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2010年1月18日 (月)

もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく

■ 書籍情報

もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく   【もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく】(#1824)

  竹内 薫
  価格: ¥756 (税込)
  中央公論新社(2007/12)

 本書は、「思考実験」を主題とし、「単純なように見える、あるいは、一見くだらないような思考実験から始まって、実は、ものすごい『知の体系』が編み出されていくという構図がある」ことを解説したものです。
 著者は、「本書で、思考実験を通じて、固定化され惰性化したモノ的世界観を脱却して、より自由闊達で無限の可能性を秘めたコト的世界観へと読者の皆さんを誘い」たいとしています。
 第1日「もしあなたが猫だったら」では、「自分の周囲の人々とか、猫とか、あるいは、飛んでいる鳥とかの世界が動なんだろうなって想像する」ことで、「自分の世界の見え方っていうのも、だんだん変わってくる」として、「思考実験によって、人生、少し変わってくるかもしれません」と述べています。
 第2日「もしも重力がちょっぴりだけ強かったら」では、3匹のクマの家に迷い込む少女ゴルディロックスを描いた「三匹のクマさん」というお話を紹介した上で、欧米の人たちが、「ぴったり」の意味で「ゴルディロックス」という言葉を使うと解説し、「ゴルディロックス・ゾーン」とは、「人類が快適に暮らせる環境」のことだと述べています。
 そして、ゴルディロックス・ゾーンを決めている「6つの魔法数」として、
(1)核力と電磁力の強さの比
(2)電磁力と重力の強さの比
(3)宇宙の密度、つまり質量密度
(4)宇宙定数
(5)宇宙マイクロ波背景放射
(6)空間の次元
の6点を挙げ、「この宇宙を作っている物理的な数字が、極めて狭い範囲で微調整されていないと、我々のような生命体というのはありえない」と述べています。
 第3日「もしもプラトンが正しかったら」では、現代人がみな、「自分のことを中心に考え」ることについて、「プラトンは、はっきりそれがいけないって言う」として、「もっと広い視野で考えなさいと。国家という単位でものごとを考える人がいないとダメじゃないかと強く言っている」と述べています。
 第5日「もしも仮面をつけることができたら」では、人間には、「一つの固定された客観的な人格なんて存在しない」ことが、「現代物理学のキーワードである『間主観性』の話と、密接に結びついている。結局、その考え方をいかに徹底させるか、っていうことだ」と述べています。
 また、「みんなが完全なる仮面を被った状態というのは、一転して誰も演じなくていい状況」だとして、「そういう極限状態で、じゃあ人間はどういうことが出てくるのか、というのが、あの『2ちゃんねる』の世界で、そこではその人の本性が出ちゃう」と述べています。
 第6日「もしも小悪魔がいたならば」では、電磁気学を確立した物理学者マクスウェルの思考実験に出てくる小悪魔を取り上げ、「小悪魔は本当に熱力学の第2法則を敗れるのか、ということを中心に様々な議論が展開して」きたと述べています。
 そして、「エントロピーで世界を見るという観点が出てくると、たぶん、世界の見方が凄く広がる」として、「ふつうの人は、たぶんエネルギーでしか考えていない」が、エネルギーが保存されるのに対して、「エントロピーはエントロピー増大の法則なので、わかりにくい」と述べています。
 第7日「もしもアインシュタインが正しかったならば」では、相対性理論の中の重要な考えである「等価原理」を取り上げ、「アインシュタインと同じようにエレベーター(ロケット)にいるあなたは、重力と加速度を区別できるだろうか?」という思考実験を行い、「等価原理を使うと、加速度と重力は同じ」であり、「重力場の中でも、重力の強いところと弱いところでは、時計の進み方が違うという結論になる」と述べています。
 本書は、思考実験を通じて、新しいものの見方の世界に誘ってくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 同じ著者の、『99・9%は仮説』は有名ですが、正面切って論じようとすると抵抗感がある科学の世界をハードルを下げてくれる力量は大したものではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・猫と科学を愛する人。

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