斎らが権力を諷刺する漫画を描いていた」と述べています。
 第2章「『漫画』という言葉」では、明治から対象にかけての一般の人々は、「漫画」を、「鳥羽絵」とか「ポンチ」または「ポンチ絵」といった言葉を使っていたとした上で、「そぞろかき」あるいは「随筆」を意味する「漫筆」という言葉があり、この言葉から日本人が、「漫筆→漫筆画→漫画」と派生していったのではないかと推測しています。
 第3章「『パンチ』と『ジャパン・パンチ』」では、1862年に『ジャパン・パンチ』を創刊したイギリス人チャールズ・ワーグマンについて、彼が創刊に踏み切った理由として、
(1)外交官たちや親友の写真家F・ベアトなどから得るたくさんの情報をもっと有効に利用するため。
(2)恐らく、日本定住を決意し、生活のための事業として。
の2点を挙げています。
 第4章「自由民権期の漫画」では、「日本漫画の長い歴史の中で、漫画が『諷刺』機能とくに『権力への諷刺』機能を最もダイナミックに発揮した最初の時期は自由民権期であろう」と述べ、明治13年の「民犬党吠」について、「自由民権運動の高揚を巨大に成長した犬(民犬)の姿で表し、政府がそれを抑えつけるのに苦労している図」だと解説し、「この作品を見た人々は自由民権運動の躍進を実感し、世の中が変わることへの確信を抱いたことだろう。一枚の漫画が一時期に大衆を動かす……そんなことが可能になったのである」と述べています。
 第5章「中江兆民とビゴー」では、明治20年に創刊された『トバエ』について、「最低4人の人物が担当していたことがわかる」が、「秘密出版であるから、この4人は口の堅い結束した仲間であることは間違いない」と述べています。
 そして、治安警察から尾行されるなどしたビゴーは、「日本人の協力者たち、すなわち兆民と仏学塾関係者たちとは極秘の作業を続けた」として、「まさに秘密出版だった」と述べています。
 第6章「ヒーローは語る」では、北沢楽天の漫画に登場する丁野抜作について、「彼は頭の回転が鈍いためにいつも失敗をしているが、根は真面目で愛嬌があるところが救いで」あり、楽天家であるとして、「そうした正確こそ、不況と生活難の時代を生き抜くタフさであり、人々は『ダメ人間』丁野のタフさに憧れたのである」と述べ、「漫画のキャラクターは、常に時代を反映して生まれてくるものなのである」としています。
 第8章「子供漫画の時代」では、昭和戦前期は、「子供漫画が急速に子供の生活の中に入り込んでくる時代」だとした上で、講談社と中村書店の2社を挙げ、「戦後児童漫画の発展に多大な影響を与えた手塚治虫の漫画創造の根底に、この2つの出版社の漫画が大きく影響していることは間違いない」と述べています。
 第11章「戦後漫画の潮流」では、「昔から漫画の二大ジャンルというと、政治や権力を風刺する政治漫画、そして風俗や世相を風刺する風俗漫画を指して」いたが、「20世紀に入ると新しいジャンルが登場する」として、「いわゆる『短気・のん気』『慌て者・臆病』『やせ・デブ』といった人間の性格・性癖・体質などにまつわるものをテーマにする漫画」である「ナンセンス漫画」を挙げています。
 そして、「コミックはその表現法に無限の可能性を秘めている」として、「カートゥーンはその表現の明快さ・簡潔さで、地球人なら誰でもわかる『国際語』あるいは『共通の文化』になりうるだろう」と述べています。
 本書は、漫画が生まれてからの1世紀半を振り返った一冊です。


■ 個人的な視点から

 フランスの風刺画もいいですが、やっぱり漫画というよりも「絵」という感じなのに対して、江戸時代の北斎漫画や鳥羽絵はいま見ても抵抗感がないのは日本人だからなのでしょうか?
 そういえば、日本人がGペンで書いた漫画が好きなのも毛筆の影響なのかも知れません。


■ どんな人にオススメ?

・漫画がどのように生まれたかを知りたい人。

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