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2011年6月20日 (月)

希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想

■ 書籍情報

希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想   【希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想】(#2028)

  古市 憲寿, 本田 由紀
  価格: ¥903 (税込)
  光文社(2010/8/17)

 本書は、ピースボートに乗船する若者達について、「彼らがどのようにピースボートに興味を持ち、船内でどのような活動をし、そして帰国後どうなったかまでの過程を追った」ものです。
 著者は、「今の日本社会において『若者たちをあきらめさせる』ことが必要なのではないかという問題意識が本書にあるとしており、「あきらめさせてくれない社会」を構造を問題にしているとしています。
 第1章「壊れた日本、希望は共同体?」では、「若者の貧困」や「格差問題」を論じるときには、
(1)経済的な問題・・・「貧しさ」」の問題
(2)承認の問題・・・「寂しさ」の問題
の2つのレイヤーに分けると考えやすいと述べた上で、「承認の共同体」において、「『共同性』が『目的性』を『冷却』させてしまうのではないか」というのが本書の仮説であるとしています。
 第2章「旅の終焉と新しい団体旅行」では、若者の旅離れについて、「『お金』や『時間』というのは二次的な理由に過ぎず、むしろその背後に想定される別の因子が若者の旅離れを引き起こしている」として、「『旅』というもの自体が今、消滅しかかっているのかもしれない」と述べています。
 そして、「新・団体旅行」について、
(1)ただ観光地に行って満足するような物見遊山的な旅行ではないこと
(2)通俗的に理解されている「自分探し」であると同時に、「承認の共同体」へのコミットメントでもあること
の2つの特徴を挙げています。
 第3章「ピースボートの秘密」では、1983年に始まったピースボートが、現在では1000人規模の世界一周クルーズを一年に3会実施するまで事業拡大したことについて、「同時に政治的理念の実現という『目的性』=『政治性』を漂白する歴史でもあった」としています。
 また、ボランティアスタッフの活動拠点となる「ピースセンター」、通称「ピーセン」について、彼らにとって、「貢献」すべき団体であり、「大切ですてきな場所」であるとしています。
 第4章「自分探しの幽霊船に乗る若者たち」では、ピースボートに乗船する若者の属性が、
(1)学生
(2)過酷な労働を強いられていた正社員
(3)正社員を含む周辺的労働者
(4)資格所有者
の4つに大別し、「待遇や収入など労働条件が相対的に良くない若者も多く乗船している」としています。
 そして、ピースボートに乗る若者たちが直面しているのは、「閉塞感」や「空虚感」といった「現代的不幸」であるとしたうえで、「もはや現代においては『域づらさ』の処方箋としての『承認の共同体』さえも、『商品化』されていると指摘しています。
 第5章「ルポ・ピースボート」では、若者を、
・セカイ型
・文化祭型
・自分探し型
・観光型
という4つのタイプに分け、実際にクルーズ中に何が起こったのかを見ていくとしています。
 そして、若者たちの語りから見えるるものとして、「ピースボートが決して人生を変えるような劇的な体験ではなかった」としています。
 第6章「あきらめの舟」では、「ピースボートという『承認の共同体』は、社会運動や政治運動への接続性を担保するどころか、若者たちの希望や熱気を『共同性』によって放棄させる機能を持つと言える」としています。
 第7章「だからあなたはあきらめて」では、「セカイ型」と「文化祭型」の若者がたどり着いたのは、「『目的性』がなく『共同性』だけのぬくぬくした温かい居場所だった」として、「希望難民たちは『現代的不幸』に対しムラムラして(衝動や感情が抑えきれないこと)ピースボートに乗り込み、目的性を冷却させた結果、『村々する若者たち』になったのだ」と述べています。
 本書は、希望難民たちが辿った船旅を追跡した一冊です。


■ 個人的な視点から

 「ピースボート」と聞くと、「どうせ左翼かぶれの若者が乗っている船だろう」くらいの先入観しかない人が多いと思うのですが、事態はそれ以上に時代を反映していることに驚きました。


■ どんな人にオススメ?

・世界一周に夢を持っている人。

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