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2011年5月19日 (木)

「地球温暖化」ってなに?―科学と政治の舞台裏

■ 書籍情報

「地球温暖化」ってなに?―科学と政治の舞台裏   【「地球温暖化」ってなに?―科学と政治の舞台裏】(#2013)

  島村 英紀
  価格: ¥2100 (税込)
  彰国社(2010/07)

 本書は、「地球温暖化問題は、もともとは科学の問題だった。しかし、いまや国際政治にとってのきわめて大きな問題になっていて、この本にあるように各国の思惑が渦巻いている」として、「なぜ、そうなってしまったのだろうか」を考えてもらうための本です。
 第1章「二酸化炭素は『いつも悪者』ではない」では、「現在の地球の気温は、太陽からの熱を受けている一方で、地球から逃げ出そうとする熱を水蒸気や二酸化炭素が閉じこめる、微妙なバランスで成り立っている」と述べています。
 第2章「昔の地球は気温が大きく変化した」では、「地球で二酸化炭素が果たしていることは、赤外線を吸収して、その熱を地表に戻すことだから、その意味では温室のビニールやガラスの役割とは違う」と述べています。
 また、IPCC(国連の下部組織である『気候変動に関する政府間パネル』)が発表している報告に、「曖昧さもあり、ばらつきも多いデータから、都合のいいものだけを引用しているのではないか」という批判があり、中でもマイケル・マンら3人の科学者が過去の気温変化を見積もった「ホッケースティック曲線」を一番有名なものとして挙げています。
 そして、マン以外の結果を見ても、「19世紀以降、急激に世界の気温が上がってきていることは確かなようにも見える」が、「これらの研究のどれもが、マンの結果と同じように、あてにならない要素を含んでいること」を問題として挙げています。
 さらに、「わずかな違いがどこかで拡大されてしまって、今までの安定状態から、別の安定状態に映ってしまうところが、地球の将来にとって大きな不確定要素になっている」として、「地球環境問題を科学的に解明する難しさの一つは、ここにある」と述べています。
 第3章「いま話題になっている地球温暖化とは」では、「現在もっともたしからしいと考えられているのは、いままでの100年間で地球の平均気温が約0.6℃上がってきたこと」だと述べた上で、「海面上昇はいままでも年によって加速したり減速したりしてきている。それゆえ、この最近の加速の原因がなんなのかはわかっていない」と述べています。
 また、今使われているいろいろな気候モデルを使った気候数値シミュレーションについて、「パラメータ化」という共通の限界をもつほか、
(1)水蒸気や雲についての不確定
(2)太陽活動の影響
の二つの不確定要因を挙げ、「いま使われている気候モデルのどれも、まだわかっていない要素を除外して計算をしている」ため、「地球が温暖化するという計算結果が本当に正しいものかどうか、科学としての議論を呼んでいて、反論を排除できていない」と指摘しています。
 第4章「政治と科学者と産業界の三つ巴」では、今の環境問題で叫ばれている命題として、
(1)すでんはじまっている地球温暖化は人間が引き起こしたもので
(2)人間が排出している温室効果ガスが将来の温暖化を更に加速するので
(3)全世界が温室効果ガスの削減に取り組まなければならない
の3点を挙げた上で、「1番目と2番目は科学の問題、そして、3番目は各国の国内政治や国際政治の問題」であり、「この前段と後段の問題が切り離されずにお互いに影響し合いながら進められているのが今の環境問題なのである」と述べています。
 また、「IPCCには当初から根強い批判がある」として、「国連で各国の政治家があらかじめ決めた『温暖化対策を行う』という結論に、科学的根拠を示しながら説明を付けることが、じつは任務なのではないか」という批判を挙げ、「IPCC会議の内情を知る科学者からは、IPCCの会議は実際には温暖化問題の対策会議ではなくて、裕福な国と貧困国の争いの場になっているという批判もある」と述べています。
 そして、「このように二酸化炭素だけを『悪者』にすることで国際政治や国策という大きな歯車が動き出したいま、ある意味では地球温暖化の科学は不要になってしまった。少なくとも『動機付け』は不要で、『監視』や『事後の理屈付け』がこれからは求められているだけなのかもしれない」と述べています。
 第8章「地球との共生」では、「ちょっとしたぜいたくのためにエネルギーを使い、二酸化炭素を吐き出すことをいつまでも続けていいのかどうか、みんなで考えるべきだろう」と述べています。
 本書は、「地球温暖化問題」がどのようにして今の姿になったのかを解説してくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 地球温暖化の話は既に科学の問題では無くなっていると思われますが、そうであってもやはり科学者には出てきて欲しいところです。


■ どんな人にオススメ?

・シロクマが出てくると身構えてしまう人。

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