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2010年1月 7日 (木)

都市の魅力学

■ 書籍情報

都市の魅力学   【都市の魅力学】(#1813)

  原田 泰
  価格: ¥693 (税込)
  文藝春秋(2001/03)

 本書は、「大部分の都市は、富を創造することによって都市になった」として、「都市の力はどこにあるのかという問いから出発し、様々な都市の生成と発展の歴史をたどり、そのメカニズムを明らかにする」ことを目的としたものです。
 第1章「対抗する力による地方分散」では、「東京の持っているものを少しずつ地方に持たせ、地方を公平に繁栄させたのでは、東京に対抗する都市の魅力は生まれない」として、「都市を活き活きとさせるのは、中央からの富を移転させることによるのではなく、それぞれの都市が独自の対抗する力を持つことによってではないだろうか」と述べています。
 第2章「創造し模倣される大阪」では、「意外なことだが、大阪は権力に拠らない町人の町と言いながら、その繁栄自体、徳川幕府の権力に基づいた参勤交代の制度に依存していた」として、「明治初期の大阪の衰退は、大阪が江戸幕府の権力に依存していたことの当然の結果でもあった」と述べています。
 第3章「伝統を生かしきれない京都」では、「古都の景観論争には私にはわかりにくいところがある」として、「京都の景観というが、本当に美しい景観は町のごくわずかの地域に過ぎず、大部分のところはただ古いだけで美的価値などないのではないか」と述べています。
 第5章「海に栄えた神戸と横浜」では、「江戸末期の開国以来、最も発展した都市といえば横浜と神戸だろう」とした上で、「すべては新しいことをしようという試みが繁栄の元であり、そのような試みをなそうという勇気を与えたのは海なのだ。にもかかわらず、神戸は海を埋め立てそれを陸にしようとしてきた。陸地は確かな富を与えてくれるもののように見えたのだが、陸は人々を固定し、余所者を排除し、自由な気風を排斥するものになっていったのではないだろうか」と述べ、ベネチアの例を挙げ、「海の富を陸の富に引き換えたときから、ベネチアと神戸の衰退は必然だった」としています。
 第7章「富を創り富に逃避される工業都市」では、工業都市の発展について、「すでにあるものと新しいものを組み合わせて都市は発展するが、そのことをもっとも典型的に示すのは工業都市である。しかし、工業都市は、富を生み出しながらも、その富に逃げられるという不幸を負っている」と述べています。
 第9章「なぜ『都市の物語』を失ったのか」では、「税の中央集権が地方の独自性を破壊してしまった。その結果、日本の財政支出の国と地方の配分においては世界的にも奇妙なことが生じている」として、「日本の中央政府は、税収においては大きいが、支出においては小さい」ことを指摘しています。
 そして、「皮肉なことに、各自治体の、社会インフラを、住民のニーズに敏感に反応して供給する能力を破壊したのも、もとはと言えばシャウプ博士の作ったシステムなのである」と述べています。
 第10章「シャウプ財政の克服」では、「多くの地方が、発展のために自ら工夫しようという気概を失っている。発展は、人、技術、資本を集める自立的な循環をつくり出すことなのだが、地方はその気概を失っている」とした上で、「中央が税を集め、それを地方に配分するというシステムが、ゲームが終わった気分を蔓延させているのではないだろうか。課税自主権の復活が、地方の復活になるはずである」と述べています。
 そして、「現在の日本の地方財政・税制度は、基本的にはアメリカの財政学者シャウプ博士によって作られたものである。都道府県ごとの財政格差を埋めることを目標にした地方交付税制度は、日本で熱狂的に歓迎されたが、この制度こそが、地方の自立を妨げ、政府支出の効率性を低下させた現況だった。地方分権は、税の地方分権でなければならない」と述べています。
 第12章「日本の都市は美しくできる」では、美しい都市を作るためには、「未来を変更しやすくすることと、意見の同意を得やすくかつ費用のかからない、または費用負担の仕組みを考慮に入れた計画を実施することである」とした上で、「この観点から言うと、日本は4つの大きな失敗をしている」として、
(1)1950年の建築線制度の廃止
(2)都市改良についての目的税の発想を捨てたこと
(3)都市計画税や固定資産税のような保有にかかる税を引き下げた一方、譲渡にかかる税を引き上げたこと
(4)戦争や終戦直後の混乱でやむなく生まれた既得権を認め、土地利用の権利を錯綜させ、やり直しに費用がかかるようにしてしまったこと
の4点を挙げています。
 終章「都市の物語から何を学べるか」では、都市の物語の復活のためには、「倒錯した地方自治制度を廃棄すること」が必要だとして、「地方分権とは税の分権でなければならない」と述べています。
 本書は、都市にとっての魅力とは何かを考えさせてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 地方の都市は東京や中央に頼らず自ら独自の力を持つべきだというのは、言葉としては全くそのとおりだとは思いますが、中央官庁の役人がこの言葉を使うときには、話半分というか、注意して聴くべきだとは思います。


■ どんな人にオススメ?

・地方都市の魅力を考えたい人。

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