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2010年2月14日 (日)

若者の働く意識はなぜ変わったのか―企業戦士からニートへ

■ 書籍情報

若者の働く意識はなぜ変わったのか―企業戦士からニートへ   【若者の働く意識はなぜ変わったのか―企業戦士からニートへ】(#1851)

  岩間 夏樹
  価格: ¥2,310 (税込)
  ミネルヴァ書房(2010/04)

 本書は、「企業戦士と呼ばれた終身雇用サラリーマン像」と、「定職につかないニートなどの若者像」の2つの世代を分析することで、「働くことへの世代の考え方を明らかにする」ものです。
 第1章「若者は社会の変化に適応できるか」では、「本当にみんなが必死になって働いたのは70年代半ばくらいまで」で、「ここから先はかなり楽になって、ある程度達成された豊かさを前提に、さらに一層の成長をした時代」だとして、「経済成長の波に身を任せているだけなのに、生活水準が上昇していく」フリーライダーが見られるようになったと述べています。
 そして、「職場が強力なサポート体制を提供してくれるライフスタイルの55年体制は、長い平成不況と、小泉改革のプロセスで終わりを迎えた」として、インターネットの普及が、「ライフスタイルの55年体制の崩壊と軌を一にして進行したという非常にユニークな意味を持っている」と述べています。
 また、「我々の社会は、もはや、物質的な豊かさを求心力として利用できないところまできてしまっている」結果、「若い世代から順に、それに変わる求心力を模索し始めた」と述べています。
 第2章「若者の『失われた十年』とインターネット」では、「ライフスタイルの55年体制」は、「富の配分も政治的であった」が、「小泉構造改革と呼ばれるものは、この状況にメスを入れようとしたものだ」と述べています。
 そして、「雇用の流動化が進み、様々なことが職業として認知されるようになった社会にあっては、そのゴールに向かって進む手段も実に多種多様な選択肢がある」として、この状況を、「就労アノミー」(アノミー:目標と手段とが複雑に葛藤して合理的な解決策が見えにくくなっている状況)という現象として解説しています。
 第3章「若者の働く意味の変化」では、「様々な人間と直接対面した形で行われるヒューマン・ソーシャライゼーションと、情報や商品によってもたらされるマス・ソーシャライゼーション」とがあるとして、それぞれにアクセントがおかれた育ち方をしている世代について、「利害対立している両者は、しかし同時に、肩を並べて率直な自己提示を避け、ともに擬態のシェルターに隠棲している同類同士でもある」と述べ、「『まったり生きる』という若者言葉は、企業戦士型のライフスタイルの正確な陰画になっている。豊かな時代に生まれ育った世代は、それで十分満足なのだ」と述べています。
 そして「少なく見積もっても、戦後半世紀以上もの長きにわたって、われわれは際限もなくモノを消費する、それなりの理由を与えられてきた」が、「ここへきてそれが一挙に不透明になってしまった」と述べています。
 また、「フリーター」について、「この社会で積極的に一人前の役目を引き受けることを躊躇している存在」としながらも、「よく言われる確信犯的怠け者は極少数のはず」で、「その背後にあるのは、つきつめれば、この社会に対する漠然とした不信感である」として、「若い世代からそっぽを向かれた社会の先行きは暗い」と述べています。
 さらに、「ニート状態にある若者は、本質的に同世代の若者とさほど異なる特性をもつわけではない」として、「ちょっとしたきっかけで職場や学校といった『外』の生活空間に定着できず、次第に距離をおいてしまうライフスタイルによって形成されたもののように思えた」と述べ、「ニート状態にある若者の問題は、まず第一に、このような産業構造の変化、職業観の変化、ワークスタイルの変化が、ある種の若者を働くことから排除する社会的モメントとして作用していることを考えなければならない」と指摘しています。
 第4章「総中流社会に変わる若者の居場所」では、「家族関係の過去を振り返ると、われわれは安直に、父親を中心とする家父長制的な家族関係が、現在見られるような愛情で結びつけられた家族関係に変化したと考えがち」だが、「実際には、もっと複雑なプロセスを経て現在に至っている」として、「我々が封建的だと思い込んでいる古い家族関係は、実は明治の民法制定から生まれた」と述べ、この「近代家族」の原型の特徴を、
(1)他の親族からの独立
(2)ムラなど外部の共同体からの独立
(3)戸主権の明確化
の3点を挙げ、「それまで武家や大商人など一部のものにしか見られなかった、家を創り、それを継承していくという観念が、すべての国民に拡散した」と述べています。
 そして、「大正時代になると、中級ホワイトカラーが増加し、職住の分離が広まり、主婦というものが初めて社会的に認知されるようになる」と述べ、戦後のベビーブーム世代が家庭をもつようになると、住宅需要の高まりから大規模なニュータウンの開発が計画され、「ニューファミリー」と呼ばれる家族が生まれたと解説しています。
 また、「安定しているが(いまや疑問だが)窮屈でしんどい正社員、ライフスタイルの自由度はあるが低賃金で不安定な非正規雇用」という「不毛の選択を前にして、若い世代は、どちらにしてもしんどいならば意義を感じられる仕事をしたい、とメッセージしている」ことについて、「日本の若い世代が今なお、仕事は聖なるものという感覚をどこかに持っているからだ。この奇跡のような僥倖は大切にされるべきだ」と述べています。
 本書は、働く意識が、産業構造や家族の形によって大きく左右されることを示す一冊です。


■ 個人的な視点から

 基本的には、本の内容そのものはごもっともという感じなのですが、世代論はどうしても評論家っぽくなってしまって新たな発見らしいものというか、ひらめきみたいなものを打ち出しにくいのが難点なのかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・若者の職業観を知りたい人。

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